金曜プレステージ・塔馬教授の天才推理2湯殿山麓ミイラ伝説殺人事件 2014.09.19

(殴る音)
(殴る音)
(塔馬)歴史を絡めた旅の特集。
(塔馬)今回は湯殿山を取り上げるんだ。
(亜里沙)そう。
有名な即身仏にスポットを当てて。
(長山)ミイラなんか取り上げたって誰も喜ばねえって。
即身仏。
(長山)ミイラの一種だろうが。
(亜里沙)ハァ自分の命を捨てても人々を救いたいっていうその上人様たちの崇高な思いを読者に伝えたいのよ。
意義ある企画だよリサ。
(亜里沙)でしょ。
ほらチョーサク。
トーマだってこう言ってる。
(長山)場所がよくねぇんだよ。
湯殿山っていやぁあれだろ。
こういうのがうじゃうじゃいる…。
そういうとこだろうが。
それでごねてるの?
(亜里沙)苦手だったじゃない。
大学時代から。
(長山)おい他のライター探してくれ。
今回俺はパスだ。
会えるチャンスなのになぁ。
彼女と。
(長山)誰とだよ?あず!?梓川あずさ。
チョーサクが熱烈ファンの女優さん。
梓川あずさ。
(亜里沙)彼女が主演する映画の撮影があるの。
湯殿山の麓の仙人村っていう所で。
(長山)何で?何で何でお前が知ってんだよそんなこと。
(亜里沙)プロデューサーを知ってるから。
ちょっと見て。
ほら。
(長山)小暮秀子?
(亜里沙)2年前にこの取材で知り合ったんだけど今回念願かなってやっと一本立ちすることに。
それが今回の映画なんだ。
(亜里沙)うん。
「撮影をのぞきに来ませんか?」って連絡もらって。
で湯殿山を取材するのもいいかなって思って。
頑張り屋さんなんだ。
もう一人のリサだね。
トーマ…。
へっ。
お前の事情なんか知ったこっちゃねぇけどなぁ。
(長山)あれ?何か俺幽霊とかたたりとか突然平気になったなぁ。
(亜里沙)分かりやすいよねチョーサクって。
(長山)言ってろ。
行きたいんだよ。
何だかんだ言ってもリサはチョーサクと。
(長山)ハハハッ。
だよなぁ。
(亜里沙)楽だからね楽だけねっ。
(長山)そういう意味でな。
例によって楽しい取材になりそうじゃない。
もしこれでひょっこり新しいミイラなんて発見したら面白いのにね。
シャ〜!
(長山)するな!お前ミイラには呪いがつき物なんだぞ。
もう。
(亜里沙)あっ。
ねえねえトーマ。
トーマトーマ。
(長山)あっ!ああ…。
(長山)来い来い来い。
(亜里沙)おっ。
おーっ!
もちろんこのとき僕たち3人は冗談で口にしたことが現実になろうとは思ってもいなかった

(あずさ)どうしてよ?兄さん。
どうして私たち死ななきゃいけないの?俺たちが結ばれる道はこれしかないんだ。
(あずさの泣き声)
(川島)カット!
(男性)はいカットでーす!
(長山)心中ものとは聞いてたが兄貴と心中すんのか?
(亜里沙)血はつながってないらしいんだけどね。
(長山)きょうだいはきょうだいじゃねえか。
やらせっかよ。
んなえぐい役俺のあずに。
まあまあ。
(亜里沙)秀子さん。
(秀子)リサさん。
おめでとうございます。
(秀子)来てくれたんですね。
(亜里沙)もちろんですよ。
(秀子)ありがとうございます。
(亜里沙)チョーサク。
小暮秀子さん。
(長山)あっ…どうも。
(秀子)流山朔先生ですね。
わざわざありがとうございます。
(長山)いえいえ全然。
(あずさ)ねえねえねえ。
あのミステリー作家の?
(秀子)うん。
(あずさ)あっ嘘!?
(長山)知ってるんすか?俺を。
(あずさ)はい。
知ってます。
やった。
いやぁしかしいい役ですね。
それを見事に演じてらっしゃる。
(あずさ)ありがとうございます。
(長山)なっ?
(秀子)これから制作発表あるんです。
よかったらお二人も。
(亜里沙)ぜひ。
ぜひ!
(あずさ)はい。
(千崎)元気か?ああ。
どうも。
(女性)こんにちは。

(松本)小暮さん。
雲海さん到着されたんで。
(秀子)揃ったわね。
じゃあ松本さん手はずどおり。
(松本)分かってますって。
(拍手)お待たせいたしました。
『湯殿山絶唱』制作発表を始めさせていただきます。
私プロデューサーを務めている小暮と申します。
よろしくお願いいたします。
(拍手)
(秀子)企画から5年。
昨日何とか無事にクランクインできましたのも皆さまの励ましとご支援があってのことです。
ことに撮影に関して全面協力をお約束くださいましたお二人。
地元仙人村の殿岳寺のご住職沼田雲海さま。
実業家で村議会議長でもあられる千崎完三さま。
(千崎)どうもどうも。
どうも。
このお二人のボス…。
(笑い声)
(秀子)失礼いたしました。
有力者のお二方にはあらためて深く感謝申し上げます。
(拍手)
(長山)牛耳ってるわけだ。
坊主と村議長でこの村を。
聞こえるから。
(秀子)また演出に名匠川島順之助監督をお迎えできたことは望外の喜びです。
そして感謝したいもう一人は私のしつこい口説きに根負けして主演を引き受けてくれた梓川あずささん。
(千崎)いねぇじゃん。
(秀子)あちらをご覧ください。
(亜里沙)すいません。
ああっ奇麗!
(長山)あず!あず!最高!めちゃくちゃカワイイ。
(亜里沙)すてきですね。
(長山)来た来た来た来た。
(あずさ)あっ!
(長山)あっあず!
(坂巻)大丈夫か?
(あずさ)はい。
ちょっとひねっただけですから。
