ドラマスペシャル SP〜警視庁警護課 2014.09.20

(刑事)待てー!おいこら待てー!待てー!
(刑事)おいこら待て!こらー!止まらんかー!竹さんよろしく!
(竹内孝治)向こう!はい!
(男)離せ…離せー!離せバカ野郎!離せよー!
(パトカーのサイレン)どうも。
(磯貝康一)おう。
佐藤あけみ…。
(ため息)竹さん。
お嬢さん無事出産されたとか…。
男の子ですか?女の子?男だ。
竹さんいくらふてくされたってもう立派なおじいちゃんですよ。
そうじゃねえよ。
コソ泥一人でこのザマだよ。
そりゃあ歳取るのは順番だから仕方ありませんよ。
私だって今日ガイシャの哀れな死に様見て思わず涙こぼしそうに…。
(刑事)おい急げ!殺しの帳場か?首絞めて女殺して下半身裸にして放り出したくせに顔にピカピカの白いハンカチのっけて罪滅ぼしのつもりでいやがる。
顔に白いハンカチ?竹さん何か引っかかりが?うん…。
15年前も似たようなヤマがあった。
えっ?調べてみるか。
はい。
(携帯電話)もしもし…あっ課長。
お久しぶりです。
今すぐですか?
(犬の鳴き声)
(鳴き声)
(鳴き声)
(鳴き声)
(花輪和史)よしよしよし。
よーしよし。
ほらほらほらほら…。
よーしよしよし…。
(花輪)はっ…!キャー!
(長岡宗男)ちょうど1か月前の事だ。
石鍋元首相のところに脅迫状が届いた。
田園調布にある石鍋邸の郵便受けにジュウシマツの死骸と一緒に放り込んであった。
2日後永田町の石鍋事務所にも同じ脅迫状が届いた。
しかし石鍋先生もう4年も前に…。
狙いは娘だよ。
石鍋元首相の跡を継いだ前大臣の石鍋キリ子。
脅迫される理由でもあるんですか?君も知ってるだろ?あのじゃじゃ馬娘。
父親が生きている頃からうるさかったが亡くなってからますますひどくなった。
元首相の一人娘で国民的人気を後ろ盾に党内でも国会でも言いたい放題やり放題だ。
恨まれる材料には事欠かない。
ハハハ…。
いつ刺されたっておかしくはない。
課長。
構うもんか。
でまあそれでな脅迫状が届いたんでSPを3人つけた。
ところがだ何が気に入らんのか1人ずついびり出しやがる。
わがまま放題無理難題をSPに押しつけてあれじゃあ使い物にならんだとかなんだとか毎日毎日電話をしてくる。
おかげでこの1か月よう眠れんし胃がキリキリ痛む。
おまけに電話が鳴るたびに心臓がバクバクして…。
(電話)もしもし長岡でございますが。
バカもん!あとにしろ!
(受話器を置く音)
(ため息)笑い事じゃないんだよ竹さん。
それでな昨日もSPに1人欠員が出来た。
そしたら早速石鍋キリ子から電話があって若い者は使い物にならんからベテランをよこせと言ってきた。
いやいや…そこでな竹さんあんたの出番。
課長冗談はよしてくださいよ。
課長よくご存じでしょ?確かに私ベテランですが15年前SP失格のレッテル張られて所轄に戻されて以来15年間SPの仕事に就いてない。
しかもそのレッテル張ったの当の石鍋キリ子ですよ?もちろん私だってよく覚えてるよ。
SPの厳重警護中に現職の総理大臣が暴漢に襲われるなんて大事件忘れるわけがない。

(男)石鍋ー!急いで!
(長岡)警視庁警護課の歴史に残る大失態だ。
その大失態を引き起こしたのは私です。
しかしなぜか石鍋キリ子は君をリクエストしてきた。
恐らく君をそばにおいてネチネチネチネチいたぶりたいんじゃないのか?あの性悪女。
しかし私は…。
彼女の強い要望なんだ。
私の力じゃ断りきれん。
竹さん頼むよ。
このとおり。
(矢部まゆ)よいしょ。
(まゆ)はいおじいちゃん。
そっとそっとそっと…。
(まゆ)いいわよトシ君。
(矢部利巳)オッケー。
じゃあいくよ。
おじいちゃん笑って!
(カメラのシャッター音)明日退院するから。
今度はうちのほうに来てお父さん。
緊張した…。
赤ちゃん抱くのお前以来だから。
ありがとうお父さん。
嬉しかった。
じゃあ。
また。
お父さんなんか話あったんじゃ?定年後の方針決まったとか?うーん…ちょっと異動になるかもしれない。
異動?どこへ?まだ聞いてない。
SPじゃないわよね?SPは駄目よ。
そんな仕事じゃないよ。
人の盾になるなんて…。
盾にされた人にだって家族があるのよ。
あの頃お母さん毎日どれだけお父さんの事心配してたか…。
そんな話じゃないって。
(ため息)
(磯貝)竹さんに言われた15年前のヤマ北赤坂署に行って調べてきました。
お宮入り同然のヤマなんで最初嫌がられましたがうちの今回のヤマと手口とガイシャの放置の仕方が似てるって言うと向こうものってきて…。
あのヤマ忘れようとしても忘れられない。
竹さん北赤坂署にいた事ありましたっけ?直接捜査に関わったわけじゃないよ。
当時俺石鍋総理の…。
あっSP時代ですか?これ。
15年前の。
殺される5日前ガイシャの女から渡された。
ここに住んでる。
助けてくれ守ってくれって。
事件後証拠として捜査本部に提出してそれから返してもらってずっと持ってる。

(仲居)いらっしゃいませ。
(竹内の声)あの頃総理の行きつけの料亭が赤坂にあって週に1〜2度行ってた。
(竹内の声)その女は近くに店も住まいもあって我々の事をよく見てたらしい。
(金城幸子)怪しい者じゃありません。
警察の方ですよね?はい。
助けてほしいんです!助けてください!
(竹内の声)今で言うストーカーって言うんだろう。
男につきまとわれて困ってる。
助けてほしい。
その時さっきのメモを…。
うん。
まあ彼女の事気になってたんだがSPの仕事に忙殺されて…。
言い訳だな。
その女が殺しの被害者になったと事件のあと知った。
一度会ったっていうか見かけた。
その事件の夜あとで考えたら殺される直前…。

(幸子)やめてよ!
(竹内の声)俺はもちろん総理を警護するという重大な任務を放り出せるはずもなく…。

(竹内の声)あの時は8歳の娘も巻き添えをくった。
うちの娘も当時8歳。
殺された女の子と同い年だった。
そのうちの娘にこの前子供が出来た。
その殺された女の子がもし生きてたら子供が出来てもおかしくない歳なんだな。
そう思ってた。
そしたら今度のヤマだ。
首絞められ下半身むき出しにされて顔に白いハンカチ。
同一犯ですかね?15年ぶりにムシがうずいて…。
彼女のヤマの翌日石鍋首相が暴漢に襲われた。
その時俺は殺された彼女の事ばかり考えてた。
そしたら集中力を欠いて…。

