京都地検の女6 2014.09.17

(シャッター音)
(鶴丸あや)はぁ…よしと。
送信と…へへへ。
ああ…フフフ。
ウフフ…。
(メールの着信音)えっ…!?章ちゃん?早っ…フフ。
もう何〜?うん?ひどい…。
(橘ゆき枝)帰って…帰って!
(ゆき枝)帰って…!
(時計の秒針の音)
(ゆき枝)こ…来ないで…。
近づかないで…!
(ため息)
(鶴丸りん)「疲れてるみたいだけどあまり無理しない様にね」お父さん優しいじゃない。
これの何が不満なの?老けたって言ってる。
勘ぐらないほうがいいと思うよ。
う〜ん…。
ねぇいくらなんでも飲みすぎ。
(りん)入れすぎ!だって速効効かせなきゃなんないから。
あだったらいっそエステに行ったら?無理!時間ない!エステに行ったなんてバレたら太田に何言われるか…。
(川井さつき)すいませ〜ん!忘れ物しちゃって…。
(さつき)オーナー?ああっ!い…あ…。
け…け…警察…!警察!あ…ち…違う!ああ…救急車!救急車!
(成増清剛)まったく風呂もゆっくり入れやしねえじゃねえかよ…。
ええもちろんですええ。
うぃっす。
(池内弘二)どうも。
ちょっとすみません。
あ…はい。
(シャッター音)ガイシャはこの店のオーナーで橘ゆき枝32歳。
死後1時間から2時間で犯行時刻は午後8時から10時の間です。
あとこのレシートがそこに落ちてました。
あそこの店員の川井さつきさんの話じゃこれはガイシャのものじゃないと。
橘ゆき枝は今日一日店から離れてないそうです。
じゃあこの店の客が落としたのかもしれねえな。
(さつき)ないわよ!私帰る前に掃除したんだから!
(池内)あ〜ダメダメ…。
…とすると犯人の遺留品か。
プラチナビューティーコースってすぐ効くのかしら?
(阿部)はい。
しみシワくすみむくみやたるみもスッキリ!5歳は若返りますよ。
章ちゃん驚くわねぇ…。
章ちゃん?うん夫。
章ちゃんのために奇麗になりたいの。
京都府警です。
(受付)あ…はい。
このレシートお宅のですよね?ええ…。
お客様の名前わかりますかね?はい。
すごいわぁ!ホントにもちもちしっとりして赤ちゃんになったみたい…ホホホ…。
(受付)会員の佐伯美千代様です。
あの担当者のこの阿部さんにお話伺いたいんですけど。
あ…あ阿部ちょうど終わったみたいです。
阿部ですが何か?京都…。
ん?んんっ!?あ!あれ?ククク…。
朝早くからご苦労さまです。
鶴丸検事様も朝からご苦労さまでございますね。
(舌打ち)
(携帯電話の振動音)成増だ。
うん…?自首?ええ。
名前は佐伯美千代。
着物店「ひとひら」のオーナーを殺したって言ってんですが。
あなたには黙秘権があります。
自分の意思に反して供述する必要はありません。
では始めます。
佐伯美千代さん。
あなたは事件のあった9月28日午後3時からエステティックサロンVILLAVALORISで90分のコースのエステを受け一旦帰宅。
夕飯の準備をしてご主人佐伯清一郎さんを待っていたがなかなか帰らないことに痺れを切らし午後8時すぎに家を出て夫の愛人である橘ゆき枝さんの店へ向かった。
ご主人はすでに帰ったあとだったがゆき枝さんと口論になった揚げ句…。
(刺される音)間違いありませんか?
(佐伯美千代)はい。
ご主人とゆき枝さん2年になるそうですね。
あなたは今まで一度もゆき枝さんの店には行っていない。
それなのにあの夜なぜ行ったんですか?私ずっと我慢してきました。
でももう我慢の限界だったんです!午後8時40分頃ゆき枝さんのお店の近くのコスメショップに立ち寄ってますよね。
警察の調書によれば犯行直後のことだそうですが。
ええ。
店内の鏡の前でしばらく佇んでいたあなたは鏡に映った自分に微笑んだ。
え…?店員がそう供述しています。
「フッと微笑んでいた」と。
人を刺した直後にどうして微笑んだのか…。
私あんな女大嫌い!
