きょうの健康 忍び寄る脂肪肝「あなたもナッシュ?」 2014.09.22

主婦の山本ゆり子さん。
運動の習慣は特になくやや肥満気味です。
高血圧の持病がありますが特に気になる自覚症状はありません。
間食はしますがお酒を飲む習慣はなく健康にも気を遣い毎日果物を多くとるようにしています。
ところが最近人間ドックの検査を受けたところ肝臓に脂肪がたまる脂肪肝と診断されました。
更に精密な検査を受けたところ肝臓に炎症が起きている事が分かりました。

(テーマ音楽)皆さんの毎日の健康のために役立てて頂きましょう。
「きょうの健康」です。
さて冒頭見ました山本さんですが脂肪肝だと指摘されたという事ですよね。
よく耳にしますね。
そうですね健康診断などでよく耳にしますよね。
ただ脂肪肝お酒をたくさん飲む人の問題でしょうと思っていますが山本さんそんな事ないんですよね。
お酒をたくさん飲む方は脂肪肝になりやすくて肝硬変になる事もあるので注意が必要というのは昔からいわれていた事なんですが最近問題になっているのはお酒を飲まない人の脂肪肝なんです。
一部は慢性肝炎や肝硬変になる事が分かってきています。
飲まないからといって安心できない訳だ。
それがこちら…そこで今日と明日の2日間は忍び寄る脂肪肝と題してお送りしていきます。
まず今日のテーマはこちら…今日も専門家をお迎えしています。
分かりやすく教えて頂きましょう。
ではご紹介致します。
消化器内科特に肝臓病などの診断治療がご専門です。
どうぞよろしくお願い致します。
さて冒頭の山本さんでございますがどう見ても脂肪肝にいかにもなりそうだなという方そんなイメージは持てませんね。
この山本さんですが実は私が診た患者さんなんです。
脂肪肝は大酒飲みとか大食漢の方の病気と思いがちでございますが肝臓は脂肪をためやすい臓器で明らかな肥満がなくても実は肝臓に脂肪がたまってしまうケースはよくあるんです。
肝臓にどのくらい脂肪がたまると脂肪肝という事なんですか?健康な肝臓でもある程度中性脂肪はたまっていますが必要以上に蓄積された状態が脂肪肝と呼ばれております。
比較しましょうか。
こちらが正常な肝臓の顕微鏡写真です。
この一つ一つが細胞で真ん中に黒く見えているのが細胞の核です。
こちらが脂肪肝の方です。
白く粒々に見えるこれが中性脂肪の蓄積でございます。
細胞の5%以上を脂肪が占めると脂肪肝と呼んでおります。
それではお話を進めるために今日の話の主役肝臓ですねどんな臓器なのか基礎知識を得ておきましょう。
久田さん。
ではこちらで見ていきましょう。
肝臓は人体最大の臓器で成人では1,200から1,500gの重さがあります。
場所は体の中心の右側この辺りですね。
この働きは主に3つあります。
まず食物の栄養素を体に必要な物質に変える代謝。
体内の有害物質を無毒化する解毒。
そして消化液の一種である胆汁を作る胆汁の生成です。
肝臓の特徴は修復再生する能力が非常に優れている事。
また予備能力が高い臓器のため病気になっても初期のうちは自覚症状がほとんどなく沈黙の臓器とも呼ばれているんです。
こうした働きをしている肝臓に負担をかけているかどうかですが山本さんを振り返りますとそんな生活をしているとは思えませんね。
先ほどアルコールと関係ないのもあるんだよと言いましたがアルコールを飲んでいないのにちょっと悪い結果になったという事でこれはもう少しご説明下さい。
脂肪肝の原因は大きく分けてアルコール性と非アルコール性の2つがございます。
お酒をたくさんお飲みになりますとご存じのように脂肪肝から肝硬変肝臓がんに進行するおそれがございます。
ところが今日注目するのは非アルコール性のものですがこちら治療の必要がないと書いてありますね。
これ問題にならないんじゃないですか?今まではお酒を飲まない方非アルコール性の脂肪肝は放置しておいても問題ないというのが医者の間での定説でございました。
ところが最近この非アルコール性の脂肪肝を放置していいというのが実は間違いだという事が分かってまいりました。
間違いという事はバツ。
実はどういう事が分かったんですか?この非アルコール性脂肪肝の中にも放置していても問題のない良性の脂肪肝。
それと放置しておくと肝炎になる非アルコール性脂肪肝炎ですね。
