変わり始めた北朝鮮 拉致問題の進展に期待(辺 真一)
北朝鮮は金正恩新体制になって、経済に大きく舵を切っている。外交も経済重視の実利外交に徹している。そのことは、No.2の金永南最高人民会議常任委員長がラオス、ベトナム訪問(8月5-10日)で両国に食糧支援と経済協力を要請したこと、金正恩第一書記の後見人である張成沢党行政部長(国防副委員長)が訪中(8月13-17日)し、羅先経済貿易地帯と黄金坪・威化島経済地帯の共同開発への協力を求めたことからも自明である。
金正恩体制としては、今回の協議を進展させ、4年前の自民党福田政権下で交わした日朝合意を復活させる考えのようだ。これも過去の歩みを見れば、容易に想像付く。
日朝は4年前の交渉では、6月11日に北京で斎木隆昭外務省アジア太平洋州局長と宋日昊国交正常化交渉担当大使が協議をして、北朝鮮側が安否不明者の再調査と「よど号問題」の解決に協力することを表明し、これに対して日本側は人的往来の規制解除、チャーター便の規制解除、人道的例外として民間による人道的支援物資輸送を目的とする北朝鮮国籍船舶の入港許可など一部制裁解除を約束した。そして2か月後の8月12日に瀋陽で再度協議を行い、上記の合意を正式に交わしている。
日本はテポドン発射や核実験で科せられた国連の制裁は解除できないが、拉致問題で独自に科している上記の制裁については、北朝鮮が「合意」を履行すれば、制裁緩和は可能だ。そうなれば、チャーター便や万景峰号による朝鮮総連系在日朝鮮人や日本人の友好団体による大量の援助物資が期待できる。拉致問題で誠意を示せば、朝鮮学校無償化問題や朝鮮総連の本部の立ち退き問題への日本の「善処」もあてにできる。
但し、北朝鮮にとっての唯一の不安は、野田総理に問責決議案が出されるほど日本の政局が不透明なことである。退陣するかもしれない野田政権を相手に、唯一の対日カードである拉致問題を切るべきか、それとも次の政権を相手に交渉するのが得策か、判断に迷っているようでもある。というのも、過去に2度苦い経験をしているからだ。
安倍政権下の2007年にモンゴルでの日朝作業部会(9月4-6日)後、宋日昊大使は「いままでで、最も雰囲気が良かった」と、今後の協議への期待を表明したところ、一週間もしない9月12日に安部総理が退陣を表明している。
北朝鮮が「遅くとも秋まで安否不明者の調査を終え、日本に通告する」と約束した福田政権下の「8月12日合意」も、北朝鮮が調査に入る寸前の9月1日に福田総理が突如退陣を表明している。
北朝鮮が「二度あることは三度ある」との懸念を抱いていれば、今回は戦没者の遺骨問題だけに留め、拉致問題は次の政権まで持越しとなるが、それもこれも、今回の予備交渉でわかるだろう。
【ブログ「ぴょんの秘話」より】