ダーウィンが来た!「びわ湖の巨大ナマズを追え!」 2014.09.21

みです。
突然ですが日本の川や湖で釣りをする人の間で「BIG3」と呼ばれる巨大魚がいるのをご存じですか?まずは北海道の北部などにすむイトウ。
最大で2mにもなるサケの仲間です。
豪快に魚を丸のみ!続いては高知の四万十川などで見られるアカメ。
こちらはスズキの仲間で最大1m30cmにもなります。
赤く輝く目がちょっと不気味ですね。
そしてBIG3残る1つはびわ湖とその周辺だけにすんでいます。
一体どんな魚なんでしょうか?正体はびわ湖の主で「ビッシー」じゃないかという話はよく聞きます。
えそうなの?釣り人を恐れさせるその魚とは?こちらビワコオオナマズです。
全長1mを超えるびわ湖一の巨大魚。
その大きさは日本にいる他のナマズの倍もあります。
でも生態は謎だらけ。
そこで…!今回番組ではビワコオオナマズの大調査に密着しました。
捕獲して発信器を取り付けたビワコオオナマズを船で追跡。
すると驚きの行動が明らかになったんです。
更にビワコオオナマズの産卵にも遭遇。
激変する環境の中で必死に命をつなぐ姿も見えてきました。
「びわ湖の主」と呼ばれる巨大ナマズ。
その知られざる素顔に迫ります。

