インタビュー ここから「チャレンジが人生を彩る 漫画家 楳図かずお」 2014.09.23

(叫び声)
「恐怖漫画」といえばこの方。
漫画家楳図かずおさん78歳
およそ20年ぶりの新作は「ホラー映画」
(叫び声)母さん!しっかり!お母さん!
恐怖を追求してきた楳図さんが選んだテーマは「母親」でした
楳図さんが目指す「恐怖」とは何か。
なぜ母親を通して描いたのか。
楳図さんの恐怖の原点「ここから」に迫ります

奈良県中西部にある五條市。
楳図さんが小学生から27歳で上京するまで過ごしました。
住んでいた両親が亡くなった今でも時々帰ってくるという楳図さんのふるさとです
ここですよ。
そう!これびっくりちょっとびっくりガーン。
楳図さんの代表作の一つまことちゃんがほこらの中にいてこれ「まことちゃん地蔵」。
あっごきげんよう。
やっぱり声かけられますね。
グワシ!「グワシ」のポーズもちゃんとね。
そうなんですはい。
まことちゃん地蔵を造ったのは楳図さんの幼なじみ。
漫画作りを手伝ってくれていた井上さんです
僕こっちで漫画描いてたでしょ。
で大阪の出版社はいいんだけど東京の雑誌も描いていてそれで締め切りが来るじゃないですか。
そしたら1人でやってるもんだから駅で母親がスタンバイしていてそれで井上さんが僕の家から原稿つかんでそのころ八百屋やっていてバイクにしょっちゅう乗ってたのでバイクに乗って駅までバババーッと持っていって母親にバッと渡して母親がそれ受け取ってそれで大阪に持っていって大阪の航空便で東京に送ってとかって。
いやあお世話になりました。
ありがとうございます。
いや困って!それは一生懸命やってるんだけど締め切りまでいってしまうのよそれは。
通っていた高校の跡地の目の前に楳図さんが住んでいた家が今も残っています
ごめんください楳図です。
あっこんにちは。
どうもこんにちは!突然お邪魔しましてすいません。
前住んでたおうち懐かしいもんだから。
あっ!本棚昔のまんま。
ここで漫画描いてらっしゃった?ええここで描いてました。
あのねここに座り机置いて。
どの辺りにありました?えっと僕ここらへんに置いて…ここね障子だったんですよ。
それでここにこう座って漫画描いてる。
大きくなってからこんなふうな本棚作るとかっこいいかなと思ってね大工さんに作ってもらったんです。
作ってもらったんですか?この本棚は。
自分で言うのも何ですけどね最初からやっぱりおうちって楽しくこんなふうに作りたいなという要素は当時からあったと思う。
楳図さんは昭和11年生まれ。
父親が学校の先生だったため小さい頃奈良の山間部を転々としていました。
楳図さんが絵を描くようになったきっかけを作ったのは母・市恵さんでした
そもそも漫画よりも前ですね絵を描く事になったのはお母様の影響ですか?そうですね。
母親がそう言っていました。
私がお前がまだ歩けなくて歩行器の中で7か月ぐらいの頃こんな子に紙と鉛筆を持たせて何か描かせると描くかな。
ちょっと実験してみようというまあ実験だったらしいですね。
で丸ってこう描くんだよとか言って。
丸を?はい。
そしたら描いたもんだからちょっとびっくりしてそれでそれから丸に丸足して花だよとか言ってちょっとずつ複雑な事を教えていったというふうに母親は言ってるんですけど僕は覚えてないですけどもはい。
それを大きくなった楳図さんにちゃんとお母様がお話しになってるって事はよほどうれしかったんでしょうねその時の事が。
そうですね。
きっとねそれが母親にとったらこれってやっぱりこれ成果があるなという感じで実感が…この子って絵が描けるのかなというふうに思ったきっかけかなと思うんですけれどもね。
やはりお母様の影響というのは非常に大きいという事ですね。
大きいですよね。
だけどそのころまだ漫画という事は全然意識してませんでしたし漫画の本も見てる事は見てたと思うんですけど昔の漫画なんですけどはい。
