(テーマ曲)南米アルゼンチンで世界最大級の恐竜化石が発見されました!人が小さく見える巨大な骨。
あらゆる陸上動物をりょうがする超巨大化を彼らはなぜ達成できたのか。
今回ベルリン自然史博物館のバックヤードに潜入。
恐竜研究の最前線を徹底取材しました。
巨大な化石から明らかになった成長メカニズムとは?更に更に恐竜の細胞を発見!?恐竜復活プロジェクトついに始動か!?えっついに恐竜復活?まあ結論から言うとそれはありません。
びっくりしました。
ですよね。
でも恐竜の復活の話に負けないぐらい面白い恐竜研究の最新情報をお届けします。
わあ〜。
今日は恐竜の化石を特別にお借りしてきました。
こちら竜脚類と呼ばれる恐竜の足の骨の化石の一部なんですよ。
ちょっと触ってみますか?触っちゃっていいんですか?大丈夫という事です。
これが恐竜の骨なんですね。
ちょっと信じられない。
ちょっと持ち上げて…。
持ってみようかな。
重い…重〜い!すごい。
そもそも…だけどこれがすごい貴重なものなんですよね。
すごい貴重ですよ。
恐竜の化石ってめったに見つからないんですよ。
これまで取り引きされた恐竜の化石の中で最も高い値段で取り引きされたのがティラノサウルスという肉食恐竜の全身骨格です。
いくらで取り引きされたと思いますか?絶対貴重なものだし全身ですもんね。
…とかいっちゃうんじゃないですか。
さすがやっぱりそのぐらいするんですね。
お金の価値はそうなんですが実は…この中ですか?そうです。
今日はその情報を取り出そうというのがテーマなんですが。
実はこうすればいいんです。
さあ化石が運ばれてきました。
まさか…えっ。
切っちゃう?
(竹内)これダイヤモンドの刃がついた特殊なカッターで真っ二つにしちゃうんですね。
更には研磨剤をつけてゴシゴシこすっちゃうんですよ。
こんな貴重なものを切ってしかも削っちゃうって…。
そうなんですよ。
いいんですか?一旦切って削っちゃったらもう元には戻らないんでこれまではそんなに積極的には切ってこなかったんですよ。
ところが最近は世界中で次々と恐竜の化石が切られているんですよ。
そうなんですか。
という事で今日はですね…ご紹介します。
切って何が見えてくるのか楽しみですね。
大きい恐竜来ましたね。
1億5,000万年前の北米にいたステゴサウルスという植物食恐竜です。
体長7m。
実物の大きさなんですよ。
実物大。
迫力ありますね。
背中に生えている板みたいな骨これプレートっていうんですが研究者たちはこのプレートの役割についていろんな説を提唱してきたんですよ。
例えばこのような説もあるんです。
プレートをこのように横に寝かせてまるで鎧のようにして身を守ったのではないかという。
でも2年前に日本の恐竜の研究者がこのプレートを切ってプレートの役割にまつわる論争にほぼ決着がついたんです。
こんな巨大な骨の背びれを持ってるのは。
林さんは世界各地の博物館に保管されている20体のステゴサウルスの化石を切断してきました。
複数のステゴサウルスを切断・比較した本格的な研究は世界初。
国立科学博物館には林さんが切断したステゴサウルスの化石が展示されています。
プレートはそろっているように見えますがこれはレプリカ。
本物は関係者以外立ち入り禁止の収蔵庫に大切に保管されています。
見せてもらうとあらら本当にバラバラだ。
更に厚さ0.06mmの極薄にまでスライスされていました。
薄片と呼ばれます。
果たしてプレートの中はどんな構造になっているのか。
穴だらけでした。
足の骨と比べると違いは明らか。
スポンジのようにスカスカだったんです。
人間で言えば…あんなにスカスカだったとは。
そりゃ鎧は無理ですよね。
駄目ですね。
全然駄目ですね。
今日はその本物をお借りしてきました。
こちら実際にプレートを切って作った薄片です。
ああ確かに穴が結構ありますね。
へえ〜。
それでこの…えっ何のためなんでしょう。
さあ正解は専門家に伺いましょう。
大阪市立自然史博物館の林昭次さんです。
あのスカスカの穴って何であるんですか?あの穴は実は血管が入ってたと考えられるんです。
血管が通ってたんですか?はいそうなんです。
今回さまざまな角度からこのプレート切断してみるとですねこの血管がどうやら体から板の根元から枝分かれして板中に張り巡らされていた事が分かってきたんです。
だけどどうしてステゴサウルスこんなに血管がプレートに張り巡らされてたんでしょうかね。
実は現在生きている動物の中にステゴサウルスのプレートと同じ役割のあるものを持っている動物がいるんです。
え〜何の動物だろう。
うわ〜すごい!鳥鳥鳥!たくさんいますね!
