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19人は頭部に噴石、ほぼ即死 御嶽山、検視医師ら推測

噴石の直撃で穴の開いた山小屋の屋根=4日、長野・岐阜県境の御嶽山で、本社ヘリ「おおづる」から(内山田正夫撮影)

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 戦後最悪の火山災害となった長野、岐阜県境の御嶽(おんたけ)山(三、〇六七メートル)の噴火で、死亡が確認された五十一人のうち、少なくとも十九人は頭や首に噴石が当たり、致命傷を負っていたことが五日、検視を担当した医師や警察官への取材で分かった。火山の専門家は、火口から飛び出した噴石は時速約三百キロで地面に落下したと推測しており、頭などに直撃を受けた人の多くは即死状態だったとみられる。

 長野県警によると、五十一人のうち五十人の死因は噴石の直撃などによる「損傷死」で、一人は熱風を吸い込んだことによる気道熱傷だった。検視した医師らによると、五十人のうち十六人は頭に噴石が当たり、脳挫傷などを引き起こし、三人が首に致命傷を負っていた。それ以外の人は、体のあちこちに噴石が当たったことによる「多発性外傷」の所見がみられた。

 遺体を検視した木曽医師会会長の奥原佐(たすく)医師(65)は「筋肉が断裂するくらい深い傷ややけどを負った人もいた。熱を持った石がものすごいスピードで雨あられのように飛んできたのだと思う」と話した。

 また、御嶽山の山頂付近で捜索活動にあたった県警の隊員によると、噴石が当たった衝撃で顔が激しく損傷したり、腕が吹き飛ばされたりした遺体もあったという。別の警察官は、背中や後頭部に噴石が当たり深い傷を負った人を複数確認し、「噴火口に背を向けて、必死に逃げたのだろう」と推測する。

 東大地震研究所の金子隆之助教によると、火口周辺を上空から撮影した写真を基に、降り積もった火山灰の上に噴石が落ちてできた「クレーター」状の穴の分布を調べた結果、噴石は最長約一キロ先まで到達していた。火口から一キロ先まで到達した場合、噴石の初速は時速約三百六十キロで、標高差を考慮すると、人のこぶし大から頭の大きさぐらいの噴石が、時速約三百キロで地面に落下したという。

 金子助教は「新幹線の速度で飛んで来た噴石が当たれば、ヘルメットをかぶっていても厳しいだろう」と衝撃の大きさを語った。

◆シェルター整備、木曽町長が方針

 御嶽山の噴火で噴石により多数の犠牲者が出たことを受け、長野県木曽町の原久仁男町長は五日、「国、県の支援をいただきながら整備していく前提で考えていきたい」と述べ、退避用のシェルター(避難所)を設置していく考えを明らかにした。御嶽山には十数カ所の山小屋や避難小屋があり風雨はしのげるが、いずれも木造。噴火を想定したシェルターは設置されていない。

 会見で原町長は「山小屋の人たちと連携して登山道の整備や、ヘルメットを用意するなどの態勢はとってきた」と述べる一方で、シェルターについては「考えが及ばなかったのが現実」と悔やんだ。

◆土石流警戒、捜索できず

 御嶽山の噴火で、長野県警は五日、これまでに死亡した五十一人の身元を確認した。これで現時点での安否不明者は十二人となった。長野、岐阜両県警や自衛隊らでつくる救助隊は十二人を捜索する予定だったが、早朝に麓の同県王滝村で降雨が確認され、土石流など二次災害の恐れがあるとして活動できなかった。

 四日に死亡が確認された四人のうち、五日にかけて新たに身元が判明したのは愛知県春日井市の会社員河合芳夫さん(23)、岐阜市日置江の会社員武口求さん(46)、愛知県豊田市保見町の会社員高野英人さん(29)。

 気象庁によると、大型で強い台風18号は、御嶽山周辺には六日早朝から昼前にかけて最接近する見通し。二次災害の恐れがあるため、六日も捜索の実施は困難とみられる。ほとんどの不明者家族は、台風接近に伴い一時帰宅した。

 救助隊は五日、王滝口登山道からの地上部隊と、ヘリ部隊の約九百三十人態勢で捜索に臨む予定だった。

 長野県警によると、安否不明者の十二人は、複数の同伴登山者や家族の証言などを基に確認できた人数。一人暮らしの人が単独で入山した場合などは含まれておらず、今後、人数が変動する可能性がある。

 

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