左:ループウィラー 右:無印良品
ひとにファッション的何かを指南など出来ませんが誰かの参考の足しくらいにはなりたいななんて壊れそうなほど狂いそうなほどrosierな思いを抱えつつブログを更新しているわけですがさて今日は世の中に数多あるグレーのスウェットパーカから最良の一着をどうやって選んだらいいのか考えてみた相当個人的嗜好に偏ったエントリのさなか次男が高熱で大変だウワー。
[Sweat、Sweat、Sweat・・・・]
スウェットの出自は厳然とスポーツウェアで、Champion社の歩みやvintageのスウェットを見るとその歴史が見えてきますが、だいたい僕らがイメージする、綿を主体にしたいわゆるスウェットシャツが市場で定番化してくるのが1930年代以降。それ以前はウール製が中心でしたがコストと量産性を理由にコットンに切り替わっていきます。
ヴィンテージスウェットとしてよく古着で見かけるのは1940~60年頃のものでしょうか。
ガゼット、スリーブ、リブ、編み立て/縫製方法、ロゴなどあまりにも有名なディティールが並びます。
この辺は今30〜40代の世代にはお馴染みかもしれません。
Akom、Russel、Hanes、Champion、Fruit of the loom、Pirglim、JC penny、Brent・・・・。
賢人は歴史に学ぶと言いますが、現代のスウェットウェアはこれらを咀嚼して、
①ヴィンテージの再現
②ヴィンテージの素材やディティールを再現あるいは参考にしつつ、パターンを現代的にアップデート
③新たな解釈で
の大きく3つくらいに分類できるような気がします。
ここから自分のテイストや考え方に合うものを選んでいくことになるのでしょう。
[歩いてきた道]
自分が通ってきた道だからでしょうけど、個人的にはchampionのreverse weaveが基準になります。
80年代あたりのcotton90%アクリル10%のタイプの生地感。
自分が高校生の頃、古着屋ではアメリカの大学のブックストアで販売されていたようなカレッジロゴのスウェットやらパーカが大量に売られていました(いや、今も売ってますが)。
大体4800円くらいで。
タグの裏にはsteveとかjohnとかペンで名前が書きなぐられてて、その着込まれた生地は平面的でペラッとしてるのに、なんだか厚いような、くたっとしてるんだけどどこか硬いような。
あの感じ。
そういうものを着てたから刷り込みのように基準になってしまっているだけです。
もっと古い年代のスウェットなんかは値段がものすごく高かったので着たこともありませんから比較のしようがない。
10代後半の話です。
ワンシーズン通してCamberの19ozのヘヴィオンススウェットパーカで過ごした冬もありました(真冬も余裕でした)。
NAVYの手頃な値段のロゴスウェットを一生懸命探したこともあります(見つけても9800円over)。
初期のループウィラーや、トゥームーンももちろん手を出していましたし、当時も無印のパーカはよく着てました。
かようにスウェットパーカとはなんだかんだで蜜月の関係が長く続いていた時期があったのです。
[時は流れ、今は多様なスウェットがある]
振り返ってみれば社会人になってからというもの、スウェットのウェアとはだいぶ隔たっていました。
あ、wjkのスウェットパーカは持ってたか!
しかし理想のワードローブを構成することを考え始めてから、自分のクローゼットの「スウェット枠」がぽっかりと空いていることに気付きます。
またあの頃と同じようにChampionの古着、という選択肢もあるでしょう。
しかし、あの頃とは選択肢が桁違いですし、自分でヴィンテージにするくらいの気概で現代の新品から選びたい。
いまやどのメーカーも一度は販売したことがあるだろうというくらいに定番の素材、デザインのスウェットパーカ。
色んなものを見ましたが、なかなか食指は動かず、結局またループウィラーに戻ってしまいました。
着た時の形がきれいで、いわゆるヴィンテージウェアを参考にしつつもそのディティールを踏襲しすぎない、かつ主張の強いロゴなどが入らない、となるとなかなかあるようでないのです。
ループウィラーのパーカを着たら「そういえば最近の無印のパーカはどうなってるんだろう」という気持ちが涌いてきました。
今から10年以上前に愛用していた無印のパーカーは裏がほとんど起毛していないような薄い生地で、その生地の軽薄さに現代的工業製品に対する嫌悪感を覚えつつもその薄さがかえって使いやすいというアンビバレンスのど真ん中、そして当時はなかなか他では見つけられなかった銀色のむき出しのジップを採用しており、とても使いでのあるものでした。
それがいつからか銅色の冴えないジップに替わりフードの紐も平紐になったりして、がっかりした僕は無印良品のスウェットパーカを見ることをやめてしまっていました。
そんな経緯があるため無印のパーカはチャンピオンやキャンバーと並ぶ思い入れの強いスウェットの一つの基準として自分の中に存在していたようです。
それが今回見てみると、無印パーカ、だいぶ様相が変わっていました。
これ全然ありじゃん、と思える出来だったのです。
黒にしようかとも思ったのですが、よく考えたら黒はsmoothdayのパーカを受注していたので(待ち遠しい)、より違いを理解したくてループウィラーと同じグレーを買ってみました。
