くらし☆解説「福島の桜 幸せの国ブータンへ」 2014.09.19

生字幕放送でお伝えします岩渕⇒美しい山々が広がる日本の田園風景のように見えますが実はそうではありません。
こちらはヒマラヤのブータン王国なんです。
こんにちは。
10時10分です。
「くらしきらり解説」です。
きょうの担当は道傳愛子解説委員です。
そしてきょうのテーマはこちらです。
冒頭の映像の景色は日本のように見えてびっくりしましたが、道傳さんは現地を取材されたんですよね。
道傳⇒先月、行ってきました。
ブータンも、日本の人に似ていて私も間違えられそうになってしまいました。
そのブータンに日本の天然記念物樹齢1000年ともいわれる、福島の三春滝桜が贈られました。
さらにこの滝桜が仲立ちをする形で花々の栽培や造園の分野で新たに草の根の技術協力が始まろうとしているんです。
ブータンといえば幸せの国で知られていますよね。
GNHグロス・ナショナル・ハピネス国民総幸福ですね。
つまり幸せはGDPや経済成長だけでなく精神的な豊かさも大切という考え方を提唱したことから、幸せの国として知られるようになりました。
実際にはグローバル化の中でなかなか簡単なことではないようです。
ブータンの国王といえば、ワンチュク国王ですけれども、東日本大震災のあとに日本を訪れたということも記憶に残っています。
王妃と一緒でしたね。
そうですね。
各地で歓迎されて大きなニュースになりました。
ブータンのワンチュク国王と王妃2011年11月来日して、被災地を訪ねました。
東日本大震災の犠牲者を追悼し被災者を励ましました。
福島県相馬市の小学校では避難所から通学する子どもたちにこう語りかけました。
ブータンのシンボルの竜になぞらえて、強く生きてくださいというメッセージを送ってくださったんですね。
こうして励ましてくださったんですね。
震災後、外国の要人の来日がキャンセルされたりする中で国王と王妃が半年後に賓客として訪問したことを福島の人たちは感激とともに重く受け止めたそうです。
だからこそ、この大切な滝桜の苗木は、その訪問のお礼として贈られて、そして現地で育てられることになったんです。
だから福島の桜なんですね。
先月、その桜を見てきました。
ブータンの国の様子と一緒にご覧いただきましょう。
きれいですね、何か絵はがきみたいですね。
標高2300m、ヒマラヤの王国ブータン。
訪ねたときは雨季の終わりでした。
民族衣装を町の人も着てるんですね。
そうです、日本の着物に似ていますね。
ブータンは仏教国で、こうして参拝に訪れる人たちの姿が絶えません。
伝統を守ることは憲法で決められています。
福島県三春町から贈られた桜は首都ティンプー郊外にありました。
贈られた苗木はまず、こうして鉢で栽培されます。
ブータンの土に慣らし、根をしっかり張らせるためです。
最初はこの園芸センターで大事に育てられるということなんですね。
どうしてかといいますと、ブータンは仏教の教えがあって例えば野犬の駆除などの殺生を行わないですし、牛ものんびり道路を渡っていたりするんです。
ですから、しっかり育つ前に外に植えてしまうと幹を犬にかじられたり牛に葉っぱを食べられたりということですね。
桜もちみたいにおいしいのかもしれませんけれども、そういう心配があるんだそうです。
大切に育てられたこの木が日本とブータンの友好のシンボルにもなりそうですね。
そうですね。
これはシンボルだけではないようです。
この桜の木の寄贈をきっかけに園芸や造園技術つまり庭造りの技術を教えてほしいですとか、都市の緑化に協力してほしいという要請がブータン側からあって日本のJICAの技術協力プロジェクトとして3年間かけて、園芸産業の育成庭造り、花々の栽培に関わる専門家の育成などが行われることになっているんです。
そして、こちらをご覧ください。
切手ですか?記念切手ですか?はい。
2011年は日本とブータン外交関係樹立25年だったんですけれども日本からの支援が記念切手になっています。
中でも、農耕機や品種改良、農作物ですね。
農業分野への長年の支援が行われていたわけなんですけれども、その切り札が今回きっかけに始まろうとしている園芸産業なんです。
では桜を植えるということ以上の意味があるわけなんですね。
ゆくゆくは産業に、というねらいですね。
そのために園芸の専門家も三春町からブータンに派遣される予定です。
この桜の木の経済効果への期待を、首相もインタビューでこう話しています。
桜がブータンの人たちの生活を助けてくれるというのはどういうことなんですか?日本の支援が生活を助けるかもしれないというふうに言いかえてもいいかもしれません。
というのは日本には、第3の隣国になってほしいという考え方が背景にあるようです。
日本は国境を接する隣国ではないんですけれども大国の中国やインドに挟まれているブータンにとっては、隣国のように頼りになる存在になってほしいという期待ですね。
特に農業の分野ブータンでは国民の70%が地方に暮らしていてその多くが、農業に携わっています。
ですけれども山がちですし、作付け面積も限られていますので、若者の農業離れも進んでいるんです。
というのも、農業イコール重労働のわりに収入につながらないというイメージが強くて、生産性を高めるということが今、課題になっているわけなんです。
そうした中でこうした付加価値のある花を栽培することあるいは園芸で庭造りをするという分野で日本の分野が入れば新たな雇用を創出することができるのではないかという期待がかけられているんです。
農村部と都市部との格差が拡大していて若い人たちの失業率は7.1%と高いんです。
雇用の創出というのも課題になっているわけです。
でも意外なんですけれども先ほどの映像を見ていてもブータンは本当に豊かな自然に恵まれているという印象だったんですけれども。
確かにヒマラヤが近くにありますからその印象が強いですね。
首都ティンプー市内では最近では都市化が急速に進んで、もともとあった木々が伐採されて幸せの国のイメージとは裏腹に環境の悪化も目立っています。
ブータンにとっては環境を守り緑化を進めることは街を美しく保つということだけではなくて、国土を守るという意味もあるんです。
ですから国の在り方そのものに関わることでもあります。
国王自身、高校生のときに植林をしたことがあって一度失われた自然を取り戻すのは容易ではないと話します。
王宮では大きな松の木の盆栽の世話をしていてそれを通して日本の園芸や造園の技術にも関心を持っています。
ですから日本のように街が清潔で、街路樹があり、植え込みが整備されている、そんな都市を作ることはできないかとかねてから話していて、そのノウハウを学びたいということなんです。
多くの国と同じように幸せの国ブータンも、開発とのバランスというのが課題なんですね。
そうですね。
ブータンでは格差のない公平な発展環境保護は国の基本方針にもなっています。
日本からの支援は、まさにこの分野での支援といえると思います。
月日がたって桜の花が咲くころにブータンはどのような幸せの国になっているのか、福島の人たちも楽しみにしていると思います。
道傳愛子解説委員でした。
次回のテーマです。
円安が進んでいますがこれまで円安を歓迎していた経済界からは警戒する声が高まっています。
担当は今井純子解説委員です。
ぜひ、ご覧ください。
2014/09/19(金) 10:10〜10:20
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「福島の桜 幸せの国ブータンへ」[字]

NHK解説委員…道傳愛子,【司会】岩渕梢

詳細情報
出演者
【出演】NHK解説委員…道傳愛子,【司会】岩渕梢

ジャンル :
ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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