(男)石鍋ー!
(男)お前なんか辞めちまえ!そうだったんですか。
離れちゃいけないんだよSPは。
要人のそば決して離れちゃいけない。
たとえ目の前で人が殺されそうになっても助けられない。
二度とやるもんか。
あんな仕事。
(チャイム)
(花輪)「どちら様ですか?」竹内です。
どうぞ。
預かりましょう。
あっはい。
どうぞ。
(犬の鳴き声)
(石鍋キリ子)まだ犬嫌い?
(キリ子)ジョンと涙の再会したらどう?ジョーン!あなたの大好きだった竹内さんがいらしたわよ!アハハハハ!バカねえ…。
あなたの顔を見る度に吠えてたジョンはとっくの昔に死んだわ。
お久しぶりね!お変わりなく。
この度警護課長から命を受けましたが直にお断りしたほうがいいと思い今日参りました。
断る?はい今の私にはあなたのSPは務まりません。
私もう若くない。
知ってるわお互い様よ。
体も以前のように思うようには動きません。
知ってるわ。
定年間近の…老いぼれです。
知ってるわ。
あなたのお役に立てる自信がありません。
でも引き受けてもらわなければ困るの。
あなたには貸しがあるでしょ?
(男)石鍋ー!
(男)お前なんか辞めちまえ!あの事故から父はおかしくなった。
怪我自体は大した事なかったけど入院中に党内の反主流派が政変を仕掛け父は任期半ばで総理を辞職せざるを得なくなった。
あの時の事は何度おわびしてもおわびしきれません。
私のミスで…。
不注意よ!注意力散漫よ!私もそばにいたからよくわかる。
あなたさえしっかり目配りを怠らなければあの事故は防げた。
あなたの事父も私もとても信頼してた。
それまで何度か危ない場面もあったけど見事に処理してくれたし。
何度も申し上げますが私は以前の私とは…。
黙りなさい!!犬は賢いわよ。
犬好きには近づくけど犬嫌いには近づかない。
あなたが私の事嫌いなのはよくわかってる。
だから賢い犬のように私もあなたに近づきたくはない。
でも借りは返してもらわなきゃ!あなたSPやらないっていうんならどうやって私に借り返すつもりなの?
(犬の鳴き声)竹内だ。
今日からよろしく頼む。
(早川由紀)ほら私の言ったとおりでしょ?若手じゃ引き受け手がないから経験者にお鉢が回ったのよ。
(真田信二)しかし警部補はずっとSPの仕事をやってらっしゃらなかったんですよね?15年ぶりだ。
(由紀)失礼ですが…あの…お歳は…。
次の誕生日で定年だ。
警部補走れます?徹夜平気ですか?朝早くて夜遅くて一日中立ち詰めで緊張のしっぱなしで…。
君に言われなくても仕事の内容は知ってる。
肉体的精神的に自信がないんで辞退したが認められなかった。
警部補。
警部補は昔から石鍋代議士をよくご存じだって伺っていますが彼女の弱みとか弱点ってなんですか?一度ギャフンと言わせてやりたくて…。
つまらない事考えるな。
不満があるんだったら配置換えを上申しろ。
私自分から仕事を投げ出すのは嫌なんです。
意地でもしがみついていつかあの女にありがとうって言わせてやるんです。
君は?
(真田)自分は…。
自分も同じです!あの女の鼻っ柱を絶対へし折ってやる。
2人とも心意気やよしだ。
ただあの女ってのはいただけないな。
(花輪)出発します。
(一同)いってらっしゃいませ。
6時半にして。
(花輪)はい。