それが漫画に興味いくようになったのはどうしてだったんですか?えっとそれはあのね小学4年生になった瞬間に漫画もう読みたくて読みたくてという感じで。
何かきっかけってあるんですか?読みたくなったきっかけ。
きっかけは特にないんですけど。
ある日突然ですか?ある日突然4年生になった瞬間に何か漫画読みたいってお話知りたいってそういう感じなんです。
話を知りたい?話知りたいですね多分ね。
要するにストーリーを面白いストーリーを聞きたいとか見たいとかっていうそういう感じ知りたいって感じですよね。
今まで絵は描いていたけれどもそこに物語を加えたかったという事なんですか?そうですね。
物語の面白さですよね。
「こんな出来事があるんだえ〜!」という感じの驚きってあるじゃないですか。
それがちょうど小学4年生の時に突然ほんとに突然そういう状態になって。
で僕はここの五條市の貸本屋が3軒あったんですけど片っぱしから借りまくっていました。
でそれで手治虫「新宝島」という漫画でねそれ買って読んだ時に「うわ〜面白い」って。
で僕もこんなふうな漫画描けるプロになりたいって。
プロになりたいと思った瞬間ですよね。
漫画描こうと思うのは小学4年生になった瞬間にね自然にそういうふうに発生してしまったんですけどプロになろうと思ったのはその1冊読んだ時ですね。
それが年齢で言うと…。
小学5年生ぐらい。
それで5年生でもう夢中になって手さんの漫画読みまくってそれで絶対中学になったらデビューしようとかって思っていました。
14歳で描いた「森の兄妹」。
高校2年生の作品「別世界」。
この2冊が高校3年生の時に出版されデビューを果たします。
それぞれのシーンにはなんと効果音の楽譜が書き込まれていました
(効果音)
(効果音)
アイデアを詰め込んだ作品も出版社からは「商業的ではない」と言われます。
「『売れる漫画』って何なんだ」。
楳図さんは苦しみます
食べていけるかいけないのか誰も分からない世界だったわけじゃないですか。
それが更に商業的でないといったら更に一段難しいところにいっちゃうわけなので。
そこからどうやってはね返していったんですか?そっからねだから今売れてるの誰だろうとかって思うわけですよ。
そしたらやっぱり手治虫なんですよ。
他にもいっぱい売れてる人がいてそして今思えばですけど当時いいとこ取り結構やってましたしね。
あの人のあのところはこの人はここはこれという感じで寄せ集めで白土三平さんの迫力も取り入れて横山光輝さんのちょっとクールなとこを入れてすごい意識するところがいっぱいありすぎちゃって最初よりも絵が更に下手くそになっちゃいました。
嫌ですね。
そのころの絵が一番嫌だと思う。
どっかやっぱり…何だろうまねするんだったらしっかり端から端までまねすればいいんだけどそこまではいってなくてね何かすごい中途半端でね。
やっぱりそのころの絵柄が嫌ですね。
初期に楳図さんが描いていたのは少女漫画やアクション時代物。
毎月1〜2本のハイペースで漫画を描き続ける事で楳図さんは自分らしさを探し続けました
その時どういう心境だったんですか?いろんなものをとにかく描くと。
とりあえずねプロでやっていこうとすると売れなきゃいけない。
それでしかも自分自身独特のものじゃないといけないって考えた時に何が一番インパクトあるかなあって思ったら手治虫がやってない路線を行くべきだとそういうふうに思ってそれで「恐怖」っていうところにまあ気が付いたんですけどもね。
恐怖を軸に漫画を描き始めた楳図さん。
身近な人間が豹変する恐怖を迫力ある絵で描きその後恐怖漫画の第一人者となります
その楳図さんの恐怖の原点。
3歳から6歳まで過ごした奈良県曽爾村です
たくさんの物語や伝説が残る山々に囲まれた静かな場所です
いいところですよねえ。
いいところですよね〜。