こういうタイプがある事が分かってまいりました。
このナッシュはその後肝硬変や肝臓がんに進行するという事も分かってきております。
山本さんは精密な検査で肝臓に炎症が起きていると言われた訳ですね。
良性の脂肪肝とナッシュはどこが違うんですか?これは肝臓の写真でございますが左側が良性の脂肪肝。
こちらがナッシュでございます。
肉眼的に見て頂きますと肝臓の表面がツルツルでございます。
これが良性の脂肪肝です。
ところがこちらこれはナッシュの方ですが表面を見て下さい。
ゴツゴツしております。
このゴツゴツの原因は線維化を起こして肝臓が少し硬くなっているのが現れている訳です。
この辺ですか?そうです。
こちらは顕微鏡写真ですがこのように単に脂肪がたまっているものが脂肪以外に線維化を起こしているのが分かります。
これがナッシュでございます。
硬いという事なんですね。
こうした状態は自覚症状はあるんですか?脂肪肝になっても自覚症状はまずございません。
またナッシュに進行したとしても自覚症状はまずございません。
音もなく忍び寄って本人が気が付かないうちに進行していくのがこの病気の怖いところでございます。
そもそも非アルコール性脂肪肝の方はどのぐらいいますか?非アルコール性の脂肪肝こちらでございますが我が国には1,500万人から2,000万人と非常にたくさんの方がいらっしゃいます。
そのうち10%から20%がナッシュに進行してまいります。
更に約10年でナッシュの5から20%が肝硬変。
更に一部の方は肝臓がんになる事が分かっております。
自覚症状がないという事ですので非常に怖いですよね。
ただ一つはっきりしている事はこの脂肪肝を予防すればナッシュにはならないという事が分かっております。
では脂肪肝にならないようにする事が肝心な訳ですね。
それでは山本さんがどんな生活を送っていたのかを振り返りながら見ていきますが山本さん飲酒の習慣はありませんが果物が大変お好きでたくさんとっていらっしゃる。
健康にいいだろうという事で。
私もそう思うんですがこれどうなんでしょうか?実は果物には果糖というお砂糖がたくさん含まれておりまして過剰にとりますと肝臓で自動的に中性脂肪に置き換わってしまいます。
脂肪肝になってしまうという事が分かっております。
山本さんの場合も体にいいという事でみかんを一日数個とっている。
多い時には10個以上とっているという事でございましたので…。
それぐらい食べますよねついつい。
ただ果物のとり過ぎはやはり注意しなくちゃいけません。
また清涼飲料水こういうものにも果糖はたくさん含まれておりますので夏場熱中症対策でスポーツドリンクなどをとり過ぎないようにした方がいいと思います。
ドリンクの成分にもちょっと注意した方がいいですね。
そして間食ですが…。
これは久田さんと同じ。
やっぱりよくないんでしょうか?脂肪肝というとお肉とか脂肪分が原因と考えやすいんですが食事と食事の間に間食をとるという事が非常によくないというのが分かっております。
一度の量が少なくても間食の回数が増えれば肝臓に中性脂肪がたまってくるという事が分かっております。
そして山本さんはやや肥満気味で高血圧もお持ちだという事ですがこういった要因はどうでしょう?脂肪肝の背景には肥満とか糖尿病あるいは高血圧脂質異常症ですねこういう生活習慣病がある事が分かっております。
肥満がある方は食べ過ぎの傾向があり特に高血圧の方は血圧を上げるホルモンが肝臓の線維化を促す事が分かってきております。
脂肪肝はさまざまな病気と関係があるという事なんですね。
いろんな病気が出てきましたが関係があるのはどういう事ですか?脂肪肝やナッシュは一つは歯周病ですねこれと関係がある事が分かっています。
もう一つは睡眠時無呼吸症候群という病気と関係がある事が分かっています。
歯周病がある人は感染症を起こしやすく歯の周りのポケットから入った細菌が出す毒素によって肝臓が炎症を起こす事が分かっております。
またメカニズムははっきりしませんが睡眠中に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群とも関係がある事が分かっております。
更にこれが非常に心配なんですがナッシュは心筋梗塞や脳卒中という命を落とす病気とも関係が深い事が最近明らかになってまいりました。
