働きたい女性が希望に沿って個性や能力を発揮できる社会にしていくためには、何が課題で、どんな対策が必要か。

 厚生労働省の審議会が、新たな法律を見すえて報告書をまとめた。大企業と中小企業で義務づけの度合いを変えつつ、こんな方針を打ち出した。

 まず、自社の現状を認識するために①採用者に占める女性の割合②勤続年数の男女差③労働時間④管理職での女性の比率、の4種類の数値を「必須項目」として把握する。

 企業は行動計画をつくり、目標や取り組み内容、実施時期などを盛り込む。数値目標については各社の実情に配慮する。

 求職者が会社を選ぶ際に有益な「現状に関する情報」も公開する。ただし、どんな数値やデータにするのか議論を続け、4種の数値を含むリストを別途、つくる。各社がその中から選んで公表する仕組みにする。

 審議会は、大学教授のほか連合、経団連など労使の団体の代表らが委員を務める。焦点となったのは「数値」の扱いだ。

 経団連などは「業種ごとに事情が異なるのに、数値はとかく独り歩きする」と主張した。「従業員に関する方針は経営戦略にかかわり、各社の判断に任せるべきだ」との考えからだ。

 審議会は、現状に関する情報公開でも企業の裁量を認める立場だ。「公開の範囲によって姿勢がわかる」というが、経団連の主張に沿う内容である。

 確かに、様々な業界をひとくくりにはできないし、政府が業界ごとに目標数値を決めて義務づけるのも無理があろう。

 しかし、企業の自主性を尊重してきた結果、いまだに「女性が活躍できる社会」を実現できていないことを考えてほしい。

 「2020年に指導的な地位の人の3割を女性に」との目標を掲げる政府は、各社が管理職での女性比率について目標を作り、公表するよう義務づけたいようだ。しかし、4種の数値を手始めに現状を明らかにすることが出発点ではないか。

 建設や運輸などの業界では、人手不足もあって女性を増やそうとしている。職場環境を改善する努力は当然だが、「本気度」を伝えるためにも、現状を正直に語ってはどうか。

 女性に多い非正社員をどう後押しするか。仕事と家庭の両立支援策を含め、働きたいのに働けない女性をどう支えていくのか。報告書が十分に踏み込めなかった課題も山積している。

 長く、多様な取り組みになる。議論を深めるためにも、現状に関するデータは不可欠だ。