さわやか自然百景「北海道 阿寒の水辺」 2014.09.21

(テーマ音楽)北海道阿寒湖。
世界でここだけのマリモの群生地が広がります。
初夏マリモの周りは生き物たちでにぎわいます。
独特の環境に息づく小さな命。
支えているのは冷たく澄んだ水。
森が生み出す湧き水です。
阿寒の水辺で育まれる生き物たちの物語です。
北海道の東。
1,000m級の山々に抱かれた阿寒湖です。
およそ1万2,000年前火山の噴火によって生まれました。
湖の北側。
深い森に囲まれた遠浅の入り江があります。
マリモはここに生息しています。
国の特別天然記念物マリモ。
湖の底に重なり合っていました。
その数20万個。
これほど大きく丸いマリモが群生するのは世界でもここだけです。
研究者の調査に同行し特別に撮影を許されました。
波に揺られながらマリモは成長します。
大きいもので30cm。
チュウルイ湾の遠浅の地形に起こる独特の波がマリモを丸くすると考えられています。
初夏日一日と強まる日ざし。
マリモの表面をよく見ると…。
酸素の気泡が付いています。
盛んに光合成を行っているのです。
この酸素が微生物の活動を活発化させ多くの生き物たちを育みます。
周りにはミジンコや水生昆虫などが集まっていました。
それを食べにやって来たのは体長3cmほどの…マリモの間を隠れ場所にしています。
今度は小さな魚が出てきました。
冷たくきれいな水を好むトミヨです。
何かくわえました。
ヨコエビのようですが…。
ようやく食べる事ができました。
おや?マリモの中に入っていきました。
のぞいてみると…。
中には籠のようなもの。
産卵のための巣です。
ここなら外敵にも見つからず安心です。
実は巣を作るのはオスの仕事。
メスの気を引くために一生懸命作り上げます。
材料を探してマリモの間をウロウロ。
これは気に入らない。
こちらは…短すぎ?どうやらお気に入りの材料が見つかったようです。
メスがこの巣を気に入れば卵を産んでもらう事ができます。
マリモの大群生地は小さな生き物たちの大切な揺りかごになっていたのです。
マリモや生き物たちを育む冷たくきれいな水。
その水が生まれる所があります。
チュウルイ湾から東に5km。
深い森の中に姿を現した湖パンケトーです。
人の立ち入りが厳しく制限され今も原始の姿をとどめています。
阿寒湖に流れ込む水のおよそ6割を担ういわば水がめです。
透き通った青い水は国内有数の透明度。
冷たく微生物が少ないため倒木は長い間朽ちる事はありません。
湖底まで行き渡る日光が水草を育みます。
湖の至る所に直径1mほどの穴があいていました。
湧き水です。
周囲の原生林が蓄えた雨や雪が地中に染み込みこうして湧き出るのです。
一年中こんこんと湧き続ける冷たくきれいな水。
この水がパンケトーを生み出していました。
やがて川となって流れ出す水が向かうのは…。
マリモが生息する阿寒湖の北側です。
森から湖へ。
大きな自然の循環が阿寒湖のマリモとその周りに暮らす生き物たちを育んでいたのです。
マリモに巣を作っていたトミヨのオスはどうしているでしょうか。
いました。
巣の周りを行ったり来たり。
待っていたメスがやって来ました。
オスはメスを連れて自慢の巣へ。
おっと他のオスも出現。
うまく追い払う事ができました。
メスは巣を気に入ってくれるでしょうか?体を中に入れました。
オスが体を細かく震わせてメスの産卵を促します。
巣の中には無事卵が産み付けられていました。
メスが去ったあとオスは卵に精子をかけます。
ふ化するのはおよそ10日後。
それまでオスはヒレで新鮮な水を送りながら付きっきりで世話をします。
世界で唯一の丸いマリモの群生地。
冷たく澄んだ水が小さな命を支えていました。
阿寒の大自然が生み出した生き物たちの楽園です。

(一同)オ〜!気合い入ってますねお父さんたち。
2014/09/21(日) 07:45〜08:00
NHK総合1・神戸
さわやか自然百景「北海道 阿寒の水辺」[字]

北海道阿寒湖の湖底に、マリモが作り出す独特の環境がある。マリモ表面にはプランクトンが住みつき、それを食べに魚が集まる。中にはマリモの内部に入って子育てする魚も。

詳細情報
番組内容
国の特別天然記念物マリモの群生地、北海道阿寒湖。直径30センチもの大型の球状マリモが群生するのは世界でもここだけ。湖底は一面のマリモに覆われた独特の生態系。マリモの表面にはミジンコなどのプランクトンが住みつき、スジエビやトミヨなどの魚が食べに集まる。積み重なるマリモの隙間は、エビや魚たちの格好の隠れ家となり、中でもきれいな水を好む魚、トミヨはマリモの内側にまで入り込み、子育てのための巣作りを行う。
出演者
【語り】