ふるさと再生 日本の昔ばなし 2014.09.21

昔道具屋という商売がありました。
家で使うさまざまなものを扱っています。
路上でござをひいて売ったり中国からの輸入品を扱う唐物屋さんもありました。
さてこの男小さい店を持つ道具屋ですが掘り出し物があればたいへんな儲けになるのでこうやって地方を巡り歩いているというわけです。
《あぁ…むだ足だったかな。
ん?》男は峠の茶屋に寄ることにしました。
じいさん休ませてもらうよ。
いらっしゃいまし。
どうぞおかけになって。
あ〜疲れたなぁ。
ヘヘヘ…まあお茶でもどうぞ。
すまねえ…。
だんごでもいかがです?いやいいんだ。
ちょいと休ませてもらえれば…。
しかしこのへんはいい眺めだなぁ。
ええ皆さんそうおっしゃいます。
《かわいくねえ猫だなぁ〜。
ん?こいつは絵高麗の梅鉢の茶碗じゃねえか。
おいおい300両はする品物だぜ。
もったいねえ…猫飯なんかに使ってらぁ。
ははあ…じいさんこの茶碗の価値を知らねえんだな。
よ〜しうまいこと言って何とか…》じいさん茶もう一杯もらおうか。
へえ。
ところで…。
そこにいる猫だけどなかなかいい猫だね〜。
へえ皆さんそうおっしゃいます。
いやぁかわいいね〜。
ほれほれよしよし。
ニャ〜ウニャ〜。
え痛い…こら!じゃれるな。
よしよし…。
よしよし。
おや。
お客さん猫がお好きなんですね。
好きなんてもんじゃないよ。
三度の飯より猫が好きってなもんよ。
ヘヘヘ…皆さんそうおっしゃいます。
そんなに猫が好きなやつが多いのかい?やっぱり猫が好きな方というのは猫のほうでもよくわかるとみえます。
そうやってすぐ甘えるんでございますよ。
実は俺の家にもかわいい猫がいたんだがどっかに行っちまいやがってね。
うちのかかあが…。
あたしゃ猫がいないとさみしくってしようがないよなんて言うからよ。
ヘッヘッヘ…どうだいじいさん。
この猫を俺に譲ってくれないかい?へえ…。
なんだい嫌なのかい?いえ…そういうわけじゃないんですが。
別にタダでもらおうってんじゃねえ。
はっ?ニャ〜?どうだろう?小判で3枚じゃ。
いえいえ…そんなとんでもございません。
《3両じゃ足りねえってのかい?》まあ今までのかつお節代だと思って…。
そうですか…。
でもやはりなじんでおりますもんで…。
これこれ旦那がああまでおっしゃってくれてるんだ。
ありがてえじゃねえか。
旦那のお供をしていくかい?ニャニャニャ…。
うんうんそうかい。
お供するかい。
ウッウッ…。
な…泣くこたぁねえじゃねえか。
じゃあじいさん。
そろそろ行くよ。
はぁさようでございますか。
じゃあな。
どうぞかわいがってやってください。
あっ!茶碗忘れた〜!どうなさいました?ハァハァ…。
いや…いやぁね宿に泊まってこいつに飯を食わせるとき宿の茶碗を借りると女中が嫌な顔をするんだ。
ニャ〜。
よく旅をするとき寝つけねえんで自分の枕持っていくやつがいるだろう?こいつだって同じだと思うんだ。
そこでだ。
そこの茶碗を持って行ってそれで猫飯食わしてやろうと思ってね。
さようで。
ヘヘ…。
皿でしたら他にもございますからお持ちいたしましょう。
いやそ…そうじゃねえんだ。
なんだなぁこの茶碗じゃないといけねえんだ。
はぁ?やっぱり食いつけてるもんじゃねえとおいしくいただけねえじゃねえか。
はぁ…そこまでこの猫のことを考えてくださるんで。
しかし旦那この茶碗は差し上げることはできません。
え?なっなんで?そんな茶碗だったらくれたってかまわねえだろう?皆さんそうおっしゃいます。
旦那はご存じじゃないかもしれませんが。
この茶碗絵高麗の梅鉢の茶碗といってなかなか高価な品物なんでございますよ。
《こ…このじいさん絵高麗の梅鉢のこと知ってやがんのか!》これでも売れば200両や300両にはなるんでございます。
へ…へぇ〜。
そんなわけでこの茶碗だけが私にとってのお宝なんでございます。
誰にもお譲りするわけにはいかないんでございます。
そ…そうかい。
ところでそんな高価な茶碗を隠しとかねえでなんだって猫飯なんかに?へぇそれが旦那…。
来るお客さんが猫をひと目見たとたん…。
おおめんこい猫でないかい!こんなかわいい猫おら今まで見たことねえ。
ぜひこの猫を売ってくれ!おもしろいもんでこの茶碗で飯を食べさせてますと時々猫が3両で売れるんでございますよ。
そ…そうかい。
じゃあこれからもその茶碗でおいしいもん食わしてやってくれ。
いえいえもうお代はいただいております。
どうぞかわいがってやってください!結局男は諦めて猫を抱いて帰っていったそうです。
