「テレビ体操」はこの辺で。
どうぞ良い日曜日をお過ごし下さい。
「NHK俳句」毎月第3週の選者は櫂未知子さんです。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願い致します。
今日の兼題は「砧」。
お手元にありますけれどもこれが秋の季語なんですね?秋の夜長にふさわしいであろうという事で秋の季語になっているんですがもともと木綿が行き渡る前に麻や葛などの繊維を柔らかくするために用いられた道具でございます。
何か民俗資料館などではよく見ますけれども。
日常で使われていた?そうです。
衣板が短くなって砧になったといわれておりましてその砧を打つ音あるいはこの道具も含めて「砧」という季語になりました。
冒頭の句は櫂さんの句ですが。
ちょっと恥ずかしいんですけれどもたまにはね待つ人を演じるのもいいのではないかと。
そういう面もおありだったのかと思いますけど。
この季語は遠くに行ってしまった旦那さんの帰りを待ちわびるというような意味が入ってますのでたまにはそういうのも作ってみたいなと思って見栄を張ってみました。
いやいやそんな…。
それではゲストをご紹介致します。
今日はエッセイストの岸本葉子さんにお越し頂きました。
どうもありがとうございます。
よろしくお願いします。
岸本さんは2008年にこの「NHK俳句」にご出演。
そのご縁で俳句を実際にお作りになるようになったんですね?そうなんです。
初めは半年間はひそかにインターネット投句をこの番組にしてたんです。
でも…。
この番組に?そうなんです。
ありがとうございます。
でも佳作にも全然引っ掛からなくてちょっとこれではいけないなと思って半年後から句会にも参加するようになりました。
句会に出てみてどうでしたか?やっぱり自分で最初はちょっとうまくなってから出ようかなという思いがあったんですがうまい下手も全然分かってなかったんだなっていう。
あそこでいっぱい恥をかくと書けば書くほど楽しくなるなって感じしました。
すばらしいですね。
俳句の王道をいってらっしゃいます。
岸本さんどうでしょうか「砧」が季語だとご存じ…?いや知らなかったですし見るのも触るのも初めてで。
ちょっとお持ちになってみて。
重たい。
私もっとあの…すりこ木みたいなもので振り上げる感じかと思ったらそんなに持ち上げられないなと。
ずっしり?はい。
ずっしりきます。
やっぱり重さがないと繊維が柔らかくならないんですね。
そっか。
そういう実感を実は句を詠んで下さったんですよね?はい。
先ほど作りました。
これは先生いかがでしょうか?やっぱりこの砧の重さがあるからこそゆっくり持ち上げて自分の影が投影されている気持ちの陰りみたいなものがこの句から感じられると思うんですよ。
本当に俳句ってそういうふうに読む方が膨らませて下さるのがありがたいですよね。
いいえ。
句がいいからですよ。
自分は重いからかがみ込んでしまってつい影が落ちると思うけども内面の陰を読んで頂いて句が膨らみました。
ありがとうございます。
さあ岸本さんそれこそ吟行に…さっきも出ましたがとても楽しんでらっしゃるそうでまた後ほどそういうお話もお願い致します。
はい。
それでは櫂さんが選ばれました入選句ご紹介してまいります。
まず1番です。
一歩間違うと情念の世界だけに走ってしまいそうな句なんですがこの句読みますと「唇」の「く」「黒髪」の「く」と「か」また更に「かみて」の「か」「砧」の「き」「か」というふうにしてか行だけでほとんど作られてるんですね。
だから声に出して読むと非常に印象的な句でありましてむしろ句の印象よりも口に出すと明るく感じられる句だったんです。
俳句って音でも鑑賞するんですね。
そうですね。
では2番です。
この句は「打つ」という言葉と「砧かな」だけだと普通なんですけれども「闇の整ふ」の「整ふ」のうまさですね。
闇が完璧になったという感じですね。
非常に見た目よりもドライな句でありまして誠にうまい作品だと思われます。
では3番です。
「洗いざらし」と言ってますが別にお洗濯の事ではなくて今回のこの季語は「洗濯」と関連づけた句が結構あったんですがこの句はちょっと違ってまして気持ちのいい風が入ってくる。
そういう感じのする句でありまして誠に明るいですね。
そうですね。
何か織りたての宮古上布をこれから打つという何か砧が過去の遺産ではなくて現在使われているって感じもしますね。
そうですね。
今に生きている季語という感じがこの句からうかがえますね。
