オイコノミア「“0円”のナゾ」(前編) 2014.09.17

大竹先生街の中にこんな場所があるんですね!そうですね!静かでいいですよね。
うん。
都会の中のオアシスといった感じですよね。
まさにそんな感じですね。
大竹先生と又吉さん都会のあるお寺にやって参りました。
実はこちらのお寺本堂の前のテラスをオープンスペースとして広く一般に開放しているんです。
もちろん利用料はタダ。
知る人ぞ知る都会のフリースポットなんです。
意外に落ち着きますね!これは。
そうですね。
そう。
今日のテーマはあなたも私も大好きな「タダ」。
0円の経済学です。
町じゅうにあふれる0円。
消費者にはとってもありがたいのですがなんで0円でもうかるのか不思議じゃないですか!?今夜の「オイコノミア」は0円の持つパワーとナゾに迫ります!
(テーマ音楽)
(半鐘の音)又吉さん。
はい。
これはね番組スタッフが渋谷駅周辺で集めてきたものなんですけど。
はいはい。
全てタダで配られてたんですよ。
えっ!?全てタダですか?はい。
なるほど。
やっぱり季節柄うちわが多いですかね。
うちわもありますよね。
水なんかもあるんですよ。
水も多いですね!これはねなんか環境省が熱中症対策ということで配布しているらしいんですよね。
へぇ〜!あとはティッシュもありますし。
ちょっと試せるようなものが。
ねえ。
へぇ〜!こんなにいろいろあるんですね。
そうですね。
8月上旬の1週間に渋谷駅の1km圏内でもらってもらってもらいまくりました〜!全部買ったとしたらアハッ2,000円以上かかるんじゃないですか!
(鈴の音)ところで又吉さん。
はい。
このポケットティッシュどうやって生まれたかご存じですか?知らないですね。
このねおなじみのポケットティッシュですが日本生まれなんですよ。
あっそうなんですか!しかもねタダで配ることだけを目的にして作られてるんですよ。
へぇ〜!そうなんです。
ポケットティッシュはタダで配るために生まれたんです。
今から50年ほど前はタダで手に入るものといえばマッチでした。
ところがマッチは暮らしの中で次第に役割を失っていき1968年ポケットティッシュが宣伝のための無料の広告媒体として生み出されたんです。
最盛期には年間30億個以上配られたといいます。
チラシと違って配ってすぐに捨てられることがないので新聞折込の100倍以上の宣伝効果が見込めるといいます。
アハッ!又吉さん私にも1つお願いしま〜す!へぇ〜!でもねこのポケットティッシュ原価はタダじゃないですよね。
そうですね。
これね1,000個で3,500円ですから1個当たり3.5円ですよね。
そんな安いんですか!配る人件費もありますから大体1つ配るのに7円〜8円ぐらいコストかかってるんですよ。
はい。
どうして私たちタダで手に入れることができると思います?これはやっぱり広告としての役目ですよね。
そうですよね。
ちょっと模型で説明してみましょうか。
はい。
もう一個ポケットティッシュあるんですよ。
実は。
大竹先生のもあったんですね!はい。
「オイコ塾」っていう。
へぇ〜!ポケットティッシュは広告を出したいオイコ塾がお金を出して生産者に作ってもらいます。
生産者は広告入りのポケットティッシュを作り消費者にタダで配ります。
広告を見た一部の消費者はオイコ塾へ通い授業料などの形でお金を支払います。
三者が関わってますから「三者間市場」と言われるもので。
これ代表的な0円のからくりなんですよね。
う〜ん。
その仕組み聞いて何か思い出しません?そうですね。
例えばテレビ番組とかですか?そうですよね。
又吉さんが出てらっしゃるテレビ番組多くのものは無料で放映されてますよね。
そうですね。
だからCMを見てそこの商品であったりとかサービスを買う。
…っていう行為がスポンサーに払ってることになると。
そういうことですね。
なるほど。
インターネットの検索サービスの会社などもその一例。
私たちが当たり前のようにタダで利用しているものの多くはこの三者の取り引きで成立しています。
私たちが0円にひきつけられるのはなぜなんでしょうか?教えて!又吉さん。
甘いものはいかがですか?ああいいですね。
こちらどうぞ。
右側は有名なチョコレート会社の高級トリュフなんですよ。
はいはい。
今日は特別に15円で売ってあげます。
15円!?はい。
はい。
左側はどこの駄菓子屋でも買える普通のチョコなんですよ。
はい。
これは1つ1円です。
はい。