訪れたのは神戸市の動物園。
ここにステゴサウルスのプレートと同じ役割のものを持つ鳥がいるんです
いましたいました。
南米原産のオニオオハシです
ああ見た事ある。
きれいですねクチバシ。
特徴は何と言ってもこのカラフルで大きなクチバシ。
しきりに手入れするほど大切なクチバシ。
実はこのクチバシにはある秘密が
どうしてこんなに大きくなってるんですか?その仕組みが…
温度を測るためにまずはオニオオハシを餌でおびき寄せます
来た来た来た…あっすごい!
さあ餌に気を取られている隙に温度を計測します
31.6℃。
飼育室の温度より7℃も高かったんです。
サーモグラフィーで撮影するとクチバシが真っ赤に映し出されていました
なるほどラジエーター。
熱を逃がしてたんですね。
という事はステゴサウルスのプレートも熱を逃がすためにあったという事なんですね。
だけど…体が大きいからじゃないですかね。
体が大きいから?体が大きくなればなるほど大量の熱を蓄える事ができるんですがその反面熱を逃がすのは苦手になっちゃうんですよ。
えっ何でですか?例えば体の大きさが2倍になったとしましょう。
そうしたら熱を蓄える事ができる体積は2の3乗で8倍になる訳ですね。
でも熱を逃がす事ができる表面積というのは2の2乗で4倍にしかならないんですよ。
だから熱が籠もっちゃうんです。
ああそういう事か。
なので何らかの…そうなんです。
例えばこれはステゴサウルスよりも1,000万年ほど前に生きていた原始的なステゴサウルスの仲間なんですが体長が4mほど。
非常に小さいのが分かるかと思います。
放熱用のプレートも非常に小さいという特徴を持っています。
更にプレートが放熱板だった事を裏付けるこのような研究もあるんですよね。
これはプレートに見立てた金属の板に風を当てて冷却効果を調べた実験なんです。
面白いですね。
(林)この研究ではプレートがない状態とある状態では約3割近くも熱の放出率が違うというのが分かっているんです。
プレートに放熱機能があるって事がよく分かりました。
更に今回の研究で林さんはプレートのほかにステゴサウルスの足の骨も切断したという事なんですよね。
こちらがその断面ですね。
(林)年輪のような線が見えますがこれは成長停止線と呼ばれる線で数える事で恐竜の年齢も推測する事ができるんです。
すごい。
年齢まで分かっちゃうんですね。
でも林さんが博物館に行って「この恐竜の化石を切らせて下さい」って言っても…そうなんです。
非常に大変で実際世界中の博物館に交渉して…そんなに?まあでもそれだけ貴重なものという事ですよね。
どうしてそれほど貴重なのか。
こちらを見て頂ければ分かると思います。
恐竜の発掘現場です。
ああはけを使ってるんですね。
すごい。
丁寧。
化石の発掘はいかに原型を崩さずに掘り出すかがとっても大切なんですね。
あんなに丁寧に扱うんですね。
じゃあどうやって博物館に「切らせて下さい」って説得するんですか?それはですね…へえ〜。
本当に何か営業マンみたいな感じです。
(一同)お〜!すごいですね。
何これ?大きいけど…。
この恐竜は一体…。
こちらの恐竜は現在発見されている最大級の恐竜アルゼンチノサウルスと呼ばれる恐竜なんです。
頭の先から尻尾の先までが30m以上。
このアルゼンチノサウルスのように首が長くて巨大な恐竜は竜脚類と呼ばれます。
そしてなぜこのような巨大化ができたかというのが恐竜の最大のミステリーの一つなんです。
その謎が今化石を切る事で明らかにされつつあります。
巨大な竜脚類の全身骨格が展示されている…特別にそのバックヤードに入れてもらうと…。
そこにあったのは竜脚類の巨大な骨骨骨!彼らはなぜこれほどの超巨大化を成し遂げたのか。
この謎に挑む研究者がいます。
サンダーさんは竜脚類巨大化の研究を続けて30年。
この分野の第一人者です。
この巨大な骨はアパトサウルスという竜脚類のもの。
サンダーさんはこれまで300体を超える竜脚類の化石を切断してきました。
その結果竜脚類の骨の内部にほかの恐竜にはない特徴がある事を突き止めました。
木の年輪のように広がっているはずの…ではなぜ急成長できたのか。
そのカギは偏光顕微鏡で見る事ができます。
特殊なフィルターが組み込まれていて結晶の方向がそろっているかどうかが分かるのです。
竜脚類の足の骨の薄片です。
白い部分は血管が入っていた空洞。