(秀子)ならいいけど。
(松本)ああ。
これにつまずいたんだ。
準備したとき俺見落としたかなぁ。
(坂巻)うちのあずさが大ケガでもしたらどうしてくれるんだ。
(川島)後でいいだろう。
何もこんなときに。
(松本)あっ?何だ?これ。
(長山)どうした?
(松本)これ…。
何かこう…。
(あずさ)仏様みたい。
日本では現代までに二十数体のミイラが確認されてるんだけどその中でも特に注目すべきなのは山形県の湯殿山麓を中心に祭られてきたこの即身仏たちでね。
ミイラになろうと決意した行者が米や麦などの穀物は一切口にせずほんの少しの木の実なんかだけ食べて。
1,000日あるいは3,000日もかけて自分の肉体をどんどん衰弱さしていった結果なんだ。
はい。
そして最後は…。
(かねの音)自ら棺へと入り経を唱えかねや鈴を鳴らしながら死を迎えた。
餓死による自殺さ。
じゃあどうしてそんなまねをしたのかというと人々を救ってあげたい。
その一心でなんだ。
主に江戸時代のことでね。
飢饉で人々が飢え死にしていく。
疫病で次々に命を落としていく。
どうかそんな悲惨な状況からみんなを救ってあげたい。
自分の身を犠牲にすることでひたすらそう祈り願ったんだ。
(松本)もうちょいこっち。
こっちこっちこっち。
はいはい。
じゃあここ置きましょう。
(長山)あ〜痛い。
ああ…。
(雲海)これは…。
(亜里沙)あれこれ。
仏像に比べて台座がずいぶん大きくない?ってか台座なのか?ホント。
おいちょっと貸せ。
ふただったんだ。
あっ!ってことは…。
ちょっと頼む。
あっ!うっ!う〜ん。
(長山)あーっ!
(一同)うわっ!
(あずさ)キャーッ!
(長山)ああごめんなさい。
(亜里沙)すごい。
ねえ見て。
まあ専門的には色々定義があるようだけど。
即身仏と他のミイラの違いは僕はただ一点だと思う。
人々を救いたい。
その思いがあったかどうか。
それだけだとね。
さーて!今を生きるみんなには彼らの思いはどう映るんだろう。
書いてもらいます。
時間は例によって3分。
(生徒たちのざわめき)よーいスタート!ミイラが?
(亜里沙)埋まってたのよ!木の棺。
あの木棺に入って。
見ちゃったよ見ちゃったよ。
一番見たくない俺が一番初めに!木棺のまま埋まってたの?
(亜里沙)そうよ。
それがどうしたの?おおっ。
でもよかったじゃないリサ。
新しいミイラの発見今回の目玉の特集ができてさ。
そうなのよ。
何か分かったらまたすぐ連絡するから。
じゃあね。
木棺のままね。
面白い!誰が何のためにどうしてそんな妙な小細工をしたのか。
ミイラか。
観光客呼べるな。
お前の寺もわしんとこのドライブインも。
まあミイラをありがたがる者は少なくないからな。
(亜里沙)ちょっと失礼します。
あのミイラなんですけれども即身仏ですよね?即身仏?
(亜里沙)突然すみません。
あの私こういう者です。
棺の中にかねも入ってたわけですからかねを鳴らしながら死を迎えるということは即身仏。
そういうことになるのだが。
(松本)連絡つきました。
山形大学の民俗学の先生が早速あした調査に来てくれるそうです。
(雲海)何を勝手なまねを。
(秀子)えっ?調査などいつでもできるだろう。
供養が先だ。
供養が。
(秀子)でもこれ貴重な発見かもしれないんです。
一刻も早く調査お願いするのおかしいことでしょうか?別におかしくはないが。
何を撮ってる。
カメラ止めなさい。
おいおいおいおい。
何を興奮してんだ?村を牛耳ってるやつらにはお宝だかんな。
あん?
(仲居)失礼します。
(一同)うわーっ!
(亜里沙)おいしそう。
(長山)けどよく撮影する気になったっすよね。
こういうとこで。
(秀子)こういうところって?
(長山)いやだからその…。
ミイラとかこれとか。
(あずさ)もしかして流山先生苦手なんですか?
(長山)いや強いて言えばまあやや苦手。
(亜里沙)もう全然駄目なの。
でもちょっとチョーサクは取りついてもらった方がいいかもしれないね。
(長山)取りついてもらえ!?
(亜里沙)だってどんな悪霊も絶対にチョーサクよりは真面目だもの。
少しはまともな人間になれるかもしれないね。
(長山)あのなお前…。
(秀子)仲いいんですね2人。
うらやましい。
(亜里沙)えっ?えっ!?ちょっ…。
ペッペッペッですよ。
こんな問題児。
問題児って。
あっ。
そういえば弟さんどうしました?
(長山)何だいきなり。
(亜里沙)あっ。
あのね前に弟さんのこと問題児だっておっしゃってたから。
(秀子)ここ半年ほどおとなしくしてます。
(亜里沙)落ち着いた?
(秀子)うん。
(亜里沙)チョーサクも見習って少しは落ち着いたら?そしたら一本撮らせてもらえるように秀子さんに売り込んであげるから。
(秀子)えっ。
流山先生監督もなさるんですか?
(長山)しないしない…。
(亜里沙)何で?賞取ったじゃない。
何だっけ?大学対抗フィルム何とかっていうやつで。
(あずさ)えっすごーい。
(長山)終わった夢だ。
余計なこと言うなよ。
ごめん。
アハッ。
で撮影は順調に?
(秀子)おかげさまで。
とりあえず3日分の学生たちへの課題です。
(職員)って塔馬教授まさかまた?また。
(職員)いやまた…。
寝るか。
よいしょ。
いい夢見れそう。
よいしょ。