では4番です。
「自づから」と言ってますので自然にといいましょうか「音くぐもれる」というのがなんともうまいですね。
陰に籠もるというか内に籠もるというかその心の思いみたいなもの陰りみたいなものはこの「くぐもれる」という言葉に込められてるのかなと思われますね。
では5番です。
「若い」というのがいいですね。
じゃあ年取った女の人だったらどうなるんだろうと。
まあお若いから相手を待っている。
待っている相手も若いですねこの句はね。
どんな響きなんでしょうね?どうなんでしょうね。
私はさっき重かったので体力あるから響きが軽いのかなと思ったけども鑑賞を聞くと夫婦の歴史とかそういったものも感じますね。
待っている年数がまだ短いって感じですね。
そんな感じが致します。
では今度は6番です。
この句はほかの砧と違いまして「藁砧」ですね。
藁を打って柔らかくするという砧なんですが。
珍しく取り合わせの句なんですよ。
農家の感じがすごくしますよね。
鶏には鶏のやる事がある訳で一生懸命卵を抱いていると。
その様子がよく描かれているなと思いますね。
何か農家の営みの安定感みたいのがありますね。
一方に鶏がいて土間でね。
こちらには一生懸命砧を打ってる人がいてというね。
非常に日常がうまく描かれている句だなと思われます。
「たじろがず」と。
いいですね。
すばらしいですね。
では7番です。
お母さんとおばあさん。
作者から見てという事なんですが。
もしかすると実の母と娘かもしれませんしこの「母」と「祖母」がですね。
あるいは姑さんとお嫁さんかもしれないんですね。
「響き合ふ」というんですからやっぱり心がうまく協調し合ってるんでしょうね。
「砧」って結構人間関係も読める季語なんですね?そうですね。
心を表す季語でもありますのでその人をどう思ってるのかとかどう待っているかとかうまく出せる季語だと思われますね。
今度は8番です。
「嫁姑」…「少し離れて」というところが非常にいい味わいを出してますよね。
けんかしているという訳ではないんだけれども何て言うんでしょう…べったりもいたくない微妙な心理ですよね?そうですね。
今度は9番です。
「汝が目の炎」。
「汝が」というのは「汝」と書いて「汝」と読ませている訳ですが炎が燃えていると言わずに「ゆれにけり」という辺りが微妙に美しいというか。
そうですね。
動詞1つで全然世界違ってきますよね。
そうですね。
めらめらと燃えているのでもなく消えてしまった訳でもなく何かほんのり燃えてるような心の揺らぎがあるようなそういうすてきな句だと思われますね。
めらめらじゃないんだ…。
はい。
以上が入選句でした。
では特選三句をご紹介する前に「俳人のことば」をご覧下さい。
(上田)日が西に傾いてきまして人目もなくなった頃ほっとした表情で桃の花が本当の桃の色を私に見せてくれた。
暮れ際に示してくれたその気取りのない桃の花のその色こそ古来の桃の花の素顔の色だったという句です。
上田五千石は35歳で最初の句集を出版したあと大きなスランプに見舞われました。
甲州の山地を1人歩き続ける日々。
疲れ果てて頭が空になった時生き生きとものが見えてきたといいます。
(上田)これは桜が満開の時にぶつかりました。
見ておりますとどんどん花が湧いてくるようでしかもまぼろしの花まで湧いてくるような気がしまして現実と幻想と交互して花盛りを演出してるといってもいいでしょうかね。
平成9年63歳でこの世を去った上田五千石。
生前俳句についてこう語っています。
(上田)それが俳句。
一人称の文学としての俳句を追究し続けた生涯でした。
それでは特選句です。
まず第三席はどちらでしょう?服部逸子さんの作品です。
二席の句です。
柊ひろこさんの句です。
一席はどちらでしょう?佐藤博一さんの句です。
この句はやはりほかの句と違いまして内に籠もっていないんですね。
外の風をそれこそ取り入れて明るく描いた…。
やはり「砧」という季語を少し新しみというんですかそれを神妙を加えるような内容を持っている句だと思われました。
以上が今週の特選でした。
ご紹介しました入選句とそのほかの佳作の作品はこちらのNHK俳句テキストに掲載されます。
俳句作りのためになる情報も参考になさって下さい。
続きまして「入選の秘訣」です。
入選までのあと一歩を教えて頂きます。
今日は「います」という動詞についてちょっとお話をしたいと思うんですね。
こういう句がありました。