(美千代)優しそうな顔して一皮むけばしたたかで計算高くて!猫なで声で人の亭主たぶらかして…!あんな女にうつつ抜かしていいように利用されてる佐伯も情けない!今の設計事務所があるのは奥さんが所長を助けて二人三脚でやってきたから。
我慢の限界でキレたとしても無理はないと皆さんそうおっしゃってますが。
ええキレたんですよ!バカらしくなったんですよ!つくづく。
毎日仕事仕事で頑張ってきたのにあんな女に私の人生メチャクチャにされるなんて…!
(泣き声)
(美千代の泣き声)
(太田勇一)あんな女性を見ちゃうと結婚に夢がなくなるな…。
(斉藤加奈子)ちょっとすごすぎますよね…。
殺人の前にエステに行って犯行のあとで微笑んでるなんて。
フフフ…!エステっていえばよ鶴丸の奴成増警部補とばったり出くわしたらしいぞ。
そのエステで!一瞬ひるんですぐ開き直ったって。
(2人の笑い声)でも鶴丸検事がエステってなんかいいですよね。
親近感感じちゃうなぁ。
冗談じゃないよ。
仕事山ほどたまってるのになんでエステに行けるんだよ!大体なぁ一度出来たシワっていうのは簡単には取れやしないんだよ!無駄な抵抗はやめろってんだ!何が無駄な抵抗ですって?検事…。
今仕事の話してたんですよ。
なぁ斉藤。
さ…。
あ…つまり今回の案件は無駄な抵抗をする必要もないから余計な行動は慎みましょうよっていう…。
太田さん…あなたいつも私が無駄な抵抗をして余計な捜査をしてるって思ってるわけ?ん?決してそんなことは…ちょっと思ってますすみません。
言っときますけど本件について私はまだ納得してませんから。
えっ!?だって被疑者は自首してますし今回の供述でも犯行は明らかじゃないですか。
どうしても気になるのよ。
なぜ彼女は鏡を見て微笑んだの?すごい剣幕で女と亭主の悪口言ってたじゃないですか!ああいう女はね犯行のあとでもニッコリ笑うんですよ。
さこんな案件はパッと片付けて次のに行きましょう次のに。
やっぱり気になるわ…これ主婦の勘!検事!斉藤…気が利くじゃない。
じゃあ太田さんあとはよろしく。
行って参りま〜す。
(太田)こら斉藤。
お前俺の見習いだっ…!裏切り者!この鏡に微笑んでいたんです。
他に何か気づかれたことは?他には別に…。

(加奈子)検事!川井さつきさんお見えになりました。
(加奈子)どうぞ。
わざわざご足労いただいて申し訳ありません。
まだ何か?もう一度確認させてください。
凶器になった断ちバサミはいつもどこにしまってあったのかしら?ああ…そのタンスの下ですけど。
ここですか?ここにしまってあったのを知ってた人は?オーナーと私ですけど…。
調書どおり裁ちバサミを最初に持ち出したのは橘ゆき枝さんとみて間違いない…。
あ…失礼しました。
(さつき)ひどいわ…。
オーナーあの日とても嬉しそうに笑ってたのに。
ゆき枝さんが笑ってた…?夕方着物を着替えて鏡に…。
鏡…。
(さつき)この鏡に。
ゆき枝さん何か嬉しいことでもあったのかしら?多分…。
(さつき)これです。
この記事です。
