あやちゃん。
きれいなあやちゃん。
はーい。
ちょっとお金貸してよちょっと。
お母さん私も今月ピンチなの。
俺もピンチ。
「美人妻金と力はなかりけり」!あはは…!
(甲斐享)おはようございます。
(杉下右京)「おはようございます」じゃありません。
はい?僕の記憶が正しければ登庁時間は8時半だったはずですがね。
ええ…。
あれ進んでません?いいえたった今直したばかりです。
ほら。
君遅れてますね。
(角田六郎)おはよう。
あっ課長いいとこに。
今何時ですか?8時半だよ。
ほら。
なんと!それ機械式っすか?機械式ですよ。
ずれるんですね。
いやいやこの10年ずれた事はないんですがねえ。
クオーツならずれませんよ。
お揃いにするか?2万もしたけどな。
いや結構。
信頼出来る時計師に見てもらってますから。
あっもしもし。
以前時計を見てもらいました杉下と申しますが…。
ご無沙汰しております。
少し調子がおかしくなってしまいましてね…。
ええ今日の4時ならば伺えますが。
よろしくお願いします。
(ノック)
(津田陽一)はい。
ご無沙汰しておりました。
いらっしゃい。
3年おきには手入れに来るように言ったはずですよ。
申し訳ありません。
あれから問題なく動いてくれてたものですからつい…。
どうぞ。
どんな具合ですか?半日で10分ほど進んでしまいます。
お預かりします。
テンプが早いようだな。
(津田)油も硬くなってるみたいですね。
こちら津田陽一さん。
CMW公認高級時計師です。
CMWってなんの略ですか?CertifiredMasterWatchmaker。
時計師としては最高峰の資格で亡命した国でたとえ言葉が出来なくても翌日から仕事が出来る唯一の資格と言われてるんですね。
なんかすごいですね。
こちらは?あっ杉下さんの部下で甲斐と言います。
クオーツですね。
あっわかります?
(津田)針の動きが違いますから。
正確でいいですよね。
同じぐらいの精度を部品の組み合わせだけで出すところに僕はこの機械式の魅力を感じるのですがねえ。
少し見てみませんか?ああぜひ。
どうぞ。
あっはい。
(津田)ここがテンプ。
要は振り子なんですが時計の心臓です。
はい。
金属は温度で伸びたり縮んだりするんで夏はゆっくり冬は早くなります。
そこも含めて調整してやらないと…。
なんか生き物みたいですね。
そういうところに愛着を持つ方もいらっしゃいます。
(津田)アンクルガンギ車…。
前回はここの歯車が擦り減ってたんで私が作ったんです。
え〜自分で作っちゃうんですか。
(振り子時計の時報)細かいなあ。
ありがとうございます。
では確かにお預かりします。
ではよろしくお願いします。
あっこの時計確か以前にも…。
よく覚えてますね。
西暦まで表示されるクロックは珍しいですからねえ。
怖くて開けられなくてね…。
津田さんがですか?こういう一点ものは設計図が手に入らないものですから仕組みがよくわからないうちに下手に開けると二度と直せなくなる。
外からじっと観察して仕組みを推理した上でないと開けられないんです。
なるほど。
なんとなくわかるような気がします。
(パトカーのサイレン)
(芹沢慶二)所轄の話じゃ自殺っぽいっすよ。
(伊丹憲一)なんだよ。
奥多摩まで来たのによ…。
(米沢守)どうも。
(伊丹)おう。
除染終わりました。
幸いオフシーズンの別荘地で二次被害はありませんでした。
(伊丹)しかしいい家だな。
持ち主はファッションデザイナーの関一馬さんだそうです。
えっ?関一馬ってあの裏原で店出してた…。
知ってんのか?
(芹沢)まあ僕ら世代っすからね。
ストリート系のブランドで当てて一時期は年商80億とも言われてました。
そんな人物がなんで自殺なんか…。
いや関さんならあそこにいますよ。
えっ?その時何か気づいた点は?