お母さんがいる限りこの世にいらっしゃる限りこの砧は打たれ続けるであろうというなかなかいい句なんですが。
この「居ます」どう思われます?「居ます」…。
う〜ん…特に不思議は感じず。
これは実は字が違うんですね。
「存在」の「在」という字を使った「在す」という動詞なんですよ。
敬意を表すといいましょうか相手に対する尊敬の念を表すのがこの「在す」という動詞なんですね。
ただこの「在す」と書きますとそのまま「存す」と読んでしまいそう。
読めないですよね。
読めないですよね。
ですから平仮名で書かれる事が多いんですね。
「母います」という。
旧仮名でも新仮名でも同じ書き方を致します。
普通の「ゐる」だと旧仮名で「る」みたいな字を書きますけど。
ぐるぐるした「ゐ」ですね。
はい。
普通のあいうえおの「い」で大丈夫です。
この「います」が入った句もあるんですよね?有名な句がありまして。
ご紹介頂けますか?「銀漢」すなわち銀河ですね。
銀河の尻尾端っこに両親がいらっしゃるのだなという句なんですよ。
大変有名な句ですよね。
この時もちゃんと「います」とあいうえおの「います」になっております。
つまり「存在」の「在」という…漢字で書くとそうなるという事が分かります。
鷹羽さんはふだん旧仮名遣いで句を作ってらっしゃいますので。
この辺り誤解されないようにこの動詞を使いこなして頂きたいなと思われます。
「です」「ます」の「ます」じゃないって事ですね?そうです。
この「います」にはやはりお父さんお母さんに対する尊敬が非常に入ってるという事…?はい。
目上の人に対する思いが込められた動詞でございますね。
本当にちょっと間違って…。
そうですね。
ありがとうございました。
それでは櫂さんの年間のテーマ「日本の季語遺産」。
今日はこちらの「砧」ですね。
古道具屋さんで手に入れたんですけれども。
何て言うんでしょうか…かつて衣類というものは自分たちで布を柔らかくしなければ使えないものだった訳ですね。
それに対してこれさえあればなんとかなるという道具だった訳ですよ。
かつての衣食住は全て手間がかかるものであったと。
今のように木綿や化繊がない時期にいかに布を柔らかくしあるいは艶を出す。
そのためにこの季語が…季語といいましょうかね季語としては認識されてなかったかもしれないけどもこういう道具があったと。
でも今も使えると思いますよ。
私麻のスカーフを買ったんですね。
硬くてばりばりで首にうまく巻けない訳。
柔軟仕上げ剤があるから今一発だと思い水にくぐらせて柔軟仕上げ剤して干したらまた乾いたらばりばりなんですね。
やっぱり手間をかけてこれで叩けば柔らかくなるのかなって…今ちょっとお借りして帰りたい。
是非お使い下さい。
ちょっと重労働ですけども。
今あまり見られないからといってその季語を「歳時記」から削除するというのはかつての日本人の暮らし方を否定する事にもなりますのでやはりこういう季語は是非生かしていきたいなと思うんですね。
大切に…。
最近の若い人も詠まれた句があるんですよね?ご紹介頂けますか?何とも言えずロマンチックというか。
「熱からん」…叩くと物って熱くなるというところがよく気が付いたな。
熱くなるんですね。
月光自体はひんやりとしてますけどね。
「藁砧」。
まだ熱が残っているある種の情熱のような感じもしますよね。
何かこうすると本当に昔使ってたものではなくたったさっき打ち終わったばかりという感じもしますね。
やはり私よりもいくつかお若い方…。
津川さん?ええ。
そういう人がこういう季語を使ってすてきな句を作ってくれた事が私は非常にうれしいです。
大切にしたいですよね。
そうですね。
さあここからは岸本さん吟行をとても楽しんでらっしゃるという事ですが?はい。
お話を伺います。
今ようやっと吟行をするようになって月に1回行っていて2年が過ぎる辺りなんですけども。
こんなふうに笑顔で語れる日が来るとは思わず…。
本も随分書かれてますしね?そうなんです。
でも初めはそれまでずっと兼題で作っていたので時間があって作る。
でも吟行だと歩いてさあ締め切りまで何分。
それがもう最初怖くて怖くて怖くて。
まだなかなか怖くなくならない。
えっどうして怖いんですか?やっぱりまず出来なかったらどうしようという思いがあり。
見て何も感じなかったらどうしようという心配があるんですね。
やっぱりその奥には格好つけたい気持ちがある。
見たまんまでは恥ずかしいから何か見て言いたいというそういう句作りたいなという格好つけの気持ちがあるのではないかと。