「新人カメラマンの登竜門大和フォトコンテスト入賞大林亮二さん」?オーナーが昔同棲してた人です。
これオーナーがミス都大路になった時の…。
ゆき枝さんがミス都大路…。
「撮影大林亮二」…。
おはよう。
(加奈子)おはようございます!どうぞ。
あらありがとう。
気が利くわね。
(太田)検事副部長がお呼びです。
いらしたらすぐに来るようにと。
泣きついたんでしょう。
は?「なんとかしてくださいよ副部長。
このままじゃ仕事がどんどんたまって大変なことになります!」そんな卑怯なマネ私がするわけないじゃないですか!何を言ってんですか!そんなことしてませんよ!名誉毀損で訴えますよ!「あやちゃ〜ん何またこだわってるのよ」「さすがにそろそろ起訴しなきゃマズイでしょう」「いや熱心なのはいいよ。
立派」「けどまだ調べ回ってるって?」「何もそこまでやることはないだろう。
ん?」
(高原純之介)あやちゃん何またこだわってるのよ。
さすがにそろそろ起訴しなきゃマズイでしょう。
いや熱心なのはいいよ。
立派。
けどさぁまだ調べ回ってるって?何もそこまでやることはないだろう…。
副部長!「刑事裁判の最大の使命は無実の人を罰してはならない」だと副部長に教えていただきました。
以来その言葉を支えにどんな些細なことでも気にかかる時は徹底的に調べることを課して参りました。
本件についても納得いくまで今しばらくお待ちください。
では。
申し訳ありません。
所長はここ数日北白川の現場に張りついていて連絡したんですが戻れない状態なんです。
わかりました。
じゃあそちらに伺ってみます。
あの…。
佐伯美千代さんですけど最近何か変わった様子はありませんでしたか?感じが変わったんですよ。
感じが…?1か月くらい前からかな…?こう言ってはなんですけどそれまでは仕事で飛び回るのに楽な格好が一番だって全然身なりに構わなかったのにすっかり女性らしくなって…。
女性らしく…。
(佐伯清一郎)もうちょっと寄ってそこんとここう。
(所員)はい。
はいオーケー。
(佐伯)池周りは?
(所員)もう終わりました。
(佐伯)じゃあ離れのほうかかってくれる?
(所員)わかりました。
(佐伯)山田君。
そっち終わったら一緒に合流して向こう回ってくれる?
(山田)はい。
佐伯さんですね?あ…はい。
検事さんですね。
この仕事はあまり時間がないんで手短にお願いしたいんですが。
わかりました。
事件の夜奥様はなぜゆき枝さんの店に行ったのか。
何か心当たりはありませんか?わかんないんですよ。
あの日私はゆき枝に別れ話に行ったんです。
美千代もそれは知ってたはずなんですが…。
別れ話…ですか。
それで?簡単に片付きました。
ゆき枝があっさり承知してくれて。
だからわけがわかんない。
なぜ妻とゆき枝が争ってあんなことになったのか…。
ただ…。
何か?私の帰りが遅いので妻は別れ話がこじれてると思い込んでゆき枝の店に行ったのかもしれない。
バカですよ…美千代は大バカ者だ。
今度の事件でこの仕事危うくキャンセルされるとこだった。
そんな…!奥様より仕事のほうが大切だって言うんですか!