(関一馬)臭い…。
とにかく臭いね。
(米沢)ここは関さんの別荘ですが亡くなっていたのは別の人物です。
何?どうも。
おやこれはお二方。
今日はまた何か?カイトくん。
ジャーン。
今今亭狐楽のチケットかぶりつきです。
おお〜…。
また何か無茶な頼み事でしょうか?いえいえ。
先日無理を申し上げたのでお礼を兼ねて僕たちから。
本当ですか?いやよく取れましたね。
ネットオークションでゲットしました。
いや〜こんな事されたら断れませんなあ…。
事件ですか?昨日奥多摩で自殺がありましてその遺留品です。
おや…。
止まってますがこれ機械式ですね。
なかなかいい時計ですねえ。
ええ。
亡くなったのが時計の輸入販売をしてる会社の社長さんだったもんですから…。
藤東物産。
藤東物産?はい。
知ってんすか?津田さんのいる会社です。
えっ?あそこって自分の工房じゃないんですか?アフターサービスの修理部門の社員だそうで仕事は自宅でしているそうです。
へえ〜。
どなたかお知り合いでしょうか?ええまあ…。
でその自殺というのは?それがいささか妙でして他人の別荘で亡くなってたんですよ。
(米沢)別荘の持ち主は関一馬さんというアパレル関係の経営者なんですが週末はその別荘で過ごすそうで昨日いつものように来たところ…。
(米沢)中から異臭がするのに気づいて…。
(米沢)藤井さんが亡くなっているのを発見したそうです。
死亡推定時刻は午後4時。
ガスの警報器が反応して警備会社に連絡がいってました。
自殺の理由は?関さんの話では最近経営難だったようでそれを気に病んでの事ではないかと…。
このように遺書もありますから。
「経営者の重責と孤独に耐えられませんでした」「勝手なことをして申し訳ありません」あっそれからこれ藤井さんの手帳なんですけども…。
別荘が留守の日を調べていたようで遺書も含めて計画的な自殺だったと思われます。
死因は硫化水素中毒死ですか。
硫化水素は…。
これ花瓶でしょうかね?この中ですか?ええそのようですね。
これなんでしょう?
(米沢)オブラートです。
ご存じのように硫化水素は2つの化学物質を混ぜ合わせる事によって作りますから。
オブラートでくるんだ粉末を花瓶の中に投げ込んだんじゃないでしょうかね。
藤井さんは関さんとはどういう関係だったんですか?新商品の開発で業務提携をしようとしていたみたいですね。
打ち合わせと懇親を兼ねて別荘にも一度招いた事があったようです。
それで別荘に侵入して自殺?ええ。
妙は妙なんで一応一課も自殺と事件両方の線で調べてるみたいですね。
確かに妙な話ですね。
ええ。
(秋田秀紀)確かに経営難ではありましたけど…。
それより最近神経とがらせてたのは買収問題です。
買収?関さんから機械式時計を一緒に作らないかって申し出があったんです。
うちの修理部門に津田っていう…業界じゃ名の知れた職人がいるんですけど彼に時計を作らせてブランドを立ち上げようって話で。
新しいブランドですか?ええ。
(秋田)社長は反対してたんですが…。
そしたら関さんうちの株持ってる取引先を回りだして…。
買収を始めたと。
ええ。
正直自殺したって聞いた時一番最初に思い浮かんだのは抗議の自殺でした。
藤井社長はどうして業務提携に反対していたのでしょう?関さんが作らせようとしていた時計信じられないぐらい安物の量産品だったんです。
津田さんに設計図だけ書かせてあとは安い材料をプレス加工するって…。
買収を進めていた関さんにとってそれを防ごうとする藤井社長は邪魔だった。
藤井社長の車はここに止めてあった。
ええ。
別荘までは少々距離があるようですね。
別荘地の管理人の話だと毎日午後3時半にこの周辺を見回りしてるらしくその時はまだ藤井社長の車はなかったそうです。
関さんは午後4時に来る事になっていましたから30分の間に藤井社長は車を止め別荘で自殺を図った事になりますねえ。
ええ…。
ここですね。
どうも。
書斎は…向こうですね。
藤井社長はこの部屋で自ら命を絶ったわけですねえ。
