THE世界遺産【「幻のトラがすむ火山の島」〜インドネシア】 2014.09.21

赤道直下スマトラ島に広がる手つかずの森
木の幹にコブのようなものがありました
よく目を凝らして見ると
木の模様にカムフラージュしていたのは
深い森に分け入ると
いました
アジアで唯一の大型類人猿
さすがあくびも豪快
そのしぐさや表情は人間そっくり
太古から続くジャングルは今も…
今日の世界遺産は
雨の森には
ここだけにしかいない生き物達があふれています
ラフレシア
幻のトラを追って緑の秘境の奥へ
スマトラ島の中央に
噴煙を上げる火山があります
火山が生んだ入り組んだ地形
高地にまで森は広がっています
この深い森を育んだのは
熱帯の強い日差しと年間8000ミリも降る雨
険しい地形が人の侵入を阻み
雨の森は守られてきました
日本の国土よりわずかに大きいスマトラ島
島に残された3ヵ所の熱帯雨林が
世界遺産です
島の北部にあるのが
命の輝き1つ目は
「森の人」オランウータン
高い知能を持ち毎日快適なベッドを作ります
ここはサル達の楽園です
白い毛の長いしっぽ
この島だけに生息する…
モヒカン頭がトレードマーク
サーカスのごとく木々を渡ってきたのは
オランウータンの親子です
子どもは生後6ヵ月のまだ赤ちゃん
母親は20歳前後です
オランウータンは群れをつくらずこうして単独で暮らしています
好奇心旺盛な子どもが
母親から離れて遊びにいきました
すると心配した母親が我が子を追います
捕まえて連れ戻します
オランウータンの子どもは7年間ほど
こうして母親と暮らします
自分の重みで木をしならせ器用に移動します
向かった先には
野生のマンゴー
果物はごちそうです
かつて熱帯アジアに広く生息していた
オランウータン
今ではスマトラ島と隣のボルネオ島だけに残ります
大人のオスが登場しました
オスの特徴は脂肪でできた顔のエラ
自分を大きく見せることで強さをアピールするのです
彼らにはちょっと変わった習性があります
葉っぱをむしり太い枝のある場所に集めています
作っていたのはベッドです
こうして毎日新しいベッドを作ります
人間に最も近い類人猿
この雨の森はオランウータンにとって
最後の住みかなのです
国立公園の森の外側に
オランウータンの保育園があります
ここでは密猟により親を殺されたり
ペットとして飼われていた子ども達が保護されています
飼育員は母親代わり
24時間つきっきりです
人間の赤ちゃんと同じですよこっちが泣いたかと思うとそっちも泣きだして毎日てんやわんやです
これは木登りの練習
森で生きていく知恵を身につけさせます
この施設の目的は
保護したオランウータンを野生に戻すこと
これまで200頭を森に返してきました
子ども達はみんなドリアンが大好き
ふるさとの森に帰る日はもうすぐです
命の輝き2つ目は
幻のトラ
火山の湖が彼らの聖域を守りました
クリンチ山を中心に広がる雨の森
今も活発に活動を続ける火山の麓には
あちこちで温泉が湧き出します
山麓にある公園の事務所に
森で起きた悲劇の跡が保管されていました
密猟者から押収したトラの毛皮です
世界で唯一島にすむトラスマトラトラ
毛皮を狙われ数を減らしました
森の王者と恐れられたのも今は昔
現在の生息数はおよそ500頭
絶滅の危機が迫っています
調査隊と共に幻のトラを追いました
深い森を行くと不気味な鳴き声がします
声の主はフクロテナガザル
縄張りを主張しているのです
大きなのど袋で出す声は
5キロ先まで届きます
行く手に湖が見えてきました
東南アジアで最も高い場所にある湖
火山の噴火口に雨水がたまって生まれました
スマトラトラの生息地はこの湖を渡った先にあります
手こぎボートで2時間
対岸の森は人が足を踏み入れることもありません
こうした川にはシカをはじめ様々な動物が水を飲むために集まりますもちろんスマトラトラもやって来ますよ
しかし広い縄張りを動き回るトラを探し出すのは
