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結局、シンセサイザーをいじることは音楽の目的ではないんですよ

MOVIE

大阪のシンセサイザー界から見える、人間ドラマとカルチャー論

インタビュー・テキスト:阿部美香 撮影:豊島望(2014/10/03)

有名シンセサイザーメーカー「KORG」が、2010年代に入って往年のアナログシンセサイザー名機のリメイク「MS-20 mini」や遊び感覚あふれるキッチュなアナログシンセを発売して話題を呼んだり、かつてのYMOのマニピュレーター・松武秀樹が操っていたようなアナログのモジュラーシンセサイザーの面白さが注目されてイベントが開催されたりするなど、シンセサイザーの世界はいま、ユニークな活況を見せている。そこに颯爽と登場したのが、電子音楽ファンに話題の映画『ナニワのシンセ界』。大阪のシンセプレイヤーやシンセサイザークリエイターへのインタビューをもとにしたこの映画は、大阪の「新世界」と「シンセサイザー界」をかけた人を食ったタイトルがすべてを表す、日本初のシンセサイザードキュメンタリー映画だ。なぜ、こんなに濃くてマニアックな映画を撮ったのか? 大須賀淳監督にぶつけた素朴な疑問の先に、関西カルチャーの根源的な面白さも見えてきた。

PROFILE

大須賀淳(おおすが じゅん)
映像・音楽クリエイター。株式会社スタジオねこやなぎ代表。1975年生まれ。福島県出身。映像・音楽コンテンツ制作と同時に、書籍や雑誌での執筆、学校・セミナー等での講師も数多く務める。2014年、アナログシンセサイザーの復興の兆しを見越して、モジュラーシンセサイザーの情報サイト「モジュラーシンセ日本」を開設、運営を手がける。日本初のシンセサイザー・ドキュメンタリー映画『ナニワのシンセ界~The New World of synthesizer in Osaka』を完成させる。
株式会社スタジオねこやなぎ
ナニワのシンセ界 公式サイト

これまでも世界的にはシンセを扱ったドキュメンタリー映画がいくつも作られているんですが、日本のシンセ界を取材した映画は、皆無なんですよ。日本のシンセ事情は見事にスルーされていました(苦笑)。

―『ナニワのシンセ界』はシンセサイザーのドキュメンタリー映画。日本では過去例がない珍しいジャンルを題材とし、しかもピンポイントで、ナニワ(大阪)のシンセ事情を扱っています。そもそも、どういう経緯でこれを作られたのですか?

大須賀:一番のきっかけは、劇中にも多く登場していただいている、大阪のシンセサイザービルダー、荒川伸さんとの出会いですね。荒川さんはREONというシンセサイザーブランドを立ち上げられています。

―荒川さんは、アナログシンセの始祖的存在であるモーグモジュラーシンセサイザー(オシレーターやフィルターなどの各構成要素(=モジュール)が個別に用意され、パッチコードで繋いで音作りをするシンセサイザー。下記動画参照)の名機「Moog 3C」を見よう見まねで自作するところから始め、いまでは世界的に注目を集めるシンセサイザー製作者の方ですね。

荒川伸
荒川伸




大須賀:はい、僕も2~3年前からネットでREONさんの噂は聞いていたんですが、東京ではどこの店でも扱っていない、幻のシンセなんですよ。ところが去年6月、東京のモジュラーシンセイベントで初めて荒川さんと会い、REON製品に触ることができたんです。僕も古今東西のアナログシンセをかなりの数触ってきましたが、REONのシンセにはいままで経験したことのない個性的な音と思い通りにならない操作感があり、とても感銘を受けました。しかもREONは、このネット社会の御時世に、自社のホームページを作らず、日本ではなく海外のシンセサイザー見本市に足を運んでユーザーを獲得してきた異色のブランドなんです。荒川さんのそんな変わり種なところにも、驚かされました。

―たしかに変わっていらっしゃいますね(笑)。

大須賀:そういった出来事と同時に、去年『I Dream of Wires』というカナダ製作のモジュラーシンセのドキュメンタリー映画が海外で公開されました。また、最近はアナログシンセサイザーが再注目され、国内ではKORGを中心に新製品が続々発売されるなど、ブームが再燃しているんです。国内だけでなく、調べてみると世界でもモジュラーシンセを作るメーカーがインドネシアやイランからも出てきていたり、これまでの欧米の大メーカー中心の歴史とは違う流れで、独自のシンセが開発・販売されている事実があります。

大須賀淳
大須賀淳

―モジュラーシンセもアナログシンセも、実際に使われていたのは1960年代~1980年代半ばまでですが、そういったヴィンテージテイストのシンセが、いまかなり盛り上がっているんですね。

大須賀:そうなんですよ。日本でも、モジュラーシンセのイベントが開かれて、REONのように世界に発信している個性的なブランドが注目されている事実があります。ところが、これまでも世界的には『テルミン』(1993年、アメリカ製作)や『MOOG』(2004年、アメリカ製作)、『メロトロン・レジェンド~チェンバリンとメロトロンの数奇な物語~』(2009年、アメリカ製作)など、シンセを扱ったドキュメンタリー映画がいくつも作られているんですが、日本のシンセサイザー界を取材した映画は、皆無なんですよ。先ほど挙げた『I Dream of Wires』でも、日本のシンセ事情は見事にスルーされていました(苦笑)。

―KORGやローランド、ヤマハといった日本メーカーのシンセサイザーは、アナログシンセの時代から世界中の有名ミュージシャンに愛され続けているのに。

大須賀:そうなんですよ! だから、日本のシンセサイザーを世界にもアピールできる映像を作ろうと思ったんです。

―なるほど。でも、「日本のシンセカルチャーを伝える映画」が作りたければ、日本のシンセサイザーの歴史を紐解いたり、大手メーカーの往年の名機について語る映画も考えられますよね? なぜ大阪のシンセ事情に焦点をあてたのでしょう?

大須賀:それが……最初はフラットに日本のシンセサイザーで何を撮りたいかをリストアップしていったんですが、気がつくと最優先で撮りたいシンセの開発者やお店などが、REONをはじめとする大阪拠点のものばかりだったんです。東京にもシンセビルダーは何人もいますが、東京のシンセはバランスがいい。便利グッズのように役立つものが多いんです。対して大阪のシンセは音も強いし、操作方法すらわからなかったり、思った通りの音が鳴らなかったりと、他にはない個性があって面白いんですよね。


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