日韓外交関係に影響の見通し10月9日 4時23分
産経新聞のコラムが韓国のパク・クネ(朴槿恵)大統領の名誉を傷つけたとして、韓国の検察は、コラムを執筆した前ソウル支局長を、8日、在宅のまま起訴し、報道の自由の観点から議論を呼ぶだけでなく、日韓の外交関係への影響は避けられない見通しです。
このコラムは、ことし8月に産経新聞のウェブサイトに掲載されたもので、韓国の新聞などを引用する形でパク・クネ大統領と特定の男性とのうわさなどを紹介していました。
ソウル中央地方検察庁は、このコラムについて、▽客観的な事実と違っており、▽根拠なく大統領の名誉を傷つけたうえ、▽反省や謝罪の意向を見せていないなどとして、8日、執筆した加藤達也前ソウル支局長(48)をインターネットを使って名誉を毀損した罪で在宅起訴しました。
これを受けて、ソウルに駐在する外国メディアの団体「ソウル外信記者クラブ」は、韓国の検事総長に対する公開書簡を発表し、「今回の起訴は韓国の言論を取り巻く環境に悪影響を及ぼし、自由な取材の権利を著しく侵害するおそれがある」として深刻な憂慮を示しました。
また、韓国メディアの間からも、「言論の自由の侵害についての論争が予想される」などと指摘する記事が出ており、報道の自由の観点から議論を呼ぶのは必至です。一方、日本と韓国は来月開かれる一連の国際会議で安倍政権とパク政権の発足以来初めてとなる2国間の首脳会談の可能性を巡って模索を続けており、そのさなかの日本人記者の起訴という異例の事態に外交関係への影響も避けられない見通しです。
韓国側に懸念伝える考え
この問題を巡り、岸田外務大臣は、8月にミャンマーで行われた韓国のユン・ビョンセ(尹炳世)外相との会談で、「報道の自由との関係で問題がある」などとして懸念を伝えた経緯があり、岸田大臣は8日夜、「韓国側に慎重な対応を求めてきたなかで起訴されたことは、報道の自由や日韓関係に関わる問題で、大変遺憾であり憂慮している」と述べました。
日韓両国は8月と9月に外相会談を行ったほか、今月、外務次官による戦略対話が開かれるなど対話の機会が増えていただけに、政府内からは「関係改善に向けた前向きな動きに水を差しかねない」といった受け止めが出ています。
政府は、今後、起訴の理由などを詳しく分析したうえで外交ルートなどを通じて韓国側に懸念を伝える考えです。