(物音)えっ?あぁ!えっ?何っ!?うわっ!誰か来て!誰か来て!うわっ!
(亜里沙)どうしたの?チョーサク。
えっ?
(長山)出た。
(亜里沙)えっ?何が?
(長山)いる。
そこ…。
(亜里沙)えー?せーの!
(亜里沙)何にもいないけど。
(長山)いたんだってそこに。
(亜里沙)うわっ!
(長山)ほらっ!やあ。
トーマ。
もう!
(長山)どうしてお前…。
いやミイラ見に来たんだけどロビー閉まってて。
よいしょ。
(長山)だからって何で俺の部屋が分かったんだよ!いや長年の付き合いでね。
いやっ。
ごめんね。
途中で電線切っちゃって。
エヘヘヘッ。
(長山)悪霊だ。
両手の花の俺に取りつきに来やがった〜!
(長山)あっ。
お前この屋根登ってきたのか?いやそっちは通ってないよ。
えっ?えっ?
(長山・亜里沙)うわ〜…!
(川島)カット!
(長山)最高だ。
やっぱあずは。
(亜里沙)はいはい。
若くて奇麗だからね。
何だ?その言い方。
あっやいてんの?お前。
やいてんの?
(亜里沙)誰が。

(秀子)リサさん。
(亜里沙)あっはーい。
(秀子)そろそろ山形大学の先生見えるころだから。
(亜里沙)行きましょっか。
(秀子)現場あとよろしくね。
(井上)はい。
いよいよミイラとのご対面だね。
だからお前普通に出てこれねぇのか?ちょっと調べ物。
(長山)何調べてんだよ?
(亜里沙)私たちの大学時代からの友人で。
塔馬双太郎です。
(亜里沙)秀子さん。
(秀子)小暮です。
もう一人のリサだね。
(秀子)えっ?えっ?ヘヘヘヘッ。
(長山)行くぞほら。
あっはいはい…。
(千崎)さあ先生。
あっ!?
(雲海)どうした?千崎。
消えた。
(長山・亜里沙)ええっ!?
(亜里沙)消えた!?
(蓑田)あの…。
私は何のために呼ばれたんでしょう?なるほど。
こういう展開につながるわけですか。
ワイヤロープでこすれた跡だよ。
それも新しい。
(長山)あん?掘り出すときワイヤロープなんか使わなかったぞ。
んっんっ。
(亜里沙・長山)えっ?
(長山)あっこれか?ああ。
あっホントだ。
こっちにも。
やっぱりね。
(亜里沙)えっ?やっぱりって何がやっぱりなの?
(警察官)おい。
何やってんだ。
靴跡。
(長山)靴跡?すいません。
あの木棺はつい最近ここに埋め直されたんだよ。
埋め直された?リサに連絡もらったときから見当はついていたんだけどね。
木棺が土の中に埋まっていたらぼろぼろに腐りきってるはずだよ。
(亜里沙)あっ。
もともとはどこかの石室に納められていたはずなんだ。
ワイヤロープの跡はその石室から掘り出すときに付いたものだろうしこの靴跡は埋め直すときにね。
(警察官)なるほど。
でもさミイラをわざわざ埋め直すなんてそんな妙なことするの…。
(長山)誰が何のためにか?まあそれはだいたい見当はついてっけどな。
(長山)犯人がミイラ盗み去ったのは金目当てとは考えられねぇ。
見せ物にでもして稼ごうとすりゃあ窃盗がバレて一発で捕まる。
闇で売り飛ばすつもりなら専門研究者のお墨付きをもらってからの方が高値でさばける。
よって犯人の狙いはお金目的ではない。
なるほど。
となりゃあ考えられる目的は一つだ。
話題作りよ。
(亜里沙)話題作り?
(長山)ああ。
せっかくのミイラだ。
地味に発見されるより映画の制作発表中に発見される方がずっと効果的だ。
でどこぞに埋まってたのを掘り出してきてあそこに埋め直したのよ。
そしてそのミイラをまた盗み去る。
ミイラ盗まれる。
話題になるわ。
見えたじゃねえか。
話題を作って観光客を呼び込む。
千崎とかいう村議会議長か雲海って住職の仕業よ。
あの2人か。
やりかねないな。
悪そうだったもんね。
(長山)ああ。
(テル子)千ちゃん来てる?
(ウエーター)社長なら殿岳寺に。
(テル子)ああそう。
じゃあいい。
近くまで来ただけだから。
フフフ…。
あらいらっしゃいませ。
どうぞごゆっくり。
フフフ…。
(長山)千ちゃんって…。
なあなあ…。
今のとっぽいねえちゃんが言ってた千ちゃんってのは?
(ウエーター)ああ。
オーナーの千崎社長のことですよ。
(長山)おいおい。
あいつのドライブインってここだったんだよ。
どうやらおあつらえ向きに千ちゃん雲ちゃん2人揃ってるみたいだね。
フフフッ。
(亜里沙)フゥ!疑うのか?この俺を。
(亜里沙)めっそうもございません。
盗まれたミイラについて何か心当たりはないかなってね。
みんなに聞いて回ってるだけなんです。
(長山)でゆうべのアリバイは2人ともねぇと。
(雲海)夜中のアリバイなどある人間がどこにいる。
あのミイラのことなんですが。
(雲海)だからわしは知らんと。
即身仏なんですよね?即身仏だとしたら素性などを記した記録などが残っているのが普通ですよね?
(長山)おお。
あ痛っ!そしてそれが残されているとしたら村で最も由緒あるこちら殿岳寺さんぐらいしか…。
(雲海)だがそんな記録は一切ない。
そもそもこの村にも即身仏があったことを昨日わしも初めて知ったんだ。
記録もない素性不明の即身仏。
あるんでしょうかね?そういうのって。
仮に記録がないにしても語り伝えぐらいは残ってるはずなんですがねぇ。
(住職)こちらが青面金剛童子。
庚申様のことですね。
ほお。
あっ。
やっぱ取材して回んのかミイラ。
ってかさミイラ見る前に腹いっぱいって感じだよもう。
なあ?リサ。
(亜里沙)いい取材ができますように。
はいできますように。
フフフッ。
(亜里沙)ヘヘヘッ。
何やってんだ。
(住職)こちらが即身仏の真如海上人ですね。
42日間の塩と水断食してそれから木食の行して漆の液を飲んで腐らない…。
(住職)お召しになってるお衣も12年に一度丑年の年に衣替えをすることになってるんですね。
丑年というのは湯殿山の御縁年に当たる年なんですね。
今お召しになっているお衣も…。
(長山)あーっ!
(一同)うわっ!
(あずさ)キャーッ!
(秀子)一刻も早く調査お願いするのおかしいことでしょうか。
別におかしくはないが…。
何を撮ってる。
カメラ止めなさい。
(男性)そろそろここ閉めたいんですが。
ああすみません。
終わりました。
ありがとうございます。
(長山)ミイラ見過ぎで何か食欲湧かねぇなぁ。
どうもその俺ありがたみが分かんねぇんだよ。
ミイラっていうのはなかなか役立つものでね。
昔は薬として売り買いされたこともあったんだ。
(長山)トーマお前どこ行ってたんだよ?尊い生き仏だからって骨を細かく砕いて飲んだんだね。
(あずさ)へぇミイラを薬に?塔馬さんって何でも知ってるんですね。
それから廃仏毀釈のときにも大いに役立ってね。
(あずさ)え〜…何でしたっけ?廃仏毀釈って。
仏教をつぶそうとした動き。
日本中で次々と寺が廃寺に追い込まれたんだ。
思い出しました。
高校のとき日本史で。
そのとき即身仏を所蔵していたお寺だけは廃寺にならずに済んだんだ。
(あずさ)特例扱い。
これ。
酒頼めリサ。
足りねぇ。
すいません。
じゃあ私たちはそろそろ。
(あずさ)えっ?ああ…はい。
えーっ!
(秀子)あしたも早いんで。
はい。
(秀子)じゃあ失礼します。
(亜里沙)気を付けて。
おやすみなさい。
(一同)おやすみなさい。
読めお前空気。
(亜里沙)まあまあまあまあ。
チョーサクだって分かってんじゃないの。
埋め直しに関しては話題作りだと思う。
またミイラの話に戻す…。
でも盗み去ったのには別の可能性も考えられるね。
あ〜骨削って薬にするのな。
詳しく調べられては困る何かがあのミイラにはあるのかもしれない。
だから調べられる前に慌てて盗み出したっていうの?例えば何だよ?調べられちゃ困ることって。
何だろうね。
えっ。
いやとにかく村議長の千崎と雲海って住職盗んだのはあのどっちかだ。
まあリサの取材のためにも必ずぼろ出さしてやる。
チョーサク…。
ねえエビ食べる?エビ食べる?
(長山)うん。
(亜里沙)あーん。
あーん。
あーんあーん…。
熱いわっ!
(亜里沙)フフフッ。
《人に知られてはまずい秘密》《はるか100年以上も昔の話》
(斬る音)
(長山)どこ?どこどこ?あっち?
(亜里沙)ありがとう。
ありがとうございます。
(長山)よしっ。
(亜里沙)待って。
待ってチョーサク。
(長山)よいしょっと。
(亜里沙)あれ?あの人。

