穏やかな海ですね。
潮風が実に気持ちいいです。
案内人の八嶋智人です。
「にっぽん紀行」本日の舞台は大分県の保戸島です。
豊かな漁場として知られる豊後水道に浮かぶ小さな島です。
さて皆さんはこの夏お盆をどのように過ごされましたか?お盆は亡くなった人たちがあの世から家族のもとに帰り一緒に過ごす日本人が昔から大切にしてきた行事です。
実はこの保戸島ではお盆に行われる独特の風習があるんです。
それは初盆に遺影を背負って踊るというものなんです。
亡くなった人を思い供養する。
長い間この島で受け継がれてきた弔いの姿を見つめます。
こういう感じ?こういう感じ?ほらええな。
背中に負われておとう。
これはどげなっとるかのう。
これが脚か。
大分県津久見市保戸島。
人口900余り。
島民の3割が漁業に携わる漁師の島です。
よっしゃ!あ〜!あ〜釣れた!うわっエイが釣れた!エイが釣れた!うわっ!保戸島はマグロの遠洋漁業の基地として栄えてきました。
今でも20隻が遠くは5,000km離れた太平洋に向かいます。
マグロ漁が盛んになった大正時代からのお盆の風習。
それがこの一年に亡くなった人の遺影を背負って踊る初盆供養です。
漁のさなかに命を落とす人が多かった時代島の人たち全員で送り出そうというのが始まりだといわれています。
(汽笛)定期船で届けられる食料品を待つ女性がいました。
今年4月夫を亡くした…長く病気を患っていた夫に代わり食料品の配達で生計を立ててきました。
隆代さんの夫…マグロ船の漁師でしたが27歳の時心臓の病で倒れます。
隆代さんは2人の娘を育てながら看病を続けてきました。
保戸島の墓は亡くなった人がいつでも海を見渡せるよう島で最も見晴らしのよい高台にあります。
隆代さんは毎日夫に会いに通っています。
帰りましょう。
はいすみません。
(笑い声)2人の娘も結婚して島を出ていった隆代さん。
支えているのは親友の竹尾幸子さんです。
もうガラガラ喉が…。
唾も飲みてえ。
この水飲みてえ。
隆代さんとは小学校中学校の同級生。
何でも話せる間柄です。
独り暮らしになった隆代さんを励まそうと毎日のように家を訪ね一緒にごはんを食べたり話を聞いてあげたりしました。
ほら不二男よ。
久しぶりに来たよ久しぶりに。
チ〜ン。
病気でふさぎがちな不二男さんと隆代さん夫婦を旅行に連れてってくれたのも幸子さんでした。
遺影を背負うのは喪主ではありません。
亡くなった人が一番喜ぶ人を喪主が選びお願いするのが島の習いです。
「そうそう」やら言うて分からんね。
うんそうそう。
夫婦二人を支えてくれた親友の幸子さんに遺影を背負ってほしい。
隆代さんはそう考えていました。
やっぱいろいろ元気づけられるし。
やっぱ仲の良かった人から背負ってもらいたい。
突然の死を受け止めきれない人もいます。
かつてはマグロ船の船長。
今は一本釣りの漁師です。
船の名前は康喜丸。
2人の息子の頭文字を1文字ずつ付けました。
その次男を突然失いました。
北九州の港で貨物船の乗組員として働いていた川喜代隆さん。
去年9月作業中に船の上で足を滑らせ転落。
亡くなりました。
喜代隆さんは中学校を卒業後マグロ船の漁師になりました。
以来船の仕事を続け家にいる事はほとんどありませんでした。
海の男同士たとえ顔を合わせても会話は途切れがちでした。
え〜?誰に遺影を背負ってもらったら息子は喜ぶか。
辰彦さんは見当もつきません。
長男も中学卒業後すぐにマグロ船に乗り込みました。
弟とは疎遠になったままです。
辰彦さんに代わって息子たちを育てた妻は31年前に亡くなりました。
一年に2〜3回しか帰ってこんぞあれは。
初盆供養まで1週間を切っても遺影を背負う人は見つかりませんでした。
(汽笛)保戸島に活気が戻ってきました。
島を出ていた人たちがお盆に帰省してきたのです。
港で迎えるのはこの一年に亡くなった18人の遺影。
初盆に弔う人を島のみんなに知らせます。
遺影を見るこの男性。
貨物船の事故で亡くなった喜代隆さんの同級生…今は島を離れ飲食店を営んでいます。
(聞き手)帰られるのいつぶりですか?ごめんください。
亡くなった喜代隆さんは島を出てから居場所を転々としていました。
遺品もほとんどありません。
大田さんは辰彦さんに渡したいものがありました。
喜代隆さんのジャンバー。
亡くなる前この服を着て大田さんの店によく遊びに来ていました。
辰彦さんの中に息子の姿が少しずつよみがえってきました。
息子はどういう暮らしをしていたのか。
友達とどんなつきあいをしていたのか。
辰彦さんは初めて知りました。
夫を亡くした小西隆代さん。
娘の家族が帰ってきました。
(2人)お母さん。
(隆代)はい?ロウソクはこっち?そこそこそこ。
2人の娘婿は共に島の外の人。
お盆に訪れるのは初めてです。
隆代さんを支える親友の…自ら手伝いにやって来ました。
夫の遺影を背負ってほしいと隆代さんから頼まれている幸子さん。
心に秘めた考えがありました。
それは2人の婿に私の代わりに遺影を背負ってほしいと伝える事でした。
幸子さんは亡くなった不二男さんから聞いていました。
町の病院に入院している時2人の婿がお見舞いに来るのを何より楽しみにしていた事。
「よい婿をもらってよかった」。
不二男さんが実の息子のように2人を頼りにしていた事。
島の風習を知らない婿に遺影を背負ってもらうのはと遠慮していた隆代さん。
夜8時初盆供養の始まりです。
18人の遺影。
亡き人の思いを背負って踊り続けます。
不二男さんの…マグロ漁の苦労話や大好きだった野球の話。
男同士腹を割って話せる仲でした。
配達で島を離れられない隆代さんの代わりに毎日のように病院に通っていた…「家族としてお母さんを支えてほしい」。
お父さんの最期の思いを受け継ぎました。
事故で亡くなった川喜代隆さんの同級生…お父さんから遺影を託されました。
踊りを見届けると辰彦さんは会場から離れていきました。
悲しみを共に背負いそしてあの世へ送り出す。
小さな島のお盆が終わりました。
2014/09/23(火) 05:15〜05:40
NHK総合1・神戸
にっぽん紀行「“遺影”を背負って〜大分 保戸島〜」[字][再]
大分県津久見市の島でお盆に行われる独特の風習。それが亡くなった人の遺影を背負って踊る初盆供養。なぜ島の人たちは遺影を背負うのか。受け継がれる弔いの姿を描く。
詳細情報
番組内容
豊後水道に浮かぶ大分県津久見市「保戸島」。マグロ漁の基地として栄え、いまも人口の3割が漁業にたずさわる、海と生きてきた島である。この島に大正時代から伝わるお盆の風習が、亡くなった人の遺影を背負い踊る「初盆供養」と呼ばれる盆踊り。子供、孫、親友など、故人が最も背負ってほしい人を喪主が選び、遺影を託す。36年連れ添った夫を亡くした妻。息子を不慮の事故で失った父。初盆を迎える島の人たちの日々を見つめる。
出演者
【出演】八嶋智人
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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