今ニューヨーカーの間で人気の焼き物の器があります。
ここは日本の雑貨を多く扱うセレクトショップ。
注目がこちら!西洋の器にはない自然な質感と自由な形。
佐賀県唐津市とアメリカの両方で創作を続ける女性陶芸家の作品です。
Pleasecomein.Howareyou?Iamverywell,thankyou.Comeonin.その器を集めているというラッセルさん。
食卓が楽しい雰囲気になるといいます。
器を育んだのは佐賀県唐津市。
「唐津焼」と呼ばれる焼き物が作られています。
佐賀県出身の女優中越典子さん。
陶芸教室に通うほどの焼き物好きです。
最初に訪ねたのは若手陶芸家の作品が集まるギャラリー。
わっ。
すてきだぞ。
渋い。
男性的な感じがします。
洗練された力強さ。
これもかわいい。
すてきですね。
そしてナチュラル。
さりげない美しさを感じさせます。
高級な茶碗からふだん使いの器まで土の質感を生かした「自然の生命力」が持ち味です。
自分でも焼き物を作る中越さん。
個性的な表情が気になります。
意外です意外。
全部すてきじゃないですか。
こんな色出せますか?こんな色出せますか。
確かにじ〜っくり見るんでしょうね。
色の感じとか柄の感じとか。
絶対違いますもんね1つ1つ。
こうやって見てヒントを盗んじゃったりする。
ニューヨークで注目の女性陶芸家が唐津で創作中と聞いて訪ねました。
こんにちは!こんにちはどうも。
はじめまして中越です。
はじめまして。
かっこいい!ご本人もかっこいい。
かわいい!わ〜。
なんかチュンチュンチュンってなってますね。
作る器は100種類以上。
どれも独創的で形がユニーク。
唐津とアメリカの両方で暮らし国境や伝統を超えた作風が人気です。
代々続く陶芸家の家に生まれた中里さん。
作品のベースには唐津焼があるといいます。
この形もかわいいですね。
これはレモンカップといって上から見るとレモンの形をしているんです。
本当ですね。
飲みやすそうですね。
唐津焼って言われたら逆に「唐津焼?」って思っちゃう。
そうですね。
もともとのろくろの水びきのやり方とかルーツとしては唐津なんですけれどもずっとスタイルとして同じものをとかそういうとこにはこだわりがないので自由に作っているんですけど。
器に自由なスタイルを追い求めるという中里さん。
唐津焼の自然な造形を大切にする作り方を受け継いできました。
う〜!土は生き物みたいなんで…。
う〜ん。
料理と一緒であまり触らない方がいいですね。
こねくり回すと駄目なんですね。
あ〜気持ちいい。
あっという間に形が。
レモンカップですね。
速い!スピーディーな造形には伝統的な道具が大活躍します。
それがこちら。
唐津で多くの職人が使ってきた「牛べら」です。
皿の内側に牛べらを当て満遍なく力をかけながら外へ伸ばします。
こうすれば指で広げるよりも速くしかも指あとを残さずに形を作る事ができるのです。
昔から生活雑器を作ってきた唐津。
たくさんの器を作るためスピードが求められこの牛べらが活躍してきました。
伸びやかな器は伝統の道具を自在に操る事で生まれます。
唐津ってすごいフリースピリットっていうかおおらかさがあるっていうか。
どんどん名も無い職人がずっと作ってたんですねスピードに任せて。
そこになんか体からみなぎる…私は結構そこが好きで。
そこは唐津から学んだ姿勢です。
へぇ〜。
じゃあカップをお選びください。
もう時間かかりますよ〜。
パンにワイン。
どんな料理にも好みに合わせて使う事ができます。
何だろう…。
ただ飲んでっていうよりもまたこう飲み終わったあとまた飲む前に器の楽しさと倍になる。
毎日使いたくなる。
それが唐津の焼き物の魅力です。
酔っ払ってしまうと倒しそうになる。
そんな唐津焼のルーツを知るために老舗の窯元を訪ねました。
う〜ん。
またぐっと上がってきましたねぇ高級感が。
本当にこう好きな方にはもうたまらないんでしょうね。
十四代にわたってお茶の世界で重宝されるような野趣あふれる焼き物を作ってきました。
(十四代)こんにちは。
こんにちは。
はじめまして中里です。
十四代続いているというのは一体どれぐらいの年月?初代がね1596年ぐらいですので…。
え〜!400年ちょっと初代がね。
すごい。
すごい歴史ですね。
手を…。
手とかはあかぎれてます。
あかぎれてる。
あかぎてるハハハ…。
どんな手かなと思って。
寒いからあかぎれてる。
なんかフワフワしてる。
あ…柔らかいかも!すごいうれしいです。
私も良かった。
うれしいです。
(笑い声)唐津焼は今から400年以上前の室町時代末から桃山時代にかけて始まったといわれています。
中里太郎右衛門窯はその頃誕生。
江戸時代には唐津藩の御用窯として発展しました。
これもすてきですね。
唐津の伝統的な技法である…。
これは中里家に代々伝わる技法で十四代が作った壺。
よく見ると表面がデコボコゆがんでいます。
こちらのお値段なんと150万円!