(佐伯)いやそういうつもりじゃ…。
この仕事はねぇ妻が長いこと苦労してようやく手に入れた念願の仕事なんです。
だからいつもは冷静な美千代が自分から何もかもぶち壊すようなことをなぜしたのか…。
ゆき枝さんと大林亮二さんのことは…?知ってます。
いまだにしょっちゅう金せびられてゆき枝が迷惑してましたから。
いやゆき枝は優しい女だからきっぱり断れないんだと思ってましたが…。
何か気になることでも?別れ話にあんなにあっさり応じたのは大林亮二のことがあったからかもしれない。
大林がコンテストに入賞してゆき枝はひどく嬉しそうだった。
これでもう大丈夫。
散々嫌な思いさせられてきたけどこれであの人もカメラマンとしてやっていけるって。
そうですか…。
ゆき枝さんそんなことを。
私はただのパトロンでしかなかったのかもしれない。
そう思うと妙に空しくてね。
真っ直ぐ家に帰る気がしなかった。
なじみのバーで飲みすぎましてね。
私が早く家に帰っていさえすればこんなことには…。
すみませんそろそろよろしいですか?この仕事特別に大事なんで。
あの…。
最近奥様変わられたと思いませんでしたか。
はい?奥様エステに行かれたり髪形を変えたりずいぶんと若々しく美しくなられた。
美千代が…?ええ。
そうですか…。
どうも。
(シャッター音)
(大林亮二)はい帽子オーケー。
次靴。
(スタッフたち)はい。
早く並べて。
(スタッフたち)はい。
いいよ。
もう帽子下げちゃっていいよ。
あれでよくコンテスト入賞出来ましたよ…。
仕事によって手抜きするタイプみたいね。
すみませんお忙しいところを…。
邪魔しないでくれ。
仕事に集中したいんだ。
よく言うわ。
ゆき枝のことは警察に全部話した。
いい加減にしてくれ。
もう少しだけ訊かせてください。
ゆき枝さんと最後にお会いになったのは?10日ほど前だったかな。
じゃあ事件当日はお会いしてないんですね。
しつこいなぁ…会ってない。
コンテストの授賞式とパーティーに出てたんでね。
失礼ですがゆき枝さんから経済的な援助を…。
ああ。
だから死なれて困ってる。
ひどい…!
(大林)どっちにしても佐伯と別れたんじゃ金はせびれない。
もういいだろ。
今日中に撮らないとヤバイんだ。
コンテストに入賞してもこんな仕事しか来やしない。
ったく…。
イヤな奴!女から平気で金せびるような男コンテストに入賞したって簡単には変わらないんですよ!
(美千代)何度同じこと蒸し返すんですか!
(警官)座りなさい!
(美千代)佐伯がなかなか帰ってこないのはまたあの女に甘い言葉で言いくるめられたからだそう思ったら我慢がならなかったんですよ!エステサロンの会員になられたのはひと月ほど前ですよね?ええ…。
なぜ急に?なぜって…。
今まであなたは仕事に追われてエステとはまったく無縁だったとか。
私がエステに行ったらおかしいですか?いいえ。
あなた最近とっても奇麗になられたとか。
女性が奇麗になるには何かきっかけがあるような気がしたものですから。
別に…何も。
では誰のためにエステに行かれたんですか?自分の…自分のためです!自分のため…。
(柿野たまこ)今日は新発売。
かのクレオパトラも愛したというローズの美容エキスがたっぷり入ったローズヒップジュースです。
(客たちの歓声)
(桜井麗子)クレオパトラ…。
ちょっと何これすごいじゃない!
(吉川香織)美肌効果バツグンで人気らしいで!ここ入り…入り…はいはい…。
(客たちの文句)
(漆原さやか)ええやないの…!
(香織・あや・さやか)あぁ〜!
(香織)あ〜これでますます奇麗になって世の中の男どもギャフンと言わさななぁ!女はいくつになっても奇麗でいなくっちゃ!そうよ!でも実際年がら年中顔を突き合わせてたら亭主のために奇麗にしようなんて考えもしないけどねぇ…。
たまちゃんには悪いけどなぁ女が奇麗になるためにはエステよりもたまこジュースよりも好きな男がおらなあかん。
いや〜んそうやそうや!せやからええ男見つけなぁ〜!佐伯美千代は…誰のために奇麗になったのかしら…?
(鐘の音)おはようございます!
