きょうの健康「あなたのしこりの正体は?」 2014.09.17

(テーマ音楽)正しい健康情報を分かりやすくお伝えする「きょうの健康」です。
早速今日のテーマは…まずはこんなケースからご紹介しましょう。
50代の女性Aさんです。
ある日Aさんは右の腕に数cmのしこりを見つけました。
痛みはありませんでしたが気になったので掛かりつけ医を受診したところただの脂肪のかたまりだと思うので恐らく心配ないと言われました。
しかしその後しばらくするとしこりはだんだん大きくなってきました。
心配になったため迷った末別の医療機関を受診したところ悪性の軟部腫瘍と診断され手術で切除する事になったんです。
あまり聞き慣れない軟部腫瘍というものが一体どんなものなのか専門家にお話を伺ってまいりましょう。
整形外科医で軟部腫瘍の診療がご専門です。
どうぞよろしくお願いします。
森岡さんこの軟部腫瘍あまり聞いた事がないんですが一体どういう病気なんですか?簡単に申し上げますと体に出来るしこりの事を総称していいます。
主に皮膚より深い所に出来るしこりを軟部腫瘍と呼びます。
軟部腫瘍には良性と悪性と主に2種類ありまして悪性のものは軟部肉腫と呼ばれたりサルコーマというふうにいわれていわゆるがんの一種になります。
従って発見が遅れると患者さんの命に関わる事があると言えると思います。
この軟部軟らかい部分と書くんですが軟部腫瘍場所はどこになるんでしょうか?軟部とはここに人体の図がありますが脂肪とか血管とか筋肉とか神経といって骨や内臓以外の部分を総称して軟部というふうにいいます。
全身あらゆる所という事ですね。
頭の先から足の先まで存在する組織という事が言えると思います。
ここに出来る腫瘍が軟部腫瘍という事なんですがただしこりといいますと私たちよく触れる事ありますよね。
しこり自体身近ですよね。
そういうものが全て軟部腫瘍という訳ではないんですよね?例えば首の近くにはリンパ腺というものがありますしよくグリグリが触れるという事はあると思うんですがこれはほかの病気が原因で腫れたりしているリンパ腺というものですしそれから乳腺の部分も体にありますがこれはよくあるのが乳がんという事ですがこれは乳房の中の腺組織という所から出来たがんと言えると思いますのでこれは軟部腫瘍には当てはまらないと思います。
そうすると悪性の軟部腫瘍患者さんはどれぐらいいますか?悪性の患者さんは国内の発生率でおよそ10万人に2人から3人程度という事で非常にまれ希少がんというふうにいわれています。
年間およそ1,500人程度の新しい患者さんが発生しているというふうに考えられています。
そうするとがんというとちょっと心配にはなりますが希少なものという事で希少な病気という事なんですよね。
数は少ないんですが種類が非常に多くてこれが一つの問題になります。
悪性腫瘍の場合はおよそ35種類以上。
それから良性のものは140種類以上ありまた悪性の場合はそれぞれで治療法が異なるというのが一つの問題だと思います。
なぜこうした腫瘍が出来るのか分かっているんですか?現在のところは一部の悪性の腫瘍は遺伝子の異常が原因で起きてくる事は分かっておりますが全体的なものまではまだ分かっておりません。
さてこの軟部腫瘍患者が受診の際に問題となるのが次の2点なんです。
こちらご覧下さい。
まず体のどこにでも出来るのでどの診療科を受診するのかよく分からないという事ですね。
そして専門医が少ないという事もあるんです。
確かに体のどこにでも現れるというとどこに受診したらいいか迷ってしまうと思うんですがどうすればいいんですか?おっしゃるとおりだと思います。
この軟部腫瘍を専門にしている科は主に整形外科というふうに考えて頂いてまず軟部腫瘍の専門医にご相談して頂く事をお勧めします。
その専門医はどれぐらいいらっしゃるんでしょうか?全国におよそ200人から300人程度といわれています。
どこに行けば専門医に診てもらえるかという事ですが掛かりつけ医や地域の医療機関を受診して相談して頂く事をお勧めします。