(テーマ音楽)日本最大の湖…面積は670平方キロメートル。
東京23区がすっぽり入るほどの広さです。
広大な湖は魚の宝庫。
アユやオイカワなど50種類以上の魚たちに出会うことができます。
豊かな湖の恵みで生計を立てる漁師さんも大勢いるんですよ。
そんなびわ湖で最大の魚が今回の主人公ビワコオオナマズです。
しかし詳しい生態はほとんど分かっていません。
まず私たちが向かったのはびわ湖の北部。
地元の漁師さんたちに聞いたビワコオオナマズがいるというポイントです。
潜ってみると大きな岩がありました。
高さ10mはあるでしょうか。
漁師さんたちは「ナマズ岩」と呼んでいます。
夜行性のビワコオオナマズは昼間この岩の隙間で休んでいるというんですが…。
その姿はどこにも見当たりません。
残念ながらここでビワコオオナマズに出会うことはできませんでした。
でもビワコオオナマズの活動が盛んになるのは夜です。
日没を待って本格的に捜索開始です。
あっ早速何か発見!ナマズのようです。
もしかしてビワコオオナマズ?でも違いました。
これはイワトコナマズという別の種類。
やはりびわ湖とその周辺でしか見られない珍しいナマズですが大きさは最大で60cmほど。
ビワコオオナマズには及びません。
また何かいました。
全長は1m近くあります。
今度こそビワコオオナマズでしょうか?おや?よく見るとナマズの特徴であるヒゲがありません。
カムルチーという外来種でした。
夜を徹しての捜索が続きます。
時刻は間もなく朝の5時。
とその時湖の底で何かが動きました。
ナマズのようです。
これまで見たどの魚よりも大きな体をしています。
全長は1m以上あるでしょうか。
ヒゲもあります。
間違いありません。
ついにビワコオオナマズ発見です!それにしても大きいですね!ダイバーと比べるとよく分かります。
さすがは「びわ湖の主」と呼ばれるだけのことはありますね。
うわっ!口もとっても大きいですよ。
この口で獲物となる湖の魚をひとのみにするんです。
そして口元の長〜いヒゲは獲物のにおいを感じるセンサーになっています。
視力はあまり良くないそうです。
目元は結構かわいいですね。
あ動き始めました。
大きな体に似合わず素早い泳ぎ。
なかなかついていくことができません。
結局ほんの数分で見失ってしまいました。
そしてこの時からビワコオオナマズの姿を全く見られない日々が1週間も続いたんです。
そんなある日私たちは耳寄りな情報をキャッチしました。
近畿大学でビワコオオナマズの追跡調査をするというんです。
早速魚の行動を研究している光永靖准教授を訪ねました。
ビワコオオナマズを追跡するためのとっておきの秘策があるといいます。
光永さんの計画はこうです。
まずビワコオオナマズを捕まえて体内に超音波発信器を取り付けます。
そして信号を頼りに追跡。
私たちはそれを撮影することになりました。
かつてタイのメコンオオナマズでも行い成功を収めた追跡方法です。
でも発信器を取り付けるナマズを捕まえなければ話が始まりません。
そこで…。
今回の調査のカギを握る人物が登場。
釣りの腕前は名人級。
かつてビワコオオナマズを釣り上げたこともあります。
さあ捕獲作戦が始まりました。
ビワコオオナマズがよく釣れるのは夜。
しかし相手はびわ湖の主。
そう簡単にはいきません。
成果のないまま日にちだけが過ぎていきました。
そして5日目の夜。
ついにビワコオオナマズがヒットしました。
やりましたね!うわ〜重そう。
運ぶのも一苦労です。
ホント!大きなクーラーボックスからはみ出しそうですね。
朝になりました。
いよいよ捕獲したビワコオオナマズに発信器を取り付けます。
まずは麻酔薬を水に入れて眠らせます。
眠ったところでちょっと失礼して身体測定。
やはりかなりの大物です。
そして発信器をビワコオオナマズの体内に埋め込みます。
これで準備完了。
湖へ放流です。
まだぐっすり眠っているようですがナマズくん大丈夫かな?よかった!30分ほどで目を覚まし泳ぎ始めました。
発信器から出る超音波も順調にキャッチできています。
これで半径500m以内にいればビワコオオナマズの位置を突き止めることができるんです。
さあ沖へ向かうビワコオオナマズを追って船で追跡開始!発信器からの情報だとこの真下にビワコオオナマズがいるはず。
早速カメラマンが潜ります。
ところが視界が悪く見つけることができません。
更に…。
カメラマンの接近に気づいたのでしょうか。
逃げてしまったようです。
その後何日も追いかけ続けましたが潜る度に逃げられ結局ビワコオオナマズの姿を撮影することはできませんでした。
ちょっと待った!これじゃ発信器を付けた意味がないじゃないですか。
う〜ん厳しいですねヒゲじい。
でもね姿は映像に収められませんでしたが発信器のおかげで大発見があったんですよ。
えっ大発見?何?実は今回ビワコオオナマズだけでなく普通のナマズにも発信器を付けて行動を調べたんです。
すると普通のナマズは岸から数十メートルほどの狭い範囲を移動していることが分かりました。
ほうほうほう。
一方ビワコオオナマズは岸から500mほど離れた沖合までかなり広い範囲を動いていたんです。
へえ!これはビワコオオナマズが大きな獲物を狙っているからだと考えられるそうなんですよ。
へえ!大きなコイ出てコイって探してたんですかね。
ヒゲじいうま〜い!ヘヘヘそれほどでも。
でねヒゲじい実はもう一つ大きな発見があったんです。
えな〜に?こちら。
ビワコオオナマズの動きに時刻を入れると昼間でも活発に動いている事が分かりますよね。
あ〜はいはいはい。
夜行性だと思われていたビワコオオナマズが昼でも活発に行動することが分かったのも今回の大発見だったんです。
は〜!昼も夜も湖を忙しく泳ぎ回っていたなんてビワコオオナマズはビワコオオナマ「ケ」ズなんですな。
なんちゃって。
第2章ではビワコオオナマズの産卵をスクープ!そこには大きく環境が変わる中で必死に命をつなぐびわ湖の主の姿がありました。
困難を極めるビワコオオナマズの撮影。
でも誰でも簡単に出会える場所があります。
それは…ビワコオオナマズは大の人気者。
いつも子どもたちの注目の的です。
他にも博物館にはびわ湖ならではの生きものがいっぱい。
実はびわ湖周辺には「固有種」と呼ばれるここだけにすむ生きものが61種類もいるんです。
一体どうしてなんでしょう?その秘密っていうのは実は…400万年の歴史が固有種を生み出した訳。
それは大きく2つあります。
1つ目は長い年月の中で他の住みかがなくなりびわ湖にだけ取り残されたもの。
