(東山秀作)国代国代。
(国代義明)はい。
警部今晩部長とコレだって。
コレですか?当然!来月ほら警視の昇進選考。
あれがあるだろ。
だからもう今目一杯コレしとかないと。
(神谷)お前達何やってるんだ?はっ!いえいえ…。
(電話)電話!はいもしもし。
捜一七係。
はい。
少々お待ちください。
警部警部。
須磨さんて方から…。
須磨?もしもし。
はっ須磨か懐かしいなぁ。
えっ今東京に来てるのか?
(須磨公彦)神谷…これから会えないかな?折り入って話したい事があるんだ。
悪いけど今夜はちょっと…。
先約があって断れないんだよ。
あっそうだ。
今度の同窓会久しぶりに出ようと思ってるんだ。
須磨も出るんだろ?話ならその時に聞くよ。
そうかわかった。
じゃあな…。
警部。
須磨さんって誰なんです?高校時代の同級生だよ。
会いたいのはやまやまだがいきなり電話をしてきてすぐに会おうと言われてもなぁ。
(篠沢)神谷。
あっ部長。
ただいま。
じゃあお先。
お疲れさまです。
お疲れさまです。
自分なら友達と会うほうを選びますけどね。
ああやって友達なくしていくんでしょうねぇ。
神谷に友達いねぇもん。
ほお…。
あっ1人だけ全然ウマが合わないのに友達だっていう人いるわ。
(夜明日出夫)ありがとうございました。
不景気だなぁ。
何かびっくりするような長距離の客いねぇかな。
(ノック)はい。
(須磨葉子)山口までお願いします。
はい?下関まで。
冗談言っちゃダメだよ。
そんなもん…。
冗談じゃありません。
下関行くんだったら新幹線乗って行きなさい。
タクシーだったらいくらかかると思ってんの?
(葉子)お金持ってないんです。
お金は家に着いてから払いますから。
君いくつ?14です。
まさかさ家出してきたんじゃないよね?それでお金なくなって山口まで帰れない。
違う?何でいないのー!交番の役なんないじゃん。
もういいです。
すみませんでした。
ちょっとちょっと…。
お金を持ってないって言ってたけどごはんは?昨日から何も食べてません。
そういう訳で今お宅のお嬢さんと一緒にいるんですけど。
(須磨幸恵)「ありがとうございます」「心配してたんです。
あの…でしたら申し訳ないんですけど娘の言うとおりタクシーでこちらまで送っていただけないでしょうか」はい?「目を離したらまたいなくなるかもしれませんし料金は必ずお支払いします。
人助けだと思ってお願いします」あっいやぁ…ああいや…。
(山下)本当ですか夜明さん。
すごいお客様拾いましたね。
下関!ああ下関すごいなぁ!営業所のロング記録ですよ。
どうぞ送ってあげてください。
帰りは明日で構いませんから。
(山下)「いやぁ夜明さんはすごいなぁ」バァーカ!あら…。
山口までって何時間ぐらいかかるんだろうなぁ。
12時間…?もしもしあゆみ?明日の事なんだけどさ…。
(西村あゆみ)これから下関に?だって約束したじゃない。
明日私の誕生日!久しぶりにお祝いしてやるって。
ふぐご馳走してくれるって言ったじゃん。
お父さん1人で下関でふぐ食べるんじゃないでしょうね。
いや違うって!ホントに仕事だって。
それに帰るにしても明日遅くなっちゃうと思うから…。
ごめん。
じゃあプレゼントで許してあげる。
あのね欲しいバッグがあるの。
ハンドバッグ。
バッグ?値段はふぐ2匹分ぐらい。
もしもしお父さん?ポテトチップクッキーポップコーン。
さっきラーメン食ったのに…。
はいこれ!さっき電話してた人は?ああ娘。
明日ね会う予定になってたの。
ごめんなさい。
いいよ。
それより君名前何て言うの?須磨葉子。
何でさ家出なんかしたの?私じゃないよ。
いなくなったのはお父さんなの。
ええっ!?お父さん先月家を出て行ったまま行方がわからなくて。
じゃあ何お父さんを捜すために東京に出て来たの?おじさん。
お父さんは家族を残して死んだりしないよね?どんな事情があるか知らないけど娘残してお父さん死んだりしないよ。
この少女との出会いが事件の始まりだった
でお父さんどこにいるか何の手掛かりもなしに出て来ちゃったの?無茶苦茶だねぇ。
だって東京がこんなに大きな街だなんて思わなかったんだもん。
訊きにくいけどさ訊いちゃうよ。
お父さんどうして…。
あらっ?長府長府…。
(幸恵)バカッ!葉子!この1週間お母さんがどれだけ心配したと思ってるの!ごめんなさい…。
無理言って申し訳ありませんでした。
助かりました。
本当にありがとうございました。
須磨の会社が倒産した?
(持丸康雄)須磨は同窓会どころじゃないんだよ。
3億の不渡り出して営業権を放棄して行方くらましたって話だ。
須磨が?
(山田清美)知らなかったの?
(清美)神谷君須磨君と仲がよかったじゃない。
でもどうして?「魚正本陣」とかいう居酒屋のチェーン店を何店も出して業績もすごいって。
店は今も営業してる。
つまり正確に言うと乗っ取られたんだ。
西日本コーポレーションに。
西日本コーポレーション?野田の会社だよ。
(野田修次)久しぶりだな神谷。
ああ…。
須磨の話してるのか?野田。
お前の会社が須磨の居酒屋チェーンを買収したって本当なのか?人聞きの悪い事を言うなよ。
板挟みにあってつらい思いしたのは俺のほうなんだよ。
須磨の事を一番心配してるは俺だよ。
極楽極楽…。
夜明さん!神谷!何でお前がここにいんの?夜明さんこそここで何してるんです?見りゃわかるだろ風呂に入ってるんだよ。
そうじゃなくて。
ああわかった。
お前田舎山口だもんな。
今日同窓会があって。
同窓会なんて出るんだな。
それより夜明さんはどうしてここにいるんですか?俺仕事だよ。
お客さん山口まで運んで。
冗談言わないでください。
タクシー12年やってるとね奇跡が起きるんだよ奇跡が。
それで疲れを癒して極楽極楽と思ってたらお前に会って地獄だよ。
それはこっちのセリフですよ。
田舎に帰って来てどうして夜明さんと会わなくちゃならないんですか。
田舎に帰って来てなんでホテルなの?私は両親はすでにいませんし実家は借家でしたから。
何かわびしい里帰りだね。
そんな事どうでもいいでしょう。
まあそりゃそうだ。
で同窓会は終わったの?二次会に出る気になれなかったもので。
お前付き合い悪いもんな。
何かあったか?そんな友達がいたの。
家族を残して逃げるしかないほど追いつめられていたなんて。
電話があった時須磨と会うべきでした。
しょうがないよ。
また電話かかってくるってその友…。
今須磨って言った?はい。
その人さ娘いる?葉子っていう…。
ええいますよ。
年賀状に書いてありましたから。
確か下の子が葉子じゃなかったかなぁ。
うそ!?
