韓国:産経前支局長を在宅起訴…地検、大統領の名誉毀損で
毎日新聞 2014年10月08日 20時34分(最終更新 10月09日 04時54分)
【ソウル大貫智子】産経新聞がウェブサイトに掲載した韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領に関するコラムにより大統領の名誉を毀損(きそん)したとして、ソウル中央地検は8日、執筆者である同新聞の加藤達也・前ソウル支局長(48)を情報通信網法違反(名誉毀損)で在宅起訴した。韓国国内法を根拠に海外での報道に対して立件するのは異例で、関係改善を模索し始めた日韓関係に再び影を落とすことになりそうだ。外務省幹部は8日、「報道の自由の観点、また日韓関係の点からも遺憾だ」と述べた。
検察は加藤前支局長を出国禁止とし、これまでに3回事情聴取。前支局長は10月1日付で東京本社への異動が決まっていたが、帰国できずにいる。
韓国の情報通信網法は「人をひぼうする目的で情報通信網を通じて公然と虚偽の事実をあらわし他人の名誉を毀損した者は7年以下の懲役、または5000万ウォン(約500万円)以下の罰金」などと定めている。一方、韓国の刑法は名誉毀損について「公共の利益に関するときは罰しない」と規定。加藤前支局長は検察の事情聴取で、記事の公共性を強調したものの、認められなかった模様だ。
問題とされたのは8月3日にウェブサイトに掲載された「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」というコラム。加藤前支局長は、韓国大手紙・朝鮮日報のコラムを引用しながら、客船セウォル号が沈没した4月16日、朴大統領が男性と会っていたのではないかとのうわさに言及した。コラムは第三者が翻訳して韓国のインターネット上で広がり、保守系の市民団体が告発していた。
在宅起訴を受け、産経新聞は「民主主義国家各国が憲法で保障している言論の自由に対する重大かつ明白な侵害である」との社長声明を出し、早急な処分の撤回を求めた。