ええ。
床にももがいた藤井社長の指紋が複数検出されています。
硫化水素は…。
ああ…。
このテーブルの上にあった花瓶の中で発生させたわけですねえ。
ええ。
(リモコンの操作音)何してるんですか?暖房運転になっています。
今の季節は冷房にはしないですよね。
ですがなぜか羽根が上向きになっています。
暖かい空気というのは上に行くわけですからねえ暖房ならば普通羽根を下向きにしておきませんか。
言われてみればそうですけど…。
(リモコンの操作音)カイトくん。
はい。
君もやってごらんなさい。
えっ?誰がやっても同じ位置に落ちますね。
ええ。
確かオブラートって言ってましたよね…。
花瓶の中に液体を入れておき粉末を包んだオブラートをここに載せておく。
このリモコンのタイマー4時に電源が入って4時10分に切れるように設定されています。
ひょっとしてひょっとするかもしれませんね。
はい。
(関)藤井さんの事なら別荘で話したとおりだけど。
買収の事はお話しになりませんでしたよね。
なんでそんな事まで調べてんの?言ったよね?俺が着いた時にはもう死んでたの。
そこなんですがおかしくないですかね?調べたらあなた午後4時に別荘でネット会議をやる予定があったらしいじゃないですか。
仕事の電話してて遅れたんだよ。
それに藤井さんが死んだ4時は別荘の近くにあるコンビニにいたわけ。
嘘だと思うんなら調べてよ。
失礼します。
あっやっぱり。
彼らと一緒です。
どうもありがとう。
どうも。
(伊丹)警部殿…。
いいタイミングでした。
おかげですんなり通してもらえました。
お前も勝手に一緒にするな。
すいません。
買収の件ですね?そうっす。
おい!関さんどうして黙ってたんですか?俺が追い詰めたなんて噂が立ったら困るからだよ。
こっちだって素直に業務提携してくれれば買収なんかする必要なかった。
仕方なかったんだよ。
なんでそこまでして藤井さんの会社を?欲しかったのは修理部門。
あそこにはスイスの時計師にも引けを取らない腕のいい職人がいるんでね。
津田さんの事ですか?知ってんの?実は個人的に時計を見てもらってまして。
だったらわかるでしょうけど彼は時計業界じゃ国際的な評価がある職人なの。
ヨウイチ・ツダの名前で純国産の機械式時計を若者にも手が届く価格で作れば絶対成功出来る!それに彼自身もかつては独立時計師を目指した。
独立時計師?オリジナルの時計を一から作り出す職人の事ですねえ。
なんでもよくご存じで…。
で津田さんはどうおっしゃっていたのでしょう?初めは渋ってたけどちょうど昨日別荘へ向かう途中に電話くれて話を聞かせてくれって。
津田さんがですか?じゃあさっきの電話ってのは…。
(関)そう。
俺としては会議よりそっちが大事だったわけ。
津田さんにはあの別荘にも何度も来てもらってるしようやく俺の誠意が伝わったんだと思ってる。
反対してたのは藤井さん。
俺が経営権を握ったら外されると思ってたから…。
そういう人なの。
(伊丹)ほうそんな事が…。
(関の声)だからって自殺を俺のせいにされても…。
本当に自殺なのでしょうかねえ?なんかつかんでんの?ええ。
さっき現場で見てきたんですがエアコンのタイマーの設定が変だったんですよ。
(伊丹)タイマーねえ…。
じゃあどこにいても出来ますねえ。
まさか俺を疑ってるの?つかぬ事伺いますけど事件の前日何なさってました?前日?海外にいたけど。
別荘へは空港から直接?そう。
だとしたら伊丹さん関さんには無理ですね。
は?書斎のエアコンのタイマーは24時間後までしか設定出来ないタイプのものでした。
もし本当に前日に海外にいたのだとしたら関さんには犯行は不可能です。
そのとおり。
(ため息)おい裏取るぞ。
(芹沢)はい。
(伊丹)失礼。
裏取ったって出ませんよ。
確かに本人には出来ませんけど誰か協力者がいればいいだけの話ですよね。
しかし殺人の協力者などそう簡単に見つかるものでしょうかねえ。
津田さん昔独立時計師を目指していたんですよね。