(歓声と拍手)どうもどうも。
申し訳ないお待たせして。
あっ先生!どうも!お待たせして申し訳ない!どうもどうも。
ああどうもどうも!遠いところねほんとに…。
あっ皆さんどうぞお座りになって。
お座りになってお座りになって。
あっ止めて!止めて!そこで。
そこで止めて。
いや先生あの時間が…。
いいのいいの。
何?あっパン買おう。
わあ〜おいしそう。
パンだパンだ。
まあ〜おいしそう!クルミの…。
あっでもやっぱ洋服先に済ませよう。
仮縫いを先に済ませるから…。
石鍋先生!どうもありがとうございます。
ありがとう。
ファンなんです!あの…。
握手してください!握手してください!どうもどうも。
わあ〜お待たせして…。
どうもお待たせしてどうもご無沙汰しております。
あらこれかわいいわ!私に似合うかしら?アハハハ!
(幸子)誰か!引っ張らないでよ!やめてよ!
(由紀)警部補?どうしました?いや…。
いらっしゃいませ。
どうぞ。
(仲居)お見えになりました。
失礼します。
これはこれは野上先生。
わたくしごときのチンピラになんのご用でしょう?
(野上勘三)ハハハ…まあまあまあ。
(田丸信作)あっあのすいません。
はい。
石鍋先生のSPの…。
はい。
申し遅れました。
わたくし野上勘三の秘書の田丸です。
竹内です。
(田丸)あなたでしたか。
最近石鍋キリ子先生のSPにベテランがついたと聞いていましたが。
ご存じないでしょうがわたくし石鍋キリ子と大学の同期で同じクラブで。
弁論部でした。
もちろん私には彼女のような華々しい家系や政治的環境もありませんから未だに弁当運びで…。
すいません仕事中です。
石鍋総理が襲われた時のSPだった。
そうでしょう?竹内さん。
キリ子に見込まれたんだ。
僕と同じだ。
気をつけたほうがいいですよ竹内さん。
彼女しつこいから。
あっちについたら京都府警に任せてあんたたちは羽伸ばせばいいわ。
京都はおいしい店がたくさんあるから教えてあげる。
(電車の警笛)くう…うぅ…。
フフフ…。
押さないで…!お下がりください!お下がりください。
キリ子さん!キリ子さん!あっどうも…。
道を開けてくださーい!3か月ぶりのお国入りです。
やっぱり京都はよろしおすなあ!
(拍手)花輪さんどちらへ向かわれてるんですか?スケジュール表の夕食会場と方向が…。
申し訳ございません。
いや私にも行き先は…。
(由紀)先生目的地はどちらですか?黙ってついてくる!ここは私の地元!私の庭よ。
どこ行こうと私の勝手でしょう。
先生…地元の先生方の食事会すっぽかすんじゃないでしょうね?あーいてたいてた!洋介ー!
(石鍋洋介)姉さん!こっちやこっち。
府議会の古狸どもと食事なんてまっぴらや!今夜は弟と水入らずで…。
先乗り!はい。
おこしやす。
石鍋先生が食事される部屋は?お2階のお部屋でございます。
(由紀)すいません…。
点検完了。
問題ありません。
了解。
アッハ!当たり前や。
ここはなあもう京都一安全な店。
あーおなか空いた!洋介早よ行こう行こう!
(洋介)はいはい…。
お邪魔します〜。
(仲居)おこしやす。
もういいわ。
あなたいつまで経ってもうまくならないわねえ。
(由紀)失礼します。
忘れ物!ほらっ。
おしぼりも。
固〜く絞って持ってきて。
返事は〜?はい!わかりました…。
(扉の開閉音)あのクソババアむかつく…!もう寝た?寝るわけないでしょう!?何が京都であんたたちも羽伸ばしなさいよ〜よ。
結局振り回されるじゃない。
土産のちりめん山椒買いに行かされた。
こんな時間までお店やってるんだ…。
んなわけないだろう?たたき起こして散々嫌み言われながら買ってきたよ。
もう…頭くる!講演会場には京都府警から応援が来ます。
我々も全力を尽くしますがそちらがもう少し協力的じゃないと我々がいくら頑張っても万全期せません。
ずっと積極的に協力してるつもりですが…。
明日の午前中講演会までの正確なスケジュール代議士ともう一度詰めて頂けませんか?場所時間変更があったら明朝までに必ず連絡ください。
言ってみますがご存じのとおりうちの先生はいつもあの調子で…。
花輪さん脅迫状が届いて以来非常時臨戦態勢です。
非常に危険な状態にあると認識してください。
よくわかっております。
(由紀)警部補!…待て。
早速先生に話してみます。
くれぐれも明日の正確なスケジュール午前中お願いします。
警部補…。
SPってマッサージ師なんですか?それとも旅館の仲居ですか?私はまだ駆け出しですがこれまで色々な要人の警護につき自分なりに務め要人の方々にも感謝の言葉を頂戴し自分自身に…自分自身も満足感や達成感を得てきました。
しかし今回はひどい!あまりにも…。
竹内さん!先生はどこにいるんですか?どこにも…。
見つかりません!
(由紀)車にもいません。
捜せ!はい!すいません。
石鍋先生今夜は?来られてませんけど。
すいません。
はい。
石鍋先生今夜は?ああお見えになっておりません。
先生お見えになってませんか?すいません!はい。
あの…石鍋先生今夜は…。
今日はお見えになってまへんど…。
いらっしゃいませ。
すいません…。
(車のクラクション)
(田丸)うちの親父ははめられたんだよ。
断言する。
不正な金なんか一切受け取っていない。
(田丸)なあキリ子今一番君の力が必要なんだよ。
うちの親父は君をとても頼りにしている。
(田丸)なあキリ子親父助けてやってくれないか?ほんとのとこはどうなの?キリ子…。
君がうちの親父を快く思っていないのは知っている。
石鍋総理にあれだけ世話と恩を受けながら裏で失脚に手を貸したんだから。
気づかなかった父も私もバカだった!だから逆に君の法廷での証言が効果的なんだよ。
反目する石鍋代議士が野上勘三のアリバイを証言すれば裁判の形勢は一挙にこちらに傾きくすぶってる野上の収賄疑惑も晴れる!そんなうまくいくかしら…。
君の国民的人気信用度は高いからねえ。
マスコミだって下手に君をたたけない。
そんな事すれば国民の反発をくらうのは目に見えてるよ!言っとくけど私野上先生の事大っ嫌いよ!顔も見たくないし口も利きたくない。
田丸君が秘書やってなかったらずっと前にぶっ飛ばしてるわよ。
キリ子…頼む!うん!わかった。
田丸君に恥かかせない。
うわぁ…助かった!もういいでしょ?行くわ…。
それじゃ俺は一人寂しく夜の街へくり出すかな。
田丸君いつまで独りでいるつもりなの?もう二度も失敗したんだ。
コリゴリだよ。
離婚は…。
あっごめん。
なんだよ言えよ…。
これ噂よ。
噂だから違ってたらごめんなさい。
田丸君の離婚の原因って…二度ともDVだったって…。
えぇ…!?キ…キリ子までそんなデマ信じてたの?俺女房に蹴飛ばされた事あるけど一度だって手あげた事ない…。
ひどいよ…!そうよねえ…。
田丸君学生時代からジェントルマンで通ってたもんね…。
そうだよ…!
(田丸の笑い声)お迎えに参りました。
はあ…。
車はどこ?お疲れさまでした。
すいませんでした…。
寝るわ。
出てって。
行こう。
先生お話しがあります。
明日にして。
我々警護にあたる人間からのお願いで…。
花輪に言っといて!警護せよと命じられれば石ころだって守ります。
石ころ?石ころのために体張ります。
命かけます。
大切な命かけるんです。
それが我々の仕事です。
その事をよく覚えておいてください。
あなたたちはただの壁よ!灰色にくすんだ愚鈍な壁よ。
壁は黙って私の周り固めてればいいの。
文句言う壁なんて聞いた事ない。
壁だって雨風に当たれば傷みます。
理不尽な力が加わればいつか壊れます。
我々の要望は伝えた。
素直に聞いてくれるとは思えんが…。
今夜の行方不明騒ぎ上に報告を?3時間か…いや報告するには及ばない。
課長もしょっちゅう身の縮む思いしたくないだろう。
我々も休みましょう。
おそらく明日も激務になるかと。
警部補?私…朝までここで詰める。
またなんかやらかさんとも限らんだろう。
では我々も…。
休め。
ここは私に任せろ。

(鳥の鳴き声)
(鐘)
(鐘)
(鐘)
(鳥の鳴き声)
(ため息)
(歓声と拍手)
(歓声と拍手)「ホンマやてホンマ!」「こんなじゃじゃ馬にかて純情な頃がありましてんよ〜」「あっ今笑うたね?信じてへんでしょう」「ホンマですよ〜」「その頃はもっとシュッとしてましてねえ」「ここだけの話ごっついモテてたんですわ」「もうあっちこっちから引っ張りだこで断るのが大変」「でもねえここにいはる皆さんやったらわかってもらえると思いますけど好きな人だけには恥ずかしゅうてなんも言えへんのですわ」「わかるでしょう…?」「気がついたらこの歳まで独り者ですわ」「今も純情なまんま!」「いやでもねえ女は恋をしてきれいになる言いますけどあれホンマですねえ」「お母さん恋してますか?」はい。
「はいやて!いやもう恋せなアカンよ」「歳なんか関係ございません」「100歳になったら120歳のおじいちゃん好きになったらええんです」「若いほうがええて?そら厚かましいわ」「皆さんが恋して幸せいっぱいルンルンハツラツと生きる!」「そんな世の中にするのが私の仕事!」おっ任した!「政治の役割やと思うてます!」ロビー異常ありません。
了解。
「皆さんこの石鍋キリ子をお手本にして恋をしましょう!」「…え?私の真似したら結婚にいきおくれる?」「誰や…ホンマの事言うてんのは〜」
(拍手)先生!先生!
(拍手)女!赤!
(悲鳴)痛い!痛い!写真撮ろうとしただけじゃないの。
なんで!?写真撮っちゃダメなの?ねえちょっと…!やめなさい!違うの。
ミスよ…ミスです!ただのミスよ!
(カメラのシャッター音)
(電車の警笛)トウニチスポーツ。
150円です。
ありがとうございます。
…石鍋キリ子や頂戴!へえおおきに!ありがとう。