(秀子)松本さんです。
この地元の方でロケのコーディネーターしてくれてた。
一番初めに木棺を発見した人ですよね。
(長山)「木乃伊は呪ふ」?あ〜…。
どうやら東京へは帰れなくなったようだね。
(秀子)ミイラの呪いなんてあるんですか?
(雲海)バカな。
(秀子)でもあの紙にはそう…。
ミイラを掘り出したりしたから松本さん…。
呪いなどあるはずがない!
(亜里沙)秀子さん。
今日の撮影は?こんなことが起こったんで今日はとても。
みんなに中止伝えないと。
クランクインしたばっかりなのに…。
(パトカーのサイレン)あっ山影さん。
(山影)塔馬さん。
ああ。
県警本部に栄転されたんでしたね。
難事件を抱えるたんびにお知恵を貸してくださる塔馬さんのおかげです。
いや塔馬さんたちこそ何でこんな所に。
詳しいことは…。
後ほど。
ほいじゃあ。
詳しいことは後で教えてくれそうだね。
俺はやってねぇって。
(高木)でもですね千崎さん。
(山影)私らも被疑者と決め付けてるわけじゃないんです。
(山影)ただ…。
(千崎)ゆんべは女んとこさいた。
酒田のテル子って飲み屋だ。
(テル子)ああ…哲?
(山影)久しぶり。
(テル子)なら疑ってるの?千ちゃんを。
(高木)千崎は昨夜こちらに来てましたか?
(テル子)はい。
9時ごろから夜中の12時すぎまで。
(高木)他の客たちも証言してくれるわけですね。
店閉めだから。
上で2人だけ。
あっでも本当だって。
だいたい人を殺せるような人じゃないって。
(高木)またお伺いするかと思います。
(山影)それじゃあ。
(テル子)哲。
(テル子)私愛人とかそういうんじゃないよ。
千ちゃん5年前に奥さん亡くして独身だもん。
独り身同士。
恋人。
そっか。
誤解するとこだった。
また。
うん。
(山影)松本昭二が殺害されたのは遺体の状態からいって昨夜10時前後。
直接の死因は転落死です。
遺体が発見されたほこらのすぐそばに石段がありました。
この上から転落して頭部を強打し絶命。
その後でなたをたたき込まれた。
転落死させた後になたですか?使用されたそのなたですが。
(山影)千崎の経営するドライブインの物置にあったものです。
捜査本部は村議会議長の千崎完三に的を絞りました。
(山影)それと被害者松本昭二の携帯に問題の時刻千崎と会う予定が。
「謝礼」って。
これは塔馬さんが見つけたそうですが。
松本の靴と一致しました。
以上のことから千崎完三は観光客を呼び込むために松本昭二を利用したと。
(山影)どこかから掘り出してきたミイラ入りの木棺を公民館の中庭に埋め直させ発見役も演じさせた。
《何だ?これ》
(山影)ところが千崎は約束した謝礼の支払いを渋った。
頭にきた松本がミイラを盗み去りそれが松本の仕業だと察した千崎は松本を呼び出しミイラを返せと迫った。
もみ合い千崎は松本を転落死させてしまった。
(山影)このままではまずいと思った千崎は死体になたをたたき込みおどろおどろしい文を残すことでミイラの呪いに見せ掛けようと工作した。
以上が捜査本部のにらみなんです。
塔馬さん。
(山影)松本という男も一見いい人に見えますが実は相当なごろで。
金のにおいを嗅ぎつけては無理やり一枚かんで甘い汁を吸う。
(亜里沙)秀子さんそんな人と知らないでコーディネーターに。
(山影)使いようによっては便利な男なんですよ。
千崎なんかも後ろ暗いことをするときなどは利用していたのではと。
(長山)でミイラの埋め直しも依頼したわけだ。
当の千崎さんはどうおっしゃってるんですか?
(山影)うん。
一切否認してます。
「ゆうべは女の所にいた」と。
(長山)それって化粧の濃いとっぽい女じゃ?
(山影)ご存じなんですか?テル子。
(長山)ああまあ。
(山影)実は私の幼なじみなんですよ。
そうなんですか?テル子は本気で千崎にほれてます。
だからこそアリバイ証言を素直に信じるわけにはいかんのです。
でも…。
揃い過ぎてますよね証拠が。
(山影)千崎も「誰かにはめられた」と。
もしそうだとしたらこの文の意味が分からない。
千崎さんの仕業と思わせたいのかミイラの呪いと思わせたいのかどっちつかずですもんね。
(長山)だからよ千崎がミイラの呪いに見せ掛けようとしたんなら筋が通るんだよ。
はいはい。
一件落着!
(亜里沙)ちょっと待って。
公民館からミイラを盗み出したのが松本昭二だとしてその松本は殺されてるわけだからミイラの行方知ってる人いなくなっちゃったんじゃない?あっ!そうなるよね。
(長山)いやいやいや。
にこにこしてんなよ。
ヤベえだろう。
(亜里沙)うん。
(店員)おはようございます。
映画の方も?県警から要請があったらしいの「事件が全面解決するまで映画の撮影を中止してくれ」って。
(長山)全面解決?松本昭二殺しの犯人逮捕と真相の解明そしてそもそもの原因となった行方不明のミイラの捜索だろうね。
それ全部終わるまで映画は撮れねぇ。
あず…。
(秀子)必ず再開できますから。
(川島)放せ!お前は最低のプロデューサーだ。
身勝手に設定を変更したりするからこんなことになるんだろう。
(秀子)あっちょっと待ってください!あ〜あ。
監督まで降りちまったか。
あの大変ですね。
あのこの作品って設定が途中で変更になったんですか?
(井上)いやもともと北陸が舞台だったんっすよ。
それを3カ月ほど前小暮さんがいきなり「この湯殿山で撮りたい」って。
何かこちらに思い入れでもあるんですかね。
ご出身とか?いや。
小暮さんはずっと東京のはずです。
でもテーマをより生かすにはこっちの方が向いてるからって。
それで突然の変更を。
(亜里沙)秀子さん。
(秀子)ああ平気平気。
監督の降板なんてまああることですから。
ねっすぐに後任の監督リストアップして。
(井上)はい。
(坂巻)うちのあずさも降ろさせてもらう。
(坂巻)川島監督だから受けたんだからさ。
待ってください坂巻さん。
(坂巻)交渉の余地はない。
(秀子)ちょっと待ってください!
(長山)あ〜あ。
この作品にずっと懸けてたのよ彼女。
(秀子)《私の温めてきた企画が後ろ向きだと?》《愛する者同士が心中して終わるっていうのは…》
(秀子)《主人公たちは次の世界へと希望をつなぐんです》
(亜里沙)《希望をつなぐ?》《信じたいんでしょうね。
私自身が。
希望の力を》《幼いころに両親を亡くしてるんです》《弟と2人で養子にもらわれてその養父母も早くに亡くなって》《そんなふうに現実は結構つらかったですからね》《希望さえ持ち続ければ人は死んでも死なない》《そんな映画にしたいなって》渾身の一作なんだね。
うん。
それがやっとクランクインできたと思ったら。
(秀子)確認して…。
(坂巻)保証のことがあるから。
(秀子)分かってます。
はい。
よろしくお願いします。
(あずさ)このままやらせてください。
お願いします。
(秀子)あず…。
ミイラ探すぞ。
(亜里沙)何よ?いきなり。
殺しの方は山影さんたちが解決してくれるだろうさ。
けどミイラ探しは手こずるはずだ。
松本がどこにミイラを隠したか警察もすぐには…。
ああ。
おおっ一日も早く映画撮らしてやっからよ!
(亜里沙)あのミイラ見つけないと私たちも困っちゃうの。
リサさん。
あと3日…いや2日でいい。
必ず撮影再開させるからそれまで待ってくれ。
なっ。
頼む!お願いします!流山先生。
(亜里沙)まあこっちにはトーマもいるしねぇ。
(長山)まあ性格は最悪だが探偵としてはちょっと使えるんでね。
こいつ。
(あずさ・秀子)探偵?
(亜里沙)警察に協力して幾つも事件を解決してるの。
ねっ?ミイラ探しは2人に任せるよ。
(亜里沙・長山)えっ?僕はどうしても行きたい所があるんだ。
(長山)おいおい…ちょっと待て。
(亜里沙)トーマ!探偵…。
(斉藤)いらっしゃい。
私が斉藤です。
ああ。
先ほどは電話で失礼しました。
私塔馬双太郎と申します。
(斉藤)ああ。
東京の大学からですか。
ええ!
(斉藤)古くから噂だけはあったようなんです。
「仙人村にミイラがある」という噂ですね。
(斉藤)ええ。
しかし実際に目にした者はいない。
ミイラが発見されたと聞いたときそれのことではと期待したんですが。
盗まれ消えてしまった。
(斉藤)残念です。
いろんなことが分かったかもしれないのに。
それを恐れたのかもしれませんね。
(斉藤)調べられるのをですか?ハハッ。
面白いことを。