もしも自分の時計を世に出したいと野心が今でもあったとしたらどうでしょう?関さんと利害が一致すると思いませんか?ええ。
ただ1つだけどうしても腑に落ちない事があるんですよ。
関さんの商品は機械式時計の品質を落とそうとするものですよねえ。
そんな話に津田さんがのるとはどうしても思えないんですよ。
じゃあなんで関さんに電話して話を聞かせてくれって言ったんでしょうね。
そこです。
(ノック)あ〜開けたんですか。
ええおよその見当がついたものですから。
今日は?藤井さんが亡くなった事はご存じですか?昨日の夜会社から連絡もらいました。
あの人とは長い付き合いだったんで残念です。
関さんから津田さんの名前を使ってブランドを立ち上げようと言われていたそうですね。
それが…?津田さんはどうお考えだったんですか?どうと言われましても…。
一昨日関さんに電話もしてますよね。
話を聞いておこうと思っただけです。
案の定ブリキを型抜きして時計のおもちゃを作るというようなひどい話でした。
では協力する気はなかったと。
私がスイスで教わった時計師たちはこれで部品に触れただけで時計の質を見抜くんです。
あんな品質の低いものに協力するなんて彼らに恥ずかしくて出来ません。
買収の話を聞いた時書いたものです。
私さえ会社を辞めればあの男も手を引くかもしれないと思ったもので…。
藤井さんには受け取ってもらえませんでしたが。
でも津田さんは独立時計師を目指していたんですよね。
自分の時計を作るのは夢だったんじゃありませんか?それは昔の話です。
この歳になって今さらそんな気はありません。
(葛西周平)失礼します。
あのー修理依頼があった時計なんですが僕らじゃ手に負えそうにないもんで…。
そんなわけですのでそろそろ…。
お預かりした時計は明後日までにやっておきます。
お願いします。
あのー何か?ちょっとお話よろしいでしょうか?はあ…。
では葛西さんは津田さんが藤井さんの会社に来た頃からご存じなんですね?ええ。
お客さんの前じゃ見せないでしょうけど我々職人に対しては厳しい人でしてねえ…。
しかし独立時計師を目指していた津田さんがどうして突然修理部門に…。
一から自分の時計を作るのと修理を専門にするのとではまるで志が違うような気がするのですがねえ。
奥さんの事がきっかけだって聞いてます。
奥さんですか?ええ。
正直奥さん以外津田さんの夢を理解する人なんていなかったんです。
部品や工作機械でかなりのお金が必要で生活の面じゃ苦労かけっぱなしだったみたいです。
そんな時に急に奥さんを亡くしてしまって…。
病気か何かで?いやそれが…強盗に入られたんですよ。
強盗?ローザンヌフェアって時計の見本市がスイスであるんですが津田さんがそこに出掛けてる間に…。
津田さん…時計作りの費用を稼ぐために修理も請け負ってたんですが1本何百万もする時計何本も預かるじゃないですか。
そこを狙われて…。
そうでしたか。
それで津田さんは独立時計師になる事を諦めたと…。
いやそれどころか時計から一切足を洗う気だったみたいです。
自分が時計にさえ関わっていなければ奥さんは死なずに済んだって思ってしまったんです。
(葛西)あとから聞いたんですが当時は後を追う事も考えたそうです。
そんな時に社長がうちに来てくれないかって…。
よく説得出来ましたね。
前から何度か会いに行ってたみたいなんですが奥さんが亡くなってからはまるで親友のように毎日通ったんだそうです。
よっぽど津田さんに惚れ込んだんでしょう。
津田さんも社長は命の恩人だって言ってました。
例の強盗事件犯人まだ捕まってないんですね。
18年前ですか…。
津田さんは当時千葉にいたんですねえ。
ええ。
事件のあと工房をたたんで引っ越しています。
本気で時計から足を洗おうとしていたようですね。
ええ。
時計に関して津田さんと関さんの考えは水と油。
その上藤井さんに相当な恩義を感じていた。
となると津田さんが関さんに協力するっていう線はなさそうですね。
暇か?
