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クラブと風営法の問題をテーマにした書籍『踊ってはいけない国』シリーズなどの著者としても知られる磯部涼氏と、細野晴臣が世界各地で出会った音楽について綴った『HOSONO百景』の編者である中矢俊一郎氏が、音楽シーンの“今”について独自の切り口で語らう新連載「時事オト通信」。第2回目のテーマは“日本の不良映画”について。今夏に公開されて話題を呼んだ『TOKYO TRIBE』と『ホットロード』の2作品と、それにまつわる音楽から、80年代半ば〜現在までの不良文化について計3回にわたって語り尽くす。前編では『TOKYO TRIBE』を軸に、90年代のヒップホップ文化やチーマー文化について掘り下げた。(編集部)
中矢:最近、『TOKYO TRIBE』と『ホットロード』という不良映画が話題になっていますよね。今回は、その2作にまつわる文化や音楽について話していければと思います。まず、前者は、93年に始まった井上三太のマンガ『TOKYO TRIBE』の第2弾で、97年から05年にかけてストリート・ファッション誌『boon』に連載されていた『同2』が原作。そちらはざっくり言えばストリート・ギャング同士の抗争を描いたもので、さんピンCAMP(96年開催のヒップホップ・イベント)などで最初のピークを迎えた当時の日本語ラップの空気感も伝わる作品だと思いますが、映画のほうから90年代臭さはそこまで感じられませんでした。まあ、ンコイを演じる窪塚洋介とテラを演じる佐藤隆太の姿から、カラー・ギャングを中心に90年代ストリート文化の総決算的なTVドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(00年)をふと思い起こした人は少なくないはずですが、あの頃より確実にハリと潤いが失われた二人を見て「時代は流れたんだな」と思って……。
磯部:原作の『TOKYO TRIBE』シリーズは登場人物のモデルがラッパーだったり、作中にブラック・ミュージックに関するネタが散りばめられていたりするけど、同シリーズが日本のヒップホップ・シーンで特別ウケていた印象はない。井上と交流のあったスチャダラパーは例外というか、そもそも、彼等もシーンから外れていたひとだちだったからね。まぁ、「リアルじゃない」と直接的に批判していたのはグラフティに詳しいライターの東京ブロンクスぐらいしか記憶にないけど、映画に出演してるようなハードコアなラッパーたちが影響を受けたマンガは、世代的に言って『ろくでなしBLUES』や『疾風伝説 特攻の拓』みたいなヤンキーものか、『殺し屋1』や『闇金ウシジマくん』みたいな裏社会ものだと思う。映画でシンヂュクHANDSの前リーダー役を演じていた漢が「最後まで読み通した本は『特攻の拓』と『殺し屋1』ぐらい」と言っていたとか、真鍋昌平が取材でクラブに来たとき強面のラッパーたちが「おお、真鍋先生!」みたいに興奮していたとかいうエピソードもあるし。一方、『TOKYO TRIBE』シリーズに登場する服を商品化したSARUのフーディなんかはイケてないものって認識されていた。それにも関わらず、今回、映画化にあたって日本のヒップホップ・シーンの一線で活躍しているアーティストが多数、出演したのは、むしろ、監督・園子温の旬の求心力に依るところが大きかったんだと思う。仮に井上自身がメガホンを取ったとしたらこんなに集められなかっただろうけど、「園子温が撮るんだったら面白くなりそう」ってラッパーたちは考えたんじゃないかな。
中矢:映画の謳い文句が「世界初のバトル・ラップ・ミュージカル」ですけど、前回(参考:磯部涼×中矢俊一郎 対談新連載「グローバルな音楽と、日本的パイセン文化はどう交わるか?」)の話に出た、今のラッパーたちのスワッグなノリというか、かぶくような見せ方に、園子温が触発された部分もあったんじゃないかと。映画のプロモーションが始まったあたりに急にモヒカンにしたり、試写会で同じミュージカル映画である『アナと雪の女王』を「あんなの蹴散らす!」とうそぶいたりしていましたし。
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