恐怖の原点というのはまさにここだった?まあ振り返るとここですねえ。
プロになって「怖い」って何だろうと思った時に父親が寝物語枕元に寝ながら電気消してそれでいろんな話してくれるんです。
その伝説とか昔話とかねそういう話が多いんですけどこの土地にはねお亀池というのがあってという。
ここですよ。
話聞かせてくれるんですよ。
どんな話なんですか?それがですね村に独身の男性がいてそれできれいなお嫁さんもらうんですね。
それで赤ん坊も生まれて幸せに暮らしていたんですがふと夫が気が付くと朝になると廊下にぬれた足跡がペタペタペタとついていて「これは何だろう?」と思ってそれで次の夜寝ないで起きているとその奥さんがどっかに出かけていっちゃうんですよ。
妻はどこへ行ったのか。
なぜ廊下にぬれた足跡があったのか。
夫は暗い山道を子供を背負い妻の後を追いかけます。
するとたどりついたのは池だったのです
当時昔の事そんな明かりも何もなくていっぱい木がはえててうっそうとした山の中ですよね。
怖いですよね。
それからまた「お亀お亀」って呼ぶと今度はそのお亀がここ水いっぱいあって水がズゥワッと波立ってそれで大蛇になったお亀がぬわっと現れて追っかけてくるんですね。
へびになったお亀が?へびになったお亀が。
それで必死で坂を赤ん坊を抱いて逃げるんですが。
だからここに来る坂の途中全部足してストーリーなんですよね。
ここだけじゃなくて。
ここだけじゃなくて。
だから子供の頃ね父親の話を聞きながらねもう夢中になっていろいろ想像してその話の中にすっかり入り込んで怖かったです。
人がへびになるのは楳図さんの恐怖漫画のモチーフの一つ。
しかし楳図さんはその恐怖を際立たせるのはふだんの生活だと気付きました
ほんとに怖いものだけを描くんではなくてその周りにあるものも含めてやっぱり描きたかったというのがあるんですか?そうですねはい。
そうじゃないと怖いのっていうだけっていったら本当にこけ脅かしで人間性とかそこに至るまでのストーリー全くないって事はないかもしれないけど変な顔してれば変な顔してるようになったストーリーってきっとあるはずだと思うから具体的にやっぱりその人物像についてのいろんな出来事をこう織り込んどいた方がもっと真実感が出てほんとかなほんとだねって思っちゃうんじゃないですか?ただへびが出てくるだけではなくて…。
だけではなくて。
ここにはいろんな恐怖の要素が含まれている。
そうですね。
決定的なところがへびなんですけどもね。
だからいろんな要素があって出来てるなあと思うとわあこれってやっぱりホラーのもとだって僕思いました。
自分の家族や親しい友人が突然非日常の存在に変わる恐怖を楳図さんは数々の作品で描き続けました
今お話伺う前までは恐怖という感覚をね何で味わう必要があるんだろうって。
恐怖なんてなければもっと楽に過ごせるんじゃないかと思ってたんですけど。
いや恐怖の感覚なくて楽に過ごしてた日には怖い事が実際起きた時にどうします?そういう時の予防のためにみんな恐怖やってるわけなので怖いものを怖いと思わない事ほど怖い事は絶対ないと思う。
怖いっていう気持ちがあるからそこ避けようとかどうやったらそこから逃れようかとかっていう現実的なところに結び付けて全然怖い事考えてなくても起きちゃう事。
例えば戦争が一番怖いかもしれないけどそういう時にそういう出来事は因果関係で襲ってこないから全然関係ない子供とか心正しい清らかな人とかを一列に襲ってくるでしょ。
子供だってやっぱり「危ないんだよ」ぐらいは現実で教えなくてもお話の中で知っとく必要が絶対あるので。
怖いのは現実には嫌だけどだけどそういう事があるからやっぱりお手本として「漫画読んだりして慣れましょう」はやらないと単に「怖いから嫌い」というような言い方はちょっと何か生活の中でバランス悪いですよね。
よ〜いスタート!