(電話)はいはいもしもし?あっ部長!ああ…あのー現在事故の詳細につきましては調査中でありまして…。
もちろんSP担当者の配置は適材適所を心がけておりまして。
ああ…えー彼はですね確かに定年間近ではありますが優秀さは折り紙付きでありましてその…カメラと拳銃を見間違えるなんて事は絶対にありえません。
はいまあ…そのようなですねマスコミの批難中傷は全く根拠のないものでありまして…。
あいついつ戻るの?は?竹内よ。
(真田)聞いておりません。
あの壁まだ使えるわ…。
(赤ん坊の泣き声)
(包丁でものを切る音)
(まゆ)色々お料理作っとくから少しずつ適当に食べてね。
日持ちするやつばっかりだから。
(赤ん坊の泣き声)あぁ…あーちゃん!いい子いい子いい子いい子。
おじいちゃんほらちょっとポンポンしてあげて。
(まゆ)当分出ないんでしょう?自宅待機?でも聞いてあきれたわ。
どこの誰がお父さんにまたSPやらそうなんて考えたの?お父さんもお父さんよ。
歳考えてよ歳を。
(まゆ)案の定迷惑がかかっちゃったじゃない。
もう絶対やめてよね!こんな危険な仕事。
(まゆ)早く退職してかわいい孫の面倒見る優しいおじいちゃんになってよ。
(佐々木光男)あのー…。
おう佐々木なんだ?小一時間出ていいですか?昼飯まだか?
(佐々木)ええ…。
(磯貝)えーっとですね駐車違反の事でちょっとお尋ねしたいんですが。
駐車違反…ですか。
ええ。
2月10日午後9時半頃品川大岡町3丁目の路上に車止めてませんか?あの辺り全部駐車禁止。
(磯貝)防犯カメラと複数の目撃証言がある。
わかりました。
罰金でしたらすぐにお支払いを…。
いくらですか?あの夜あの近くのマンションでモデルの女性が1人殺されたんですよ。
ご存じですか?あなたはすぐ近くに車を止めてたわけでしょう?女性の悲鳴を聞いたとか不審な人物を目撃したとか。
色々あるでしょう?佐々木さん。
色々…。
殺されたのは佐藤あけみ24歳。
佐々木さんこの女性に心当たりは?ありません。
全く。
ほんとですかあ?何か知ってる事とか思い出す事…ありませんかねえ…。
じゃあ佐々木さん何か思い出されましたらすぐに私のほうにご連絡を。
田丸さん…。
刑事か?この前殺された女の事だろう?知ってるよ彼女が殺された事ぐらい。
あれだけ忠告したのにまだ切れてなかったのか。
田丸さん…僕は一体どうしたらいいか…。
有休もらって骨休みしてると思ってのんびり構えてたほうがいいですよ。
昔はさ人に何言われても気にしなかったが今回無性にこたえる。
いい事しても悪口言う奴は必ずいますから。
気にしないほうが。
(店員)お待たせしました。
そんな事よりお前謹慎中のロートル相手に油売ってていいのか?この前の殺しやっと1人引っかかってきた。
事件当夜現場近くに駐禁してた車から足がついた。
まだ引っ張ってません。
外堀を慎重に埋めてる段階で。
外堀って…。
めんどうなのか?永田町の関係で下手に動けないんです。
永田町?その調子じゃあ俺が頼んだ15年前のヤマ…当分たどり着けないな。
残念ながら…。
(電車の警笛)
(電車の走行音)SPまくなんてわけないわ。
おとなしくすぐ帰るわよ。
いやしかし…。
今夜は冷えるわね。
なんか飲みますか?ウイスキーある?
(ステレオの音楽)ストレートで。
んーおかわり!これ飲んだら帰ってください。
送ります。
じゃあ飲まないわ。
殺風景な部屋ねえ!何年?奥さん亡くなられてから。
9年になります。
結婚ってどう?竹内さん。
私一度も経験ないから。
うまく言えません…。
いい時も悪い時もある…。
いい旦那様だったんでしょうねえ竹内さん。
しっかり奥さんを守ってた。
どうでしょう…。
私にはわかる。
昔…。
そうよ…そう!あの年よ。
父が暴漢に襲われた年。
またその話ですか…。
違うの。
ほんとにあの年だったの。
私ある男性からプロポーズされたの。
いや違う…プロポーズされると思い込んでたの。
食事の約束してて私が先に着いて。
なぜか胸躍らせながら相手待ってた。
あの時はもう三十過ぎたおばさんだったのに14か15の少女に戻った気分だった。
相手が遅れてやって来て謝って色々あれやこれや世間話してデザートまで美味しく頂いて…。
それじゃまたねって別れた。
私が期待してた話は一切なかった。
ほらよく想像妊娠ってあるじゃない。
私の場合は想像結婚。
(携帯電話)失礼。
(携帯電話)SPの真田です。
出たら?もしもし?真田です。
すいません!竹内さんにかけるつもりなかったんですが万策尽きて…。
また代議士がいなくなって!
(真田)「もしもし?」竹内さん聞いてます!?こっちも心当たり捜してみる。
(通話を切る音)帰りましょう。
約束よ!?これ飲むまで帰らないって。
行きましょう。
京都のお礼を言いたかったの。
体を張って守ってくれた。
醜態でした。
間違いでも間違いでなくても私にはどうでもいい。
嬉しかったわ。
石ころとしては。
竹さん…。
石鍋先生もう秘密のご用はお済みになられましたか?課長。
はあ。
そのおじさんなかなかやるわねえ。
すぐに見つかっちゃった。
助かりました!ありがとうございました!竹さん…でかした。
「一部マスコミの真っ黒宣伝に惑わされてはなりませんよ!」「あんなものはですねえ疑惑〜疑惑!と夜明けのカラスみたいにギャアギャア騒ぎ立てているだけで…」そうだ!「そうですよ!」「大迷惑のアカンタレです!まったく」頑張れ!「ありがとうございます」「野上勘三先生はこの日本のために粉骨砕身働いてこられた立派な政治家です」「あの裁判はその野上先生を陥れようとする謀略です」
(拍手)「ありがとうございます…」「わたくしは正々堂々と裁判で証言致し野上先生に黒い卑劣な罠を仕掛けた連中の息の根を必ず止めてみせます!」
(拍手)「ご声援ありがとうございます。
ありがとうございます…」「ご声援ありがとうございます」花輪今の演説何点?百点満点でございます。
ふふふ…。
竹内さんも聞いてたでしょ?いえ警護に集中してました。
あんな近くにいて耳に入らないはずないわ。
聞かせて。
何点?お答えする立場にありません。
いいから言って。
これ警護担当する者の率直な意見と思って聞いて頂きたいんですが演説内容にもう少し気を使って頂けませんか?ケチつけるつもり?送られてきた脅迫状は先生が野上代議士の裁判に関与する事に反発する者が出した可能性がある我々はそう思ってます。
ですから…。
黙りなさい!あんたたちに私の政治的信条や行動をとやかく指図される覚えはないわ。
しかしこれ以上無用な挑発は…。
黙りなさい!口をホチキスで留めるわよ!先生!早川!
(由紀)はい!予定変更して自宅へ戻る。
了解。
ただ今ホシと思われる男を追跡中。