又吉さんどちらを買いたいですか?15円と1円。
はい。
どちらを買いたいかですか?はい。
皆さんも一緒に考えてみてくださ〜い。
高級トリュフが1つ15円。
コンビニで普通に買えるチョコが1つ1円だったとします。
あなたならどちらを選びますか?えっ!?これいいチョコですよ。
じゃあこれですかね。
これですかやっぱり。
はい。
かなりお得ですからね。
15円。
はい。
はい。
次は両方から1円ずつちょっと値下げしたいと思うんですよ。
高級トリュフは1個14円になりました。
はい。
普通のチョコは0円。
タダですね。
はい。
又吉さん1つだけ買うとしたらどちらを選びますか?同じチョコレートが14円と0円になったとします。
どちらを選びますか?えっ?ウフフッ。
こっちですかね。
こっちですか?0円の魅力に負けなかったんですね。
1個ですもんね。
1個しか買えないんですよね。
1つが小さいんで。
アハハハッ。
14円分買えるならこっちかもしれないですけど。
あ〜!なるほど。
1つしか買えない。
今1つ食べられるならば…。
15円でこっちを。
ちょっと大きさを合わせてですねこのくらい。
これどうですか?これでこんだけで。
この5つとこれ1個。
これが0円になるんですか?これ0円。
じゃあこっちです。
こっちですか?はい。
これはダン・アリエリーというアメリカの経済学者が2007年に行った実験なんです。
初め高級チョコが1つ15円。
普通のチョコが1つ1円のとき73%が15円の高級チョコを選びました。
次はどちらも1円値下げして普通のチョコが0円になりました。
今度は69%が普通のチョコを選んだのです。
0円になった途端人数が逆転しました!私たちは「0円」と言われるとかなり心を動かされてしまうと。
それは分かりますね。
1円と0円の間には大きな壁があるわけですよ。
無料でないものを選ぶと1円でもお金を払わなきゃいけなくなると自分はまずい選択をしたんじゃないかというふうに心理的な負担を感じるわけです。
でも0円だったら払ってないんだからそれ選んだって何のコストも払ってないんでそんな心理的な負担はなくってとりあえず試してみたらいいじゃないかと思う人が多いんですよね。
0円だとどっちみち0ならもらえるならもらっとこかと。
そうですよね。
0円というのは感情のホットボタン。
引き金を引いてくれて決断を早める効果があるんですよ。
ああなるほど。
「人は0円に飛びつく」。
そんな傾向を利用したビジネスは実は100年以上前からありました。
アメリカの実業家ジレットは朝ヒゲをそるときにひらめきました。
当時のカミソリは刃と本体が一体型のもの。
「切れ味が悪くなったら刃だけを捨てて交換できるようにしたら便利じゃないか」。
こうして発明されたのが刃を交換できるT字型のカミソリ。
しかし新型のカミソリはなかなか売れません。
そこでジレットはカミソリの本体をコーヒーやガムのおまけとして無料で配ることを思いついたのです。
ヒヒヒッ!この無料作戦は大成功!その後ジレットは替え刃を高く売ることで利益を上げていったのです。
なるほど。
まず本体を配ったと。
そうなんですよ。
この商法なんか思い出しません?まず配る。
うん。
携帯電話とか。
そうですよね。
携帯電話そうですよ。
本体0円というのよくあるじゃないですか。
本体0円という形でタダで私たちは手にすると。
はい。
これを開けてみるとほら。
「使用料」。
使うと使用料が発生してその使用料が結局は本体の価格になっていってる。
これはね「直接的内部相互補助」と言われるビジネスモデルなんですよ。
無料で手に入れた消費者が結局最後には何らかの形でお金を支払うという形になってるんですね。
最初に払うお金がタダという事に私たち弱いというのは「現在バイアス」の一種かもしれないですよね。
あとでお金かかるということが分かっていても「今タダ」って言われるとつい飛びつくと。
やっぱり今安いっていう魅力に負けてしまうんですね。
でもタダだとついつい契約してしまうという事ありますもんね。
タダより怖いものはないということですね。
そうなんですよね!2011年に登場し僅か3年で利用者がおよそ5億人に上る無料のアプリケーションソフトがあります。
10代や20代の利用率は8割近く。
この人気の秘密は一体どこにあるんでしょう?今や日本人の2人に1人が利用しているという携帯アプリ会社にやってきました。
僕もよく使わせてもらってます。