(杉下・甲斐)どうも。
(角田)聞いたぞ。
例のホトケ関ってアパレルの社長が怪しいんだって?まあそうなんですけど…微妙ですね。
しかしなんでまた自分の別荘なんかで殺しちまったんだろうな。
俺なら絶対やらないよ。
その前に別荘持ってるんですか?持ってるわけないだろ。
確かにそのとおりですね。
そんな言い方ないじゃない…。
いえいえそうではなく課長の言うように妙だと思いませんか?自分の別荘で殺人を犯せば疑われるに決まってますよ。
だよな。
そもそも関さんには藤井社長を殺すつもりなどなかった。
ん?ここにきて全面否定ですか。
だったら自殺か?いや我々は全く逆方向からこの件を見つめていたのかもしれません。
逆方向って?これ見てください。
あっちょっといいっすか?米沢さんからお借りした藤井社長の手帳のコピーです。
ここ「11時から滞在」そしてここ「16時から滞在」とありますが関さんの留守を探っていたのだとしたらここは「11時まで不在」そしてここは「16時まで不在」と書くのが自然じゃありませんかねえ。
じゃあいない時間じゃなくいる時間を探っていた?なんのために?藤井社長の方が関さんを殺害しようとしていたとしたらどうでしょう?藤井社長には動機がありますからねえ…。
殺害計画を立てていたのは関さんではなく藤井社長の方だったって事ですか?藤井社長の行動をたどってみましょう。
事件が起きた24時間前から。
はい。
(小林正子)ああ藤井さんなら確かに車で出て行かれましたけど。
木曜の夜で間違いありませんか?
(正子の声)ええ間違いありません。
ご本人でしたか?顔まではわからなかったけど…。
藤井さんお独りでしたし。
タイマーはマックスで24時間です。
車で出掛けたのはおそらくここに前日に来て仕掛けを作るためだった。
その可能性は高いでしょうねえ。
別荘が留守の日も把握していたわけですからわざわざ関さんが来る直前の短い時間を使って仕掛けを作らなければならない理由はありませんねえ。
えー…そうですね。
ええ。
しかし前の日に仕掛けをしていたとしてなぜ当日またこの部屋に戻ってきたんでしょうか?たまたま遅れていたからいいものの関さんと鉢合わせる危険があった…。
そこです。
どうしても戻らなければならない理由があったとしたらどうでしょう?「どうしても戻らなければならない理由」?あっ方々に指紋が残されていたんでしたねえ。
あ…ええ。
もがいたにしては少々範囲が広過ぎると思いませんか?確かに…。
まずはここです。
こことここ。
ええ。
次がこっち。
こことここ。
あっ…でこっちです。
変わった指紋の付き方ですねえ。
確かに…。
あっ…でこっちです。
カイトくん。
はい。
藤井社長は何かを捜していたのではありませんかねえ。
何かを捜していた?ええ。
例えばえー…あっこことここ。
こんなふうに。
なるほど。
あっ…。
あっ…。
カイトくんちょっといいですか?はい。
この跡…。
このラックの下に何か落としたんでしょうか?戻ってきた理由はそれかもしれませんねえ。
ええ。
つまり前日この別荘に来た藤井社長はこの部屋で何かを落とした。
当日その事に気づき危険を冒してでもどうしても戻ってこなければならなくなってしまった。
じゃあ何を落としたんでしょうか?例えば藤井社長の遺留品にあった車の鍵。
キーホルダーが2つに折れていました。
なるほど。
確かに現場に自分の証拠を残しちゃまずいですもんね。
問題はどうしてそこで自分が死ぬ事になったのかという事です。
仕掛けが動く時間を間違えた。
そこまで綿密な計画を立てておいて最も大事な時間を間違ったりするでしょうかねえ…。
じゃあ…自分の時計が遅れていた?はい?えっ?自分の時計が遅れてた。
カイトくん君…いい事言いますねえ。
えっ?