(爆発音)あっそこ右に曲がってください。
えっ?須磨さんの家へ行くんじゃないの?須磨の家ですよ。
須磨さんの家こっちじゃないよ。
ここですよ。
ああそこそこ。
そこ止めてください。
京都か倉敷みたい。
このへんは長府と言って長州毛利氏の分家の城下町です。
(ノック)ここ?正確には奥さんの家ですが。
幸恵さんの先祖は長府毛利五万石の代々家老の家柄でしてね。
須磨は結婚するにあたって入り婿としてこの格式と誇りの須磨家に入ったんです。
あれおかしいな。
(ノック)あれっ!?手放したのか。
これが幸恵さんの実家…。
神谷さん。
久しぶり。
同窓会で須磨の事を聞いて。
大変だったみたいだね。
夜明さんは俺の知り合いなんだ。
以前警視庁にいて。
昨日バッタリホテルで会って夜明さんから娘さんの事を。
そうでしたか…神谷さんのお知り合い。
神谷から聞いてちょっと気になったもので…。
(須磨キク)幸恵。
上がっていただいたら?ええ…。
あっ母です。
すみません。
家の中は散らかっていますので。
主人が神谷さんに電話を?会う事はできなかったけど…。
まさか須磨がこんな事になってるとは知らなくて。
詳しい事情を話してくれませんか?野田の会社に乗っ取られたというのは本当なの?最初話を持ちかけられたのは2年前です。
突然野田さんが主人を訪ねて来て。
よろしくお願いします。
私の会社と提携を?今店舗数は20。
もっと増やしたいだろ?大阪や九州まで。
悪い話じゃないと思うんだ。
(幸恵)主人はこの提携話に乗りました。
西日本コーポレーションといえば九州では一部上場の有名企業だ。
提携すれば資本のバックアップを得る事ができる。
提携話がまとまると今度は野田さんが三隅さんを連れて来たんです。
三隅を?神谷さんは三隅さんとは?いや会ってない。
昨日の同窓会にも来てなかった。
私と須磨野田と三隅は高校時代の同級生で部活も同じだったんです。
剣道部に。
剣道!?神谷剣道やってたの?いけませんか?いや…。
剣道部の先生が町で道場やっててそっちにも通ってたんです。
そこにいたのがまだ中学生だった幸恵さんです。
三隅の事は噂は聞いてるよ。
暴力団に関わっているとか。
でもどうして野田が三隅を?
(野田)三隅が一からやり直したいと言ってるんだ。
どうだろう?三隅をお前の会社で雇ってもらえないか。
わかった。
力になるよ。
主人は人がよすぎるんです。
西日本コーポレーションは最初から須磨の会社を乗っ取るのが狙いだった?提携して主人の会社は西日本コーポレーション本社ビルに移す事になりました。
社長は主人で野田さんが専務に納まって。
ところがしばらくすると西日本コーポレーションは主人に負債を抱えたどうしようもない外食事業を押しつけてきたんです。
それで3億円の不渡りを出して経営権を放棄させられてふた月前主人は会社を追い出されました。
ご主人の会社は?以前は須磨フーズという会社でしたが今は西日本フードエンタープライズと名前も変えられて…。
会社を奪われて。
それでも主人は一からやり直そうとしたんです。
被らされた負債のために家を手放し借金をして。
なのにその返済金を今度は三隅さんが持ち逃げしたんです。
主人は野田さんと三隅さんを信じてたのに。
あの2人が主人を潰したんです。
(安岡)車内にガソリンをまいて火をつけたようです。
ご覧のとおりホトケは炭化した状態で。
それからこのバッグが車から離れた位置にありました。
たぶんトランクに入れていたんでしょう。
車が爆発して吹き飛んだんだと思います。
自殺ですかね?須磨…下関…。
もしもし。
主人に何かあったんですか?えっ…。
もしもし。
東山!?何があったんだ?わかった。
すぐに幸恵さんと一緒にそっちへ行く。
東京で須磨と思われる焼死体が出たそうです。
(キク)幸恵!ただいま。
葉子お母さんちょっと出かけるから葉子はおばあちゃんと一緒に留守番してて。
どこにも行っちゃダメよ。
いいわね?遺体が出たからといってご主人と決まった訳じゃないですから。
神谷さん主人にどうして会ってくれなかったんです?損傷がひどくご遺体での確認は無理かと…。
所持品のほうで…。
見せてください。
ああっ…!現場近くにこちらのカバンが…。
これは身に付けられていた物です。
間違いなく主人の物です。
それからこちらの手帳なんですが昨日の日付のところに…。
主人は言ってました。
俺の人生で親友と呼べるのは神谷だけだって。
なのに…なのにどうして?
