「こびとづかん」の出版社破産とミスリード

2014年10月6日注意報一覧メディア:, ジャンル:,

▼産経新聞の電子版などが「『こびとづかん』の長崎出版が自己破産」との見出しで長崎出版が破産手続開始決定を受けたと報じたが、「こびとづかん」シリーズは昨年から別会社が出版している。

【朝日】 2014/9/30電子版「『こびとづかん』の長崎出版が破産 負債17億円」
【産経】 2014/9/30電子版「『こびとづかん』の長崎出版が自己破産 売上げ急増で経営破綻」

《注意報1》2014/10/6 17:00


産経新聞は9月30日、ニュースサイトに「『こびとづかん』の長崎出版が自己破産」との見出しで、長崎出版が東京地方裁判所で破産手続開始決定を受けたと報じた。朝日新聞も電子版で同様の見出しで報じた。記事は児童書シリーズ「こびとづかん」の版元が破産したかのような印象を与えるが、同シリーズは昨年から別会社が出版している。

「こびとづかん」シリーズは昨年12月以降、ロクリン社が出版している。同社担当者によれば、長崎出版の同シリーズの出版契約は昨年5月末をもって終了したという。産経新聞は記事の中で、こうした事実に触れておらず、「こびとづかん」シリーズを現在出版している会社が破産したとの誤った印象を与える可能性が高い。産経の記事は、見出しに「売上げ急増で経営破綻」とも書かれているが、経営破綻の原因は「売上げ急増」ではなく、出版契約の終了による経営悪化だった可能性がある。

他方、朝日新聞の電子版記事も、見出しはミスリードのおそれが高いが、本文の末尾にはロクリン社が現在出版していることを記していた。

ロクリン社は30日、ホームページに「現在、『こびとづかん』シリーズは弊社が出版しており、弊社は今後も同シリーズの展開を続けていく予定です」とのコメントを発表。産経は電子版の続報で、ロクリン社のコメントを報じたか、10月1日にニュースサイトを正式にリニューアルした後も、当初の記事を訂正、削除せずに掲載。10月6日現在も、当初の記事が拡散している。

「こびとづかん」の長崎出版が自己破産 (産経ニュース 2014/9/30 12:44)

「産経ニュース」2014年9月30日掲載

「産経ニュース」2014年9月30日掲載

本日の一部報道について (株式会社ロクリン社 2014/9/30)

株式会社ロクリン社のホームページより

株式会社ロクリン社のホームページより

「こびとづかん」シリーズで知られた児童書出版 長崎出版株式会社など5社 破産手続き開始決定受ける (帝国データバンク 2014/9/30)

「こびとづかん」すでに出版はロクリン社に権利移動 「今後ともシリーズを展開」とアピール (産経ニュース 2014/9/30 17:58)