(米沢)世界中からたくさんの人が日本に訪ねてくる。
それは一体何かと尋ねたら…。
アハハ…!米沢さん。
あ…あっちょうどよかった。
先日はおかげさまで大変結構な一席でした。
これお二人で。
お土産です。
どうもありがとう。
藤井社長の時計はまだありますか?ああ一課の方でも自殺という事で落ち着きそうなんでそろそろご遺族の方に返そうかと思っていたところなんですけど。
時計がどうかしましたか?カイトくん。
はい。
今何時ですか?18時15分です。
なるほど。
そういう事でしたか。
えっ?
(ノック)時計なら明日ですよ。
今日はその話ではありません。
なんの話でしょうか?以前おっしゃってましたねえ。
時計は下手に開けられない。
仕組みがわかるまで外からじっと観察するのだと。
僕も今回の事件の仕組みがようやくわかりました。
教えてもらえますか?藤井社長は自殺ではありませんでした。
何者かに殺されたんです。
ただしその藤井社長もまた関さん殺害を企てていました。
藤井社長は予定を調べ関さんが必ず別荘の書斎にいるタイミングをつかみます。
それは時限式の仕掛けをして関さんを殺害するためです。
さて自殺に見せかけるためには室内の設備だけを使った仕掛けを作る必要があります。
一度しか別荘に行った事のない藤井社長には内情をよく知りなおかつうまい仕掛けを考えてくれる協力者が必要でした。
それが津田さんあなただと僕は思っています。
決行の前日関さん殺害に動機がある藤井さんはアリバイ工作のために会社に残り…。
(藤井守)よし進めよう。
(エンジン音)別荘へはあなたが向かいます。
そして鍵のかからない窓から書斎に忍び込み…。
(リモコンの操作音)硫化水素を翌日の午後4時に発生させる仕掛けを作ります。
そこまでは計画どおりでした。
ところが藤井社長はなんらかの理由で別荘へ戻らなければならなくなります。
仕向けたのはあなたでしょう。
そして藤井社長は管理人の身回りが終わる時間を見計らって書斎に侵入します。
あなたが関さんに電話をしたのは仕掛けが動く時間に来ないよう到着を遅らせるためです。
津田さん?先日の件でお話を伺いたいと思いまして…。
ったくもう!どこにいったよ!!ところが捜し物は見つからない。
その時…。
(エアコンの動作音)問題はなぜ4時に動くはずのものが時間より早く動いたのかです。
実は仕掛けが時間より早く動いたのではなく藤井社長が時間より遅く行動したんです。
ええ。
葛西さんに聞いたんですが藤井社長の時計はあなたが直していたそうですね。
合わせたはずの時刻がいつの間にかずれていました。
調べたところ3時間でちょうど20分遅れるようになっていました。
藤井社長はこの時計を見て3時半すぎに書斎に忍び込んだはずでした。
ところが本当の時間は4時直前。
間もなく仕掛けが動く時間だった。
(エアコンの動作音)はっ!
(咳)あなたの直した時計が遅れるはずはありません。
わざと遅れるように調整しておいたんです。
つけている本人も気づかない速度でそれでいて正確に。
私が藤井さんを殺す理由があると?このクロックの日付1995年7月7日はあなたの奥様香織さんの亡くなった日ですね。
千葉県警に行って奥さんが巻き込まれた強盗事件を調べてきました。
事件の時に壊れたものだったんですね。
事件の前から藤井社長は何度もあなたの家を訪ねていたそうですね。
留守中に来たとしても不思議はありません。
18年間直さなかった時計をなぜ今になって直し始めたのでしょう?あなたが藤井社長を殺した理由は奥様の事件と関係があるのではありませんか?この時計…本当は私が作ったんです。
妻のために。
当時独立時計師を目指していた私にとって妻は唯一の味方でした。
その妻が亡くなって後を追うつもりだった私を藤井さんは思いとどめさせてくれた。
感謝してました。
関さんは買収したら私の首を切るつもりです。
そしたら私はもう生きていけない。
もし私を命の恩人だと思うなら今度は私の命を救ってください!津田さんこのとおりだ…。
(津田の声)だから今回の計画にも協力したんです。
彼がいなければ私の命はなかったも同然ですから。
(津田の声)ところが関さんの別荘に仕掛けをして車を車庫に返しに行った時…。
(津田の声)私が妻の時計のために一から削り出して作った部品でした。
事件の日に壊れた時計の部品がなぜ藤井さんのところに…。
その時恐ろしい考えが頭に浮かびました。
(津田香織)何遍お話頂いても夫は修理師にはなりません。
『カノン』
(藤井)だから日本人には独立時計師なんて無理なんですよ。
勝手に決めつけないでください!