(嗚咽)焼死体は須磨さんで間違いないのか?はい。
焼死体の場合通常歯型で個人識別を行うんですがそれもカルテがあっての話です。
奥さんの幸恵さんの話では須磨さんはもうここ何年も歯医者に通ってないようですし。
何より歯の損傷もひどいんです。
あれだけ炭化した状態では個人の識別を行う事は不可能です。
ただ推定される年齢や体型身長は須磨氏と合致しています。
聞き込みの結果須磨氏がガソリンを購入した事実もわかりました。
遺書らしいメモもありましたし。
まあ状況から見て遺体は須磨公彦。
自殺で間違いないと思われます。
所轄も同意見で結局捜査本部は立ち上げない事になりました。
神谷はどうしてる?ショゲてます。
かなりショックだったようです。
当然ですよ!今回の事は警部にも責任があります。
だってそうじゃないですか。
もし会って励ましていれば自殺を思いとどまったかもしれないんですよ。
ああ…。
実はあの時警部上司と酒飲みに出たんです。
来月警視の昇進選考を控え今警部上司のご機嫌取りにこれ必死なんです。
結局警部は友情よりも自分の出世を選んだんです。
友情か…。
聞いたよ。
知り合いが自殺したんだってな。
まあ警察官も長くやってるとそういう事件にも出くわすさ。
それより昇進選考はもうすぐだ。
くれぐれもミスだけはやらかさないでくれよ。
君を推してる私まで恥をかく事になるからね。
(うがい)ああおはよう。
あれっ!?今日も仕事なの?うん。
だって昨日帰って来たんでしょ?いや昨日は仕事らしい仕事してないし夜はゆっくり寝たし。
せっかく朝ご飯作ってあげようと思ったのに。
でプレゼントなんだけど。
ああ!いいもん買って来た。
何?これ!これ…ふぐまんじゅう。
誕生日のお祝いをおまんじゅうですまそうって訳じゃないわよね?いや違うよ。
お祝いはお祝い。
お土産はお土産。
お祝いは…バッグ!バッグ?あのさぁ下関でいろいろあって大変だったんだから…。
そん中でお前のためにお土産買って来たんだよ。
大体養育費ってさいくつまで払うの?お前二十歳過ぎてんだろ。
親の身にもなってみろよ。
だったら子供の身にもなってよ。
お父さん昔っから平気で約束すっぽかすんだから。
なあ〜に生意気な言い方。
子供になって…。
お父さんは家族を残して死んだりしないよね…。
そうだよな…。
娘残して自殺する父親なんかいねぇよな。
何言ってるの?いやいや…。
よーし!仕事行ってこよう!お祝いは今度!今度って来年じゃないでしょうね?・再来年!須磨が死んだよ。
何とも思わないのか?須磨を殺したのは…。
神谷。
提携話を持ちかけたのは乗っ取るのが目的だったんだろ?俺は知らなかったんだよ。
須磨の店お前が仕切ってるそうだな。
須磨の会社名前を変えて今はお前が社長に納まってるそうじゃないか。
そのお前が知らないはずないだろ!俺はなお前みたいな公務員じゃないんだ。
生きるために必死なんだよ。
うちの会社が須磨の事業に目を付けた。
会社の方針に従うのは当然だろ。
お前それでも友達なのか?神谷よぉお前須磨と20年会ってないそうじゃないか。
お前こそそれでも友達なのか?俺は須磨を裏切ったりしない。
(野田)きれい事言っても仕方がないだろ。
立場が変わり利害が絡めば敵になる。
三隅がそうだ。
俺がなぜ三隅と会ってたかわかるか?あいつがいた暴力団は総会屋とつるんでうちの会社をゆすってたんだよ。
その三隅をどうして須磨に押し付けたんだ?三隅が足を洗おうとしてたのは本当だよ。
だから…。
結局お前達は須磨にたかって…。
(メールの着信音)神谷。
俺は仕事をしただけだよ。
じゃあな。
(山下)「1646応答願います」はい1646どうぞ。
須磨さんとおっしゃる方から夜明さんに迎車の指名が入ってます。
可能ですか?可能です。
了解。
大変だったですね。
はい。
警察の方に主人の亡くなった場所をお聞きしたんですけどよくわからなくて。
案内していただけないでしょうか?わかりました。
葉子の事ではご迷惑をおかけしました。
いいえ。
夜明さんのような親切な方で助かりました。
山口へは?明日帰ります。
そうですか…。
神谷ショック受けてます。
知らなかったんです。
須磨さんの事情を知ってたら電話があった時神谷必ず行ったと思います。
失礼ですけど夜明さんはどうして刑事をお辞めになったんですか?昔捜査に関わった女性の事誤解されて週刊誌に書かれて。
それで…。
奥様は?離婚しました。
娘が1人いて。
それで葉子ちゃんの事放っとけませんでした。
はい。
あの…。
はい。
お茶でもいかがですか?はい?1人でいるのがつらいんです。
はい…。
剣道をなさってたとか?ええ。
ご主人とはその頃から?あっいいえ。
実を言うと昔は私神谷さんの事が好きだったんで。
でも神谷さんは故郷を捨てた。
高校を卒業すると東京に出て私は…。
あなたのお生まれになった家拝見しました。
下関では有名な家だとか…。
家を守らなければなりませんでしたから山口を出る事はできませんでした。
あのお父さんは?高校の時に亡くなりました。
厳格な人でしたけど私は父の事が好きでした。
守り続けてきた家手放すのつらかったでしょう。
一番つらかったのは主人だと思います。
お義母さん。
許してください。
幸恵すまない…。
(幸恵)主人ほど誠実な人はいません。
主人と結婚して私はこれまで幸せでした。
失礼ですけど今生活のほうは?小倉にあるクラブで働いています。
葉子のためにも私が頑張るしかありませんから。
でもどうしてこんな事になったのか…。
これからどうやって生きていったらいいのか…。
大丈夫ですか?すいません…。
じゃあ。
もう少しだけ…。
つらいでしょうけど葉子ちゃんのために頑張ってください。
(チャイム)あっああ…!ああーっ!うっ…。
(パトカーのサイレン)リースマンション?はい。
この部屋と隣の17号室は西日本コーポレーションの契約になってまして。
ガイシャは野田修次49歳。
西日本コーポレーション?野田。
発見者は?
(安岡)会社の部下です。
今日は朝から一緒に店舗の下見に行く事になっていて午前8時頃訪ねたそうです。
じゃあ昨夜は彼が隣の部屋に?はい。
すみません。
昨夜何か物音とかそういったのお聞きになりませんでした?
