(英エコノミスト誌 2014年10月4日号)
世界有数の孤島の悲惨な物語
太平洋に浮かぶナウル共和国の国土面積は21平方キロメートルで、バチカン市国、モナコ公国に次いで小さい。戦時中には日本軍が占領したこともある〔AFPBB News〕
ナウル共和国はかつては極めて裕福な国で、ブロードウエーのプロデューサー志望者が支援者を見つけることができなかった時に、太平洋に浮かぶこの小さな島国を頼りにしたほどだった。
ところが今、ナウル政府はお金を使い果たしてしまった。同国のデビッド・アデアン財務相は、近々、ナウルの1万人の住民を支えたり、同国の航空会社を運営したりすることが不可能になる恐れがあると語った。
ナウルで最も物議を醸す商業ベンチャーさえもが苦境に陥る可能性がある。オーストラリアへの亡命を求める1200人のボートピープルを収容している施設への電力供給が危うくなっているからだ。
ナウル政府が日本で発行した債券を巡る法廷闘争
ナウルはオーストラリアにある銀行口座へのアクセスを巡って法廷闘争を繰り広げている。
政府の銀行口座は、米国の資産運用会社との論争で凍結された。米ファンドのファイアーバードは、日本市場で上場され、後にナウル政府がデフォルト(債務不履行)したナウル国債を保有している。ファイアーバード側はナウル政府が負う債務額を3000万豪ドル(2600万米ドル)と試算している。
アデアン財務相はシドニーにあるニューサウスウェールズ州最高裁判所に対し、ナウル政府は島内にあるごくわずかな現金に頼らざるを得ない状況に置かれていると述べた。オーストラリア国内の口座の凍結が解除されない限り、「ナウル共和国は運営できなくなる」という。
判事は10月3日に判決を言い渡すことになっていた*1。
*1=英字紙の報道によると、ニューサウスウェールズ州最高裁は3日、オーストラリアのウエストパック銀行にあるナウル政府の口座には国家主権による免責特権があるとするナウル政府側の訴えを認め、口座の凍結解除を命じた。だが、ファイアーバードに1週間の上訴期間を与え、その間は口座は凍結されたままとなる