(十四代)これねあの…。
あぁ!こっち。
でも作者だから…。
はいはい。
フフフフフ。
十四代だから。
すごい!すご〜い!ちょっと持ってください。
いいんですか。
多分軽いと思う。
失礼します。
あ…。
思ったより軽いでしょ?思ったより軽いです。
もともと壺は中に水を入れて使う生活の道具。
軽いほど便利です。
いかに軽い壺を作るか技が磨かれてきました。
ひも状にした粘土を少しずつ積んでいく「輪積み」。
ろくろの場合は一気に底から引き上げてきますから底を厚く作らないと壊れるんですね。
叩きの場合は輪積みでひも作りでしているので…ここで取り出したのは板と…石?丸い石を使います。
内側から石で押さえ外側を板で叩いていきます。
「叩き板」の表面には幾何学模様が彫られています。
そのために叩いた表面に板の模様が刻まれていくのです。
土を叩いて中の空気を抜き薄く固める事ができます。
(十四代)叩く事で凹凸ができるんです。
ろくろ引きと違って。
それがまた壺とかそういうものを力強く見せるようになりますね。
見た目は力強くなのに軽い。
伝統の唐津焼を作る技です。
ランチタイム中越さんが立ち寄ったのはしゃれたダイニングカフェ。
きょうは唐津の豚の。
わぁ。
春野菜を使ってます。
どうぞ食べてみてください。
おいしそう。
ありがとうございます。
今っぽい現代的な黒でデザインです。
そうです。
絵画的な感じになりますもんね。
きれいですね。
きれいでしょ!地元の食材を使った料理が載っているのは黒い唐津焼の食器。
東京や福岡のセレクトショップでも人気といいます。
唐津では古くから「黒唐津」と呼ばれる独特の黒い焼き物が作られてきました。
それがカジュアルでモダンな食器として生まれ変わりました。
黒い皿を作っている職人に会うため山あいの工房へ。
こんにちは。
いらっしゃいませ。
はじめまして。
はじめまして中越と申します。
ママが作ると?陶芸家の土屋由起子さん。
食べ物が映える器を作るためには料理の事も深く知らなければならないと腕を磨いてきました。
どうして黒と料理が合うと気づかれたんですか?そうですね黒という色はやっぱり彩度…白黒灰色というのは彩りがゼロなんですね。
なので彩り例えば緑とかちょっとピンクみがかった色を引き立てる引き立て役なんです。
なので食材が色が映えるんだと思います。
こちらが黒唐津なんですけど。
はい。
全く同じ釉薬でちょっと色が黒っぽいのと緑のと違うと思うんですけれど。
黒は焼き方次第で微妙な違いが出てしまう難しい色。
これだとちょっと緑が入っていて…。
緑がかってます。
これはこれでいいんですけど私の出したい黒とはちょっと違うというサンプルですね。
由起子さんの黒はこれ?はい。
土屋さんが目指す艶のない深い黒色。
いつもこの色が出るように釉薬の配合にこだわりました。
配合のしかたは職人によってさまざまです。
土屋さんはこの4つの原料をブレンドしますが配合の比率は企業秘密。
「鬼板」という唐津で多く採れる鉱物が黒の決め手です。
水けがどれぐらいですよっていうあれですね。
これは黒唐津です。
え!これが?はい黒唐津です。
こんなに茶色いんですか?これは鬼板っていう材料の鉄分の色ですね。
へぇ〜。
更に大切なのが濃度。
4つの原料を水に溶いた最適な濃度がこちら…。
とろとろカレーみたいな。
とろとろカレーだ。
おいしいよ。
濃度によって焼き物の色はどれほど変わるのか。
水を2割増やした薄い釉薬を作ってもらいました。
まだこれちょっと…。
水っぽいですよね。
全然煮込まれてない感じのカレー。
サラサラ系です。
この2つの釉薬をそれぞれかけて焼くと…。
濃度が変わるとこんなに色の違いが。