[それでは比較画像をどうぞ]
左:ループウィラー、右:無印で掲載していきます。
冒頭の画像の再掲です。
ぱっと見てもほとんど同じですが、比較的目立つ違いといえば、ループウィラーはボディとリブの色がほとんど同じですが、無印はリブの色が少し濃くなっています。
それから肩の構造ですね。ループウィラー(面倒になってきたので以下LW)はセットインスリーブ、無印はラグランスリーブです。
個人的には圧倒的にセットインスリーブが好きですね。
スウェットの歴史的ディティールとしては「フリーダムスリーブ」という袖付けが他にもあります。
<首まわり>
LWのほうが径の細い同色のヒモで、無印は少し太めの白いヒモ。
無印には紐通しのところに金具を使っています。
こういうディティールは古着なんかだと年代特定の情報になったりするので仕様としては重要ですが、現行品の場合はもう好みとしか言えません。
僕としてはLWも金具を採用して欲しかったなと思います。
ヒモは結局じゃまになって取っちゃったりするのでなんでもいいんですが、よりミニマルなものを好む僕としてはLWのヒモに1票。
でもヒモなんて簡単に替えられるよね、よく考えたら。
やっぱなんでもいいや。
<フード>
んー、違いはLWの方はヒモを通すところがちゃんとトンネル上にステッチされているところでしょうか。
LWのほうが少しフードが大きく出来ていました。
<肩まわり>手前が無印でラグラン、下敷きになってる方がLWでセットイン。
<裾リブ>上が無印、下がLW。
若干無印の方が色が濃くて短いです。
<裾リブのアップ>
畝もLWの方が細いですね。
<袖リブ>
裾リブと同様でLWの方が幅が広く畝が細かい。
そしてLWには若干気恥ずかしいタグ。
<縫製>
細かいディティールの中で最も大きく違うのがこの縫製かなと思います。
LWは売りの一つである有名なフラットシーマがところどころに採用されています。
ごめんなさい。
でも実はフラットシーマがもたらす着心地の良さ、みたいなものを実感したことはありません。
もう書けば書くほど
LW着る資格なしのtkjですね・・・・。
<脇部分の縫製>上が無印、下がLW。
LWはフラットシーマで文字通りフラットなのがわかると思います。
<ジッパー>上がLW、下が無印。
LWはシルバー色で光沢のあるパイピングテープ(バイアステープ)。
無印はガンメタルみたいな色で、多分綿ヘリンボーンのパイピングテープ。
採用されているジップ自体は色が違うだけで全く同じ5番の逆開ファスナーです。
色は好みの問題ですよね。
僕はLWに使われてるシルバー色が好きです。
さて、色々ディティールを見たので個人的に鬼門である生地自体に言及します。
<生地:表>
生地はLWは吊り編み、無印良品は・・・・たぶんシンカー。
根拠は無印良品では「吊り編み」と明記された5980円のスウェットパーカが別にあるので。
恥を忍んで言いますが、僕は視覚、触覚で吊りとシンカーの生地の違いがわかりません。
よく「吊りはふっくらしてるんですよ!」っていう売り文句をよく聞きますが、素人(専門の職人さんじゃないひと)に吊りとシンカーの生地をブラインドで当ててみてってお願いしたら多分正解率は50%くらいなんじゃないかなと思う。
逆に言えばシンカー編みのスウェット生地ってもしかして過小評価されてるんじゃないでしょうか?
この無印のパーカも実際けっこうふっくらしてます。
してるけどやっぱりLWの方が密度が高いし、ドレープがきれいだと感じます。
そしてLWのほうが少しだけ厚みがあります。
このLWはビームスの別注品で「LWミドル」という生地。
ベーシックとライトの中間という位置づけです。
以前、初期のループウィラーを着てていちばん思ったことが「洗ってもあんまり劣化しない」ということだったので、ふっくら具合よりも耐久性に分があるのが吊り編み生地なんじゃないかと個人的には思ってます。
<生地:裏>
左がLW、右が無印。
丈がLWの方が高いです。
触った感じもLWの方がふわっとしてます。
が、差は微々たるものです。
<サイズ>
| LW size:L | 無印 size:XL |
---|
肩幅 | 51 | 50 |
---|
アームホール | 25 | 23 |
---|
袖丈 | 61 | 61 |
---|
身幅 | 55 | 55 |
---|
着丈 | 64 | 64 |
---|
意外や意外、無印の方が細いつくりです。
この辺は比較してどうこう言うところじゃないのでおまけ。
[この差異をどう捉えるか]
LWと無印良品の違いを見てきました。
最後におそらくいちばん問題となるであろう価格差。
LWは18900円、無印は3900円(しかもシーズン特価で3500円!)。
ディティールの違い、生地の違い、ブランドの違い・・・・・。
15000円もの差がここにあるどうか、というよりも15000円の価値を見出せるかどうかだと思う。
先に「以前着ていたときLWは経年劣化が少なかったと感じた」と書きましたが、このくらい価格差があるとLW1着に対して無印5着買えてしまいます。
そうなると無印の場合、5着買っておいてダメになってきたなあと思ったら新しいのをおろす、というやり方が成立してしまいかねない。そういう着方が正しいかどうかは別にして経年劣化云々という前提そのものが覆ってしまう。
じゃあ、俺はどうしてループウィラーを買ったんだろう?