容易なことではありません
けもの道でレンジャーが何かを見つけました
これはトラが地面を掘った跡ですよ
まだ新しい
幻のトラはすぐ近くにいます
火山がつくり出した湖
そのほとりでスマトラトラを追います
それは国立公園のレンジャーですら
めったに目撃できない幻のトラ
これはトラが掘った跡です地面を爪で引っかいて縄張りを示しているんです
スマトラトラは地面を掘って
自分のにおいをつけていました
穴はまだ新しい
近くにきっといます
ここに監視カメラを設置
5年前からこうして
生息数や生態を調査してきました
カメラは実にたくさんの動物を捉えていました
体長は40センチほど
木登りの上手な小型のクマです
闇の中貴重なバクの姿も映っていました
トラのかっこうの獲物
泥浴びをしています
とその直後
ついに現れました
ここに写っている2匹のトラはサンバーのにおいをかぎつけてやって来たんですよ
実はこの2頭はまだ子ども
あとから母親もやって来ました
監視カメラで確認されたトラは166頭
島に生息するトラの数の実に3割にあたります
火山がつくった湖が密猟者の侵入を阻みました
幻のトラの最後の砦
スマトラ島の熱帯雨林は…
ミネラルを豊富に含んだ火山灰の土壌に
適した作物があります
コーヒーの実を収穫すると思いきや
地面から何かを拾っています
これはジャコウネコのフンですコーヒーの豆がまじっているんですよ
雨の森に生息する…
完熟したコーヒーの実を好んで食べます
実は腸の中で発酵し
種はフンと共に排泄されます
これが最高級の豆となるのです
焙煎はシナモンの木を燃やして
じっくり3時間
ひいた豆をそのまま煮出すのがインドネシア流です
世界で最も高価といわれる…
一杯5000円の値がつくことも
スマトラの熱帯雨林は世界で最も古い森の一つです
森の地面に毒々しい大輪の花が咲いていました
生存競争の激しいジャングルで生き抜くための
この花の秘策とは
スマトラ島の雨の森には
何と1万種もの植物がひしめいています
命の輝き3つ目は
森の底に咲く世界最大の花です
高さ60メートル
20階建てのビルに匹敵するフタバガキ
木の上にオランウータンの姿がありました
フタバガキの実を食べています
この巨木一風変わった方法で生育地を広げます
枝から実が落ちてきました
スローモーションで見ると
プロペラのようにクルクルと回っています
羽根を付けることで
種を遠くまで飛ばすことができるのです
倒木の上に何かが動いています
タマヤスデです
彼らは落ち葉を食べて分解する
いわば森の肥料の作り手
驚くと丸くなって身を守ります
その様はまるで巨大なダンゴムシ
地面から直接咲いた不気味な花
直径何と1メートル重さ8キロ
この突起から肉が腐ったようなにおいを放ち
ハエを誘い受粉を手助けさせます
ラフレシアには葉も茎もありません
なぜでしょう
これはラフレシアの蕾ですブドウ科の植物の木の根に寄生しているんです
何と根っこに寄生
他の植物から栄養を奪い取るのです
標高2000メートルを超える高地にも
不思議な植物が生きていました
虫を食べる植物です
甘いにおいで虫をおびき寄せ
袋の中で溶かして養分にします
袋は葉の一部が変形したもの
土壌の痩せた高地で生き抜くため
肉食に進化したのです
生息する地域に合わせ姿形を変えた生き物達
その命は鎖のようにつながり
網の目のように広がり
雨の森に息づいています
スマトラ島の熱帯雨林ここは
不思議な生き物達が集う
神秘の森
2014/09/21(日) 18:00〜18:30
MBS毎日放送
THE世界遺産[字]【「幻のトラがすむ火山の島」〜インドネシア】

火山で生まれたスマトラ島の熱帯雨林。そこは珍しい動植物の宝庫!絶滅危惧種のオランウータンにスマトラトラ、世界最大の花ラフレシアの不思議な生態をお届けします。

詳細情報
お知らせ
【遺産情報】
<遺産名>スマトラの熱帯雨林 <国名>インドネシア <登録年>2004年 <登録基準>(