それ以外は一面茶色に見えますよね。
ところが薄片を回転していくと…。
紫と緑のしま模様が現れました。
一見同じ骨が実は2種類に分かれていたのです。
ミルフィユのように重なった2種類の骨。
これこそ巨大化の謎を解き明かす重要な発見だったのです。
2種類の骨ってどういう事ですか?色の違いというのは結晶の配列の方向性の違いを表しているんです。
じゃあ骨の出来方が違うって事ですか?そうなんです。
出来方が違うんです。
その骨の出来方について発泡スチロールに例えて説明していきたいと思います。
まず偏光顕微鏡で見られる緑の部分これを表現すると水槽の中にきれいに敷き詰められている状態。
逆に紫の部分。
それはグチャグチャに敷き詰められている状態です。
これが急成長とどう関係あるかと言いますとそれは実際競争してみれば分かります。
という訳で竹内さん対奈央さんでこの続きを敷き詰めてもらいましょう。
先にいっぱいになった方が勝ちですよ。
頑張ります。
それではよ〜いスタート。
これ性格の差が出てるんですか?はい!勝った〜。
惨敗…。
という事で竹内さんの圧倒的勝利となりましたが。
でもそりゃそうですよね。
こんなグチャグチャに入れて。
そういう事なんですね。
一方でこういうふうにスカスカに積み上げていきますと欠点もあるんです。
奈央さん何でしょう?何でしょう。
隙間空いちゃってますよね。
そうですね。
奈央さん押してみて下さい。
押しても微動だにしない。
これはゆるゆるですね。
不安定ですよね。
実は繊維がバラバラですとこのように壊れやすいんです。
こうした構造は足の骨など大きな力がかかる骨には向かないんですね。
でも竜脚類はこの強度の問題も克服していた事が分かっているんです。
まずは方向性のバラバラな骨で素早く枠組みを作っていく。
このままでは強度が足りないんですね。
そこで今度は空洞の中に方向性のそろった骨を後から敷き詰めていくんです。
すると急成長しながらも丈夫な骨を作る事ができるという事なんです。
なるほど。
こうした仕組みというのは成長スピードの遅い動物例えば現在生きている両生類爬虫類ではほとんど見られない構造なんですね。
つまり成長スピードを速めて巨大化するために恐竜が獲得した形質なんです。
さあ実は竜脚類の骨を切った事でもう一つ重要な発見があったんです。
巨大化の謎を解き明かす3つ目の手がかりは背骨の中に隠されていました。
サンダーさんが見せてくれたのは…巨大な竜脚類の背骨はまるでスポンジのようにスカスカの構造だったのです。
この構造はステゴサウルスのプレートにも似ています。
しかし背骨は体の中に埋まっているのでプレートのような放熱機能は果たせません。
ではなぜスカスカな構造をしているのでしょうか。
実はこうした構造は鳥の背骨にもよく見られるとサンダーさんは言います。
同じようにスカスカです。
鳥ではこの穴は気嚢と呼ばれる器官へとつながっています。
気嚢は肺の前と後ろにあり呼吸に関係する働きを担っています。
サンダーさんは竜脚類もこの気嚢を持っていて鳥と同じ特別な呼吸をしていたと考えています。
気嚢を使った呼吸の仕組みはこうです。
まずは息を吸った時新鮮な空気が後ろの気嚢から前の気嚢に流れ肺に酸素を供給します。
次に息を吐いた時実は後ろの気嚢に新鮮な空気が残っていて今度はそれが肺に供給されます。
気嚢を使えば息を吸う時だけではなく吐く時にも肺に酸素を供給する事ができるのです。
竜脚類は気嚢を骨の中にまで広げる事でより多くの酸素を体に取り込む事ができるようになっていました。
この効率的な呼吸によって代謝を活性化し急成長を実現させていたのです。
気嚢ってすごい仕組みですね。
(竹内)すごいですね。
息吸っても吐いても酸素がちゃんと肺の中に入る。
しかも骨の中に肺が入ってるって…。
不思議。
えっ何でしょうか。
それはずばり体の軽量化です。
軽量化。
確かにスカスカだと骨自体軽くなりますもんね。
そうなんです。
竜脚類ほど巨大な恐竜になると骨格を筋肉で支えるのが大変なんです。
大きな力のかからない…なるほど。
更に竜脚類の巨大化の謎を探るために今度はもっとミクロな世界に迫っていきたいと思います。
もっとミクロ?サンダーさんが見ているのは極めて小さな構造。
それがこの小さな点。
僅か0.01mm。
その正体は何か。
実はこの組織は私たち人間の骨の中にも見られます。