先生大丈夫ですか?わあー!ほら降りろ!痛いな!あの女俺たち支援グループの人間をなんだと思ってやがるんだ!大臣として被害者に頭下げて謝罪すべきだろう!犯人は公害健康被害者の支援グループの一人で先生が大臣当時の対応に批判があると。
そんな事にいちいち難癖つけられちゃたまったもんじゃないわよ!私が深々と「悪うございました」って頭下げなかったって言うんでしょ?人にペコペコ頭下げてばかりいたら政治なんて出来やしないわよ!脅迫状の件ですが…。
あんな卑劣な真似しといて…よく私の事を非難出来るわね。
犯人は脅迫状出してないって言ってます。
嘘よ!これで一件落着でしょ!?犯人が捕まってそれでおしまい…。
いいえ脅迫状の件が明らかにならない限り油断出来ません。
(犬の鳴き声)
(犬の鳴き声)
(鳴き声)そのまま!触らないでください。
犬をどけて。
はい!
(犬の鳴き声)先生の大阪行きはいつ?来週火曜です。
大阪地裁で野上勘三のアリバイ証言をするんだろ?そのように聞いてます。
野上がゼネコンから金を受け取ったとされる時刻石鍋キリ子と食事をしていたというのが野上サイドがひねり出したストーリーだ。
ストーリー?収賄逃れの悪あがきだともっぱらの噂だ。
石鍋代議士は偽証のために大阪に…?
(ため息)こんなものが出てきた日にはますます裏の話に真実味をおびてくるな。
ですが発炎筒の犯人が脅迫状を出してないとわかった以上石鍋代議士に大阪行き中止の要請出したほうがよくないですか?誰が言うんだよ。
誰があのメスライオンの首に鈴をつける?彼女は典型的なファザコンだ。
亡くなった父親の言う事しか聞かなかった。
竹さん大阪には精鋭を増員するよ。
なんとか…なんとか無事にあのじゃじゃ馬を大阪から連れ帰ってくれ。
おい来たぞ!代議士!
(記者)代議士!
(記者)野上代議士のアリバイを証明されたんですか?
(記者)石鍋代議士!野上代議士のアリバイを証明されたわけですか?
(記者)野上派による圧力が今日の証言に繋がったとの話もありますが。
(記者)代議士!野上さんとはよく食事されるんですか?
(記者)野上代議士はゼネコンから金もらったんですか?わかった!ひと言話すわ。
石鍋キリ子からひと言申し上げます。
皆さん今日は取材ご苦労さま。
特に申し上げる事はございません!
(記者)そんな人をくったコメント…!
(記者)ひと言お願いします!
(記者)お願いします!今新大阪です。
なんとか無事終わりました。
いえ…とても意気軒高です。
わかりました課長十分気をつけます。
竹内さんタバコ吸う?いえ私やめました。
私もよ。
何十年ぶりかしら。
美味しくない。
(ため息)意気軒高に見えるかもしれないけどこれで結構ストレス感じてるのよ。
でしたら我々の提案どおり地裁の裏口から出て頂ければあのような混乱もなく危険値も下がったかと…。
我々政治家は警護の都合で生きてるんじゃないわ。
後ろめたい事がない時は堂々と人前に顔を見せなきゃいけない。
後ろめたい事がある時は…なおさらよ。
文句ある?いいえ。
いいわよ言って。
怒らないから。
我々は仕事ですから命じられればたとえ黒い石でも守ります。
ただ石鍋先生は態度も口も悪いが他の先生方と違ってもっと崇高な理念をお持ちだってそう思ってました。
誤解でした。
黙んなさい!あなたに何がわかんのよ!
(ノック)先生お時間でございます。
行こう。
いつまでも黙ってちゃわからんだろうが。
殺された佐藤あけみと1年前から付き合ってたのはわかってるんだ。
何度か食事しただけで…。
嘘こけ!彼女の部屋に入り浸ってたんだろうが!え?見られてるんだよ佐々木。
ケンカしたのか?お前に女が出来たのか?それとも彼女に男が出来た?あっ金か?金で彼女と揉めて…。
なんとか言えよ!佐々木さん…じゃあちょっと話変えよう。
15年前だ。
15年前を思い出して。
あんたがまだ政治家の秘書さんなんて大それた仕事に就く前だ。
赤坂でバイトしてたろ?カウンター1つのバーでバーテンを。
これ赤坂の地図。
あんたの働いてた店どこ?なんの関係があるんですか?忘れました。
(磯貝)ここだろ?お前が働いてた店はこのビルの地下。
ここから東に200メーター行ったところ。
ここのマンション覚えてんだろ?当時のお前の彼女が娘と2人で住んでたところだ。
知りません。
そんな彼女いませんよ。
とぼけるなって言ってんだろうが!お前が殺したんだ!15年前もこの前も!やめてください!知りませんよそんな話!
(ノック)おう。
磯さんちょっと…。
どうした?
(ノック)磯貝です。
まあどうぞ。
この度はうちの佐々木が大変ご迷惑をおかけしているようで。
全てわたくしの監督不行届き。
不徳の致すところ。
申し訳ございません!待ってください。
そんないきなり頭下げられても。
それに我々は正式な手続きを踏んで粛々と捜査を進めてますので露骨な横槍を入れられても…。
刑事さん野上も私もそのようなつもりは毛頭ございません。
それに野上はこの件は全く知りません。
伝えてもおりません。
私の独断で参りました。
実はうちでも佐々木には以前から大変手を焼いておりまして。
殺されたモデルと交際していた事も承知致しております。
我々も交際をやめるよう何度も注意したんですが聞き入れず…。
それで出来る限り佐々木の行動を見張るようにしていたんですが残念ながら事件の発生をくい止める事が出来ず…。
佐々木の動向を監視してた?いやずっとではありませんが気にかけてはおりました。
佐々木の失態は全てうちの野上のスキャンダルに直結するわけですから神経質にならざるを得ません。
そんな厄介な秘書なら早めにクビにすればいいのでは?簡単にはクビに出来ない事情が…。
どんな?それは申し上げられませんが。
事件の日は佐々木が急に早退したいと言い出したのでおかしいと思い…。
現場近くのコインパーキングの領収書です。
事件の日私が車でつけて彼の行動を見張っておりました。
ちょっと失礼。
では事件当夜の佐々木の行動を詳細に把握していると?申し訳ありません!それでこのあとは刑事さんではなく当該事件の担当責任者捜査本部長の署長さんか本庁の担当管理官と直接お話ししたく…。
なんだよ脅かすなよ。
今上がりですか?1杯飲むか?竹さん明日も早いんでしょ?ここで結構です。
ちょっと報告したい事があったんで。
例の殺しか?任意で呼んでた本命やっぱりスジが悪くて。
その永田町絡みとか言ってたやつ?与党の大物の関係者なんですがどうも色々探ってみるとその大物と血縁関係があるようで…。
血縁関係?えっ野上勘三の…。
隠し子です。
でも野上の秘書が乗り込んできてうちの上に直談判して捜査控えさせろって。
野上の秘書って田丸?ご存じなんですか?一度会った。
その隠し子にもういじれなくなったのか?その田丸っていう秘書が強硬で…。
その隠し子佐々木っていうんですが事件の夜も自分が監視してたって言うんです。
