(テーマ音楽)
東京から電車でおよそ1時間
神奈川県の北西の端にある相模原市藤野地区です
町の中央には相模湖。
その周囲を豊かな緑が包みます
この町の至る所で見られるのがアート作品。
斜面に建つのは大地に降り注ぐ雨を表現したオブジェです
山の中腹にあるのは「緑のラブレター」。
自然のすばらしさを山がラブレターを抱く姿で表しています
都心にも近いこの山里には多くの芸術家が移り住んでいます。
その数200人以上
お〜いろんなお店がありますよ。
地元の芸術家たちが作品を展示販売しています
手作りのガラス工芸品
陶器の置物など
こうした一点物の作品が手ごろな値段で手に入ると東京横浜などから多い日には500人ものお客さんでにぎわいます
通りすがりでここ通り過ぎたらあれ?何かやってるって。
面白そうなんでUターンしてきました。
お箸とかガラスとかもすごいきれいで。
それぞれみんな職人さんがねやってていいですよね。
藤野で暮らす芸術家の工房を訪ねました
あ〜木のいい香りがしてる。
こんにちは。
こんにちは。
7年前に移り住みました
地元の木を生かして家具や食器などを作っています
ワインが好きなんでチーズを載っけれてチョコッと切れればなと思って。
自分用のものからやってるんですけど。
藤さんは普通は材料として使わない木も大切にしています
ちょっと変わり種なんですけど最近面白いなと思って。
これが桃の木です。
えっ桃の木ですか?はい桃なんですよ。
かわいいでしょう。
ハハハ!何かそう思って見ると軟らかいような。
(藤)そうですね。
やっぱり桃色しててですね。
「木には一本一本異なる特徴がある」と言う藤さん。
作品に生かしています
桃の木で作った小箱
目がいきやすい蓋には桃色のグラデーションがきれいな部分を使いました
カエデの花入れ
黒く変色した部分もアクセントとして生かしています
細かい広葉樹とか捨てちゃいそうな木を拾ってきては磨いて作品作りっていう事に今なってるんだと思います。
拾ってみるといろんな魅力的な木があった事をやっと今気付けるようになってきたんですね。
木へのまなざし。
それは藤野の自然との出会いから生まれました
藤野に来る前イタリア・ミラノで6年間修業するなど木工職人として腕を磨いてきた藤さん
洗練されたデザインを緻密に仕上げる事にこだわってきました
材料の板は癖のないきれいな木目のものだけを選んで使っていました
帰国後藤野に工房を構えた藤さん。
程なく転機が訪れます
地元で林業を営む清水さんと知り合い伐採の様子を見せてもらったのです
森の中で静かに命を育んできた木
切り倒されたばかりのみずみずしさは藤さんが初めて見るものでした
その感動が木の一本一本を大切にしたいという思いにつながったといいます
(藤)僕ここが欲しいですね。
ここが欲しい。
ほらここら辺がこうしわが寄ってるのが多分木目が出ると…面白そうですけどね。
樹齢70年のスギ。
藤さんが注目したのは根元の部分
加工しにくいため材木として流通する事はほとんどありません
(清水)頑張ってひとつ…。
はい。
分かりました。
森が育む豊かな個性。
そのすばらしさを作品を通して伝えたい。
藤さんの思いです
僕の職種からでもいろんな事がやっていけるっていうか。
そうなってくるとまた山も活性化していくというか。
魅力的なものを作るという事がちょっとしたねそんな大層な事じゃないですけど役割の一つかなと思って。
藤野に芸術家が集まる理由は自然の魅力だけではありません
これいくら?1万円?ううん6,000円。
「ふじのアート・ヴィレッジ」を運営する中村賢一さんです。
6年前仲間2人と資金を出し合い始めました
(中村)先週売れた?少し。
先週ちょっとだけ。
(中村)売れた?ちょっとだけ。
作品を発表する機会の少ない芸術家たちを後押ししています
藤野と芸術との関わり。
そのきっかけは昭和63年神奈川県の主導で始まったアートによる町おこしでした
大規模なイベントを開いたり職人を養成する学校をつくったりして人を呼び込もうというものでした
当時役場の担当者として奔走した中村さん。
しかし期待はすぐに打ち砕かれます。
バブル崩壊の影響で資金のめどがつかなくなり計画が頓挫したのです
もうどう言ったらいいかな。
路頭に迷うっていうか何をやっていくのかっていうのは皆目見当もつかなかったというのが実態ですね。
途方に暮れた中村さんですが諦めませんでした。
力を入れたのは空き家を芸術家に斡旋するという地道な取り組みです
(中村)ブライアンおはよう。
(ブライアン)おはようございます。
(ブライアン)大丈夫?
