サラメシ 2014.09.18

こんにちは中井貴一です。
今日最初の舞台はこちら。
富山が誇る名峰…見て下さいこの絶景。
日本を代表する山岳観光地ですから本格的な登山者から家族連れまで年間なんと100万人も訪れるそうです。
えっ?「この山の上にサラメシがあるか」って?もちろんです。
こちらネギと卵を甘辛く炒めごはんの上に載せたお手軽卵丼。
ちょっと早いけどごはん。
手の空いた人からごはんだよ。
威勢のいい号令で集まってきたのはこちら。
何やら見慣れない制服の皆さんです。
うん?あっ書いてあります。
何これ?「警備隊」?こちらは「消防署」?「立山診療所」?これ何の食堂でしょうか?
(一同)ごちそうさまでした。
…でこの命令したこの方は?標高2,400m。
富山県が運営する立山センター。
もともとは自然保護のための施設でしたが今は登山客にとって安心の拠点でもあるのです。
ここに待機しているのは遭難者の救助を行う山の警察。
そして交代でやって来る医師や看護師。
救急患者を山の麓まで搬送する…更には高山植物の保護を行う林野庁のパトロール隊などもこの施設を拠点に活動しています。
そんな山で働く皆さんの胃袋を支えるのがこちら…泊まり込みで働く人のために朝昼晩の一日三食。
ここで食事を提供しています。
近所に住む県の職員に声をかけられたまたま始めたというこの仕事。
施設が開く4月から11月の間ほとんど住み込みなんだとか。
料理人とか思ってないよ。
恥ずかしい。
メシ炊き女よ。
えっもう来たん?車。
はい今来ます。
開設当初から働き続け今年でなんと38年。
今や立山で働く人で知らぬ者はいないと言われる存在です。
こちら登山客ではありません。
交代でやって来た診療所のお医者さん。
そんな立山センターに最も長い間寝泊まりするのが山岳警備隊。
警備隊だけは最低でも3人常駐隊と呼ばれる隊員が配備され毎年このセンターがオープンしている春から秋までずっとここで絹子さんと一緒に生活しています。
だから絹子さんの勤続30年を祝う席にはご覧のとおり歴代の隊員たちがずらり。
ちなみに現在の隊長も立山では後輩なんだそうです。
つまり今の若い隊員たちにとって絹子さんは立山の大先輩。
「私の言う事間違っとる?」ってよく警備隊に言う。
「いや間違ってません」って。
何だか有無を言わさぬ存在のようです。
そんな絹子さんにまた新たな後輩が。
今年初めてここの派出所の常駐隊に配属された…仕事の基本は滑落や遭難など山の事故に備えての待機。
しかし応援が駆けつけ人員に余裕ができる夏場は山をパトロールして回るのが日課です。
万年雪が残る立山。
雪渓を踏み固めながら進みます。
この日は立山センターからの高低差およそ400m上までをパトロール。
16度あった気温は一気に10度へ。
風速もおよそ10メートルに。
この視界では登山客の危険も高まります。
危険を感じれば下山を促す事もあります。
アルペンルートが出来てから立山の登山は気軽になりましたがあくまで険しい山。
8月上旬にも転落死亡事故がありました。
気を付けて。
夏山だからと油断はできません。
事故や遭難が起こる前に防ぐ。
これも大切な仕事。
そんな隊員たちを厨房で待つのが絹子さん。
昼は手軽に作れる丼ものやパスタなど一皿料理が中心。
その分夜に品数を増やしたいんですって。
それにしても大胆。
これ絶対目分量でしょう。
ねえ絶対目分量…。
ほらほら絶対ほら来た。
山菜にはだしの素とめんつゆをどば〜っと。
案外こういうのがおいしいんだよね。
アチチチチ…。
アチチチチ…もういい。
アッチ〜!「もういい」って何それ?あとはこれをごはんの上に載せるだけ。