その代表例がビワコオオナマズです。
2つ目は長い年月の中でびわ湖の環境に合わせ独自の進化を遂げたもの。
こうした理由でびわ湖には固有種が多いんです。
400万年の歴史を持つびわ湖はロシアのバイカル湖やアフリカのタンガニーカ湖などと並んで世界有数の古代湖として知られています。
古代湖の多くは固有種の宝庫なんですよ。
例えばロシアのバイカル湖にはここだけにすむヨコエビの仲間が200種類以上もいます。
こちらアフリカのタンガニーカ湖にはこの湖だけで見られるシクリッドという魚の仲間が250種類もいるんです。
私たちの身近にあるびわ湖。
世界有数の自然豊かな湖と肩を並べる貴重な湖だったんですね。
ビワコオオナマズの暮らしを追う今回の取材。
私たちにはもう一つ大きな目的がありました。
それは産卵の様子を撮影することです。
これは今から25年前ビワコオオナマズの産卵を記録した貴重な映像です。
岸辺に集団で押し寄せ一斉に卵を産んでいます。
ビワコオオナマズは梅雨の大雨で湖の水位が上昇した時一時的に水につかる岸辺で産卵するといいます。
こうした場所では陸地の栄養分を利用して植物プランクトンが大量に発生。
更にその植物プランクトンを食べる動物プランクトンも大量発生します。
ここなら生まれてくる赤ちゃんたちが食べ物に困らないというわけです。
私たちはかつての目撃情報をもとに撮影場所を探りました。
ところが条件を満たす場所は一向に見つかりません。
最後にたどりついたのが30年にわたりビワコオオナマズを観察してきた松岡正富さんです。
今はかつてのような産卵風景を見るのは極めて難しいと言います。
松岡さんが指摘する産卵場所の荒廃。
その一つは湖畔の変貌です。
堤防や道路が造られ自然の岸辺は減り続けています。
もう一つは水位を一定に保つために造られた水門です。
大雨が降ると下流に水を流し洪水を防いでいます。
しかしその一方でビワコオオナマズの産卵に必要な水位の上昇も起こらなくなったのです。
夜松岡さんがかつて産卵を目撃した場所を案内してくれました。
今では貴重な自然の岸辺です。
増水すると膝の辺りまで水位が上がったそうです。
でもここ10年この岸辺が水浸しになることはありません。
突然松岡さんが何かを指さしました。
ビワコオオナマズです!カップルのようです。
大きい方がメス小さいほうがオスです。
あ!オスがメスに巻きつきました。
これはビワコオオナマズの産卵体勢。
オスの巻きつきが刺激となってメスは産卵するんです。
巻きついてから30秒ほどたったでしょうか。
ようやく離れました。
2匹が離れる時メスの体から小さな白い粒が飛び散りました。
これがビワコオオナマズの卵です。
巨体に似合わず小さな小さな卵です。
幸運にも目撃することができたビワコオオナマズの産卵。
しかし期待していた集団での産卵ではありません。
湖が一向に増水しない中このカップルはやむにやまれず条件の良くない岸辺で産卵したのだと松岡さんは考えています。
産卵場所を奪われ集団での産卵という本来の営みを失いつつあるビワコオオナマズ。
びわ湖の主に今大きなピンチが訪れています。
いや〜大変なことになってるんですなぁ。
でも条件が悪いという場所で産卵したカップルはなかなかたくましいですな。
立派立派!う〜ん…そうとも言えるんですが集団で産卵しないのは生まれてくる子どもたちを危険にさらすことになるんです。
どういうこと?産卵しているビワコオオナマズの横別の魚がいるの分かりますか?はいはい。
これコイです。
水草に付いたビワコオオナマズの卵を食べに来たんです。
え〜そうなの!?はい。
コイだけじゃありません。
こちらはスジエビ。
体は小さいですがビワコオオナマズの卵を食べてしまう危険な敵です。
見つかってしまうと卵が生き残る望みはほとんどありません。
でも敵に見つかると卵が食べられちゃうのは集団で産卵しても同じことなんじゃないですか?それが違うんです。
こうして集団で産卵すれば食べ尽くされることがなく生き残る卵が多くなると考えられているんです。
あ〜なるほど。
集団で産卵することができなくなると子どもたちにとって危険だということ分かってもらえましたか?はい。
集団での産卵は子孫を残す有効な「しゅ〜だん」だったというわけですな。
激変する環境の中でビワコオオナマズは苦労をしていたんですなぁ。
ナマズたち〜頑張れよ〜!産卵から2日後。
かろうじて生き残ったわずかばかりの卵です。
中では赤ちゃんが激しく動いています。
膜を破って外に出ようとしているんです。
あっ出てきました!こちらの赤ちゃんも奮闘中。
頑張って!赤ちゃんの大きさは6mmほど。
しばらくの間はおなかにある袋から栄養分を吸収して大きくなっていきます。
ふ化から3日後。
岸辺でビワコオオナマズの赤ちゃんを見つけました。
およそ1cmに成長しています。
顔には立派なヒゲ。
間もなく自分で獲物を探すようになります。
しかしまだ小さい赤ちゃんは肉食の魚に狙われる立場でもあります。
特に恐ろしいのはブラックバスやブルーギルといった食欲旺盛な外来種。
卵からかえった子どもたちを取り巻く環境もまた昔とは違って厳しいものになっているのです。
ビワコオオナマズの数は次第に少なくなってきています。
びわ湖の長い歴史とともに生きてきたビワコオオナマズ。
かつてない逆境の中びわ湖の主は懸命に命をつないでいるのです。

(官兵衛)「宇都宮を討ち朝房ら人質を殺せ」と。
2014/09/21(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「びわ湖の巨大ナマズを追え!」[字]

びわ湖にすむ巨大魚ビワコオオナマズ。謎だらけの生態を大調査!発信器をつけて追跡すると驚きの行動が明らかになった!さらに神秘の産卵にも遭遇!知られざる素顔に迫る。

詳細情報
番組内容
日本最大の湖・びわ湖にすむ巨大魚ビワコオオナマズ。全長は1.2メートルと普通のナマズの2倍。体重は5倍の10キロ。びわ湖とその周辺だけでしか見られない上に数も少なく、詳しい生態は謎に包まれている。今回、研究者の調査に密着し、発信器つけたビワコオオナマズを徹底追跡。その結果、驚きの暮らしぶりが次々と明らかになった!さらに神秘的な産卵の瞬間にも遭遇!“びわ湖の主”の知られざる素顔に迫る。歌:平原綾香
出演者
【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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