「巨大な銀色のクジラ」と呼ばれているソウル市内の新観光スポット「東大門デザインプラザ(DDP)」前では、中国人観光客が歓声を上げながら記念撮影をしていた。その周りには集魚灯のように明るい白熱灯が一つ、また一つ。500メートルにわたり続くその明かりの下には、服や雑貨を売る屋台が二重三重に増えていく。23日夜、東大門ファッション特区の「夜市場」には最先端のDDPと「ノタ」たちが共存していた。ノタとは、東大門のファッションビルで観光名所の一つ「ドゥータ(斗山タワー)」にちなんで付けられた「露天商タワー(露天街)」の通称だ。
同日午後11時30分、ソウル中部警察署刑事課の車がサイレンを鳴らして露天商タワーに到着した。「靴屋が摘発されたって」。露天商たちは騒然とした。車が止まったのはトッポッキ(もちの唐辛子みそいため)屋台の前だった。中部警察署知能犯罪捜査チームのオ・ジェシク班長がその横にある台の下に隠されていた黒い袋を開けた。グッチと書かれた靴が6点、フェンディが1点、ルイ・ヴィトンが4点、プラダと書かれたバッグが5点出てきた。警察に同行してきたコピー商品鑑別専門家の韓国衣類産業協会キム・ソジュンさんはその場で「偽物」と判定した。ソウル市中区庁の職員がすぐさまコピー商品の上に押収の予告文を貼る。「これは商標法上の規定に違反しているため、今から30分経過した後も所有者が現れない場合は刑事訴訟法に基づき令状がなくても押収する。2014年9月23日23:25」。取り締まり班が30分コピー商品の持ち主を待っている間、近くの店の人々は遠巻きに取り締まり官を見詰めていた。黒い袋を発見したのは、露天の間を歩き回っていた私服警官だった。捜査課長一行は私服警官から無線連絡を受けて駆けつけた。「警察が来た」という話はすぐに広まった。「店じまいだ! 終わり!」と店を畳む露天商もいた。11日からこの日まで13日間続いた取り締まりの様子だ。
東大門ファッションタウンは南大門市場や明洞と共に韓国を代表するファッション街で、ソウル市が「世界的な創造産業の前進基地を作る」と宣言、DDP完成後はデザインとファッション業界の新たなメッカとして注目されている。ところが、ここは同時に「韓国コピー商品1番街」でもある。東大門・南大門・明洞を管轄するソウル市中区庁によると、今年9月までに摘発されたコピー商品件数で東大門は178件と圧倒的1位になった。南大門は56件、明洞は48件。コピー商品の流通を担うのが露天商だ。「二つの顔を持つ東大門」という汚名をそそごうと、区庁・警察・衣類産業協会が合同取り締まりを展開している。この日までに押収されたのはコピー商品だけで2427点、時価5億300万ウォン(約5200万円)相当に達する。