(成増清一)こんな朝早くどうされました?成増警部補にちょっと。
今朝は本堂でこれを…。
ああ…。
佐伯美千代どんな様子?なんだよこんな朝早くから…!なんか変わったことない?相変わらずだよ。
亭主と愛人の悪口言い立ててる。
悪口言いすぎじゃない?嫉妬に狂えば人は変わる。
佐伯美千代エステに通い始めたのも何かあったのかしらね…。
うん?主婦の勘か?くぅ〜っ!エステ…!ちょっと…!確かめたいことがあるからここで待ってて!いつまで待たせんだよもう…。
あどうも。
あどうぞ…。
いらっしゃいませ。
あ刑事さん!今日はお肌のお手入れですね。
どうぞ。
いやあの脳みそのねケア…。
ああああ!佐伯美千代誰のために奇麗になったかわかった!ど…どういうことよ!?すみません。
エステってね身も心も癒やされてでついポロッと章ちゃんのことなんかもしゃべってたのよ。
だから佐伯美千代ももしかして…。
(阿部)あそこのお宅もご主人が手掛けられたんですか。
京都の古民家の3割はうちで改修してるわ。
でも難しくないんですか?古い良さを残して住みやすくするのって。
佐伯は古いものの良さは出来るだけ大切に保存しなくちゃって。
あの人その話になるともう夢中で…フフ…。
ご主人の話ばっかり!ご主人を愛してたのよ。
間違いないわ!エステに通って奇麗になったのはご主人のためだったのよ!これ主婦の勘!
(お腹が鳴る音)あやちゃんお腹空いた…。
はい。
いただきます!はいどうぞ。
いやいやいや…。
うんうんうん…。
うんうんうん…うん!うんうまい!そう?
(りん)おはよう…。
おはよう。
うんうん…あ。
な…成増さん!?いやいやあのさ秋ナス!これうまいね!ここの家は食卓に季節感があっていいね季節感が。
成増さんもたまにはいいこと言うわね。
早く食べちゃいなさい。
あお母さんナス紺色の着物大学祭で借りたいんだけど…。
いいわよ。
着物…。
(サイレン)はぁ…ちょっとあとにしてもらえませんか。
この帳場立ったばっかりで猫の手も借りたいぐらい忙しいんですよ。
そこをなんとか。
ね。
お願い!今すぐ見てみたいの!まだ例の件にこだわってんですか。
こだわってますよ。
気になることがあれば私はどこまでもこだわりますから。
いやしかしですねぇ…。
写真だとさよくわかんないのよ。
実際の着物を見てみたいの!ね。
はぁ…おい吉田。
(吉田)はい。
いつもゴリ押しが通ると思わんでくださいよ。
わかってます!
(池内)部屋がふさがってんですみませんね。
あ!これこれこれ…これよこれ。
やっぱり橘の柄だわ。
(池内)どういうことですか?秋に実をつける柑橘系の花は春咲くから着物の柄としては春なのよ。
いやつまりねこの橘柄の着物は春の着物なの!ゆき枝さんは着物のプロよ。
そんなこと知らないはずはないわ。
でも彼女はあの日どうしてもこの着物が着たかった。
わざわざ着替えてたんだから。
どういうことですか?
(打ち合う音)…そうか!そういうことよ!あちょっとこれ持って!持って。
伸ばしてねちゃんと。
(シャッター音)何ぽわ〜んと鏡見ちゃってさぁ。
こっちも忙しいんだからねぇいちいち呼び出すのやめてくんない?ゆき枝さん事件の日の夕方着物を着替えて…。
こうして微笑んでた。
それがどうした。
ゆき枝さん幸せの微笑みだったんだわ。
事件の夜刺されて死ぬなんて思いもしない。
幸せの笑み。
大林亮二を調べ直して。
大林を?そう。
ちょっと見て。
ほら…。
この柄。
これ事件当夜彼女が着てた着物よ。
ほら同じでしょ。
これはねゆき枝さんがミス都大路になった時にタウン誌に掲載された写真。
当時大林はそのタウン誌の契約カメラマンで2人はそのときに出会ったの。
思い出の着物か…。
そう。
橘柄は春の着物よ。
あの日わざわざゆき枝さんがこの着物を着たのは大林が訪ねてくるはずだったのよ。
いやそれはねえな。
ゆき枝さんは大林にひどい目に遭ってんだよ。
なんとか逃れたいって嫌ってた野郎だ。
「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」なんだ?それ。
『古今集』詠み人知らず。
ゆき枝さんは橘柄の着物を着て昔の恋人…大林とのことを思い出してた。
間違いない。
事件の夜大林はゆき枝さんを訪ねてきたのよ!まあいい話だけどね推測だろ。
証拠がねえんだよ。
だからもう一度補充捜査をしてください。
よろしく!よろしくったってあんた…。
検事…。
今日中に片付けていただかねばならない事案です。
…検事!副部長が上からとの板ばさみで困っておられます。
これ以上ご迷惑をおかけしたら申し訳…。
どうして太田さんがそんなこと知ってるの?もれ聞こえてきたんです。
このおしゃべり九官鳥!とにかくよろしくお願いします!