くそ〜!まったくあのじいさんにはしてやられたぜ。
ニャ〜!イテ!かわいくねえ!今ごろお前の仲間がまた売れてる頃だろうよ。
どうぞかわいがってやってください。
お気をつけて。
(みんな)ニャ〜!どうやらじいさんにとって一番のお宝はこの猫たちだったようです。
皆さんそうおっしゃいます。
ヘヘ!〜昔ものぐさ太郎と呼ばれる男がいた。
この男葉っぱが顔に飛んでこようが鳥が頭に巣を作ろうがのんきに毎日何もしない。
何もしなくても腹は減る。
(お腹の鳴る音)
(太郎)さ〜てどうするかぁ…。
考えるのも面倒じゃ。
というものぐさぶり。
(お腹の鳴る音)そのうち見かねた村人が食べ物を持ってきてくれる。
太郎どん餅ついたでおあがり。
五つも!こりゃあありがたい!うまい。
おっかさまによう似とる。
太郎が幼い頃亡くなった母は喜びや悲しみを歌にして詠んでいた。
はぁ…今の気持を歌で詠むなら。
あっ!あぁ〜!そのまま一日が過ぎ…。
ん?誰か拾うのを待っとったのか?よう通りかかってくれた。
あるとき村に嵐がきた。
うわ〜。
その翌日嵐が去った村を国司が見てまわった。
あれを見よ!あの嵐でも逃げなかったのか?噂にたがわぬものぐさぶりに国司は太郎に興味を持った。
これものぐさ太郎とやら。
村人の情けで命をつなぐより働かぬか。
田畑を与えてもよい。
商いの元手のカネでもよいぞ。
どちらもいらぬ。
外へ出るのは面倒じゃ。
では嵐にも吹き飛ばぬ家はどうじゃ?いらぬ。
家は戸締りがめんどくさい。
田畑もカネも家もいらぬとは。
それよりもとの場所へ戻りたい。
ここは寝返りを打つと木が当たって痛くての。
ハハハハ!なんてやつじゃ!国司の命令でまもなく太郎の小屋はもとの場所に戻された。
やがて国司が都へ戻ることになった。
領内の村から一人ずつ都で道や橋を作る労役の仕事につくようにと村々にお触れがまわった。
労役に出ると何か月も帰れぬ。
その間田畑も耕せぬ。
誰に労役を頼むかのう。
(みんな)太郎どん!太郎どんお願いじゃ。
いやわしは…。
太郎どんしかおらぬのじゃ。
でもわしは…。
太郎はじきに断るのが面倒になりしかたなく都へ行くことになった。
(みんな)達者でな!都に着くと太郎は働き出した。
すると今度は他のことが面倒になり…。
お〜い飯の時間じゃぞ。
おらはいい。
飯を食うのは面倒じゃ。
太郎どんそろそろ引き揚げるぞ。
引き揚げるのもめんどくさい。
わかったわかった。
また明日働こうな〜。
季節が変わり長かった労役が終わろうとする頃仲間たちはふるさとへの土産話にと都の名所清水寺に詣でた話でもちきり。
さすがは都じゃ。
きれいなおなごがたんとおった。
太郎どんも詣でたらいい。
ん〜。
その翌日一人清水寺へ出かけた太郎だったが。
うわ〜!一人の女にひとめ惚れをしてしまった。
頼むわしの嫁御になってくれ!いきなり何です。
離してください!探すのは面倒じゃ。
嫁御になってくれ!面倒とはなんですか!なんて失礼な方。
離してください!よよ…。
《なるほど竹に隣り合う節があるように私と寄り添い臥してください。
一緒に暮らしてくださいという意味か。
なかなかよい歌じゃ》いかん朝から何も食うてなかった。
ふふまったく困った人ですね。
うふふふ。
しかし歌は気に入りました。
女は働いている貴族の屋敷に太郎を連れて帰った。
そして下女を2人つけ風呂に入れて洗わせた。
お支度が整いました。
まぁ…。
すっかり汚れを落とした太郎は別人のようにりりしい男になっていた。
わぁ!このような服を着たことがなかったので…。
ほほほほ。
国へ赴く国司に従いふるさとへ帰る日が来た。
(みんな)太郎どんおかえりなさい。
おや太郎どんがおらんの。
婆さまわしはこっちじゃ。
おや太郎どん?こりゃ本当にあのものぐさ?には見えん。
きれいな嫁御様も一緒じゃ。
ふるさとに帰ってきてふわりとものぐさな心がもたげたが…。
わしは一生分のものぐさを使い果たした。
ものぐさに戻るのも面倒じゃ。
太郎はのちに役人となった。
村人に尽くしてもものぐさ太郎の名は変わらずみんなに慕われたという。
昔むかしのお話です。
カエルどん何か匂うかね?雨の匂いだ。
それもたくさん。
台風が来る。
そりゃあまずいな。
今から逃げればまだ間に合う。
だが住む所も食い物も根こそぎ持っていかれる。
神様も意地悪なことじゃ。
相手が神様じゃケンカにならないからな。
お願いして台風の道をそらしてもらえないじゃろうか。
そうだ!お伊勢参りに行こう!ゲコー。