(高井)いえ。
私は昨日遅くにこちらに着いたもので。
昨日野田さん誰かと会うような事言ってませんでしたか?さあ…。
(ドアを叩く音)
(東山・国代)開いてる。
夜明さん?夜明さん!あらら…。
(東山・国代)夜明さーん!はい起きてくださーい。
起きてください。
もう鍵もかけずに寝てる場合じゃない…!寝てる場合だって…!何だよーっ!?野田が殺されたんです!野田?須磨氏の会社を乗っ取った野田修次です。
えっ?夜明さん!あっ警部。
夜明さんの意見を聞かせてほしいんです。
何だよいきなり!今度は殺しなんです!何意見って犯人が誰かって事?はい…。
こんなもの見せられて犯人わかる訳ないじゃない。
気になるのはこの三隅です。
うーん…。
これが野田が所持していた携帯電話です。
昨日午前11時38分。
三隅からメールが入ってます。
その三隅に野田が送った返事がこれです。
「お前と会う気はない。
連絡しないでくれ」会うのを拒否された三隅が…。
野田を殺した?じゃあ動機は何?三隅は何で野田を殺したの?須磨が死んでそのわずか2日後に野田が殺されるなんておかしいでしょ!おかしいって何?須磨と野田2人と関わっていたのは三隅しかいません。
警部は同一犯の可能性があると。
はっ?じゃあ須磨さんは自殺じゃなかったっていうの?須磨さんも三隅が殺したっていうの?須磨の事改めて考えてみました。
あいつは子供の頃体が弱くて剣道を始めたのもそのためです。
それでも須磨はどんな厳しい稽古にも歯を食いしばって音を上げなかった。
そしてだんだん強くなっていった。
私には須磨が自殺したとは思えないんです。
神谷。
そもそも須磨はどうして私に電話をかけてきたのか。
ひょっとして身の危険を感じていたんじゃないのか。
だから刑事である私に。
警部。
それは飛躍しすぎじゃないでしょうか。
そうですよ。
須磨氏は自殺と見るのが自然です。
夜明さん野田の事件であと気にかかるのが幸恵です。
動機の面だけから言えば野田を誰よりも恨んでいたのは…。
バカ!!幸恵さんが事件と関ってるはずないだろ!そんな「バカ!!」なんていう言い方ないじゃないですか!ちょちょちょっ…。
その犯行時刻っていつなの?解剖の結果死亡推定時刻は昨日午後6時から8時の間。
ですが午後7時に下の住人が人が倒れるような物音を聞いてますから…。
ですから犯行時刻は7時で間違いないかと。
だったら間違いない彼女事件に無関係だ。
(国代)どうしてです?その時間彼女俺と一緒にいたもん。
幸恵さんをタクシーに乗せたのは5時半。
それから品川埠頭に行って花をたむけてホテルに戻っていろいろあって別れたのは7時。
俺と一緒にいた幸恵さんが人を殺せる訳がない。
それで夜明さんはこの事件をどう思われるんです!そんなのわかんないよ!野田を殺した犯人の検討もつかない。
須磨の死とも関連はないそう言われるんですね。
ああ。
民間人に意見を求めた私がバカでした!神谷何怒ってんだお前。
もういいです。
失礼します!神谷。
あの…警部が所轄に須磨氏の事件を洗い直すように指示したらしくて。
今所轄からもクレームがきてるんです。
信じられませんよ。
夜明さん。
自分警部が暴走しそうな気がしてならないんです。
でお前達どうすんの?これから。
はい。
明日山口へ行きます。
野田と三隅の関係がどうだったのか。
野田を恨んでいる人物が他にいないか。
事件を解く鍵があるはずです。
よし。
あっいえ!新幹線で行きます。
えっ?ええ…。
さすがに今回は夜明さんのタクシー使う訳には…。
なっ?ええ…。
何たって行き先は…。
(東山・国代)下関です。
神谷さん主人にどうして会ってくれなかったんです。
〔警部が暴走しそうな気がしてならないんです〕
(国代)信じられませんよ。
ああ。
民間人がだよ?わざわざ仕事休んでまで付いてきちゃったっていう…。
言っとくけど俺は幸恵さんと葉子ちゃんが心配で見に来ただけだから。
捜査はしっかり頑張れ。
タクシー!あれ?あっ…。
ああ行っちゃった…。
タクシードライバーがタクシー乗ってっちゃった…。
野田は昔からプライドの高い男でね。
嫌ってた奴は何人もいるだろうけど。
三隅さんは野田さんとどういった関係でした?2人が揉めていたという事は?さあ。
三隅の事は噂ばかりで。
へっ俺はよく知らないから。
みんな驚いてますよ。
須磨君が自殺して今度は野田君ですからね。
野田さんを恨んでた人物に心当たりないですか?野田さんの女性関係どうだったんでしょう?5年前に奥さんを亡くしてそれから後の事は…。
須磨君の奥さんと街を歩いてたのなら見かけた事がありますけど。
野田さんが幸恵さんと?実は幸恵さんの事では妙な噂を聞いてるんです。
保険会社に勤めてる同級生がいるんですが幸恵さん須磨君に生命保険をかけてるって。
粗茶でございます…。
あっ…。
ホントにお構いなく。
どうぞ。
あの写真はどなたの?長女の咲子でございます。
・
(ドアの開く音)
(葉子)ただいま。
ああ。
お母さんは?もう仕事に出かけたの?そうみたい。
おばあちゃんちょっとお買い物行ってくるわね。
どうぞごゆっくりしてらしてくださいませ。
大変だったね。
おじさんの事聞きました。
お母さんの友達の知り合いだって。
まあ君タクシーに乗せたのも何かの縁だし君やお母さんの事気になって…。
仏壇のあの写真は君の…。
お姉ちゃん。
2か月前に亡くなったの。
イジメに遭ってたっていうんだけど私は信じられない。
イジメ?自殺したの。
室津下の泊ヶ鼻から海に。
おっ。
お母さん?そう。
神谷。
これがお父さんでこれが三隅さん野田さん。
三隅さんと野田さんは前に家に来た事があるの。
(野田)じゃあ三隅の須磨フーズへの就職を祝って乾杯しよう。
(公彦)ああ。
おめでとう!