当日の駐車場の領収書を見せて。
ウラ取れたのか?確かに駐車場の防犯ビデオに田丸は映ってました。
そのあとは?
(磯貝)上には話すがお前には話さないってその秘書が。
だから聞いてません。
けどそんな駐車場の領収書があったってなんにもなんねえだろ。
そんなもん佐々木っていう隠し子が殺しをやってないって証拠になんないだろ?そのとおりです。
俺も署長にくってかかりましたよ。
そしたらもう佐々木には触るな。
帳場から当分離れてろって。
そうなるか…。
署長には了解わかりましたって言っておきましたが私もこのまま指くわえて見てるつもりは…。
となると15年前のヤマはますます霧のかなたか…。
(長岡)先日の脅迫状の分析結果が出ました。
使われていた便箋が大変高価なものだったものですからすぐに販売元が特定出来ました。
京都二年坂にある八坂堂の便箋でありまして…。
まあこの八坂堂というのは支店を出しておりませんしデパートなどでも小売りをしておりませんので恐らく犯人は京都の店で購入した可能性が高く…。
課長私は忙しいの。
おたくらの取るに足らない手柄話を聞いてるほど暇じゃないの!ではずばり申し上げます。
犯人は京都に土地勘があると思われます。
ですから先生の京都行きはしばらく自粛をお願いしたい。
嫌よ。
花輪課長にポスター見せてあげて洋介の。
はいただ今。
課長今度弟が参議院選に出るのはご存じでしょ?昨日ポスターが出来上がったの。
何度見ても照れるなぁ。
選挙に打って出よういう人間が照れてどないすんの!もう!こんなド素人みたいな事言うてんのよ。
私が付きっきりで鍛えてやらへんと。
脅迫状の件を京都府警にも伝えましたところ警護の過重な負担に難色を示しまして…。
課長私の話聞いてなかったの?弟が選挙に出るの。
参院選の補選。
京都府選挙区。
姉の私が京都へ応援に行かなくてどうすんの。
昨日までサラリーマンやってたこの子一人で選挙なんか戦えるわけないでしょ。
いやしかし…。
京都に土地勘があるって言うけどあの八坂堂って店知ってる?京都のどのガイドブックにでも出てる老舗の超人気店よ。
私も社長をよく知ってる。
頑固で変わり者で店を広げない。
京都を一歩も出ない。
大勢の観光客が押し寄せるから十分潤って手を広げる必要もない。
だからその脅迫状の便箋だって犯人が別に京都にいなくても知らなくても観光客から土産にもらったその可能性のほうが高いわよ。
あなたもそう思うでしょ花輪。
先生のおっしゃるとおりでございます。
だから私は…。
先生!何卒警視庁警護課と京都府警を助けると思ってしばしの間の京都行きの自粛を…このとおり!あはははははは!課長あなたやるわねぇ!そこまで頼まれれば女石鍋キリ子ノーとは言えない。
わかった!今回は課長の顔立ててあげる。
先生本当ですか?ありがとうございます!おかえりなさい。
おかえりなさいませ。
これはこれは珍客ね。
わざわざうちまで来てなんの用?田丸君の用だから…どうせろくでもない事ね。
不愉快な夕食会のせいでこっちに八つ当たりか?飲み直そう!本日はご苦労さまでした。
失礼します。
最近あの野上勘三の秘書うちのおばさんの周りによく出没してると思いません?あの2人大学の同窓で恋仲だったって話だろ。
女のほうは未だに未練たっぷりって感じですけど。
おいよせ。
(田丸)洋介君順調?おかげさまでって言いたいとこだけどやりにくくて…。
自分の選挙ならあれだけど弟とはいえ一から人の選挙を手伝うなんて初めてだし。
お父さんの選挙をずっと手伝ってたじゃない。
手伝うも何も…。
私が手伝い始めた頃はもう父は一度もお国入りしなくても毎回圧勝のトップ当選だったから楽勝よ!それに優秀な秘書軍団がついてたし。
今回だって石鍋キリ子が一段大きく声を張り上げて応援演説かませば洋介君は楽々当選だ。
そんな甘くないわよ。
それに京都に居座ってずっと付きっきりで手伝うつもりだったけど警察から自粛要請が出ちゃって…。
あっそうそう田丸君また改めてお願いに伺うつもりなんだけど野上先生に一度京都に来て頂けないかしら?先生が弟の横で5分でも10分でもマイク握ってくださればこれ以上の援護射撃はない。
それは駄目だ。
ありえない。
えっ?実は今日親父に言われてきた。
伝言だ。
私を当てにしてもらっちゃ困るって。
随分冷たいわね…。
だって私この間野上先生のためにわざわざ大阪まで行って…。
見返りを期待するなんてキリ子らしくないな。
田丸君も野上先生と同じ考え?ああもちろん。
キリ子はうちの親父なんかに頼らなくても十分一人でやっていけるよ。
田丸君なんとかしてよ。
弟が勝つためには野上先生の応援がどうしても必要なのよ。
なんとかしてよ田丸君。
私とあなたの仲じゃ…。
そういえば大昔「石鍋キリ子の男」なんて噂立てられてえらい迷惑した事があるけどまたつけ回さないでくれよ。
それじゃあ。
あっ!竹内さん出発の時間が…。
何度お部屋に声をおかけしても返事がない…。
また行方が?いやお部屋にはいらっしゃいます。
失礼。
先生。
石鍋先生。
失礼します。
先生出発の時間です。
私…京都へ行くわ。
えっ?絶対京都へ行く。
警護課がなんと言おうと京都府警に嫌がられようと京都へ行く。
行って洋介を応援する。
だってこの世にたった一人しかいない私の肉親なんだもの。
私が守ってやらなきゃ他に誰も守ってやる人がいない。
昨日田丸君が来たでしょ。
野上勘三から三行半突きつけられた。
今後一切私とは付き合わない。
よって洋介の応援もしない。
勝手に選挙に出て当選しようが落選しようがお好きにどうぞ…。
ふふふ…。
大阪行く前発煙筒投げつけられたでしょう?はい。
公害健康被害者の支援グループ…。
公害なんて全く関係ない。
えっ?あの発煙筒事件の翌日野上先生から直接電話があったの。
私の体を気遣ってから丁重に謝られたの。
あの被害者グループは自分も知らないわけじゃない。
すこーし関係があるって。
私その時気づいたの。
あの発煙筒事件野上先生の差し金だったんだって。
まさか…。
大阪地裁の私の出廷を確実にするために仕掛けたのよ。
偽証までして帰ってきたのに弟の選挙協力拒否よ。
まあ政治の世界ではよくある事だけど。
野上先生の腹はわかってた。
でも田丸君まで同じとは…。
竹内さん。
あなた私の味方よね?そのつもりです。
よかった…。
京都府警と綿密に連絡を取り万全を期します。
ですからせめて来週の最初の出馬決起集会だけでも石鍋代議士を京都に行かせられませんか?彼女に頼まれたのか?いえ…。
だったらお前さんあの女に惚れたか?…かもしれません。
あんたも物好きだねえ。
石鍋代議士がとても小さく見えました。
あんな彼女は初めて見ました。
課長お願いします。
(ため息)はい下がってください!はい下がって!こちらです。