どかっと作れる山菜丼は夏の繁忙期など食べる人数が多い時の定番メニュー。
聞けば絹子さん苦労するのは何十人分の調理より毎日の献立作りなんだとか。
ここで働く人は毎日ここでしか食べられない事を知っているから。
飽きないように偏らないように。
つけ始めた献立表はこんなになりました。
38年間ランチだけでもおよそ8,000食。
献立の記録。
それは絹子さんが刻んだ山での時間の記録でもあります。
あっ競馬が好きなのかな?大きいレースの時だけ買うみたいですね。
あらら…立山出身と聞いてますが何?阪神ファン?皆が驚いたあの日は煮こみうどん。
そして厨房から見つめた山の厳しさ。
38年の間に幾度となく届いた遭難の知らせ。
隊員たちの帰ってこない昼。
しかしどんな事があっても昼になれば絹子さんはごはんを作る。
お昼ごはん出来ました。
お昼ごはん出来たよ。
手の空いた人どうぞ。
絹子さんのこだわりはごはんを出来たてで食べさせる事。
みんなそれを知っているから呼ばれたらすぐ食堂へ飛んできます。
あっ若木さんたちも到着しました。
食べるよ食べるよ。
この日のサラメシは37人分。
気持ちよく全員そろいました。
警備隊の丼は何も言わなくても絹子さんが大盛りに。
それにしてもさすが体力仕事の皆さんよく食べる。
おいしいですはい。
本当ありがたいですね。
いや本当に。
(絹子)毎日そう思っていますか?はい思ってます!「うん」と言いなさいよ。
はい!お昼になれば掛け声一つでみんなが集まる。
それは今日も山が安全だったしるし。
山の食堂のいつもの掛け声。
「お昼ごはん出来たよ」。
続いてはある料理人のお話。
職場は日々変わるそうです。
手に持っているあれどう見ても工具箱ですねそれ。
これ一つでどこへでも?さすらいの料理人ですか?米山さんこの日の仕事場は今年出来たばかりの劇場。
彼らはお笑い劇団ワハハ本舗が新たに集めた若手劇団員の皆さん。
ただいま翌日からおよそ1か月にわたる公演の最終リハーサル中。
米山さん何を隠そうこの劇団の専属シェフ。
今日はここで昼と夜劇団員にまかないを振る舞うそうです。
えっ?これ何やってんのこれ?えっこれまさかキッチン!?キッチンから手作り?即席キッチンで今から40人分!?米山さんを劇団にスカウトしたのは社長でもある演出家の喰始さん。
一番ハードな直前リハーサルの間ぐらい全員に温かいものを食べさせたい。
そんな思いを受けた米山さん。
この日のランチは炊き込み風オムライス。
味がしっかりと染み込むようにごはんは鶏がらスープと角切りバターを多めに入れて。
4升のお米を炊くのに使う炊飯器は3台。
劇場のブレーカーが落ちないように3か所離れた場所から電源を借ります。
実は米山さんかつては銀行員でした。
シェフになったきっかけは25歳の時に食べたフランス料理。
おいしさに衝撃を受け退職して料理の道へ。
フレンチレストランで修業後30歳で一念発起。
友人と長野県の蓼科高原に宿泊施設を備えたレストランいわゆるオーベルジュをオープン。
え〜ちょちょちょっと待ってよ。
本物のシェフじゃない。
これを作ってた人が劇団のまかないを?50代半ばで劇団専属シェフに。
今ではどんなオーダーもこなします。
公演の打ち上げでの調理はもちろんほかの劇団への差し入れも手作りのサンドイッチなどを届けるそうです。
あっほら柴田さんも。
ほら久本さんも。
米山さんの料理が楽しみでベテラン勢も外食に行かなくなったとか。
実際まかないが作られるようになってから舞台でのケガや風邪をひく人が減ったと感じている劇団員が多いんだとか。
うわ〜!さて台本の読み合わせも終盤。
炊き込み風オムライスそろそろ出来る頃でしょうかね。