(一同)おめでとうございます。
(三隅昇)幸恵ちゃん変わんないな。
昔のままだ。
三隅幸恵ちゃんに惚れてたからな。
お前だってそうだろ?この家は美人揃いだな。
特にお姉ちゃんの咲子ちゃんは昔の幸恵ちゃんにそっくりだ。
(葉子)私あの2人は嫌い。
なのにお父さんは信じ切って。
それにしても2か月前にお姉さん亡くなって今度お父さん亡くなって…慰めの言葉もないけど。
ううん。
来てくれてありがとう。
つらいだろうけどお母さんも君やおばあちゃんのために懸命に働いてる。
頑張って。
あっそれで何かあったら電話して。
うちにも娘がいるから。
相談に乗ってくれると思うよ。
先輩!えっ?はい。
ちょっと…。
よっ!よいしょ…。
須磨さんに生命保険?契約したのが約1年前。
1億の生命保険で受取人は妻の幸恵です。
先輩幸恵が引っかかります。
生命保険をかけていた事。
幸恵が野田と個人的に会っていた事。
それだけじゃないんです。
先ほど所轄から連絡がありまして野田の携帯電話の通信記録から新たな事実が出てきました。
通信記録?はい。
事件当日午後1時頃野田の携帯に電話をかけてきた人物がいます。
ええ発信元は品川区東品川の公衆電話です。
それが何?その電話のある場所なんですが火葬場です。
じゃあ何。
幸恵さんが野田に電話したっていうの?だから言っただろ。
事件当日15日の夜7時幸恵さんは俺と一緒にいたって。
いやですがその7時というのはあくまで下の住民が物音を聞いた時間なんです。
検視による死亡推定時刻は午後6時から8時の間。
夜明さんと別れた後幸恵は野田のマンションを訪ねたのかもしれません。
この海峡下関から門司までおよそ800メートルですよ。
川だな。
あなたは以前須磨さんの会社に勤めてらっしゃったんですよね。
(浅岡仁美)はい。
以前は事務をやってました。
今はお店のほうを。
あの野田さんと須磨さんの奥さん幸恵さんですね。
彼女が2人で会ってたのを見たというのは本当ですか?ええ。
1年くらい前から何度か。
で2人の様子はどうでした?先月見かけた時は何だか言い争いをしてました。
口論してた?奥さんが怒るのは当然です。
社長が追い出された時私社長がかわいそうで見てられませんでした。
俺を騙したのか?最初からそれが狙いだったのか。
どうして俺が解任されなきゃならないんだ。
あっ?俺のチェーン店を何で奪われなきゃならないんだよ!野田!やめろ須磨!須磨いつかお前俺に言った事あったよな。
会社リストラされるような事があったら俺の店に来いって。
偉そうに。
どうして俺がお前の下で働かなきゃいけないんだ。
そもそもお前が店を持てたのは親の遺産があったからだろ。
幸恵ちゃんと結婚して名家に婿入りして。
俺はなお前みたいに努力もしないで調子よくやってきた坊っちゃんなんかに負ける訳にはいかないんだよ。
剣道をしてた時のお前には勝てなかった。
1本も取れなかった。
お前俺の事友達だと思ってたかもしれんが俺は思った事はない。
須磨君よ。
俺はお前に勝つ事しか考えてなかったよ!ひどい友達がいたもんですよ。
いや友達だからじゃないかな。
まあ嫉妬やっかみ。
その須磨が…。
友情から出た言葉が野田のプライドを傷つけた。
夜明さんこういう事は考えられませんか。
須磨が自殺したのは野田と幸恵の関係を知ったからじゃないでしょうか。
この2年間幸恵は野田の言いなりになる須磨の事をどう見ていたのか。
ひょっとしたら人のよすぎる須磨に愛想を尽かしていたのかもしれません。
それで野田と関係を持ち乗っ取りの話を聞く。
そうなれば須磨はいずれ自殺しないとも限らない。
それで生命保険に加入させた。
そうか。
幸恵が野田を殺したのは須磨氏を自殺に追い込まれたからでなく痴情のもつれ。
バカ言ってんじゃないよ。
お前達まで飛躍してどうすんだよ。
野田の部屋にワインがありました。
あの時野田が待ってたのは女だった気がしてならないんです。
全部お前達の推測だろ!幸恵さんが野田と付き合ってたとか事件に関係あるとか。
いやでも幸恵にアリバイはありません。
それにそもそも幸恵はどうして夜明さんのタクシーに乗ったんですか?
(携帯電話)はいもしもし。
警部?鑑識から連絡があった。
野田のバスローブから女性の毛髪が検出されたそうだ。
幸恵さんと会うのなら念のため毛髪をもらってきてくれないか。
はい。
わかりました。
ああ…。
ふーっ。
今日は気持ちがいい…。
ふふ。
あらいらっしゃいませ。
いらっしゃいませ。
いらっしゃいませ。
生命保険は1年前主人が自分の意思で契約したんです。
私は何も知りません。
あなたが野田さんと個人的にお付き合いされるようになったのもちょうどその頃からですよね。
私が野田さんに会ってたのは…。
言ったじゃないですか。
主人に赤字まみれの事業を押しつけきたそんな野田さんに腹が立ったからです。
それと今日生命保険の受け取り申請されましたね。
私にも暮らしがありますから。
事件が起きたのはいつなんですか?15日午後6時から…。
その時間なら私夜明さんと一緒にいました。
あっこれ最後に強制じゃないんですけれども毛髪1本いただけますか?東山。
いいですよ。
警部。
毛髪の鑑定結果が出ました。
DNAを照合したところ野田のバスローブに付いていた毛髪幸恵のものと合致しました。
(携帯電話)はいもしもし。
夜明さん。
はいたった今。
あっ…。
あっいえそれが…。
嘘だろ!?神谷と代わって!出てった?どこへ?バカ!15日の夜7時頃不審な人物を見かけませんでしたか?さあ。
さあ…。
そうですか。
どうも。
神谷。
何やってんだよ。
お前が現場に出ちゃまずいだろ。
気持ちはわかるけど。
神谷!須磨は自殺するような人間じゃありません。
まして幸恵さんは人殺しをするような人間じゃない。
ちょっ…神谷!あの時須磨から電話があった時私が会っていればこんな事にならなかったかもしれないんです。
神谷。
お前一人現場に出たからって状況変わる訳じゃないだろ!現場に出るのが刑事だ。
そう言ってたのは夜明さんじゃないですか!立場が違うだろ立場が!お前!気持ちがわかるんだったら放っといてください!羽田まで。
あなたの毛髪が野田の着衣に付着してました。