あっこんにちは。
ようこそいらっしゃいました。
はじめまして又吉です。
金子智美と申します。
よろしくお願いします。
じゃあ早速こちらにご案内させていただきますね。
このアプリケーションの人気の理由は同じアプリを使用している人同士の通話やメールが全て無料だということ。
ハハハッ!すいません。
通話とかメールいろいろなサービスがあるじゃないですか。
はい。
なぜこれがタダで使えるんですか?はい。
普通の電話だと電話回線という電話の回線を通じてやってますが弊社のアプリではインターネットの回線を使ってやり取りをしてます。
私たちがこのアプリを通して無料で通話できるのは通常の電話回線ではなくインターネット回線を使っているからです。
インターネットの利用料は多くは定額なのでいくら使っても料金は変わりません。
通信会社はこれを「実質無料」としています。
更に人気の理由がもうひとつあります。
「スタンプ」と呼ばれる気持ちを表すイラストをメールと一緒に送る事ができるのです。
イェーイ!でも会社の皆さんのお給料だとか会社の運営費とかお金はかかるじゃないですか。
そうですね。
はい。
それはどこから出てきてるんですか?アプリ自体はもうダウンロードするのも無料ですし基本的な機能は全部無料で使えるんですけれども一部スタンプという大きなイラストのようなものをメールでやり取りできる機能があってそれでちょっと特別にすごくかわいいキャラクターを使いたいとかっていう場合にそのキャラクターを数百円で買えるっていうような仕組みがあったりとか。
あと弊社でゲームのアプリも出してるんですが無料で遊べるものが基本ですがちょっと友達よりも強くなりたいと思ったときにアイテムを少し買ったりというところでそこで支払っていただいたお金が私たちの収益になってます。
基本は無料ですけどオプションで更に楽しもうと思うと有料になってくると。
そうですね。
はい。
そこでうまく…。
そうですね。
そこで私たちのお給料などが発生してますね。
へぇ〜!確かにスタンプとか欲しくなりますもんね。
そうですね。
なんか芸人のスタンプとかもありますもんね。
ありますね。
又吉さんもスタンプになってます。
スタンプといえば感情を表現するやつじゃないですか。
そうですね。
僕のなんか「!?」みたいなすごいとぼけたやつでこういう感じなんやて自分で自分の事がちょっと分かりました。
最近一般の方でもスタンプの絵を描いてスタンプが作れるっていうサービスを始めたんですね。
最近はキャラクターものだとこんな感じの…。
へぇ〜!他にこの辺りが人気みたいですね。
ああなるほど。
オリジナルスタンプが作れると聞いて又吉さんがぜんやる気になったようです。
真剣そのもの。
すいません!はい。
描けました。
あっ描けましたか。
はい。
ドキドキ。
え〜…これです。
おっ!これは…又吉さんらしいですね。
そうですね。
やっぱりペンで何かを書いてるときってすごいさみしいじゃないですか。
お〜!だから1人で寂しいときとか誰か遊んでくれへんかなとかそういう時にこれを書くとただ普通の孤独よりも孤独感が際立つと。
増すということですね。
見た人はかなり遊んでやらなヤバいなっていう。
ハハハハッ。
いいですね。
すごくいいと思います。
いいですか?いいと思います。
なので…。
スタンプってあれ40個で1パックなんですね。
40個そろわないと出せないのであと39個こういう…。
このシリーズを出して描いていただければ。
「絶望」とか描き始めたら僕ちょっと40個描けるけどだいぶ精神的に負担かかりそうな。
そうですね。
明るい方が悲しいっすねでも。
ここ「パーティー」って書いてた方が…。
(笑い声)悲しい!先生僕オリジナルのスタンプを考えました。
はい。
こちらです。
これがスタンプなんですか?はい。
この「孤独」っていう文字を1人で書いてる。
…っていうスタンプ。
はい。
「これほど孤独なんですよ」という事ですよね。
それ孤独なときにみんなに送るんですか?はい。
ギョッとしますよね。
(笑い声)どうしたんだっていう感じになりますよね。
ほっとけないですよね。
はい。
それがねらいなんですか?「ほっとかないで下さいよ。
1人で『孤独』って書いちゃってますよ」っていう気持ちを表してると。
取材したアプリ会社はほとんどが無料のサービスだったんですけど一部有料のサービスもあったんですけど。
それはどのような仕組みになってるんですかね?そうですね。
よくありますよね。
