ドイツのメルケル首相は、欧州で最も頼もしい政治家と評されてきた。欧州連合(EU)における経済大国というドイツの確固たる地位を築いたのである。だが、メルケル首相の内政における判断がすべて正しかったわけではない。ドイツ経済に影が差すなか、メルケル氏の8年間の首相任期中で最悪の決断に注目が集まるのも当然だろう。それは、ドイツのエネルギー政策から原子力という選択肢を消し去るという政策判断である。
■電気料金、消費者へ転嫁 欧州平均の1.5倍
長い間、ドイツ人は世界で最も環境に配慮する国民だった。そのことは、歴代の独政権が、風力や太陽光をはじめとする再生可能なエネルギー源の利用に大きく依存する経済モデルの確立を目指す「エネルギー転換」を支持してきたことで、よくわかる。再生可能エネルギーは現在、ドイツの発電全体の23%を担っているが、この比率を2035年までに65%に拡大させることになっている。
一方、再生可能エネルギーを重視する政策が家計や企業の負担を大きくしている。ドイツ政府が再生可能エネルギーを発電に利用する電力会社に支払う補助金は、消費者に転嫁される。このため、ドイツ国内の電気料金は欧州平均を48%上回る。中小企業を巡る環境はさらに厳しい。中小企業のコストはドイツが米国の2倍である。米国の中小企業の多くは低価格のシェールガスの恩恵を享受している。景気が減速する現状では、こうした負担がドイツ経済に重くのしかかる。
原子力発電をやめれば、こうした困難な事情はさらにやっかいになるだろう。ドイツ国内の原発廃止の決断は、メルケル首相が11年に起きた福島第1原発事故の後に下した。不安を募らせた有権者にこたえるため、警鐘を鳴らすだけのいつもの手法でなく迅速に行動した。だが、この判断によりドイツのエネルギー政策は2つの重荷を負うことになった。
■増え続ける化石燃料による発電
そのうちの1つは、原発を廃止すると、国内のエネルギー需要を満たすため、より多くの石炭を燃やさなくてはならないことだ。太陽光、風力による発電はなお不安定で、ドイツは原子力の代替として化石燃料に頼らざるを得ない。発電源の25%近くを占める原子力を排除することによる石炭消費量の急増はすでに始まっている。このままでは10~15年に9基の石炭火力発電所を稼働させることになる。昨年は、とうとう石炭による発電が1990年以来の最高水準に達した。
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