先月幸恵さんは野田と会ってたそうですね。
その時何かの弾みで野田の衣服に付着したのかもしれない。
毛髪1本であなたを逮捕する事はできません。
でも…。
神谷さん私は…。
野田を殺したのはあなたじゃないですよね?違います!信じていいんですね。
(汽笛)関門海峡か…。
子供の頃この海峡がすごく広く見えた。
でも今はなぜこんなに狭く小さく思えるのかしら。
我々が歳をとったからです。
広く見えたのは子供時代の印象じゃないかなぁ。
あなたはなぜこの街を出てったんです?一体どういうつもりなんだ!管理職の君がデスクを離れてどうする!下関くんだりまで何しに行ったんだ!自殺と決まった事件をほじくり返させる。
物証の出た事件には横槍を入れる。
今の状況で須磨幸恵の逮捕状を取る事は認められません。
私情をはさんでるだけなんじゃないのか?とにかくこれ以上余計な事はするな。
いいな!東山から聞いたけど下関まで行ったんだって?あきれてものも言えないよ。
須磨はもちろん幸恵さんも私にとっては特別な人なんですよ。
幸恵さんは私の初恋の人でした。
あの頃道場の帰り私達を追いかけて来る幸恵さんが私はかわいくて仕方なかった。
待ってよ!可憐でそれでいて凛としてて。
最初は妹みたいに思っていたんですがそのうち意識するようになって…。
もしも幸恵さんが東京へ出て来てたら私の人生は変わっていたかもしれません。
お前の口からそんな事を聞くとはな。
私にだって初恋くらいありますよ。
それでどっぷりと私情をはさんでる訳だ。
お前らしくもない。
夜明さん。
私はこれまで人を疑う事ばかりしてきました。
白は灰色灰色は黒と見るそれが刑事です。
でも今度ばかりは信じたいんですよ。
幸恵さんは人殺しをするような人間じゃない。
好きにしろよ。
もう何も言わない。
どうなっても俺知らないよ。
私も夜明さんが刑事を辞めると言った時あえて止めませんでしたからね。
私も夜明さんがどうなろうと知った事ではありません。
さあ知りませんね。
警部昇進は無理でしょうね。
無理だろうな…。
でも真犯人挙げりゃ上の見る目が変わるって事も…。
ないな…。
・本当ですか!?間違いありませんね?ええ。
15日の7時頃です。
このマンションから男が飛び出して来て…。
その人物はこの男だったんですね。
いやぁ顔までは…。
身長は?体型はどんなふうでした?ああ…どうだったかな…。
体型は三隅に似てた?「はい。
それだけじゃないんです」「三隅の動機が見えてきました」三隅の銀行口座を調べたところこのふた月の間架空名義の口座から2百万ずつ2回。
はい4百万振り込まれています。
その名義人を調べたところ野田である事がわかったんです。
野田は三隅に脅されてたのか?「はい。
ひょっとしたら何か弱みを握られていたのかもしれません」三隅が須磨氏の会社から持ち逃げした金5千万。
はい。
この金の行方はわかってないんですがそれとは別に三隅は野田をもゆすっていた。
「その事で揉めていたとしたら例のメールの意味もわかります」金が動いてたとなるとそれ決まりだな。
暴対課に協力してもらい三隅の行方を追ってます。
あゆみ友達はいるの?いるわよ。
親友?うん。
今はね。
今はねって?ずーっとって訳にはいかないでしょう。
女は嫉妬の生き物だもん。
就職結婚子供家…?どうしたって比べ合っちゃうんだよね。
そうしたら友情は難しいよ。
お前冷めた事言うね。
だってそれが現実だもん。
冷めないうちに食べてよ。
(ため息)あ〜あ。
これがふぐだったらなぁ…。
お前タラに失礼だろ。
三隅が野田を…。
神谷の執念だな。
あっ!うん?すみません。
すみません。
ありがとうございました!やっぱ野球だなぁ。
サッカーもいいけど。
柔道とか剣道とかやってる…。
左利き…。
違う…。
野田を殺したの三隅じゃない。
・
(物音)お母さんどうしたの?お母さん!?お母さん?三隅は左利き!?幸恵さんの家でアルバム見せてもらったら三隅は左手で箸を持ってた。
神谷三隅は左利きだろう?ええそうですけど。
国代ホトケの写真。
はい。
ほら…。
傷は背中の右側。
いやでも左利きでも状況によっては右側から刺すっていう事も。
ちょっと後ろ向いて。
やってみろよ。
おかしいだろ!?そうですね。
昔の写真見て気が付いたのはそれだけじゃない。
三隅と須磨同じような体型だ。
まさか…。
須磨の自殺。
あの死体は三隅だと!?須磨は生きてるよ。
じゃあ自殺に見せかけて須磨のほうが三隅を殺した?野田を殺したのも須磨だというんですか?だとしたらすべての説明がつく。
須磨が神谷に電話したのは刑事である神谷に自殺を印象付けるため…。
あっそうか。
幸恵が夜明さんのタクシーに乗ったのも須磨が自殺したとなれば真っ先に疑われるのは幸恵。
だからアリバイを作っておく必要があった。
幸恵は事情を知ってたんですね。
焼死体が須磨でない事もそして須磨が三隅と野田2人を殺す事も。
いや…。
でもそれどうやって証明するんです?あの焼死体が須磨じゃなくて三隅だって事をどうやって。
そうですよ!結局今の話は全部夜明さんの推測じゃないですか。
そりゃあ須磨は三隅と野田を恨んではいたでしょう。
でもだからって須磨は殺人を犯すような人間じゃない。
幸恵さんも知っていたのなら共犯です。
須磨と幸恵さんが私を騙すはずがないんだ!神谷…。
事件の知らせを受けた時…。
神谷さん。
主人にどうして会ってくれなかったんです?あれは芝居だったというんですか。
遺体と対面した時も幸恵さんは心から悲しんで…。
推測だよ。
物証は何もない。
俺の考えを言っただけだよ。
後はお前達の仕事だろ。
《物証…》《あの焼死体が須磨でなく三隅だという事をどうすれば証明できるのか》《それに須磨が野田と三隅2人を殺さなければならなかった本当の動機は何なのか…》
(山下)「16461646夜明さん」はい。
1646どうぞ。
「下関の須磨葉子さんとおっしゃる方から夜明さんに電話が入ってます。
緊急だとおっしゃるんですが」つないでるの?どうぞ。
(葉子)「もしもし?おじさん聞こえる?」聞こえる。
どうした?「大変なの」「お母さんが家を出てったっきり帰ってこないの」今日誰かがお金を投げ込んだみたいなの。