(中村)大丈夫じゃない。
中村さんが世話をした一人カナダ人の染織家ブライアン・ホワイトヘッドさんです
日本の伝統文化に惹かれ藤野に移り住んで20年余りになります。
今手がけているのは絹織物。
繭からとった糸を染め織り上げるまで一貫して行います
藍染めのはんてんや藍と柿渋で染めた布。
藤野で生まれた作品は欧米で高く評価されています
築150年の古民家。
中村さんが大家と交渉自ら保証人になる事で借りられました
桑を栽培する畑も見つけてもらいました
ケンちゃんが大家さんにいろいろ相談して「この外人は大丈夫だよ」と言ってそれから貸してくれたの。
これが大きいんだよ。
普通は絶対こういう…自分でこういう所は探しても貸してくれない。
役場を退職した今も中村さんの地道な取り組みは続いています
2年前廃業したホテルの跡地を退職金をはたいて購入
工房やギャラリーとして若い芸術家の卵たちに格安で貸しています
この25歳の女性は昼間福祉施設で働きながらグラフィックアートの作品に取り組んでいます
(中村)家も気に入って仕事もまあまあ。
もうまあまあどころかすごい楽しいです。
(中村)それはよかったじゃあ。
100点だな。
そうなんです。
もう120点以上かなって思って。
藤野で暮らし夢を育む若者たち
中村さんはこうした夢を後押しする事が町の元気につながると信じています
せっかく会った人たちですから。
しかも積極的にこの町に来たいという人たちですから。
大事にしてあげるのがやっぱり人の道だと思ってたけどこんな面白い人がこれだけ集まるっていうのは考えた事もなかった。
芸術家の中から地域に深く根づきながら作品を生み出す人も現れています
山あいにある小さな集落綱子地区。
26人が暮らしています
ここに8年前東京で活動していた現代アートの作家が移り住みました
今では自治会長を任されるほど地域に溶け込んでいます
(傍島)おはようございま〜す。
傍島です。
金曜日からお祭りの準備が始まりますのでちょっと慌ただしくしますので。
すみません。
ちょっとあの…つまらないものですが。
(傍嶋)リンゴのタルトケーキです。
はいはい。
週末仲間のアーティストとイベントを開くため手作りのケーキを持って挨拶に回ります
是非ぶらりと遊びに来てもらえたら。
すみませんでした。
はいどうも。
次の家では…
(傍嶋)えっマジで?ハハハ!
畑で取れた野菜や果物のお裾分け
(傍島)このぐらいじゃあ。
もっと持っていきなよ。
話をしているうちに袋はみるみるいっぱいになりました
よろしくお願いします。
是非遊びに来て下さい。
ご苦労さまです。
すみません。
持ちきれるかな?
(笑い声)じゃちょっとまた行ってきます。
どうもすみませんありがとうございました。
仲いいですねうちの自治会は。
何かもらってばっかりで。
こうした地域の人たちとの関わりは傍嶋さんの創作活動に影響を及ぼしています
藤野に来て作り始めたのが誰でも親しめる万華鏡。
外側は温かい土の造形です
そして万華鏡の中をのぞき込むと…
藤野に移り住んだ傍嶋さんの心象風景だといいます
僕結構若い頃の描いた絵画とかは赤黒とかそういったちょっと危険色っぽい感じのカラーの作風が多かったりしたんですけどやっぱり綱子という地域に住んですごく関わって人の歴史とかそういうのを感じながらそれが自分の魂に響いてきて。
影響してるものというのは自然とあるんじゃないかなと思いますけどね。
何か恩返しがしたい。
傍島さんは地域の人たちも集まれる場所作りに仲間と取り組んでいます
使われなくなった工場を改装しお年寄りと若い芸術家が交流できる場にしたいと考えています
この日近所のお年寄りが手伝いに来てくれました。
持っている竹は裏山で切り出したもの
傍島さんたちに竹の割り方を教えます
そこはねるから危ない。
(3人)お〜!すごい。
めちゃくちゃきれいに。
見事に真ん中で。
さすが。
みんなこんな山の中入ってきてくれたんだからありがたいと思ってます。
(傍嶋)すごくいいとこですから。
空気だけはね。
感謝の思いを込めた集いの場。
来年5月までに完成させる予定です
旅人みたいな僕を受け入れてくれてすごくこう優しくしてもらえてるので何かしらそういった恩返しとしてできたらなと思ってます。
芸術家たちの夢育む山里です
(テーマ音楽)
(テーマ音楽)2014/09/20(土) 05:15〜05:40
NHK総合1・神戸
小さな旅「緑のアトリエで〜相模原市 藤野地区〜」[字]
湖と緑に囲まれた山里、“アートの町”と呼ばれるのが、神奈川県相模原市藤野地区。多くの芸術家が移り住み、街には野外彫刻が点在。アートで活気あふれる山里を旅する。
詳細情報
番組内容
東京から電車で1時間あまり。湖と緑に囲まれた山里に“アートの町”と呼ばれる所があります。神奈川県相模原市藤野地区。多くの芸術家が移り住み、街には、30を超える不思議な野外彫刻が点在。きっかけは20年あまり前、町の人が廃屋を紹介するなど芸術家を迎え入れたことです。人が人を呼び、今ではその数、200人以上。自然な近所付き合いが生まれ、町おこしに奔走する若い芸術家まで。アートで活気あふれる山里を旅します
出演者
【語り】山田敦子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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サンプリングレート : 48kHz
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