俵 (単位)

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(ひょう/ぴょう)は、などの産品の取引や流通のための基準量として使用される特殊単位である。具体的な量は、対象品目ごとに異なる。

米以外にも雑穀や木炭など、かつて(たわら)で流通したさまざまな産物に適用される。元来は1つの俵に入れる容量単位であったが、現在は重量単位である。

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現在のコメ1俵は60kgである。

かつて米の計量はを基準とし、容量で計量され流通したため、俵は容積を表す単位だった。文献で最初に記載されている俵についての記述は、平安時代のもので5で1俵とするという規定が残っている[1]。この時代の斗量は現在とは異なり、現在の定説では、当時の1斗は現在の0.4斗である[2]。したがって、当時の1俵は約30kgである。[3]戦国時代から江戸時代の1俵はおおむね2斗から5斗の間で時代・土地ごとに異なり、例えば幕府は1俵を3斗5升としたが、加賀藩の1俵は5斗であった。またそもそも俵自体にも、四斗俵や六斗俵などいろいろなサイズがあって、規格が一定していなかった。

俵が単位として全国的に統一されたのは明治時代で、1俵は4斗と定められ、2俵半が米1石(=10斗)ということになった。米1斗(約18リットル)の重さは約15kgなので、1俵は約72リットル、約60kgとなる。戦後に至り、昭和26年の「計量法」施行により、精米、精麦については重量を基準として計量することが法律で定められたため、1俵は相当する重量の60kgに改められた。

1俵は労働者一人が担いで運べる量であり、2俵は馬一匹の積載量であったため、米の出荷・保管・輸送に便利であった。タイなど海外ではいまだに60キロ袋が米の流通に使用されているが、現在の日本では米農家の高齢化などもあり、出荷流通の米袋は「半俵」の30kg入りの包装が普通となった。

「石」と「俵」[編集]

「石」と「俵」はどちらも米の量であるが、一石は兵一人が一年に食べる量とされて軍事動員力を示す石高制の基礎単位、俵は単に米を流通のため包装する単位で、そもそも性格が異なる。江戸時代の武士の収入には「石」と「俵・扶持」の表記があるが、領地を与えられ、そこから収納する石高の年貢を収入とする建前の上・中級階層が「石」、領地を持たず、米の現物支給を受ける軽輩の収入が「俵・扶持」で表されたのである(蔵米知行)。知行の換算は、 米1俵 = 1石 = 金1両(名目レート)、また蔵米5俵 = 1人扶持であった。

米以外[編集]

大豆や小麦は米と同様に60kg、馬鈴薯や大麦は50kg、ソバは45kgが1俵である。また木炭の1俵は15kg。

英語で綿花や羊毛など繊維原料の取引単位を示す「bale(ベイル)」の訳語には「俵」があてられ、国内でも取引の基準単位とされる。1ベイルの量は対象品目や産出国によって異なる。一例としてアメリカ綿1俵は500ポンド、227kgである。

典拠[編集]

  1. ^ (『延喜式』雑式)
  2. ^ (澤田吾一『奈良時代民政経済の数的研究』)
  3. ^ ただしこれは舂米(ついた米)の場合であって、当時米は穀(もみがらがついた米)の状態で保存されていたので、この場合の重量は、約20kgである。