また日本整形外科学会のホームページで骨・軟部腫瘍診断治療の相談コーナーというのが一般公開されておりますのでこちらを参考に…。
今字幕に出ていますが是非ホームページのぞいて頂ければと思います。
さあAさんに話を戻しますがAさんの場合はご自身で異常を感じて受診されたというケースでしたよね。
そうなんですね。
Aさんの場合は体の表面近くに出来ていて自分でも気が付いたという事なんですが例えば体の奥に出来ていたという場合は分かりにくいのではないですか?確かに分かりにくいと思います。
ほかの検査で偶然見つかる場合などがあります。
こちらの写真を見て頂くと上の写真が体の比較的表面に出来ている腫瘍で隆起をしていますので割と分かりやすいと思います。
しかしながらこの下の段にある写真のようにどこに腫瘍があるかといいますとここの部分にあるんですがなかなか表から見えない部分ですと分かりにくいという事はあるかと思うんですね。
それでここの部分ですがこれをこういう面で断面を作って写真に撮ったのがこちらのMRIの写真ですが腫瘍があるのはこの白い部分です。
これが腫瘍になりましてここにあるのが骨です。
中の黒いのは腫瘍がえ死をして黒く写っているだけで腫瘍は先ほどお示しした白い部分が全体が腫瘍という事になります。
こういうのは気付かない…痛みとか出てこないんですか?特にやっかいなのがこのように大きくなっても痛みを伴わない事が多くてある程度大きくなるまでは発見が遅れてしまうケースが後を絶たないという事です。
さて先ほどのAさんのケースですがAさんは最初の病院では恐らく脂肪のかたまりなので心配ないでしょうというふうに言われた訳なんですよね。
ところが悪性だったという事で良性と悪性はなかなか見分けがつきにくいものなんですか?良性と悪性にはいくつかの相違点があります。
良性の場合はしこりの大きさの変化が割と少ない事です。
それから悪性の場合は数週間の場合もありますし数か月で大きくなるというのが悪性の特徴でして比較的短い期間に大きくなるものはやはり悪性を考えて頂きたいと思います。
でも先ほどの話のようにどうしても症状になって痛いとか現れないと放置してしまいがちではありますよね。
痛みを伴わないものが太ももや腕に出来る事が多くて特に背中やでん部や何かに出来ると割と気付きにくいという事があります。
一つの目安としてはここにあります5cm以上ですね。
このようになるものは悪性である可能性があります。
ただし5cm以下であっても悪性の腫瘍である可能性はありますので是非気になるしこりがあれば専門医を受診して更なる検査をして頂きたいと思います。
実際病院ではしこりが果たして悪性の軟部腫瘍なのかどうかというのはどうやってチェックしているんでしょうか?まずはこちらにあります問診と触診ですね。
これは問診で先ほどお話しした腫瘍の大きくなる期間など痛みがあるかという事を伺います。
それから触診で腫瘍の形や大きさを見極める事が必要です。
そのあと引き続き画像検査に移る訳ですがこれにはX線とかMRIとかそのような画像検査がありますがこの軟部腫瘍の診断には先ほどお出ししたMRIというのが非常に有用になります。
このあと確定診断としてはどうしていくんでしょうか?次のステップとしては確定診断のために生検という事を行う必要があります。
これは腫瘍の組織の一部を取り出してくる検査なんですがその方法には針を刺してやる針生検という方法と実際に切開を加えて腫瘍を一部取るという切開生検という方法の2種類があります。
これらの組織を顕微鏡にかけてこの病理診断を行って診断を確定するという事になります。
こうしたふうに調べて実際に悪性と分かった場合にはどんな治療法があるんでしょうか?基本は腫瘍の切除手術という事になります。
手術療法が基本です。
どのような方法で行いますか?ここに図がありますがここにあるのが腫瘍としたならば腫瘍は多くの場合少し周辺にしみ出ている事があります。
従って正常の組織を含めてこういうふうに広めに取ると。