(物音)
(斉藤)仙人村のミイラといえば半年ほど前やはり訪ねに来た人がいたなぁ。
研究者が?
(斉藤)いやいや。
そういう感じではなく30歳ぐらいの金髪の男でした。
その人も仙人村のミイラの噂を知ってたんですか?ミイラのことだけではなく…。
(男性)《ところで緑水寺っていう寺があったんっすよね?》《昔仙人村には》《ほうよくご存じで》《少し調べたんで》
(斉藤)見掛けによらず歴史が好きだったのかもしれませんな。
いますからね。
マニアは。
でその緑水寺というのは?
(斉藤)由緒ある寺だったようですよ。
しかしこの受光さんというご住職が亡くなったとき跡取りがいなかったために廃寺に。
由緒ある寺。
最後のご住職の墓石ですか。
亡くなったのははるか明治の初めです。
というと廃仏毀釈のころですか?ええ。
140年も昔のことですよ。
140年前…。
(斉藤)しかしこの受光さん。
聡明で徳の高いご住職だったのにその最期は寂しいものだったようですよ。
悪い病にかかっての病死です。
うつしてはいけないと誰が見舞いに行っても一切会わず。
3カ月ほど後そのまま息を引き取った。
最期をみとったのも寺男と同業者である殿岳寺のご住職とたった2人だけで。
殿岳寺のご住職というのは今の雲海さんのご先祖なのでは?ええ。
そうです。
で寺男というのは村議会議長の千崎さんのご先祖で。
フッ。
子孫のお二人は今や共に地元の有力者ですね。
受光さんの最期をみとった働きが報われたのかもしれない。
別の解釈もできるかもしれませんがね。
はい?
(女の子)受光さん受光さん野の花あげる。
受光さん受光さん干し柿あげる。
(千崎)すまんが今日はこれぐらいにしてもらえんだろうか。
体調がこうどうにも…。
(高木)今まで元気だったじゃないですか。
(山影)まあまあ。
任意での事情聴取です。
送ってさしあげて。
(高木)はい。
あ〜いやぁあの即身仏を全て取材しきれてるってわけではない。
(亜里沙)あの締め切りには必ず間に合わせますから。
はい。
頑張ります。
じゃあ失礼いたします。
(長山)あっ。
(亜里沙)ハァ〜…ったく。
すぐ飛ばすとかって脅かすんだからあの編集長。
(長山)千崎よミイラの隠し場所聞き出す前に松本を死なせちまったとは限らねえよな?聞き出してから殺したってこと?
(長山)ああ。
そして千崎はまんまとミイラを手に入れどっかに隠した。
例えばあのとっぽい女のとことか。
テル子さん。
(長山)ああ。
(亜里沙)チョーサクこっちこっちこっち。
あずささん。
どうしたの?
(あずさ)ああ…いえちょっと。
(長山)あず。
あっ秀子さんどこにいるかな?ああ…あの銀行へ。
東京の弟さんからお金ねだる電話をもらったみたいで。
え〜!?
(長山)なるほど。
問題児だ。
じゃあさ戻ってきたら伝えてくれ。
ミイラ見つかるかもしれねえってな。
ホントですか?
(長山)ああ。
よしっ!じゃあね。
(あずさ)はい。
(亜里沙)待って待って待って。
(長山)結構急だぞ。
気を付けろ。
(長山)あれ?これか?
(亜里沙)うん。
これだ。
(亜里沙)いそう?
(長山)おっ。
(長山)テル子さん?
(亜里沙)失礼しまーす。
いないのかい?テル子さん。
ちょっちょっちょっと。
チョーサクチョーサク来て。
あ〜…だからもういいってのこういうの。
小暮さん。
(高木)何か隠してるんじゃないですか?
(亜里沙)ですから怪しい人影なんか見ていませんって。
(長山)そんなことより探してくれ店ん中ミイラ!
(高木)調べさせてますって。
では後ほどまたあらためてお話を。
・リサ。
(亜里沙)早く全面解決しようと思ったのにこんなことになっちゃって。
(秀子)リサさんはたまたま死体を発見しただけじゃないですか。
勘弁してほしいぜ。
ミイラの呪い第2弾ときた。
それだけその人も必死だということだろうけど。
誰がだよ?
(雲海)何の騒ぎかと思えば殺人事件らしいな。
(秀子)あるんですよ。
やっぱり。
ミイラの呪いが。
松本さん殺しと関連があるからって警察に呼ばれてきたらあれ見せられて驚いたんです。
(雲海)くだらん!言ったはずだ。
ミイラの呪いなどない。
でもこのままじゃまだまだ恐ろしいことが続くような気がして。
ハハハッ。
起きるというのならこの私が引き受けてやるわ。
ハハハ…。
(秀子)雲海さん!バカな女だった。
でも気のいい女だった。
殺さんでもいいだろう。
(高木)山影さん!調べましたがミイラはどこにも。
千崎の犯行ですよ。
この人のにらみどおりおそらく千崎はミイラをいったんここに隠したんでしょ。
こっそり。
で仮病を使って調べを抜け出しもっと安全な隠し場所へ移そうとした。
それを安田テル子が目にして千崎をゆすった。
(山影)ないよ!テル子が千崎をゆすったなんて線は。
そんな女じゃないんだ!分かってるんでしょ?塔馬さんにはもう。
全てが。
そうですか。
(高木)山影さん。
幼なじみだ。
つれぇよな山影さんも。
(ストップウオッチの作動音)《時は140年前》《廃仏毀釈の嵐が日本中に吹き荒れた明治の初め》《そこから考えれば》《素性不明のあのミイラはおそらく…》《そしてその秘密をあらかじめ知っていたのは…》《だから慌てて》《そうなるとあの文の狙いも分かる》
(秀子)《ミイラを掘り出したりしたから松本さん》
(雲海)《呪いなどあるはずがない!》
(秀子)《あるんですよ。
やっぱり。
ミイラの呪いが》《何としてもあの人を走らせようとしているんだ》《でも何のために?》《それほど必死にさせる理由とはいったい何だ?》ミイラの呪い食い止めないと。
おはようございます!
(秀子)おはようございます。
お参りですか?あっまずいとこ見られてしまいましたね。
まずいんですか?
(秀子)仏様にすがるなんて情けないですよ。
ああっ一日も早く撮影が再開できますようにってなら僕も情けないな。
一日も早く事件が解決しますようにって。
ええ…。
行きましょう。
ええ。
御利益あるといいんですがね。
(秀子)お互いに。
ヘヘッ。
ところでどうしてこの仙人村で撮影しようと?
(秀子)はい?3カ月前急きょ予定を変更したって。
(秀子)ああ。
導きですかね。
たまたまこの村の写真を見つけて。
何か呼ばれてるような気がして。
ハハハ…。
ありますよねそういうことって。
ありますあります。
でも何が呼んだんでしょう。
(ストップウオッチの作動音)ああこれもお聞きしたかったんですけれどきょうだいで心中なんて話どこから思い付いたんですか?さあどこからでしょうね。
早くにご両親を亡くされて肉親は弟さんだけだとお聞きしました。
そういうことも関係してるんですかね?そうかもしれません。
一番身近だから厄介な存在ですよね。
厄介な弟さんなんですか?
(ストップウオッチの作動音)それ先ほどから何なんですか?ああ失礼しました。
つい…。
時の流れと会話をしてるんです。
えっ?一秒一秒が積み重なって歴史がつくられるわけですからそれと会話することによっておのずと…。
(秀子)隠されているものが見えてくる?・「時をかける…」探偵なんて呼んでくれる人がいるんですけど何のことかよく分かりませんよね?トーマ。
(長山)何やってんだよ?朝っぱらから2人で。
(秀子)じゃあ私は後任の監督見つけなきゃいけないんで。
いってらっしゃい。
お互いに行き詰まったんで一緒に南無南無してきたのさ。
そういう気にもなるわよねぇ秀子さんも。
まあ映画撮りてぇって夢だけでやってきたんだろうからなぁ。
まだ結婚もしてねえんだろ?彼女。
ああそれは例の弟さんのこともあるみたいよ。
今でも姉ちゃんに金せびってくるんだもんなぁ。
せびりに来たの?おねだりの電話よこしたって。
あずが言ってた。
へぇ〜。
小暮さんってそんなことまであずささんに話すんだ。
古い付き合いみたいよ。
だってもともと女優になるきっかけ作ったの秀子さんだもん。
へぇ〜。
そういう関係なんだあの2人。
(亜里沙)うん。
そうか。
受光さんそのものじゃなく別のものにたどりつこうとしてるのなら。
(長山・亜里沙)トーマ!もう!
(長山)何だよ?受光さんって。
答えが見つかるかもしれません。
ならそのために?可能性ですけど。
でもそうとでも考えないと。
(山影)確かに。
裏付けだな。

(女の子)干し柿あげる。
受光さん受光さん野の花あげる。
受光さん受光さん干し柿あげる。
受光さん受光さん野の花あげる。
受光さん受光さん…。
(山影)まさに道なき道ですなぁ。
(女の子)野の花あげる。
受光さん受光さん干し柿あげる。
受光さん受光さん野の花あげる。
受光さん受光さん干し柿あげる。
(女性)さあ拝むべ。
あの…すみません。
受光さんってのは?
(女性)私にもよく分からないんです。
ただ私の親もその親もひかりの丘のこれに花を供えてきたもんで。
ひかりの丘っていうんですか?ここは。
ここらの者は昔っからそう呼んでる。
今日はこんなんだどもいっつもは光が差して山が奇麗に見えてなぁ。
(山影)すり減っていて私には読めませんなぁ塔馬さん。
ハァ〜。
そういうことだったのか。
何と書いてあるんです?
(女性)どうも。
「老拙久しからずして寂滅す」「なおこの地に留まりて衆生を照視し止まざらん」「光となってずっとみんなを見守りますよ」と。
はぁ。
行きましょう。
僕らも光を。
裏付けを求めに。
(長山)トーマがどっか消えた?
(亜里沙)うん。
伝言を残して。
「ミイラを探し続けてほしい」って。
(長山)ミイラ探し続けろだ?
(亜里沙)秀子さん。
チョーサクはこう見えても天才的なひらめきを持つ日本一優秀なミステリー作家です。
絶対に見つけてくれますから。
(秀子)ええ。
(長山)だよな。
(亜里沙)うん。
よしっ!任せろ。
行くぜ。
あず!
(あずさ)あっはい。

(女性)秀子さんのお弟さん。
時々訪ねてきてたんだけどね。
そういえば…あれ?ここんとこ見掛けないわねぇ。
あ〜どこに住んでるかご存じですか?えっと…確か阿佐谷って言ってたかな?阿佐谷?
(女性)うん。
阿佐谷阿佐谷。
(警察官)うーん小暮達也ねぇ。
(山影)20代後半で金髪の。
(警察官)あの男かな?
(倉木)ああこいつこいつ。
真ん中のが達也。
ホントにそんな悪党なんですかね?
(倉木)笑いながら自慢してたから。
詐欺とか恐喝で前科何犯だとかって。