骨の成長に関わる骨細胞です。
1億年以上前の恐竜の化石に細胞の跡までもが残されていたのです。
驚くべきは竜脚類の骨細胞の数でした。
哺乳類と比較してみたところ竜脚類の骨には最大で2倍もの密度で骨細胞が存在していたのです。
うわ〜細胞が残ってたって事ですか?正確にはあの茶色い穴は細胞が入っていた空洞なんです。
じゃあそこからDNAを取り出すとかはできないんですよね。
そうですね今の段階では。
やっぱり骨細胞が多いと成長が速いって事なんですか?そうなんです。
骨細胞というのは骨を作る細胞のなれの果てというのと当然骨細胞を通じて骨の中に栄養を循環させるので骨細胞が多ければ多いほど骨がどんどん成長するという事を示しています。
なるほど。
まだよく分かっていない部分もあるんですけども巨大化と深い関わりがあるはずだとサンダー博士は考えています。
でも恐竜の化石を調べていって細胞レベルの話まで全部分かっちゃうってものすごいですよね。
最新の恐竜研究というのはまさに細胞レベル。
こうした分析を行うにはやはり化石を切る事が必要になってくるんですね。
最近では恐竜の病気に関する研究も行われています。
病気まで分かるんですか?
(林)こちら子どものステゴサウルスの足の骨の断面なんですけどもここに小さな穴が開いてるのが分かりますか?開いてますね。
(林)これはですね骨が成長したあとに開いた穴なんですね。
通常の化石にはこんな不自然な穴は見られないんです。
つまり骨が溶けてしまった。
実はこういった事はヒトでも起こりまして。
その病気の一つというのが…恐らくこのステゴサウルスは悪性腫瘍に侵されて死んでしまったのかもしれないと考える事ができます。
すごい。
死因まで分かっちゃうんですよ。
切る事によってこれまで研究され尽くした標本でもまた新たな事というのが分かるので。
どうしても形からでは情報不足でどういう動物だったのか調べにくいので中の構造も調べて見た目の構造も調べてそれで初めてその動物がどんな暮らしをしていたのかという。
でも最初きっと切るのって勇気いる事だったとは思うんですけど。
恐竜って一番最初の方で10億円とか言ってましたよね。
およそ10億円です。
すごい高いと思いますけどそれをそのまま飾っておくのも一つの手でしょうけど切る事によって何か全然価値がもっと高まるなっていう気がしましたね。
実はあの…
(竹内)そうなんですか。
実はあれを切って恐竜を切るっていう研究が爆発的に広がったんですね。
あれを切ってティラノサウルスがいくつで子どもを産めるようになっていくつで大人になっていくつで死んだのかという事が分かったんですね。
恐竜の寿命が分かるという話もあの10億円の恐竜を切って初めて分かったんです。
そうなんですね。
いくつぐらいなんですか?あの10億円の恐竜は確か30歳ぐらい。
本当に道が開けた感じがしますね。
(林)そうですね。
林さんどうもありがとうございました。
ありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに。
2014/09/21(日) 23:30〜00:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「恐竜の細胞が見える!?化石研究新時代」[字]
貴重な恐竜化石を切り刻み、内部を分析する研究が大流行。細胞レベルの研究まで行われていて、恐竜巨大化の謎もわかってきた。ステゴサウルスの背中の板の謎にも迫る。
詳細情報
番組内容
高価なものでは10億円もする恐竜化石だが、研究の最前線では惜しげもなくそれを切り刻んでいる。化石は成分としてはほぼ「石」だが、1000分の1ミリ単位で生きていたときの構造が残されており、切って断面を見ることで、細胞の様子や血管の通り方、それに年齢や栄養状態などさまざまな情報が得られるのだ。切り刻んではじめてわかった、ステゴサウルスの背中のプレートの用途や、巨大恐竜・竜脚類の巨大化の謎に迫る。
出演者
【ゲスト】大阪市立自然史博物館学芸員…林昭次,【司会】南沢奈央,竹内薫,【キャスター】江崎史恵,【声】樫井笙人,【語り】中山準之助
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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