ああ〜簡易コンロだし毎回場所も変わるし40人前だしねえ。
どんなに急いで作ってもいつもギリギリになってしまうんだそうです。
フレンチ時代は決して使わなかったケチャップもこの日は2本。
うんおいしい大丈夫。
1回の材料費は5,000円。
1人当たり125円。
一品でも多く作れるように劇場が決まると近くのスーパーマーケットを何軒も下見するといいます。
限られた予算の中でも2種類用意する一手間。
さあ本読み稽古終わったみたいですよ。
準備OKです。
なんとか。
出来ました!これが劇団員のまかない。
鶏肉の塩こうじ焼きにはえっえ〜?これ何?フルーツソースまで作ってたの?そりゃ時間かかるわ米山さん。
はいじゃあ皆さん頂きます。
(一同)頂きます。
おいしい〜!彼ら若手は皆アルバイトとの掛け持ち。
収入が安定しない生活の中ではこうした温かいまかないが何よりのごちそうなんです。
1晩寝かせたから多分おいしいと思うよ。
おいしい魔法かけてよ。
え〜?おいしい魔法お願いします。
おいしい魔法?米山さんもう一つのこだわりはお代わり自由。
ごはんまだあるから大丈夫だよ遠慮しなくて。
もう一つあるから大丈夫だよ。
若手にとってはボリュームも大事。
フレンチレストランのシェフが行き着いたのは車座になって食べるお代わり自由の劇団メシ。
「おいしい!」の声がより大きい方へ。
それが料理人なのかもしれませんねえ米山さん。
あの人も昼を食べた。
東京都心の裏通り。
ひっそりたたずむイタリアンレストラン。
男はいつもピシッと決めたシャツと帽子でやって来た。
漫画家やなせたかし。
執筆の合間スタッフを伴いお気に入りの味を求めた。
注文するのは決まってただ一つ。
コシの強い細麺フェデリーニを硬めに湯がく。
赤とうがらしに塩オリーブオイルをからませたらとびこを少々。
シンプルだからこそ加減がものをいう。
仕上げにはたっぷりのカラスミ。
そしてアクセントにはとんぶりを。
シンプルなオイルパスタがカラスミという濃厚なインパクトをまとう。
やなせはこのパスタが大のお気に入りだった。
あの絵本を描いたのは54歳。
テレビアニメがヒットしたのは69歳の時。
遅咲きのヒットメーカーは体調管理にも人一倍気を配り昼は軽めの麺類と決めていた。
そんなランチどきにもひらめきは訪れた。
自身が脚本演出を手がけたミュージカル。
キザな男カプチーノや美少女ピザに囲まれ自らはフェデリーニと名乗った。
生涯尽きる事がなかったユーモア。
彼が描いた心優しきヒーローは今もそしてこれからも私たちを勇気づけてくれるだろう。
これがやなせたかしが愛した昼ごはん。
ごちそうさまでした。
今日もお相手は中井貴一でした。
2014/09/18(木) 12:20〜12:45
NHK総合1・神戸
サラメシ[字][再]

富山県の立山センターは登山客の安全を守るために働く人々の拠点。食堂を38年間切り盛りする女性に密着。人気劇団の活動を支える専属シェフの愛情たっぷりまかない。

詳細情報
番組内容
▽富山県の立山センターは登山客の安全を守るために働くさまざまな職業の人々の活動拠点。その食堂を38年間切り盛りしている青山絹子さんは山岳警備隊など厳しい仕事に従事する人々を胃袋から支え続けている。 ▽人気劇団のランチは、元フランス料理シェフがつくるボリュームたっぷりの絶品まかない。 ▽やなせたかしさんが愛したパスタ。
出演者
【語り】中井貴一

ジャンル :
情報/ワイドショー – グルメ・料理
バラエティ – 料理バラエティ
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:29880(0x74B8)