こうして猿とひきがえるはお伊勢さんを詣でて台風が山に来ないようにお願いすることにしました。
ピーヒョロロロ…ピー。
待たせてすまんのう。
なぁカエルどんこれではお伊勢さんに着く前に台風が来てしまう。
申し訳ないがおらはお前さんのように速くは走れないぞ。
おらにいい考えがある。
背負わせてすまんのう。
こうすれば止まって待ってる時間がないだけ早く着くじゃろ。
おらが疲れたら交代してくれよ。
いいともゲコッ。
そうは言ったもののカエルは猿を背負って走ることなどできないと思いました。
困ったわい。
そろそろ交代してくれないかカエルどん。
いいともゲコッ。
あんなのに来られちゃ山のみんなは難儀するじゃろな。
さぁ急ごう!そうじゃおらが走る間仰向けに負ぶさって空を見ていてくれないか?あぁ?山の景色など見ていてもつまらん。
雲は見ている間に姿形が変わるから退屈しないぞ。
なるほどおもしろそうじゃ。
ほうほう〜カエルどん飛ばすな。
こりゃおもしろい。
うちのじいさんに似てると思ったらニワトリのようになった。
まるで空の向こうにおらたちと同じものがいるようじゃカエルどん。
ピーヒョロロロ…。
交代じゃ。
カエルどん。
何じゃ?ここはどこだい?さっきと同じような景色じゃが。
あぁお伊勢さんの道のりには同じ景色のところが6つあるのじゃ。
ほうそうじゃったか。
そういえばおらたちの山にも似た場所はいくつもあるな。
こうして猿とカエルは台風が来る前にお伊勢さんにお参りすることができました。
その甲斐あって台風は海のほうへそれていきました。
アハハ…あの雲はだんごのようじゃ。
ヤモリどんやウサギどんもいるぞ。
そうだ帰ったらお祝いに餅をついて食おう。
いいとも。
そろそろ交代じゃ。
カエルどんここはどこだい?さっきと同じような景色だが…。
お伊勢さんへの道のりには同じ景色のところが7つあるんじゃ。
ほうそうじゃったか。
あら?カエルどん景色が同じ場所は6つじゃなかったかのう?ゲゲゲ…。
猿は行きも帰りも自分だけ走っていたことに気がつかずカエルとともにもとの山へ帰っていきました。
ピーヒョロロロ…。
ところが猿とカエルの旅を空から見ていたトンビが猿は騙されていたのだと教えました。
どうりで同じ景色ばかり見たわけじゃ!猿は祝いの餅をつこうとカエルを山のてっぺんに誘いました。
カエルと競争をして餅を全部食べてしまおうと考えたのです。
このほうがきな粉をまんべんなくまぶせるんじゃ。
そうじゃ競争で転がる臼を追いかけて勝ったほうが餅を全部食えることにしよう!そんな競争勝てっこない。
そんなことあるまい。
カエルどんあんたはおいらを背負ってお伊勢さんへの道のりをちゃんと半分走ったんじゃから。
ゲゲゲッコ…。
それっ!あ〜っゲコ!猿はカエルを残して素早く臼を追いかけました。
あ〜!ハァハァハァ…。
いただきま〜す!あれ?あっ!あ〜餅が〜!全部食われてしまった。
あぁ…。
なんでそうなるの?腹を空かせた猿はいっそう痩せましたが誰よりも早く木に登り飛び移れるようになりました。
ウッキ〜!そして餅をたらふく食べたカエルは身動きするのも大儀な体になったということです。
ゲコッ。
2014/09/21(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字][デ]

「ねこの茶わん」
「ものぐさ太郎」
「猿とひきがえる」
の3本です。みんな見てね!!

詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
 柄本明
 松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
 作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
 編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
 歌:中川翔子
 コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】湯浅康生
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ

http://ani.tv/mukashibanashi

ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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