(2014年10月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
9月11日、カタルーニャ自治州の州都バルセロナで行われたスペインからの独立を求めるデモ〔AFPBB News〕
カタルーニャ州はどうスペイン国家に収まるのか、あるいは、収まるかどうかを巡るバルセロナとマドリードの綱引きが最高潮に達し、スペインを壊滅的な危機に飲み込む恐れがある。
矛盾するようだが、投票した人の55%が英国残留を支持した先月のスコットランドの住民投票は、分離派の敗北にマドリードが安堵したにもかかわらず、恐らくスペインの状況を悪化させた。
カタルーニャ自治州政府のアルトゥール・マス首相は、11月9日に独立の是非を問う住民投票を行う計画を推し進めた。これに対し、スペインのマリアノ・ラホイ首相は憲法裁判所に提訴し、同裁判所は投票の差し止めを命じた。
憲法は、スペイン国家の「永続的な統一」を明記しており、大半の学者は、計画されている住民投票は――法的拘束力を持たないものの――スペインの基本法の下では違法だとの見方で一致している。
カタルーニャの問題は急速に、まもなく誰も勝者がいなくなる有害なアイデンティティー紛争と化しつつある。マドリード中央政府の強硬姿勢とバルセロナの冒険主義は、いわば列車衝突事故をもたらすだろう。
分離主義の地滑りが雪崩に変わる恐れ
マス首相が率いる主流派の民族主義政府はカタルーニャ共和党の分離主義者に出し抜かれたが、それでも同首相はカタルーニャ議会のほぼ70%の望みをかなえている。議会では分離派がぎりぎり過半数を押さえている程度だが、定足数を大きく上回る議員が、カタルーニャ人にはスコットランド人と同様、自分たちの未来について投票する権利があるとの判断を下した。
マス首相がカタルーニャの「主権」を求める草の根運動に先導される一方、ラホイ首相と同氏の率いる右派・国民党(PP)がその採用担当者の役割を果たす中で、両者が共通点を見つける見込みは薄そうだ。だが、双方とも努力すべきだ。これは政治的な解決策を必要とする政治的な問題だ。
分離主義がカタルーニャの市民生活の圧倒的な主流に変わったのは、憲法裁判所が2010年に当時野党だったPPの訴えを受け、カタルーニャ議会およびスペイン議会で可決され、カタルーニャの住民投票で批准された自治憲章の強化を無効にした後のことだということを覚えておくことが肝要だ。