ずっとタダで使っていてもうちょっと使いたいとか言うと有料になっていくっていうのは。
そういうのは「フリーミアム」と言われてるんですよ。
フリーミアム。
分かりやすく言うと化粧品のサンプルみたいなもんですね。
これがフリー。
よくタダで化粧品のサンプルって配られてますよ。
これ使ってみて気に入ってみるとお金を出してプレミアム版を手に入れると。
はい。
化粧品の場合はフリーっていうのを作るのに結構これでもお金かかりますよね。
インターネットの世界だとこうやってコピーしていくっていうのはほとんど無料ですし配布するのも無料だと。
はい。
例えば本を1,000冊作って売ろうとすると印刷代や紙代の他に倉庫代や配送料などたくさんのコストがかかります。
一方インターネットの世界ではコピーすることにも配ることにもほとんどお金や手間がかかりません。
そのため無料で大量のユーザーのもとに届けることが簡単にできるのです。
これね「タンポポの種」。
あ〜!「タンポポの考え」と言われてますが。
タンポポの種って花のあと種ができてそれがフワフワフワフワいっぱい飛んでいってたまたまいい所に着地した種は芽を出すことができる。
だから言ってみたらフリーの商品をどんどんどんどんコピーアプリでダウンロードしてもらって使ってもらって気に入った人が僅かでもいたらすごく気に入ってくれた人がお金を出してくれて元は取れると。
なるほど。
そういう人がですね大体5%ぐらいいたら残り95%の無料会員を支える事ができると言われてます。
5%。
ウェブ上のビジネスというのはタンポポの考え方ということでフリーミアムというのが主流になってきてるんですよ。
う〜ん。
今はこのフリーミアムがインターネットビジネスの主流となっています。
フリーミアムで思い出したんですけど僕10年以上前に小樽に漫才修業に行ってましてその劇場5時以降空いてたんですよ。
そこを支配人に「5時からライブやらせてもらえないですか?」とお願いして毎日やらせてもらうことになったんですけど。
それをタダで0円でお客さんに来てもらいたいと。
なぜならもう劇場に来てないんですよ。
若い人が。
小樽周辺の学生さんを「タダですから」と言ってチラシ作って来てもらって。
最初は「お笑い行かないよ」みたいな感じだったんですよ。
毎日5〜6人声かけて来てもらって。
それ毎日続けたんですよ。
徐々にお客さん集まってきて。
一番最終日とその前の日の2日間だけ有料にしたんですけど有料でもお客さん立ち見が出るぐらい入ったんです。
すごいっすね!だからこれはまさにフリーミアムですよね。
そうですよね。
タダだからっていうのでやっぱりタダの魅力にみんなつられて最初は来ると。
はい。
中にはだんだんファンになる人もいて習慣化していくわけですね。
お笑いを見に行くということが習慣化されたと。
最後はお金を払ってでもお笑いを見たくなったということですよね。
そうなんですよ。
やっぱり若い頃から「経済学芸人」だったんですよ。
いや。
そうおっしゃってくれてるのは大竹先生だけなんですよ。
やっぱり続けていかないと。
そういうことですか。
はい。
だから今日は0円で買うという話をしてましたが次回は報酬ゼロで仕事をするという事を考えたいと思うんですよ。
はい。
0円の可能性を更に掘り下げて0円の先に広がる未来を考えていきたいと思います。
美輪乃湯へようこそ。
2014/09/17(水) 23:25〜23:50
NHKEテレ1大阪
オイコノミア「“0円”のナゾ」(前編)[字]

ポケットティッシュ、水、うちわ…街を歩いていると「0円」で手に入るものがいっぱい!でもどうしてタダなのか。経済学を使えばそのからくりが見えてくる!?

詳細情報
番組内容
ここで質問。1個15円の高級チョコと1個1円の袋入りチョコ。あなたはどちらを選ぶ?経済学者の実験によると7割以上が高級チョコを選んだ。ではどちらも1円安くなったら?袋入りチョコは0円になるため、今度はこちらを選ぶ人が7割に。タダ、となれば人は飛びつく。0円ビジネスは実に100年以上前から存在していた。0円にすることで多数の利用者を獲得し、そこからうまく収益を上げる仕組みが考え出されてきた。
出演者
【出演】又吉直樹,【解説】大阪大学教授…大竹文雄,【語り】朴ろ美

ジャンル :
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:29455(0x730F)