ああ〜。
もう先生は怖くはないですか?いや〜私も実はいまだに怖くてですね吟行も普通の句会も怖いです。
え〜!そうですか。
今でも夢を見る事がありましてね。
夢!?どんな夢なんですか?もう何十回見たでしょうね…。
自分の短冊だけが真っ白という夢。
あっ分かる…。
先生もご覧になるんですね?見ます見ます。
よかった。
今でも本当にご覧になるんですか?見ます。
明日から吟行行かなければならないとか明日たくさん句を出す緊張する句会がある時は自分の短冊だけが真っ白で「皆さん出してるのになぜ私だけが?」という夢を見ます。
夏休みの最後の日に宿題ができてないとか試験で答案用紙が真っ白とかそんな…。
アナウンサーだと読めない漢字が…とかそういう事ですよね。
今でもそうです。
でも先生意外だしちょっとほっとした…。
何か私怖くなくなる方がいいと思っていたけれども怖くていいんですね?怖いぐらいがちょうどいいんじゃないでしょうかね。
ちょうど役者さんが何か舞台やる時にあがるっていう。
「あがる事が大事だ」っておっしゃってましたからね。
とは言うもののやっぱり毎回毎回真っ白とかあるいはそれこそ怖くてあがるではなくてそれを越える何かコツがあれば教えて頂きたいと思うんですが。
どうでしょう?コツはどうでしょう?素人なりにとっている方法としては1つ今日使えそうだなという季語を決めて行く。
例えば秋だけど暑いなと思ったら「秋暑し」という季語を持ってそして何か行った先で出会えるものとつけて1句に出来ればいいなと。
実際は用意した季語使わないかもしれないけれども空手で丸腰で行くのととりあえず使える棒1本持ってるなと思って行くのでは何か気分が違う気はしますね。
分かりますね気持ちがね。
見たもの全部拾い上げるんだという気持ちで行けば大体大丈夫ですけどね。
ほかにも何かありそうですね?私は実は植物にちょっと苦手意識があるんですね。
だからあんまり植物は見ないで人の身につけてるものとかあと自分の動作を入れる。
その植物があったらそれをずっと距離を置いて見るんじゃなくて例えば近づいてとか触ってとかそんな事を入れるようにしています。
いろんなコツがあると。
ありがとうございます。
それではここで番組からのお知らせです。
ご覧下さい。
そして投稿のご案内。
さあ兼題の「青写真」ですが。
こちらにお手元にありますね。
日光写真ともいいますが子どもの時に遊んだ方も多いんじゃないでしょうか。
枠がありましてそこに種紙といわれるこの黒っぽいのがありますがそれを入れましてその下に印画紙を置いてしばらくお日様の光に当てる訳ですね。
そうするとこういうものが出来上がる訳です。
ジャジャンと。
それであの…何でこれが冬の季語かというのはちょっと不思議に思われるかもしれませんね。
でも太陽の光で出来るから日だまりのありがたさみたいな事でしょうかしら。
そうですね。
非常に楽しい。
子どもの頃にさんざんやったという方いらっしゃるんじゃないかなと。
特に男の子?そうですね。
何となく男の子のイメージがありますね。
でも女の子ももちろんなさってたでしょうから。
是非ともいい作品を寄せて頂きたいなと思います。
今日は岸本葉子さんにお越し頂きました。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
では今日はこの辺で失礼致します。
ごめんください。
(きてき)2014/09/21(日) 06:35〜07:00
NHKEテレ1大阪
NHK俳句 題「砧(きぬた)」[字]
選者は櫂未知子さん。ゲストはエッセイストの岸本葉子さん。NHK俳句の出演がきっかけで俳句を始めたという岸本さん。句会の探訪記を雑誌に執筆し好評を得ている。
詳細情報
番組内容
選者は櫂未知子さん。ゲストはエッセイストの岸本葉子さん。NHK俳句の出演がきっかけで俳句を始めたという岸本さん。句会の探訪記を雑誌に執筆し好評を得ている。【司会】桜井洋子アナウンサー
出演者
【出演】岸本葉子,櫂未知子,【司会】桜井洋子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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サンプリングレート : 48kHz
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