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愛知<港とつないで あおなみ線10年>(下) 夢
河村たかし市長は、なぜ、あおなみ線に蒸気機関車(SL)を走らせたいのか。 今月初めの定例会見で質問をぶつけると、市長は、名古屋駅で新幹線とあおなみ線のホームが隣り合っていることを挙げた。「新幹線の横に(SLの)D51が走っとるだけでもびっくりしますよ。面白いですよ」 名古屋市は昨年二月、あおなみ線の一部区間など五キロで、SLを試験的に走らせた。機関車や機関士はJR西日本から借りた。二日間の六往復はいずれも満員。沿線には四万人が詰め掛け、駅前の高層ビルを背に、煙を吐いて進む姿に歓声が上がった。 しかし、市長が唱える常時運行は容易でない。 市の担当課は、SLを運行する各地の鉄道会社と接触したが、機関車や機関士を確保できる見通しは立たない。自前で機関士を養成するにしても数年はかかる。SLの重量に耐えられない恐れがある橋もあり、金城ふ頭までの全線で走らせるには改良が必要だ。「市長の思い付きに振り回され、うんざり」と嘆く職員もいる。 実現に疑問符がつくアイデアなら他にもある。金城ふ頭から海底トンネルを経て、中部国際空港まで延伸する構想。一九九一年二月、当時の西尾武喜市長(故人)が、新空港へのアクセスとして「候補の一つ」としてぶち上げた。 優先的に整備する路線は名鉄常滑線に譲ったが、国や関係自治体は、空港利用者が増えた場合に検討する路線に位置付けた。二〇〇四年には市が「八百億円で延伸可能」と試算した。 しかし、同じ年の名古屋−金城ふ頭間の開業後は、市側の見込みを大幅に下回る乗客数と、これに伴う経営不振が話題になり、延伸に向けた表立った動きは消えた。ある市幹部は「今や夢物語」。 あおなみ線は、旧国鉄が敷いた貨物線を前身とする。市が旅客線化に向けて本腰を入れ始めたのは一九八八(昭和六十三)年。列島はバブル景気に沸いていた。新空港への延伸構想が表明された九一年も、その熱が冷めやらぬころ。あおなみ線は、役所が少々、大風呂敷を広げても許された時代の産物ともいえる。 再び、市長の定例会見。 SLへの思いを語った河村市長に、空港への延伸構想を聞くと、「ベリーグッドで、ええじゃないですか」と前向き。「地下に潜らせるより、空を行った方がいい」と、海上橋で延伸させるアイデアまで披露した。 担当課との打ち合わせなしの独走に、後方に座る市幹部は表情をこわばらせたが、市長は構わず続けた。 「海には豪華客船。その上に高架。電車が走り、D51が走る。その上を飛行機。世界中で名古屋港にしかない景観じゃないですか、これ」 (社会部・丸田稔之、写真部・岡本沙樹、中森麻未が担当しました) PR情報
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