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高学歴親ゆえの子育ての難しさが問題になっている

2014年10月1日

教えて!増田先生 後伸びする年長さんを育てるレッスン

増田先生が見たコドモ

私が小学1年生を担任した時のことです。
6月に算数のテストをやりました。ある男の子が80点だったのですが、それを見たとたんに、顔つきが見るからに変わりました。
「ウワ~!」と叫びながら、廊下に飛び出して行きました。
わけのわからなかった私は、その子を追いかけました。
すると、廊下を走り抜け、非常階段を登っていきます。そして、4階の階段から飛び降りようとしたのです。私は、必死になって止めました。
「どうした! 何があったんだ?」
と聞くと、
「僕はダメなんだ。80点じゃだめなんだ~」
とわめき散らしたのです。
 
落ち着いたのを見計らって話を詳しく聞いてみると、
「僕は、小学校受験を失敗した。だから、小学校に入るときに『次は中学受験よ』と言われたんだ。受験に失敗した時、お父さんとお母さんが僕のことを『ダメな子ね~』と言ったんだ。僕は、80点じゃダメなんだ。100点じゃなければ、お父さんやお母さんに見捨てられちゃうんだ!」
と話してくれました。

ダブルバインド親をやめよう!

イメージ

ここで紹介した子どもの親は、両親共に高学歴でした。ですから、子どもにもその「高学歴バトン」を渡したいと思うのは当然だと思います。また、親なら誰でも、子どもの幸せを願っていますし、安定した職に就き、安定した生活を送ってほしいと思うものです。そのことを否定する気持ちは、全くありません。しかし、しかし、子どもをここまで追いつめていいのでしょうか。

高学歴の親の特徴は、「あなたの将来のためよ」という言葉で、子どもの心を縛り付けてしまう点にあります。また、「自分の将来は自分で決めなさい!」と言いながら、偏差値の低い高校を選択しようものなら、「偏差値が低いんじゃない?」と暗に否定するのです。

「自分で決めなさい」と言いながら、子どもが決めたことが自分の意に沿わなかったりすると否定する。そうした結果、受ける側はどちらを信じたらいいのかわからなくなり、考えることをやめてしまうのです。このようにして自己判断力が失われるプロセスを、「ダブルバインド(二重拘束)」と言います。

今の子どもたちは、空気を読むことを強制される状況に置かれています。その結果、親から出されるヒドゥンメッセージ(裏側の隠されたメッセージ)の影響を色濃く受けるのです。ダブルバインド親は、実は条件付き愛を提示しているのです。「勉強のできるあなたが好きよ」「運動のできるあなたが好きよ」というメッセージを送っていると、子どもは「じゃあ、勉強ができなくなったら僕は見捨てられちゃうんじゃないか」とか「運動ができなくなったら私はお母さんに嫌われちゃうんじゃないか」と思ってしまうのです。こうした条件付き愛の裏側には、「見捨てられ感」が貼り付いているのです。だから、子どもたちは健全な自己肯定感を持てずに苦しむのです。

これから先は、社会がどのように変化していくかがとても不透明な時代になるでしょう。だからこそ、自分で判断し、自分の将来を切り拓く能力が必要になっていくのです。そうした子どもに育てるためには、まずは“ダブルバインド親”をやめることです。
子どもと話し合い、一緒に考えていくことを小学校低学年からやっていってほしいのです。それが、必ず将来たくましく生きていく子どもを育てることにつながるからです。

子どもが子どもらしくいられる時間は限られています。その時間を、うんと保障してあげてほしいし、親も一緒に楽しんでほしいと心から願っている昨今です。

増田修治
プロフィール

増田修治先生
白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。1980年、埼玉大学教育学部を卒業後、埼玉県の小学校教諭として28年間勤務。若手の小学校教諭を集めた「教育実践研究会」の実施や、小学校教諭を対象とした研修の講師なども務めている。
「笑う子育て実例集」(カンゼン)、「『ホンネ』が響き合う教室」(ミネルヴァ書房)など、著書多数。

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