(津田)あの頃妻は私を修理師として引き抜こうと訪ねてきた客と言い争いをする事がありました。
出ていってください!奥さん離して!キャッ!奥さん…奥さん!
(津田の声)一度思いついてしまった想像を確かめずにはいられなかった…。
津田さん!なんの曲だったか覚えてませんか?は?この時計のオルゴールです。
前の家で藤井さんも聞いた事があるでしょう?修理するのにシリンダーを発注したいもので。
えっと確か…あ〜…『カノン』。
(津田の声)その時確信しました。
この時計普段は1時間ごとに鐘が鳴るだけなんですが結婚記念日にだけ鐘の代わりにオルゴールが流れるように仕掛けがしてあったんです。
結婚記念日は7月7日。
妻が亡くなった日に初めて鳴るはずでした。
(津田)藤井さんがその曲を知っているという事はその日私の家に来ていたという事以外考えられません。
この時計私が作った最初の時計です。
独立時計師になって幸せにするという意味で妻のために作りました。
その妻が亡くなってやけになっていた私をあなたは会社に引き入れてくれた。
感謝してます。
いやいや…どうも。
これお借りしてた車の鍵です。
あれ?津田さんこれどうしたんです?もしかしたらあの時…。
なんです?仕掛けを作ってた時鍵を落としてしまって…。
ええっ!じゃあこの欠けた部分関さんのところにあるって言うんですか?ああ〜もう…まずいじゃないですか!今だったらまだ時間がある。
津田さん取りに行ってくださいよ!それが…このあとお客が来るんです。
お客?警察の人なんです。
警察!?今さら断ればあとで怪しまれます。
じゃあ俺が行くしかないのか…。
申し訳ない。
別荘地には管理人がいます。
3時半には帰りますからそのあと関さんが来るまでの間なら…。
参ったなもう…。
急がなくちゃ!待ってください。
えっ?お預かりした時計直しておきました。
間違えないでください。
3時半ですよ。
妻の事だけはどうしても許せなかった。
形見だと思って持ち歩いていたこの振り子の重りが私を歯車に導いて真実を教えてくれました。
妻が無念を晴らしてくれと言ったんです。
果たしてそうでしょうかねえ…。
もし奥様があなたを歯車に導いたのだとしたらそれは自分の時計を作っていた頃の本来のあなたを思い出させようとした…。
そうは思えませんでしたか?いつから僕の事を?強いて言えば初めてここを訪ねた時でしょうか。
(振り子時計の時報)あなたは100分の1ミリまで気遣う職人です。
部品を触っている時によそ見をする事など到底考えられませんからねえ。
(津田)直してあります。
ご迷惑をおかけしました。
もうあなたに見てもらう事は出来ないのでしょうねえ。
申し訳ありません…。
『カノン』直せたんですね。
ええようやく。
私の人生はただこの時計を直すためだけにあったのかもしれません。
おはようございます。
8時31分17秒。
1分17秒の遅刻です。
すいません。
あれから時計の調子いいみたいですね。
実に正確です。
2014/09/18(木) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒 season12[再][字]
「右京の腕時計」
詳細情報
◇番組内容
水谷豊&成宮寛貴の相棒!杉下右京(水谷豊)の名推理と甲斐享(成宮寛貴)の巧みな行動で事件を解決へと導く!今シーズンはどんな予想だにしない展開が待っているのか!
◇出演者
水谷豊、成宮寛貴 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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