あのヒット番組、作ったのは私です。

プロデューサーが語る「徹子の部屋」の秘密

『徹子の部屋』プロデューサー 田原敦子氏に聞く

――その方針はこれからも変えない。

はい。「徹子の部屋」が好きな世代は、テロップがついている番組=バラエティという見方をしている人が多く、黒柳さん自身もそうです。ただ、テロップがつくと、生っぽくなくなります。黒柳さんは、“疑似生”のようなことをすごく大事にしています。テロップだけでなく、映像をもっと使ったらとか、音楽をもっと入れたらとかいう意見も周囲にはありました。ですが、長寿番組には「おおいなるマンネリ」も必要だと私は思うのです。 

私は「徹子の部屋」の前に「世界の車窓から」のプロデューサーを経験しているので、変えないことによる「お客様のおなじみ感」の大切さを学んだこともあり、あえて変えずにいきたいと思っています。

ボビー・オロゴンさんとの「ある事件」

――黒柳さんを近くで見ていて、すごいところはどこですか。

毎回毎回、全力投球なところですね。黒柳さんは「初心忘れるべからず」と言う言葉が好きで、まさにそのとおりなんです。

たとえば、ボビー・オロゴンさんが初めてゲストできたときに、生い立ちや日本に来た理由を全部ギャグで返して、揚げ句に、「ババア、いくつなんだよ」と言ってしまったことがありました。

そうしたら、黒柳さんは本番中にもかかわらず、ものすごい怒って、「この番組でほかのバラエティと同じように振る舞ったら、あなたが損しますよ。もっとまじめに自分のことを語りなさい」と諭したんです。本当ならこれはカットするシーン。でも、黒柳さんは「ボビーさんさえよければ、全部使ってください。そのほうが、視聴者にも理解してもらえて、ボビーさんのためにもなる」と言って、そのまま流したら、その年の最高視聴率になりました。

そのときは「これをそのまま放送すれば視聴率が取れる」といった計算があったわけではありません。ボビーさんとのやり取りを見て、38年間、1回1回が直球勝負でやっている徹子さんの神髄を見た気がしました。「さすがだな」と。だって、普通に話しているだけで、番組は成立するわけですから。

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