これは広範切除といいますがこのような手術が必要になります。
筋肉に出来たがんでも骨とか脂肪まで含めて切ってしまう訳ですね。
悪性の場合は周辺に細胞が広がっている事があるのでこのがん細胞を残してしまうと再発の原因になったりまたこのがん細胞がある所で手術をしてしまうと切り込んでしまうと細胞が広がって状況が更に悪化するというケースもあります。
では画像を見てみましょう。
実際にこれが手術した患者さんの画像になります。
腫瘍はこの位置にあります。
中が少し黒いですが白く写っている所。
これが骨になります。
この部分の腫瘍を我々が取り除く場合は周辺の筋肉も含めてこのような形で取り除きます。
取り除いたあとの写真がこちらになります。
ちょうどこの位置に腫瘍があった訳ですが腫瘍は取り除かれてその分ここの部分の筋肉が薄くなっているのが分かると思います。
筋肉の機能は保たれているんですか?手術をする際にどの筋肉がどの程度無くなってどれが残るのかというのを我々の方で判断しますのでこの場合は患者さんは筋力…多少の低下はありますが日常生活には問題ないと思います。
では手術のほかにどんな治療法がありますか?悪性腫瘍の場合は手術に加えて抗がん剤の治療が必要になる事があっていわゆる化学療法というふうにいってますがこれが必要になる場合があります。
悪性の場合は肺に転移をするという事がありましてこの転移を防ぐ目的とそれから手術の前に腫瘍を出来るだけ小さくして正常の組織を取り除く量を減らすという意味もあって手術の前に抗がん剤を使う事もあります。
使われる抗がん剤ですが…。
抗がん剤の種類は軟部腫瘍で使える抗がん剤は非常に少ないんですね。
ここに書いてあるドキソルビシンとイホスファミドという2種類のお薬が一般的といわれていまして今ようやく新しいお薬が少しずつ出つつあります。
イホスファミドという薬ですね。
化学療法以外では治療法はあるんでしょうか?放射線治療という方法があります。
放射線治療は手術のあとに腫瘍細胞が取り切れないで残っている可能性がある時に再発を防ぐ目的で手術のあとに放射線治療を行う事があります。
ここまで悪性の軟部腫瘍についてお聞きしたんですが良性の腫瘍で何か注意する事はありますか?良性であっても大きさが非常に大きくなってきて痛みを伴うだとか日常生活に支障を来すような場合にはやはり手術を行う切除をしてしまう事が必要になると思います。
あまり耳慣れない悪性の軟部腫瘍なんですがもう一度注意点をまとめて頂けますか?しこりの大部分は良性であると思います。
心配をし過ぎる必要は決してないんですが何か気になるしこりがある場合には悪性の可能性もありますので是非軟部腫瘍を扱う専門家を受診して頂きたいと思います。
どうも今日はありがとうございました。
2014/09/17(水) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康「あなたのしこりの正体は?」[解][字]

体の皮膚より深い所にできた「しこり」は軟部腫瘍かも。軟部とは全身に存在する脂肪・血管・筋肉・神経などの総称。良性と悪性(=がん)があり、悪性の治療法も紹介する。

詳細情報
番組内容
体の皮膚より深い所にできた「しこり」は軟部腫瘍かもしれない。軟部というのは、内臓・骨・皮膚以外の部分、つまり脂肪・血管・筋肉・神経などの総称。全身のあらゆるところに存在している。このしこり、良性と悪性(=がん)があり、ほとんどは良性。悪性は「軟部肉腫」とも呼ばれ、数週間から数ヶ月で大きくなるのが特徴。体の奥にできた場合は、ある程度大きくなるまで気づきにくいことも。悪性の軟部肉腫の治療法も紹介する。
出演者
【講師】慶応義塾大学講師…森岡秀夫,【キャスター】久田直子,寺澤敏行

ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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