お母さんそれを持って慌てて出かけて行って。
お母さんの様子が変だったの。
「帰ってこないの!」昇進選考の面接は明日の朝10時からだ。
とにかく面接だけはきちんと受けろ。
いいな。
はい。
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
(携帯電話)はいもしもし。
あっ夜明さん?はい。
あっはい。
夜明さんです。
もしもし。
えっ本当ですか!?その金はたぶん三隅が持ち逃げした金だよ。
その金を取り返した須磨が家に投げ込んだ。
その事に気付いた幸恵さんが須磨の後を追っかけた。
須磨が山口に…!?夜明さんすぐに来てください!交通手段がないんです。
おーい。
山口までお願いします。
いや…警部明日の昇進選考はどうするんですか?午前10時からですよ。
うるさい!残んなさい!東山国代乗れ。
(2人)はい。
神谷お前はダメだ。
早く乗れ!神谷お前何格好つけてんだよ。
お前娘が4人もいて今まで一生懸命働いてきたじゃないか。
出世の道を選んで何が悪いんだよ。
面接を受けろよ。
面接受けて警視になれ!警視になって俺にいばれ!須磨の事は俺達で何とかする!夜明さん…。
葉子が妙な電話をかけたみたいで申し訳ありませんでした。
葉子の勘違いです。
お金が投げ込まれてきたなんて事ありませんから。
奥さんもう本当の事を話されたほうがいいと思います。
三隅や野田殺したのはご主人ですよね?何をおっしゃってるんです?ご主人が自殺したと聞かされてあなたは驚き嘆き悲しんだ。
あれは嘘じゃないでしょう。
たぶんその後だ。
ご主人から連絡があってご主人が生きている事を知らされた。
東山。
はい。
火葬場の公衆電話から野田の携帯に電話をかけた人がいたんだよね?はい。
ご主人は三隅の携帯を使って野田にメールを入れて呼び出そうとした。
だが野田に断られた。
それで仕方なくあなたを使おうとした。
あなたはご主人が三隅を殺した事を知ったうえでこれからご主人が野田を殺そうとしてる事を知ったうえであなたご主人に協力したんです。
夜明さん…。
もしもし野田さんですか?折り入ってお話したい事があるので会っていただけないでしょうか?ご主人は野田があなたに好意を持っている事を利用しようとした。
あなたは野田の居場所を突き止め会う約束をする。
それでご主人はあなたにアリバイを作るように言う。
そこであなたは私のタクシーに乗り込んだ。
奥さん夜7時ご主人が野田のマンションを訪れ…。
いい加減にしてください!主人が生きてるとか人を殺したとか。
証拠がどこにあるんですか!証拠…家の中にあります。
あなたの身になって考えました。
ご主人が生きててあの遺骨が三隅のものだと知ったら…。
今はアパート住まいでもあなたにとって家は特別なものだ。
「家」に対して特別な思い誇りがある。
その家の中に会社の金を持ち逃げしご主人が殺したいほど憎んでた三隅の骨を家の中に置く事ができるかどうか。
夜明さん!汚れた男の骨を誇りある家の中に置いておけるはずがない。
やめてください。
やめてください!ああっ…!これが証拠です。
幸恵…。
お母さんどういう事?骨は海かどこかに捨てたんでしょう?ご主人が三隅と野田を…。
主人は夜明さんが考えてるような人じゃありません!お母さんお父さん生きてるの?おじさんお父さん生きてるの?よかった…。
奥さん…ご主人死ぬつもりじゃないんですか?じゃなきゃ大金投げ込んだりしない。
ご主人見殺しにしていいんですか!?奥さん!先輩!神谷警部には時間見て自分が連絡とります。
あっ国代山口県警に応援を要請しろ!はい!所轄へは俺が知らせておく。
はい!守り続けてきた家を手放すのはつらかったでしょう?一番つらかったのは主人だと思います。
《どこなんだ?須磨はどこに…》主人は夜明さんが考えてるような人じゃありません!《須磨が2人を殺した本当の理由…》
(葉子)イジメに遭ってたっていうんだけど私は信じられない。
自殺したの。
室津下の泊ヶ鼻から。
海に…。
泊ヶ鼻…。
(幸恵)あなたやめてー!やめてよ!いやー!お願いやめて!あなたが死ぬなら私も死ぬ!
(幸恵)やめてー!お願いやめて!やめろー!やめろって!やめろって!おばあちゃんどうなる!葉子ちゃんどうなる!三隅と野田殺したのは長女の咲子さんの死と関係あるんですか?ふた月前咲子が顔にアザを作って帰宅した事がありました。
(幸恵)あっ…!どうしたの咲子!何があったんだ?うん?
(須磨咲子)予備校の帰りクラスの子に会って因縁つけられたの。
相手は3人。
前からイジメられてたのよ。
その3人って誰なの?咲子言いなさい。
咲子言いなさい!
(須磨)咲子はイジメられたと言うばかりでそれ以上何も話してはくれませんでした。
翌日私と幸恵は一緒に咲子の学校に行きました。
でも担任の先生はもちろんクラスの子も知らないって言うばかりで。
咲子の事は心配でしたがその頃は私もどん底で…。
社長を解任され負債のため家を手放し揚げ句三隅にかき集めた返済資金を持ち逃げされて…。
幸恵は咲子の事を励まし続けてくれましたが私がこんな状態では家の中は暗くなるしかありません。
(須磨)咲子が自殺したのは私のせいだと思いました。
自殺の本当の理由を知ったのはそれから半月後いよいよ家を手放す事になった時でした。
(須磨)そこに遺書が書かれていました。
(咲子)「どうしても自分の胸の内だけにしまっておく事ができないので本当の事を書きます」「お父さんの誕生日の晩会社に行くと野田と三隅がいました」
(須磨)それは驚くべきものでした。
(須磨)あの日は私の誕生日でした。
予備校の帰り咲子は私を驚かそうと内緒で会社に寄ったようです。
(野田)明日3億円の不渡りが出る。
それで須磨フーズはアウトだ。
(三隅)驚いたね。
お前最初からそれが狙いだったのか。
(野田)何が実業家だ。
いい気になりやがって。
須磨が社長の座から転がり落ちる時の顔を早く見たいもんだよ。
(須磨)その話を咲子が聞いてしまった。
(物音)
(三隅)誰だ!お前須磨の…。
今の話チクられたら困るよな。
私は何も聞いてないです!しゃべれないようにしてやるよ!やめて!いや…いや…!