黒の決め手である鬼板が少ないと茶色っぽい色に焼き上がってしまいます。
土屋さんは理想の黒を求め続け3年間試行錯誤を続けました。
釉薬の配合や濃度を変えては焼くという繰り返しの末ようやく納得できる色にたどりつきました。
どうぞ召し上がってください。
は〜いいただきます。
おいしい。
旬の食材を使ったシンプルな料理を黒い器がおいしそうに引き立てます。
せっかく陶器を作っている仕事をしているのでどうやったら毎日の御飯が楽しくおいしく食べられるかという食いしん坊の気持ちがそうさせてるんだと思いますけど。
だからこそおいしい食べ物も好きでだからこそこういうお皿が生まれたっていうこと?そうですね。
料理を作ることは器を極めること。
おいしく御飯を食べたいという思いが生んだイッピンです。
唐津焼は料理を引き立てるだけでなく酒の器としても魅力的です。
どうぞこちらからお好きな杯をお選びください。
ん〜選べるんですね。
はい。
お酒は嫌いではない中越さん。
薀蓄を聞きながらお猪口を選ぶのも唐津焼の楽しみです。
かわいい。
これちょっと触れたくなるかわいさはあります。
その形を馬上杯といいまして馬の上だとどうしても揺れてしまうので持ちやすいようにその脚を持って。
ここを持って。
これちょっとちっちゃいワイングラスみたいな形で。
かわいい。
これ中ざらざらしてますね。
そうですね。
わざと土が見えるように作ってありますね。
小さいけどすごくきれいに。
中越さんが選んだのは…。
白。
はい。
これにして。
はいよろしいですか?はい。
徳利もすてきですね。
ありがとうございます。
はい。
幸せです。
これもすてきなんですよね。
この店で長年使ってきた徳利。
さまざまな色や模様がいい感じです。
これ20〜30年ほどたっているんですけども。
これ!これですか?へぇ〜!最近作ったものとは全然表情が変わるんです。
景色といいますか艶といいますか。
新品の徳利と長年使ってきたもの。
確かに全然表情が違います。
よく見ると「貫入」と呼ばれる細かいヒビが入っています。
長く使い続けると貫入に独特の風合いが生まれ酒好きを喜ばせるのです。
全然違いますね。
いや数段こっちが良くないですか?なぜ唐津焼にはこうした変化が出やすいのでしょうか?特にですね不純物の多い…この隙間を通して中にふだん使っている醤油だとかお酒だとかそういったものが入っていった時にでこぼこがいっぱいあったり穴がいっぱいあったりしてます。
その中にどんどん色素が沈着していくといった事です。
貫入を拡大した写真です。
ここから色素が入り込み釉薬の下の土を着色していきます。
有機物や鉄マンガン。
唐津の土は不純物が多く混ざっているので焼いた時細かい空洞ができ色素が沈着しやすいのです。
もう一つの唐津焼の魅力としてひっくり返していただいて…。
はい。
うん?この出っ張りを「高台」というんですけど細かいシワのようなのが見えると思うんですけども。
お菓子みたいに。
焼けたクッキーみたくなってます。
お猪口の高台も唐津焼の見どころの一つ。
土が露出しているこの部分。
愛好家は酒を飲む時焼け具合やシワの表情を見て楽しむんです。
実はこの高台のシワ高い技術を持った職人にしか作る事ができないといいます。
そんな技を持つという若手の職人を訪ねました。
あいらっしゃいます。
こんにちは!矢野です。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
矢野直人さんは今最も注目される唐津焼の陶芸家の一人です。
父親から受け継いだ昔ながらの登り窯。
火を操るのが難しく手間のかかる窯を使って作品を作ってきました。
伝統の唐津焼を手本にしつつ新しい感性を吹き込んだ作風で知られています。