(山影)恐喝…。
やっぱり塔馬さんのにらんだとおりかも。
(大竹)前科?
(山影)おう。
(大竹)ないよ山ちゃん。
この小暮達也にそんなもんは。
(山影)でも当人がそう言ったって。
(大竹)吹かしだよ。
バカなもうけ話に手を出しちゃ損ばかりしてる。
よくいるだろうよ。
愛すべき困ったやつってのが。
そういう手合いだよ。
悪いけど会議なんで。
(山影)ハァ〜…。
今聞いたようなやつならゆすったりなんかするでしょうか?そもそも湯殿山に目を付けるきっかけは?接点ですよね?
(長山)ここにもねえか。
(あずさ)あの探す方向って間違ってないですよね?
(長山)千崎もミイラ抱えたまま逃げてるとは思えねえ。
どっかに隠してるはずなんだよ。
お似合いの隠し場所と言やぁ寺か神社だ。
(あずさ)ですよね。
流山先生は推理のプロですもんね。
いくぜ。
あず!
(須永)同期入社なんで覚えてますよ。
小暮君。
実は小暮さんのお子さんたちについてお聞きしたいんですけど。
(須永)えー秀子ちゃんとえーと達也君か。
養子でらっしゃるのは存じてるんですが。
(須永)不慮の事故で亡くなった友人の子だと小暮は言ってたけど。
その友人っていうの…何っつったかなぁその友人。
変わった名字で…あっ番内だ。
番内?何か?今度こそ全てがつながりました。
(呼び鈴の音)
(職員)やっと戻ってきてくれた。
これ学生たちから提出された。
お〜確かに。
ありがとう。
でこれが次の課題。
ちょっと。
これ以上かばいきれませんよ。
教授のことを学部長がどう言って…。
こ…これあのお土産。
ささやかだけど。
(呼び鈴の音)
(職員)ちょっと。
板挟みにしないでくださいよ。
《全ては半年前に始まった》
(達也)《緑水寺っていう寺があったんっすよね?》《その日村を訪ねてきた彼こそ受光さんの…》《でも140年も前の復讐のために現れたとは思えない》《となれば目的はおそらく…》《そしてそのことが一つの事件を引き起こした》
(あずさ)《あっ!》
(一同)《うわっ!》
(あずさ)《キャーッ!》《みんなの前であのミイラを発見させあおることで…》《何としても相手を走らせようとした》達也…。
これは…。
あっちゃまずいミイラなんだよ。
出してくれ…元の世界へ戻してくれ。
(雲海)呪いなんてあるはずが…。
(長山)ミイラ盗み去ったのはお前だったのか!小暮さんが消えた?間に合ってくれ。
ハァ…。
(亜里沙)お世話さまでーす。
(亜里沙)チョーサク!
(長山)あっびっくりした。
脅かすなよお前。
(亜里沙)ごめん。
見つかった?
(長山)見つかんない。
(あずさ)先生。
(長山)ん〜…。
何必死に拝んでんのよ?「昨日は空振りだったから今日こそは必ず」って?チッ。
もっとささやかなことだ。
(亜里沙)分かった。
「怖がりが克服できますように」
(長山)えっ?
(あずさ)すいません。
私ちょっとお手洗いに。
「元気でいられますように」だ。
大丈夫よ。
チョーサクだったら殺されても死なないから。
みんながだよ。
(亜里沙)えっ?お前とトーマと3人がだよ。

(あずさ)先生!先生!先生!
(あずさ)あそこ。
(亜里沙)えっ?
(長山)あぁ?
(亜里沙・長山)あっ!
(長山)てめえこの野郎!ミイラどこやった!ミイラどこだ!
(亜里沙)駄目駄目!
(長山)おとなしくしてろ。
パン食ってろそこで!
(亜里沙)見つけちゃったんだ。
たまたま。
(長山)殺しで警察突き出す前にミイラの在りかを吐かせようとしてんだが知らねえの一点張りでこの野郎!
(千崎)だから俺は何もやってねえって!俺が仮病使ったのはテル子が心配してるだろうと様子を見に行くためだ。
行ってみると…。
《テル子?》
(千崎)殺されてて。
大切なテル子を失い。
絶望して俺は…。
失踪した。
誰が信じるかんな話。
この人は今回の事件とは一切無関係なんだよ。
信じてくれるのか?
(千崎)よかった。
(亜里沙)ちょっちょっと。
一切無関係って。
(長山)ならミイラ…ってか2件の殺人は誰が?やりましょう。
うん。

(うなり声)ああ…!うわ〜!そっそんなことが…。
呪いなんてあるはずが…。

(足音)やっと案内してくれましたね。
貴様のたくらみか!?おうおうおうおう何だよ何だよお宝でも埋まってんのか?あっよっちょっと。
どけこの野郎!よし。
よいしょ。
あっこれか。
よっこいしょっと!えいっ。
うわっ!?
(あずさ)あっあの…あのミイラですよ。
ミイラ盗み去ったのはお前だったのか!おいトーマ。
「やっと案内してくれたね」とか言ってた…ってことは。
あっ。
この人が盗んだって知ってたの?とぼけて俺らに探し続けろとかってお前どういうことだよおい。
おい!えっ。
まだまだ修業が足りんな。
つい自分の寺のものにしたくなったのよ。
ハハハ…。
取り返しただけじゃないですか?何の話だ?初めからご存じでしたものね。
木棺のことも中に何が入っているのかも。
《これは…》
(男性たち)《ああ…》《えっ》それは…。
廃仏毀釈が背景には絡んでいるんだよ。
廃仏毀釈?140年前のね。
仏教をつぶそうと日本中で寺が次々と廃寺に追い込まれた。
でも特例扱いされる寺があったんだ。
(あずさ)即身仏のあるお寺でしたよね。
そう。
で昨日東京に戻ったとき念のために調べてみたら…。
殿岳寺もまた即身仏の所蔵が確認されたので廃寺にならずに済んだという記録がありました。
(長山)ならこれやっぱもともとあんたの寺の…?
(雲海)いや知らん。
いやそうなんだよチョーサク!戦後学術的に即身仏が調査されたときも他の寺は即身仏の所蔵を公表したのに殿岳寺だけは「自分の寺ではそんなものを所蔵したことがない」って答えたんだよ。
(長山)は?どうしてだと思います?あってはいけないミイラだから。
そーう!そうとしか考えられませんよね。
これは…。
あっちゃまずいミイラなんだよ。
どういう意味だよ?かつてこの仙人村には緑水寺という寺があった。
この地で最も有力な寺だったのに廃仏毀釈のときに廃寺になった。
折しも住職が亡くなったからなんだ。
でもそのご住職受光さんの最期というのが不可解でね。
受光さんって…こいつのことだったのか!病死ということになってるんだけど亡くなるまでの3カ月受光さんは誰にも会っちゃいないんだ。
つまり本当に病死だったかどうかは誰も分からない。
分からないまま最期を迎えた。
それをみとったのもたった2人だけでね。
寺男と同業者の…。
その人のご先祖さ。
受光さんの不可解な最期と存在を消したいミイラ。
この2つを考え合わせれば140年前に何があったのかチョーサクなら分かるよね?
(長山)えっ?えっ?
(長山)おっ…おう!寺男を抱き込んでこいつの先祖がてめえの寺が生き残る小道具にするために受光さんをミイラにしちまったのよ。
3カ月かけて飢えさせて骨と皮だけにしていった。
そしてとどめを。
根も葉もない愚劣な臆測を!受光さんのミイラのおかげで殿岳寺は廃寺を免れ緑水寺が抱えていた檀家もそっくり手に入れることができた。
(雲海)黙れと言ってるんだ!ミイラは用済みとなった。
でもせっかくなんだからそのまま殿岳寺に祭ればいいものを祭らず隠した。
なぜならこのミイラにはおそらく…。
やっぱり。
刺殺痕ですよこれ。
あっ!140年たっても消えない悪事の痕跡。
これが調べられては困る人に知られてはまずい秘密だったんだ。
ところがそれがこっそり掘り出され大勢の前で発見された。
あなたは慌てて詳しく調べられる前に…。
(長山)でここに隠してくれたわけだなこの野郎!詳しく調べてもらおうとしたのにはご先祖の無念を晴らしたいという思いがあったんだろうね。
子孫としては。
(亜里沙)子孫?誰が誰の?ねっ小暮さん。
旧姓番内秀子さん。
番内?やっぱり時を駆ける探偵塔馬さんには見通されてたんですね。
ご子孫なんだよ受光さんの。
(亜里沙)このミイラの正体知ってたのね秀子さん。
(秀子のすすり泣く声)秀子さん…。
(雲海)帰らせてもらうぞ!ご先祖が何をしたか私には関係ない。
これだって自分の寺のものを取り返しただけだ。
窃盗にもならんしな。
ハハハッ。
おいおいちょっと待てよおい。
いいよチョーサク。
受光さんのミイラと一緒にあると思ったんですが。
(山影)ええ。
(長山)何がだよ?ここじゃないとなると…。
帰って部屋で休みます。
一緒に行ってあげてください。
いやでも私は…。
見張り役なんですよね?僕らの。
えっ?
(長山・亜里沙)見張り役?やっぱりバレてたんですね。
でも今度は小暮さんを見張ってください。
彼女のために。
はい。
小暮さんの涙はご先祖の悲劇に向けられたものだけじゃないんだ。
(長山・亜里沙)えっ?行きましょう。
他に隠すとすれば…。
(亜里沙)えっ。
えっ。
(長山)おお…。
受光さんの墓なんだ。
えっ?よいしょ。
おい!ちょっちょっ…。
(亜里沙)あのミイラが受光さんだったとしたら…。
(長山)墓の下には何もねえだろ!ああ。
ハァ…ここだと思ったんですが。
お前らはいったい何探してんだよ?
(山影)くそっ。
雲海めどこに…?
(長山)あ?あんな坊主なんてもう関係ねえだろ!・
(女性)あの…。
あっ。
すいません驚かせて。
あっ。
はいもしもし。
ああ。
小暮さんが消えた?あの付けてたんですけど竜神峠の入り口で見失っちゃって。
竜神峠?
(女性)あの…。
(亜里沙)はい?
(女性)ご住職を捜されとるんなら見ましたよ。
峠の途中で女の人と。
急がないと。
風車をたどっていってください。
急いで!ありがとうございました。
(亜里沙)ちょっと…。
(亜里沙)待って!
(長山)おい!借りましょう!よし。
ああちょっと待ておい。
(山影)すいません!警察です。
(エンジンのかかる音)これで限界ですか?もっと速く!間に合ってくれ。
ここだ。
(秀子)掘りなさい。
埋めたその手で。
・そこまでにしましょう。
あっ!
(亜里沙)あっ。
僕が代わりに掘ります。