(拍手)「ありがとうございます皆さま!」「ありがとうございます!ありがとうございます皆さま!」「世界の平和を願い国民の皆様と共にこの日本という国を豊かに明るい未来を開くそのために…」そのとおり!「政治生命をかけ…ありがとうございます」「生涯を捧げながら志半ばで倒れた父石鍋元首相の意志を受け継いでわたくしたち姉と弟が政界を二人三脚で歩んで参りたいと考えております」「どうぞ皆さま方の力強いご支援を石鍋洋介に賜りますよう何卒お願い申し上げてわたくしのご挨拶とさせて頂きます」「皆さまありがとうございました。
ありがとうございました!」「ありがとうございました!ありがとうございました!」本日はありがとうございました!ありがとうございました!ありがとうございました!キリ子さーん!
(拍手)よろしくお願いします。
ありがとうございます。
頑張ってね!男金髪!
(悲鳴)
(銃声)うわーっ!
(男の叫び声)先生先生!竹内さん!
(悲鳴)竹内さん!竹内さん!竹内さん!課長。
あとは頼むぞ。
お願いします。
行ってくる!何かあったらナースコールを押してくださいね。
ありがとうございました。
いい事を教えましょうか?私ね石鍋キリ子の夫なんです。
私ら夫婦なんです。
私心からキリ子の事を愛してるんです。
なのにあいつ野上勘三と浮気をしてそれをなじると私の手に煮えたぎった油を…。
精神鑑定だ。
はい。
あの女は悪魔だ!悪い奴だよ!鬼なんだ!言っとくけど私は鬼退治をしようとした…!ん?目が覚めましたか?経過は順調だそうですね。
メモ置いて帰ろうかと。
薬のせいか1日中寝たり起きたりで…。
とっても顔色いいですよ。
メモって?病人に仕事の話しちゃお嬢さんに恨まれる。
そのために京都へ来たんだろう。
例の殺しか。
まだ決定打は出ないんですがひととおり状況証拠は揃いました。
ホンボシは…例の隠し子か?いや奴は違います。
それにもう佐々木はこの世にいない。
死んだ?
(磯貝)自殺です。
いや自殺に見せかけてあるが殺しです。
遺書もあって「私がモデルを殺した申し訳ない。
死んでおわびを」と型どおりの文句が並んでましたがあれは作りものです。
どうしてわかる?私は帳場から離れ上の命令も無視してずっと佐々木を追ってました。
あの夜も佐々木が死んだビジネスホテルまでつけて張ってました。
しかし朝まで佐々木が殺された事に気づかず…。
間抜けでした。
あいつが現れた時踏み込むべきだった。
そしたら佐々木も殺されずに…。
あいつ?竹さんも知ってる男です。
野上勘三に隠し子がいたそうですね。
知らないわ。
いてもおかしくないでしょうけど。
野上の秘書の佐々木光男。
病死と公表されましたがホテルの一室で首を吊って自殺してた。
私には関係ない。
関係あります。
佐々木は自殺じゃなくて殺されたっていう刑事がいます。
犯人は野上の秘書の田丸信作。
まさか…。
田丸はああ見えてとても暴力的な男です。
二度の離婚の原因はドメスティック・バイオレンス。
くだらない噂よ!先月佐々木が容疑者に疑われた殺しがありました。
モデルの女が殺され下半身裸にされ顔に白いハンカチ。
白いハンカチ…。
前に昔話したでしょ?想像結婚の話。
あの時相手と大学時代の話で盛り上がって私笑い転げて涙まで出て相手にハンカチを借りようとしたの。
いつもキチンとアイロンの当たったピカピカの真っ白いハンカチ持ってたから…。
でもその日はなぜか持ってなかった。
相手というのは田丸信作…?白いハンカチって聞いて思い出しただけよ。
15年前もひと月前の事件とよく似た事件がありました。
殺した女の下半身を裸にして顔に白いハンカチ。
私わけあってそのお宮入りに近い事件ずーっと忘れられずにいました。
ここに来て類似の事件が起きて…。
私は15年前の被害者のためにもなんとしても解決したい。
そう願ってます。
15年前といえば私にとっては石鍋首相を守りきれなかった年でもあり…。
あなたにとっては田丸と想像結婚の食事をした年。
15年前の白いハンカチの殺人事件の事は知ってるわ。
父の入院中週刊誌で読んだ記憶が…。
あの時あなたが流した涙を田丸が拭くために差し出せなかった白いハンカチ。
殺された女の顔の上にのってたのかもしれない。
バカバカしい!15年前殺しがあったのは3月4日。
あなたと田丸が想像結婚の食事をしたのも3月4日。
違うわ。
全然違う!田丸をかばうんですか?どうして私が?あの時あなたが涙を流したのは話が盛り上がって笑い転げたからじゃない。
プロポーズを期待して待ってたのに田丸があなたに全く関心がないってわかったからだ。
お大事に。
キリ子さん!
(花輪)お待ちしておりました。
どうも。
(田丸)おう。
ごめんねわざわざお呼び立てして。
関西に来てるって聞いたから。
こっちどうぞ…。
いらっしゃいませ。
どうも。
でもキリ子もよく京都に居座ってられるな。
あんな大事件に出くわしたのに。
ひどい目に遭った。
でも洋介の選挙も終盤だから…。
洋介君はあの事件で注目と同情が集まり一躍トップに躍り出たんだって?当選間違いなしだろ?やっぱり転んでもただでは起きない。
強いよキリ子は。
私田丸君が選挙に出たら必ず応援に行く。
野上先生に来るなって言われても私行く。
俺は駄目だよ…。
なんかあったの?ん?いや…。
それよりキリ子。
俺に急ぎの用って何?私田丸君に個人的に確かめたい事があって…。
あっハンカチ持ってる?えっなんで?ほら。
やっぱりこれだ。
田丸君って昔からいっつも真っ白でキチンとアイロンのかかったハンカチ持ってるよね。
俺はハンカチの純白が好きなんだよ。
それを被せれば黒く薄汚れたものも見事純白の中に消えていき何事もなかったかのように全てが清らかな世界に還る…。
昨日刑事が訪ねてきたの。
殺人事件の聞き込みよ。
殺された女性の死体の顔の上に白いハンカチが被せてあったって…。
それで俺の事思い出したの?ひどいな…。
違うの!その刑事が田丸君の事疑ってたの!もちろん私は絶対関係ないって言っといたけど…。
おまけに俺がその殺人犯ならなおの事面白いって…洒落になんないよ!ねえ田丸君真面目に聞いてほしいの!もし私に何か出来る事があったら…。
何もないよ。
マジになるなよ。
ずっと選挙で寝る間も惜しんで走り回ってるからそんなくだらない妄想を抱くんだよ。
かもしれない。
ちょっと早いけど久しぶりに食事しないか?俺隠れ家風のいい店知ってるんだ。
な行こう。
いいわよ。
どこ?こんなところお店なんて…。
(田丸)キリ子は昔の京都は詳しいだろうけど今時の若者の遊び場は知らないだろう?田丸君帰ろう。
痛っ!キリ子一緒に死のう。
なあ死んでくれよ!キリ子のところまでおまわりが来たんなら俺も逃げられないよ。
なあ?それじゃあやっぱり田丸君が…。
女はみんな汚いよ。
俺の前じゃニコニコ笑って調子のいい事言ってるくせに裏に回ってヘラヘラ笑ってバカにして…。
キリ子お前もそうなんだろう?なあ?痛い…離して…。
どうせ俺は万年秘書だよ。
次は出してやる次は出してやるって目の前にニンジン吊るされいつまでも走らされてる馬だよ俺は!キリ子はサラブレットだからわからんだろう俺の気持ちなんか…!く苦しい…!こうしてる時が一番いい。
女はみんな俺の言う事を聞く。
「お願い助けて」って。
生かすも殺すも俺の思いどおりで…!うわっ!大丈夫ですか?田丸信作。
とりあえず殺人未遂の現行犯だ。
この前のと15年前のと2つの殺しはこれからゆっくりと話を聞かせてもらうぞ。
さあ来い。
3度目ね…助けてもらったの。
謝らなければなりません。
私が田丸の話をしなきゃこんな事にならなかった。
気にしないで。
私が勝手にやった事だから。
田丸君のそばにいながら何も知らなかった自分が情けなくて。
許せませんでした。
なんの罪もない女性や子供にまで手にかけたあいつを…。
許せませんでした。
あなたの気持ち弄んだあいつが…。
え?帰りましょう。
傷痛まない?ああ大丈夫です。
それより…失礼な事を言いました。
石ころだなんて…謝ります。
私だって壁だなんて…。
あなたは石ころなんかじゃなかった。
不明を恥じます。
それと…私の昔の借りもう帳消しにしてもらっていいですか?もちろん。
私のほうがいくつも借り作っちゃったわね。
どうやって返したらいいか。
お気になさらずに…。
そうはいかないわよ。
あそうだ。
うちのワンちゃんもらってよ。
あげる。
いや結構です。
うちではね飼えませんし。
よし…じゃあ手っ取り早く…。
こんなおばさんのキスじゃますます借り増えたかな。
幸子の時は私のほうが騙されたんですよ。
独身で一人寂しくしてるなんて口説かれて…。
(田丸の声)うちに行ったらガキがいて。
これがまたピーピーよく泣きやがる。
私自分の妹を思い出して…。
うちの妹あんまりピーピー泣くもんだから母親に殴り殺されたんですよ。
あけみは金遣いは荒いがいい女でした。
(あけみ)あーこの靴かわいい!ちょっと勘弁してくれよ!
(あけみ)あっちも!おいあけみ!今日はもう帰って。
え?いや…。
ごめんね。
はい。
いやあの…。
今日ゆっくりしていこうと思ったのに。
うんごめん。
泊まる用意もしてきたし…。
なんかあるのか?ううん。
これから出かけなきゃいけないの。
(佐々木)えっこれから!?そうごめんね。
あの能なしの佐々木には過ぎた女でした。
佐々木からぶん取ったのにまた部屋に引っ張り込んでる。
(田丸の声)私は絶対に許せなかった。