そして山本さんの生活習慣運動の習慣があまりないという事は何か関係があるんですか?運動の習慣がなかったり体を動かす機会が少ない方は肝臓の中の中性脂肪を消費する事ができない。
従いましてため込む一方になって脂肪肝になりやすい事が分かります。
そして年齢とは何か関係がありますか?年齢も非常に重要で男性の場合は二十歳を越える頃から内臓脂肪がどんどんたまってくる事が分かっております。
女性の方は閉経を迎えますとホルモンバランスが崩れまして脂肪肝になりやすい事が分かっております。
脂肪肝になっても全く自覚症状がないと教えて頂きましたがそうしますと全く気付いていない方が多いという事になりますよね。
どういった事で「おや?」と気付く事になりますか?多くの方は健康診断や人間ドックでこのような超音波検査を受けて脂肪肝と診断されます。
こちらは超音波検査の画像ですがこちらは健康な方。
これが肝臓です。
黒い色をしておりますね。
これが健康な肝臓です。
それに対して脂肪肝の方。
実はここは肝臓なんですが白くなっておりますね。
これが脂肪肝です。
この差分かりますね。
このように脂肪肝と診断された時にナッシュかどうかという事はどうしたら分かるんですか?医療機関を受診して良性の脂肪肝かナッシュか診断してもらう訳ですが以前は炎症の程度や肝臓の硬さを知るために肝臓に針を刺して組織を出して検査をするという事が行われてました。
ちょっと痛いですね。
しかし最近は検査機械を使って体への負担も少なく楽にできる方法が開発されております。
どんな方法でしょうか?これは超音波タイプの検査です。
このように体に超音波を当てて調べる訳ですがこちらがこの数値で分かります。
肝臓の脂肪の量。
肝臓の硬さですねこれを簡単に何回も調べる事ができます。
この検査は受ける側にとっては体に負担がありませんね。
そしてもう一つのタイプMRIタイプとありますがこれは?このMRIですがこのような機械で行いますがこれは肝臓の輪切りでございます。
肝臓を下から見てますが硬い所は赤く正常な肝臓は緑から青に見えるという事で色で肝臓の硬さを調べる事ができます。
こういった検査機器は普及してきていますか?はい。
これは我が国でも脂肪肝外来とかナッシュ外来というようなものを標ぼうしている医療機関を中心に全国に普及しております。
私の周りにも健康診断で「ちょっと脂肪肝ですね」と指摘される人がいるんですが多くの方はそのままにしてるんですがどうですか?軽い脂肪肝というのは適切な生活習慣の改善で多くは改善致しますのでそれほど心配する必要はないと思います。
ただ中にはナッシュの方が隠れている事がありますので一度医療機関を受診してナッシュを見落とさないようにする事が重要じゃないかなと思います。
これはお酒を飲んでないから安心だと思わない方がいいという事ですね今日のお話は。
そのとおりです。
お酒を飲んでなくてもナッシュかもしれないという事がありますので要は診断をしっかり白黒つけるという事だと思います。
どうも今日のお話ありがとうございました。
2014/09/22(月) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 忍び寄る脂肪肝「あなたもナッシュ?」[解][字]

飲酒の習慣がない人が脂肪肝になる可能性があることが分かってきた。一部は「ナッシュ(非アルコール性脂肪肝炎)」や肝硬変に進行することも。自覚症状がないため要注意。

詳細情報
番組内容
「脂肪肝」には飲酒が原因になるタイプの他に、飲酒しないのに気付かずなっているタイプがある。飲酒しないのに脂肪肝になると、その一部がナッシュ(非アルコール性脂肪肝炎)となり、肝硬変、そして肝がんに進行する可能性があることが分かってきた。自覚症状がないまま進行するため注意が必要。最新の検査方法などについて紹介する。
出演者
【講師】横浜市立大学教授…中島淳,【キャスター】濱中博久,久田直子

ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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