(長山)あああずさ。

(当たる音)見つけ出してあげられました。
あなたを呼び続けていたものを。
(長山)何なんだよ?だから…。
あっ。
(山影)てめえこら!観念しろ!達也…。
小暮達也君。
弟さんだよ。
半年前その人に殺害された。
(長山)半年前って…。
えっ。
おとといだか電話があったって。
それは…。
とっさについた嘘だよね。
良かれと思っての。
はい。
全てはこの弟さんにたどりつきたい一心でだったんだ。
図らずも2人の人間をあやめてしまったのもね。
秀子さんが?うさんくさいもうけ話で失敗ばかりする困った弟でした。
「今度こそ一山」と夢ばっかりの。
その達也がある日言ったんです。
(達也)《いつまでたっても俺がふらふらしてんのはさ根っこがはっきりしないからじゃねえのかな》《根っこ?》《番内ってそもそも先祖はどこの何者だったんだろう?》《一発調べてみっかな俺》《それ私も知りたい》
(秀子)幼いときに両親を亡くした私たちきょうだいにはルーツはまったくの謎だったんです。
《お寺の住職?》《代々》《姉ちゃん》《うん?》《その村に俺行ってきたんだよ》《どこにあるの?その村って》《地元の歴史に詳しい人に話を聞いてきた》《そしたらさ…》《まっいっか。
後のお楽しみで》《ほら》《ん?》《今まで世話んなった分何倍にもして返してやっからよ》
(秀子)それを最後に達也は消えたんです。
半年前に。
私に残されたのはこの殿岳寺のお守り一つだけでした。
これが達也の失踪とどう結び付くのか。
どうしても達也が心配で大家さんにお願いして達也のアパートを開けてもらいました。
部屋には古い資料と何枚かのメモ書きが残されていました。
それを私なりに懸命に調べて…。
受光さんのミイラの秘密にたどりついた。
達也がそれに気付いたのなら何をしたのか見当がつきました。
その結果どうなったのかも。
140年前の悪事をネタに子孫であるそいつをゆすった。
東北地方の寺院会の幹部だそうで。
たとえ先祖の悪事でも公にされたらその地位が危ういですもんね。
それで口を封じた。
(秀子)でも殺された証拠は何一つないんです。
警察に訴えるにしても遺体を見つけ出さないことには。
そこで村で動き回っても怪しまれないようにすでに準備を進めていた映画のロケ地を急きょ変更してこの仙人村に乗り込んできた。
そしてすぐ私は動きました。
(ボイスチェンジャーの声)《出してくれ…俺だ》《元の世界へ戻してくれ》《生き返った!?まさか!》《気の回し過ぎか》《あそこに…》
(秀子)そこをこっそり掘り返してみました。
でも埋められていたのはミイラだけで。
なら達也はいったいどこなのかと。
それを突き止めるために今回の全てが始まった。
映画の宣伝のための話題作りとでも称して松本さんに手伝わせてミイラを掘り出した。
道具を手配するのにも地元の松本さんに頼るしかなかったでしょうからね。
そして公民館へと埋め直し…。
あずささんに頼んでわざとつまずいてもらうのをきっかけに大勢の前でミイラを発見させ詳しく調べてもらおうと追い込むことであなたは…。
(亜里沙)ミイラをわざと盗ませてそれを尾行することによって弟さんを見つけ出そうとしたのね。
それで済むはず…。
だったんですよね。
なのにそれがどんどん妙なことに。
盗みに来るのを待っていたら誰かに気絶させられ…。
(秀子)弟を見つけ出すすべをなくして途方に暮れたとき松本さんに呼び出されて。
人のいい協力者だと信じていた松本さんがそのとき本性を現したんですね。
(松本)《何たくらんでんだよあんた》《ミイラなんか埋め直させたかと思えば雲海坊主がそれ盗むのを待ち伏せしたりして》《俺だよ》《で金になりそうなにおいがしたんであいつつけてったらせっせと穴掘ってミイラ隠してやがった》《どこに?》《金に困ってんだ》《たくらみに一枚かませろよ》《半年前弟が消えたの》《殺されたとしか》《だから…》《松本さん?》《雲海坊主が殺したあの男》《あんたの弟だったんか》
(秀子)《「あの男」って…。
どうして知ってるの?》
(松本)《その死体を埋めて隠したの俺だもんよ》《ハハハ…。
あの坊主昔から悪くて》《金欲しさに俺も色々手伝ってきたが…》《どこ?弟どこに埋めたの!?》《ねえ教えて!どこに埋めたの?》《金次第だっつってんべ!》《ねえ教えてよ!》《ああ!》《松本さん!?》
(秀子)《松本さん?》《そんな…》
(秀子)自首するつもりでした。
でもすぐにというわけには…。
達也を見つけてやらなきゃいけなかったし。
スタッフや役者さんたちのためにも映画を完成させないと。
(秀子)犯人役を作り出すしかないと思い…。
(山影)千崎完三の犯行に見せ掛けようとした。
それと同時に松本さんの死を弟さんを見つけ出すのにも利用しようと考えた。
この人を走らせようと。
(秀子)でもこの人は動かなかった。
それどころか事件が解決するまで撮影できないことに。
その上塔馬さんは探偵であるというし。
松本さんを死なせてしまったことに気付かれないかと不安で2人の動きを見張ってほしいとあずに頼んだんです。
あのとき僕が目にした影がつばの大きな帽子をかぶっていたのでこの季節でも日焼けを気にするのは女優さんぐらいじゃないかと。
安田テル子は?この男を脅そうと潜んでいるところを見られて。
テル子さんは無実の千崎さんを救える方法はないかと住職に相談に来たところだったそうです。
(テル子)《「出してくれ」》《ってあんたなの!?》《松本っての殺して千ちゃんをはめたの》
(テル子)《ほら!》
(秀子)《必ず自首します》《ですからもう少しだけ時間下さい》《何が弟よ!人殺しのくせに!》《どうしても警察に行かないってんなら…》
(テル子)《殺してやるよ!》《本気だよ?》《あっ》《やめて!やっやめて!》《うっ…》なら殺されそうになって正当防衛で。
あのバカ!
(秀子)いえ。
テル子さんは脅すつもりしかなかったはずです。
分かってました。
それでも私は捕まるわけにはいかなかったから。
《千ちゃん…》申し訳ありません。
でもそうして2人目の死者まで出したのに。
《起きるというのならこの私が引き受けてやるわ》《ハハハ…》雲海さんは走ってはくれなかった。
だから僕はチョーサクとリサに頼んだんだよ。
ミイラを探し続けてほしいって。
(亜里沙)《チョーサクはこう見えても天才的なひらめきを持つ日本一優秀なミステリー作家です》《絶対に見つけてくれますから》
(亜里沙)それで!私もトーマに頼まれたとおりのせりふをチョーサクに…。
あれ?お前の本心じゃねえの?アハハハ。
(長山)いや「アハハ」じゃねえ…。
駄目だ俺当分立ち直れねえ!ああっ!しかし三度目の正直。
私の小細工でついに走った。
《うわ〜!》でもその先にあったのは受光さんのミイラだけだった。
そうなったらもうこの男に案内させるしかないじゃないですか。
もう2人も3人も同じよ!
(雲海)貴様のその弟が悪いんだ!半年前いきなり訪ねてきた。
番内達也と名乗ってな。
(達也)《あんたの先祖にミイラにされた番内受光の子孫です》
(雲海)やつめ全て嗅ぎつけていてゆすりかけてきた。
(達也)《金じゃない。
土地を返してもらいたいんだ》《かつて緑水寺のあった土地を》
(雲海)そんなもの返してやるのはたやすいどもゆすりに応ずれば先祖の悪事を認めることに。
(雲海)《何か証拠でも?ハハハ…》
(雲海)諦めたかと思ったんども付けてみるとやつめ。
墓さ暴かれれば受光の骨がないのがバレる。
それにこの男放っておけば何かもっと決定的な証拠でも…。
《140年もたった今ごろになって…》
(殴る音)
(雲海)《今になって蘇ってくるとは!》《この亡霊め!亡霊め!》
(松本)《ハッ。
安くねえよ今回の謝礼は》《受光の代わりに貴様が墓の下で骨になれ》《村の者も足を運ばねえような所の方が安全か》《あそこさ運んで埋めれ!》《訳の分かんねえ石碑があるだけだ》
(山影)塔馬さんのにらみどおり一度はあの墓に埋めようとした。
(雲海)受光のミイラはここまで運ぶのがおっくうであの洞窟に隠したのよ。
お金じゃないって言ったんですか?弟は土地を返してほしいって。
緑水寺のあったあんなどうでもいい土地をな。
いい弟さんですね。
(秀子)えっ?達也君があなたのために取り返そうとしたのは帰っていける場所ですよ。
あそこには番内家のルーツがあったんですから。
そして達也君はそこを見下ろせるこの丘で土に返った。
帰るべきところへ帰れたんですね達也。
全面解決です。
どんな理由があっても人は人を絶対にあやめてはいかんのです。
はい。
秀子さんでも人は絶対にやり直せますから。
あず映画撮れなくなってごめんなさい。
(あずさ)秀子さん…。
事件は全面解決。
でも映画はおじゃん。
リサの即身仏の特集の目玉もなし。
うまくいかねえよなこの世って。
そうだろうか。
受光さんが残してくれた思いはもっと強く前向きだったんだけどな。
「遠からず自分は消えるだろう」「それでもなおここからみんなを見守り照らし続ける」受光さんはあえて討たれたんです。
そしてミイラになった。
人々を救いたいと思い続けながらね。
分かるよね?たとえ刺し殺された傷が残っていようとあのミイラはやっぱり…。
即身仏。
立派なね。
託せばいいんですよ秀子さんも。
あなたの撮りたい映画を信じられる誰かに。

