今週からスタートした「プチ鹿島のオヤジジャーナルどっと混む」。このタイトルで脱力したあなた、さっそく説明させていただきます。
私が最近提唱しているのは「オヤジジャーナルを楽しもう」です。
新聞の社説や政治欄、週刊誌、スポーツ紙、タブロイド紙など、世のオヤジが好んで読むものを「オヤジジャーナル」と名付け、そこで何が報じられているか野次馬する。
それら旧来のメディアを「マスゴミ」などと怒ったりする前に、まずウォッチしてみるのだ。そうすると、世の中の情報は「オヤジが発信してオヤジが受信してるだけでは?」とすら思えてくるのだ。意外とそれがマスコミの正体かもしれない、とも。
受信側のオヤジたちがいま何に興味を持っているかはもちろん、「これがウケそうだ」という発信側のオヤジの考えを知ることで、現代の日本の正体が見えてくると思うのだ。たぶん。
第一回目の今回は、オヤジの興味の丸かぶり物件が先週あったので報告したい。「なぜ、オヤジは乳首の色にこだわるのか問題」である。
まず「週刊アサヒ芸能」(10月2日特大号)に、《篠田麻里子「全裸写真集」ピンク乳輪攻防戦》という見出しが躍った。そして、同じ週の「週刊大衆」(10月6日号)には、《AKB48で最も美しいおっぱい!本誌が掴んだ小嶋陽菜「乳首の色」》という記事が載ったのだ。
期せずしてオヤジジャーナル2誌が篠田麻里子、小嶋陽菜の乳輪や乳首の色を問う報道となったのである。
さっそく記事の検証に入る。まず「アサヒ芸能」だ。「篠田麻里子がヌード写真集を発表するとの情報が飛び込んできた」と言い、「肝心のピンク乳輪を巡る交渉が最終局面を迎えている」「乳輪まで見せるかどうかの攻防戦が版元と事務所の間でなされている」と報じる。まったくすごい攻防戦である。
「写真集は年内に撮影が行われる」らしいのだが、しかしよく読むと「ピンク乳輪公開となれば、大ヒットは間違いない」と希望がならぶだけで、おまけに肝心の「ピンク乳輪」の根拠が書かれていない。記事を劇的にするために勝手に「乳輪=ピンク」と断定しているのだ。これは朝日新聞の「吉田調書」と同じニオイがするアサヒ芸能の「篠田調書」である。
では「週刊大衆」はどうか。こちらは小嶋陽菜は「外国人セレブに憧れているから普段からノーブラ」という関係者の言葉を紹介し、さらに「匿名を条件のスタイリスト」から、「500円玉大の乳輪は淡く美しいピンク色」という謎の証言にたどりつく。
そしてトドメに、9月10日発売の女性誌「an・an」で小嶋陽菜が「Gジャンを羽織ったラスト前の写真」が「左の乳輪が見えていると話題」と煽るのだ。
私はその真偽を確かめるべく恥を忍んで嫁に「an・an」を買ってきてもらった。そして問題の写真を女性の目からも確かめてもらったのだ。すると……。
「見えてないよ。」ということだった。しかしそんなことは構わずに「週刊大衆」は攻める。最新号の10月13日号では、《AKBこじはる超え情報入手!大島優子ピンク乳首》ときた。
オヤジジャーナルは、おじさんは、乳首の色は執拗にピンクにこだわる。これだけは今回よくわかった真実である。
著者プロフィール
お笑い芸人(オフィス北野所属)
プチ鹿島
時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)。