冒頭にも書いたように、
・質がいいと思えて
・形もきれいな
・目立ったロゴなどのない
・仙台で買える
という条件を満たすパーカとなるともう極端に選択肢が少なかった、というのが主な理由だけど、はっきりいって遠目で見たとき無印もLWも、なんだったらユニクロでも大きな差はない。
質で言っても、新品の状態では無印のパーカは決して悪くない。
経年変化は後から振り返ってわかるものだから、初めて買う人の動悸付けには決してならない(そういう情報が与えられると話は変わってくるけど)。
しかもLWの売りである吊り編みとシンカーの違いすら見分けられないんだから、ますますLWを選ぶ必然性は薄れてくる。
・・・・やっぱりループウィラーというブランドとその背景にある物語にお金を払ったんだろうと思う。
今の日本に、というより世界を見渡しても吊り編み機は和歌山県にしかほぼ現存しない状態らしいので、希少性やその生産性の低さを考えるとこの価格になるのもある程度の蓋然性はあるのだと思う。
それでも僕自身ですら、15000円の価格差は大きいよ!!と思ってます。
けど、やっぱりどっちかを選べって言われたらLWを選ぶなあ。
世間には「そんな値段バカげてる。ブランドネームに大半のお金を払ってるんだ」という論調が多くあるのかもしれませんが、そんなの服好きなら百も千も承知です。そうですブランドネームにお金を払ってるんです。
洋服の原価なんて考えてたら服なんかユニクロ以外買えません。
逆にここまでLWに肉薄して取捨選択を迫ることが出来る無印は本当にすごいと思う。
常々無印のアパレルにはすごさを感じていて、けっこうな数の服を僕は着てきています(「僕はなぜ無印は着るのにユニクロは着ないのか」というエントリもいま細々と書いてるので終わり次第アップしますが色んな資料とか本を読み込みながらなのでまだまだ書き上がらなそうです)。
グレーのパーカをスポット的なアイテムとして捉えて買いたいという(服オタ以外の)ひとに相談を受けたらコストパフォーマンスの観点からいってもまず確実に無印を勧めると思います。
それくらい出来はいい。
でもそういった利点だけが真の解にならないところが、服の面白いところだよなあとつくづく思うわけです。
[そしてグレーのパーカの選び方]
グレーのスウェットもしくはパーカなんて、もうそれこそどこのブランドでも出してます。
好きなのを選んでください、じゃあ何も書いてないも同然なので、個人的に思うところを。
LW、無印はもういいとして、他に候補に挙がっていたものを書いてみます。
古着は候補に入れていいと思います。
やっぱり値段も手頃なものを考えるとチャンピオンのリバースウィーブボディのカレッジロゴのものは鉄板でしょう。
個人的にはNAVYロゴのものがバランスとかネタ的にもいちばん好きかもしれません。
先日紹介しましたAnne-Treさんにもロゴマークなしのチャンピオンかぶりパーカが入荷しててちょっと買いそうになりました。現行ものよりも生地がぐわしっっっとしてるんですよね。
それから現行のチャンピオンも外せない。
仙台のレクルールにもきちんとスペースがとられていましたが、Mr.Gentlemanとのコラボが今シーズン展開されています。ロゴものを欲していなかったのですぐに外れましたが、チャンピオンボディはやっぱり魅力的。
Camberはちょっとアウター的に過ぎたので候補から外れましたが、アウターとしてのパーカなら迷わずこれ一択です。
ほかのスウェットとはレベルが違いすぎます。
今っぽいなあと思ったのがGOLD。sugarcaneやバズリクソンズを展開する東洋エンタープライズのいちブランドですが、ボディもしっかりしてたし、染みプリントなんかも古着っぽくてプレッピー・city boyスタイルにはすごくマッチすると思いました。
あと仙台のお店で見ることが出来た今っぽい(つーか今新しく売ってんだから今っぽいに決まってる)ものは、本町にあるPIDGIN(ピジン)というお店で扱っていたHonor GatheringとLiving Conceptのスウェット。
特にLiving Conceptは9450円という値段でフリーダムスリーブというマニアックなディティールで面白い。
ちょっと好みからすると生地は薄かったですが。
リアルアメカジを取り込むならtwo moon。ここのスウェットは今もやっぱりすごいですね。
なんといえばいいか、ヴィンテージへの熱量みたいなものが。
僕一人が見れる範囲なんて限られてるし、もうほんと各メーカーがいっぱいスウェットものを出しているので、とてもじゃないけどカバーできませんが、何かの参考になれば嬉しいです。
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シルバーのダブルジップが採用されてたら間違いなくチャンピオン買ってた。
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