(野田)三隅。
いや!そこにカメラがあるだろ!ボケッとしてないで撮れ!やめて!やだ!やめて!いや…!写真をばらまかれたら名家も形無しだよな。
(カメラのシャッター音)何するんだ。
これでお前も俺も一蓮托生。
お前…!須磨を潰してお前だけ甘い蜜吸わせる訳にはいかないよ。
(カメラのシャッター音)
(須磨)遺書の事は幸恵には話しませんでした。
決着は私1人でつける。
それで復讐を。
当然だろ!会社を奪われあの2人は俺の…。
私達の娘の命までをも奪ったんだ。
それで計画を練った…。
2人を殺せば当然容疑がかかる。
だから三隅の死体を使って自分の存在を消しその後野田を殺す。
三隅の潜伏先はどうやって突き止めたんです?三隅の妹が新宿で店をやってると聞いた事があったので…。
ああ…。
ふん!ああ…うっ!ああ!
(須磨)三隅を車に乗せ…。
須磨…。
(殴る音)うっ!ああ…。
ああっ何するんだ須磨。
頼む助けてくれ…。
うっ上着のポケットによ鍵が入ってる!コインロッカーの鍵が入ってるんだ!そこに金が入ってる!うっ!金は返す!うっああ!
(爆発音)幸恵さんその事を…。
夜明さんのおっしゃったとおりです。
(携帯電話)もしもし。
(須磨)「幸恵か」あなた…。
(幸恵)火葬場にいた時主人から電話がありました。
私は驚きました。
じゃあ一体これは誰なの?
(幸恵)私は主人からすべてを聞かされました。
咲子の遺書の事を。
三隅に続いて野田を殺すと聞かされて…。
私は主人を止める事ができませんでした。
どうして?夜明さん。
私はこれまで長府で代々続いた須磨の家の格式誇りを守っていく事が一番大事な事だと思っていました。
それがすべてだと…。
でも咲子が自殺し主人までが死んだと聞いた時私は気付いたんです。
私が本当に守りたかったものは…家族なんだって。
その家族を三隅と野田が奪い取った。
許す事ができませんでした。
私は主人に言われるまま野田に電話をかけアリバイを作りました。
警察の方に主人が亡くなった場所をお聞きしたんですけどよくわからなくて。
お前…。
須磨!お前死んだんじゃなかったのか!?えっおい!心配してたんだよ俺…。
なっおい!須磨やめろ!おいやめ…!ううっああ…!ふん!
(須磨)俺は幸恵を幸せにしたかった!須磨の家守ってやりたかった。
咲子を守りたかった。
でもそれができない俺に一体何ができるっていうんだ。
野田と三隅2人を殺して俺は死ぬしか…。
死んで残された家族にせめて保険金を…。
そんな金幸恵さんや葉子ちゃんが喜ぶと思いますか?あなたの元気な顔を見るのが一番うれしいんじゃないんですか?幸恵さんも葉子ちゃんもおばあちゃんも。
それが家族というもんでしょ!
(嗚咽)何で…何で野田や三隅は俺の事を…。
あの2人が裏切ったりしなければ…。
裏切ったといえばあなたはどうなんですか?あなた神谷を裏切った!神谷これから会えないかな。
折り入って話したい事があるんだ。
神谷に電話をしたのは自殺を匂わすためだった。
神谷の気持ちはどうなるんです!神谷言ってました。
須磨はどんなつらい事にも音を上げない。
歯を食いしばって耐える強い男だって。
(パトカーのサイレン)須磨お前も俺を殴れ。
お前と会っておくべきだった。
もっとお前と会っておくべきだった。
神谷。
すまない。
ごめんなさい…。
夜明さんにも申し訳ない事をしました。
奥さんご主人から連絡があった時止めるべきでした。
失ったものより葉子ちゃんの事を考えるべきでした。
もっと早くに長府の家を出るべきだったのかもしれません。
そうすれば主人をあんなに苦しめなくてすんだんです。
長府のあの家を守っていく事が主人にとっても私にとって須磨の家が重荷だったのかもしれません。
いや…。
あなた生まれ育ったこの街をそしてご家族を誰より愛していらした。
夜明さん…。
葉子も私も夜明さんのタクシーに乗って救われました。
故郷の海を見るのは久しぶりですよ。
故郷とか初恋とか遠く離れて思ってるほうがいいのかもしれないね。
はい。
あっそうそう夜明さんあゆみちゃんの初恋はどうだったんですかね?えっ?私の4人の娘もいろんな初恋をして喜んだり悲しんだり傷ついたりして大きくなっていくんでしょうね。
父親はただ黙ってそれを見守るだけか…。
結構寂しいもんですね父親は。
あっ!えっ?面接どうだった?受けましたよ。
あくまで形式的なものですが。
ダメでもがっかりすんなよ。
なっ。
民間人の推理に感心してるようじゃお前もさやっぱり警部止まりかもしれないよ。
夜明さんは警部補止まりだったじゃないですか〜!俺は止まりじゃないよ。
俺は辞めてやったんだからさぁ。
夜明さん。
ありがとうございました。
なあ〜に…。
早く早く乗れよもう。
客に向かってそういう言い方はないでしょ。
な〜にが客だよ。
客だったら「東京駅」とか言ってみろよ。
言える訳ないでしょ。
行き先は駅ですからね。
新下関の駅!ケチだなお前は。
東山は?あっそうですね。
きっとまだどっかでウロウロしてるんじゃないんですか?あいつ平のまんまだな。
はい。
(剣道部員のかけ声)あれ?今の…。
ひょっとして…。
神谷が乗ってる。
うそ〜。
夜明さん!夜明さん!ははは…!あははは…!ありがとうございました。
はい。
ありがとう。
悪いわねぇ。
何いきなり店に呼び出して。
詐欺だよ。
すいません。
ふふふ…。
お父さんもいい思いしたんでしょ。
山口何度も行っちゃって。
山口神谷のおじさんの田舎だったんだ。
そう。
下関か。
いいとこなんだろうなぁ。
あれ!偶然。
こんなとこにこんなお店があったんだ!何が偶然だよ。
ハンドバッグのうえにふぐなんて嫌だからね!いいじゃない!私4年も食べてないんだよ〜。
父親だったらふぐくらい食べさせろー。
定休日!定休日!ちょっちょっと!ちょっとお父さん!定休日!2014/09/22(月) 13:05〜14:56
ABCテレビ1
タクシードライバーの推理日誌[再][字]
山口までと彼女は言った…東京〜関門海峡1100km殺人・初恋の女の完璧すぎるアリバイ!!
詳細情報
◇出演者
渡瀬恒彦、高橋ひとみ、風見しんご、平田満、小林健、林美穂、金田明夫、石丸謙二郎、上杉祥三、山崎一
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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