今週末に発表される楳図さんの新作。
それは漫画ではなく「映画」です。
自分の生い立ちを脚色したホラー。
楳図さん役は歌舞伎俳優の片岡愛之助さんが演じています
自分の母親のルーツを調べるうちに不思議な現象に見舞われ非日常の世界が随所に現れます
恐怖の極みを描くため78歳で映画監督に初挑戦しました
70代後半というそのお年で初めての映画監督の挑戦でしたね。
初めての挑戦って何やってもやっぱり生き生きとさせてくれるものっていうのはありますよね。
漫画は紙の上の想像だけの世界ですけどもねこの現実性というのが大きく違いますよね。
やはり止まっているものと動いているものの違いという…。
全くそこの見える世界が違うのでそこで「初めての私」という感じで新たに生きてるって感じですよね。

(皿が割れる音)あらあら。
あぁいい。
大丈夫。
お皿が割れて落ちるってシーンがあるんです。
これは何かよくない事の暗示なんだけど「割れて落ちる」か「落ちて割れるか」で意味合いが全く違うじゃないですか。
でしょう?結果は同じでもその意味合いが違う。
ええ意味合いが違う。
落ちて割れてたら引力で落ちて割れたわけだからホラーじゃないんですよね。
「割れた」っていうのは落ちないのに割れた。
この不思議さですよね。
ふふふ決まってるじゃないか。
お前のところだよ。
楳図さんが恐怖のテーマに選んだのは「母親」。
絶対的な味方であるはずの存在が豹変する姿を描きます
その恐怖をこれまでずっと追求してきた漫画で楳図さんがテーマに選んだのがマザー母親。
母親ですね。
やっぱりねこれ普遍性と非現実性の事にまたなりますけどその現実っていうところに一番近い存在が母お母さんマザーという事だと思うんです。
どの方も見ても「あっお母さんだ」。
「うちのお母さんは…」というふうに自分のお母さんと重ね合わせて考えた時に演じてる恐怖のお話が人それぞれ違うストーリーになってリアリティーを持ってくる。
ひたすら怖いというところに向かって進んでいく娯楽作品。
読んで面白かったと思う方向に向けて作ってますんでまずはそういうふうに見て頂きながらホラーの価値観みたいなものをうんと高いところに持っていきたいんですよね。
漫画家として子供の頃から常に新たなものを求め続けてきた楳図さん。
一つの挑戦を終えた「ここから」何を見つめるのでしょうか?
映画監督が今終わった。
終わった。
挑戦には変わらないけれども何で挑戦かはまだ決まってないって事ですか?何で挑戦というのはそれは考えてないですね。
それちょっと僕にも分かりま…ですけどね時代の不思議さってね時代を普通にやっていると時代の方から提供してくれるという事ありますのでそれをこう待ってるというのも手ですよね。
じたばたいろんな事やって疲れるよりはその時期が来た時に悪い事もあるけどもきっといい事のきっかけも時代が運んでくれるよって思ってるとプラスの力みたいなのがあふれてくるなあと思って僕もこのしましまってそのパワーの元だと思って着てるんですけどエネルギーだと思って着てるんですけども。
これまでもう幼い時から絵に出会って漫画に出会ってずっと描き続けてきてもういろんなものにこう挑戦したいんですか?挑戦したいんでしょうかね。
僕ね共通点はね創造性というところはみんな共通していて自分で作ってそれでそれぞれやっているというところは共通してる。
やっぱりものを作るってところが好きなんでしょうね。
「こんなんが出来たよ見て〜!」という感じで。
その気持ちは子供の時も今も同じ?今も同じでだからそれって常に新しい事やっていないといけませんので毎回その挑戦ですよね。
今回「マザー」終わったら次はっていったら次挑戦しないといけないので次もやっぱりインパクトがあってホラーっていうところは外さないと思うんだけどもうちょっとまた視点も変えてとかっていろいろ考えたらこうやってもうここからまた新たな出発なのでこれこの仕事やっているっていったら毎回新たな出発点に立たされるっていう事ですね。
これって生きる力ですよね。
(拍手)ありがとうございます。
(拍手)2014/09/23(火) 06:30〜06:53
NHK総合1・神戸
インタビュー ここから「チャレンジが人生を彩る 漫画家 楳図かずお」[字]

“恐怖漫画”で知られる漫画家・楳図かずおさん。自身の母親をテーマにしたホラー映画「マザー」で監督に初挑戦。楳図さんの恐怖への原点を、ふるさと奈良で伺います。

詳細情報
番組内容
赤と白のしましまのシャツが鮮やかな漫画家・楳図かずおさん。“恐怖漫画”の第一人者として知られる楳図さんの最新作は漫画ではなく、今月公開される“映画”「マザー」です。自身の母親をテーマにしたホラーもので、77歳にして初めて監督に挑みました。楳図さんの原点は、ふるさと奈良。母親は幼いころから絵を描かせ、父親は枕元で地元の怖い伝説を聞かせました。“恐怖”を追求し、挑戦を続ける楳図さんの原動力に迫ります。
出演者
【出演】漫画家…楳図かずお,【きき手】宮