矢野さんに高台で削るところを見せてもらいました。
ろくろで作った時に糸で切って載せてたのを1日ぐらい乾かして半乾きの状態なんですけど。
「かんな」と呼ばれる土を削る道具を使いろくろを回しながら1回転。
あ…この時に?そうですね。
「ちりめんじわ」と呼ばれるこの模様。
焼いたあともそのまま残ります。
かんなのたった一削りで土に豊かな表情を作る技です。
うわきれい。
アイスクリームみたいですね。
そうですねはい。
僕もアイスクリーム食べる時思います。
このちりめんいいなみたいな。
やっぱり思うんですか。
そうなんですか。
それなるだけシワができるように作ろうとか?そうですね。
自然の中で出てくるものだとは思うんですけど正直なところある程度意識はしてます。
ハハハハ…。
フフフ…しますよね。
器を手に取った時滑らないように作られる高台。
かつて生活道具として作られた器の高台は職人がざっくりと手早く削るだけでした。
しかし時がたつにつれちりめんじわは唐津焼の魅力の一つとされるようになっていきます。
矢野さんが宝物だというものを見せてくれました。
古い唐津焼の陶片とか割れたやつなんですけど。
古い窯跡から出た陶器のかけら。
名も無い職人たちの技がしっかり残っています。
ここに新しい器作りのアイデアが詰まっているというのです。
矢野さんが高台を作るにあたって参考にしている陶片は?これだと思うんですけど。
これですか?違いますね。
え〜とですね…。
え〜と私これと思ったんですけど。
これはこれでとても魅力的な高台だと思います。
これで一晩も話せるし…。
フフフフフ。
もう分からない!どこ?みたいな。
どこがいいんですか?いやいいんですよ!きっとすごくすごく古いものですし…。
矢野さんが今心引かれているという高台がこちら。
いにしえの職人の息遣いがはっきりと感じられるといいます。
自分の場合は憧れに近いようなやっぱり唐津焼を作るこれから作りたい。
少しでも近づいていきたいみたいな。
でこれをこういうふうな高台が出来たらいいなとやっぱりイメージされるんですね。
そうですねはい。
一生懸命毎日毎日多分寝ても覚めても土と向き合ってやっぱり本当に好きっていう愛情があってこそ皆さんの焼き物が出来上がってて。
そこを知れた事がとても良かったです。
本当に唐津焼が好きになりました。
大好きになっちゃいました!受け継がれてきた伝統の技と新たな感性の出会い。
唐津焼の器は毎日の暮らしを楽しくする魅力的な焼き物として愛され続けています。
2014/09/21(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「料理とお酒を楽しく〜佐賀 唐津焼〜」[字]
今回は料理やお酒が楽しくなる唐津焼。佐賀県出身で陶芸に夢中という女優・中越典子が、ユニークな陶芸家たちと出会い、料理をおいしく見せるシンプルな器の秘密を探る。
詳細情報
番組内容
今回は料理やお酒が楽しくなる唐津焼。佐賀県唐津市は、400年前から続く焼き物の産地。日常使いの食器から野趣あふれる茶碗までさまざまな陶器が作られている。佐賀県出身で陶芸に夢中の女優・中越典子が、ニューヨークで人気の女性陶芸家やどんな料理にも合うというモダンな黒い皿を作る職人を訪ね、唐津焼の奥深い世界に踏みこむ。古くから無名の職人たちがざっくりと作ってきたシンプルな器が料理をおいしく見せる秘密とは?
出演者
【リポーター】中越典子,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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