(あけみのうめき声)
(あけみのうめき声)あけみは私の女だ。
私だけの女だ。

(田丸の声)私を騙したり逆らったりした女に罰を与えてやったんですよ。
2人とも事切れる寸前にこの田丸信作という男にした愚かな行為に気づいたが最早手遅れ。
逆戻り出来ず哀れに死んでいったというわけです。
言う事はそれだけか?お前には死者を悼む気持ちがひとかけらもないのか!あいつらは私みたいな人間と付き合う事が出来ただけでも幸せだったと思いますよ。
私の手にかかって殺されて彼女たちのクソみたいな人生が最後に輝かしく幕を引けたわけですから…。
もういい。
連れて行け。
(刑事たち)はい。
田丸。
1つ聞いていいか?なんでも答えますよ。
15年前赤坂で金城幸子と娘を殺したあと石鍋キリ子と食事した事を覚えてるか?いえ全く。
あの夜の事彼女はよく覚えてる。
あの時彼女は泣いた。
でお前にハンカチを借りようとしたがお前持ってなかった。
石鍋キリ子に涙は似合わない。
刑事さんその時キリ子はなんで泣いたんですか?心の底から哀れんだんだよ。
反吐が出そうな最低な男を。
(磯貝)おい。

(記者)どう責任を取るつもりなんですか!?
(野上)今回の秘書の一件を受け本日辞職を決意致しました。
国民の皆さま被害者遺族の方々まことに…まことに申し訳ございませんでした!
(記者)国民にちゃんとした説明を!
(記者)どうして今まで気づかなかったんですか!
(一同)バンザーイ!バンザーイ!洋介!
(一同)バンザーイ!バンザーイ!
(拍手)
(一同)バンザーイ!バンザーイ!
(記者)新党の立ち上げを決意された最大の要因は?「今の日本には国民が本当に信頼できる政党がない」「痛切にその事を実感したからです」
(記者)新党の党首には石鍋代議士がなられるんですか?「まあ皆さん嫌かもしれませんけど必然そうなるでしょうね」
田丸事件の余波はそれからしばらく続いた
私はSPの仕事を離れいつもの現場に戻った
動く壁よりどれだけ気が楽か
まだまだ走れるまだまだやれる!
2014/09/20(土) 12:00〜14:15
ABCテレビ1
ドラマスペシャル SP〜警視庁警護課[再][字]

元総理大臣の娘で政治家・石鍋キリ子(高畑淳子)を狙う襲撃事件発生!警視庁警護課の竹内(渡瀬恒彦)は護りきれるのか?そんな中、謎の美女の変死体が発見されるが…。

詳細情報
◇番組内容
元総理大臣の娘で政治家・石鍋キリ子(高畑淳子)を狙う襲撃事件!定年間際に再び警視庁警護課に配属された竹内孝治刑事(渡瀬恒彦)は護りきれるのか?一方で、白いハンカチを顔にかぶされた女性の変死体が発見される。15年前の未解決事件の秘密とは!?
◇出演者
渡瀬恒彦、佐野史郎、杉本哲太、三倉茉奈、金児憲史、金子さやか、風間トオル、平泉成、高畑淳子

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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