(長山)はいカーット!
(スタッフ)はいカット。
(長山)バカ野郎!もっとさ情熱的にブワッとやってくれるかな?邪魔なんだよ。
結局一番いい思いしたのチョーサクだよね。
好き放題だね。
本番!でもあんなに怖いんなら別のとこで撮ればいいのに。
(亜里沙)ホントホント。
(長山)よーい!ちょっと待って。
ああもう。
なあ俺の意図伝わってる?もう助けてあげたら?トーマ。
いや僕には無理だよ。
それにもういいかげん東京帰らないと。
何日も休校で大学首になりそうなんだ。

(山影)塔馬さん!すいませんまたご協力願いたい案件が。
また事件ですか!もういやいやいや…。
で今度はどんな?ちょっと大学大丈夫なの?絶対首。

(長山)今度こそ本番!よーい!レディ…。
アクションスタートゴー!2014/09/19(金) 21:00〜22:52
関西テレビ1
金曜プレステージ・塔馬教授の天才推理2湯殿山麓ミイラ伝説殺人事件[字][多]

始まりはミイラ発見…140年の時を越えて山形・湯殿山麓で起きた不可解な殺人事件に風変りな教授が挑む!▽佐々木蔵之介 森口瑤子 橋本さとし 田畑智子

詳細情報
番組内容
 湯殿山山麓の山形県仙人村で、墓石を掘り返している男が何者かによって撲殺された。被害者の男が倒れた後も後頭部に凶器を執拗に振り下ろす犯人…。
 それから半年後の東京。私大教授で浮世絵研究家でもある塔馬双太郎(佐々木蔵之介)は、雑誌編集部員・名掛亜里沙(森口瑤子)と推理小説家・長山作治(橋本さとし)が次に取材する資料に目を通す。取材テーマは湯殿山の即身仏(ミイラ)。塔馬は興味深いテーマで取材に賛成だ
番組内容2
ったが、幽霊系の話が苦手な長山は取材することに反対。結局、亜里沙の知人で映画プロデューサーの小暮秀子(田畑智子)の作品が偶然、湯殿山で撮影していること、しかも長山の大好きな女優が出演していることを知り長山も取材同行を承諾する。
 数日後、亜里沙と長山は湯殿山の撮影現場を訪れる。小暮に誘われ撮影後の制作発表に出席すると、そこには仙人村の由緒ある寺・殿岳寺の住職、沼田雲海(山田明郷)地元の実業家で村議
番組内容3
会議長・千崎完三(阿南健治)がいた。制作発表が始まり、その冒頭で主演女優が外から会場の中に向かう途中、突起物につまずいてしまう…。関係者がそれを掘り起こすと、仏像が彫られたふた付きの木棺であることが判り、中には1体のミイラが納まっていた…。
 亜里沙はすぐに塔馬に電話をして状況を説明。細工された木棺に興味を覚えた塔馬は、自分が不在でも大丈夫なように学生たちの課題を3日分作成して、湯殿山へと向かう。
出演者
佐々木蔵之介 
森口瑤子 
橋本さとし 
田畑智子 
渋谷飛鳥 
山田明郷 
阿南健治 
宇梶剛士 


スタッフ
【原作】
高橋克彦「即身仏(ミイラ)の殺人」文春文庫 

【脚本】
扇澤延男 

【編成企画】
水野綾子 

【プロデュース】
有賀聡(ケイファクトリー) 

【演出】
千葉行利(ケイファクトリー) 

【制作】
フジテレビ 

【制作著作】
ケイファクトリー

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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