(太田)斉藤次!
(斉藤)はい!次の方どうぞ!
(携帯電話)
(携帯電話)成増さん?どう?それだけ?わかったありがとう。
はぁ…やっぱりあと1日だけなんとか…。
(扉の開く音)あと1日…。
副部長…!「あと1日なんとか待っていただけないでしょうか」「被疑者の真実にたどり着くまでもう一歩のところまで来ています」「よろしくお願いします!」…だろ。
よろしいんですか?副部長!
(高原)刑事裁判の最大の使命は無実の人を罰してはならない。
…はい。
佐伯美千代さん。
あなたは事件の夜コスメショップに立ち寄って鏡に映った自分に微笑んだのは犯行直後だと供述しましたね。
ええ。
でもその微笑みは幸せの微笑みだった。
なぜそんなことが言えるんですか?鏡は女にとって幸せを確認するものです。
不幸な時には見たくない。
つまりあなたが鏡の中の自分に微笑んだのは殺人を犯した直後ではなく犯行前。
いいえ。
ゆき枝さんの死体を発見する前だったんじゃないですか?違います…!あなたはご主人をかばっている。
いいえ!だからわざとご主人の悪口を言ったんですね。
佐伯は関係ありません!私がやったんです!ご主人ゆき枝さんを殺してませんよ。
殺してない…?あなたは別れ話がこじれてご主人がゆき枝さんを刺したと思いとっさに隠蔽工作をした。
でもゆき枝さんとの別れ話はあっさり片付いていたんです。
本当ですか…?事件の日ゆき枝さんもあなたと同じように幸せの微笑みを浮かべていた。
あなたはなぜご主人の犯行だと思ったんですか?ご主人だととっさに思った。
だからかばったんでしょう。
でもゆき枝さん瀕死の状態で私に…!あ…愛して…た…。
(美千代)そう言ったんです…。
そう言ってあの人…!意識が朦朧としてたから私と主人を間違えてるんだって私…てっきり主人がやったと…。
愛してた…。
亡くなる前にゆき枝さんそう言ったんですね?はい。
太田さん!はい!
(走る足音)
(扉の開閉音)事件当夜午後8時半すぎあなたが橘ゆき枝さんの店を飛び出していくのを見たという人が出てきました。
人違いだ。
愛してたの。
ゆき枝さんが亡くなる前に残した言葉です。
事件の夜ゆき枝さんはこの着物を着てあなたを待っていた。
あの夜あなたは間違いなくゆき枝さんを訪ねている。
行ってない!行ってるわ。
あなた私がスタジオを訪ねた時言いましたよね。
佐伯と別れたんじゃ金はせびれない。
だから死なれて困ってる。
あの夜ゆき枝さんに会ってなければ佐伯さんと別れたことを知ってるはずがないんです!あの夜あなたはゆき枝さんにお金を無心したんでしょう?だからゆき枝さんは…。
(大林)佐伯と別れた!?せっかくの金づるとどうして別れるんだよ?いや…。
帰って…帰ってよ!もうあなたとは二度と会いません…!来ないで…近づかないで!いい加減にしろよ!ホントによ…!
(刺される音)うっ…!ゆき枝が悪いんだ!あいつが裁ちバサミを突きつけたんだ!俺を刺そうとしたんだ!まだわからないの?ゆき枝さん自分と一緒にいたんじゃあなたは変われない。
このままじゃダメになる!そう思ったから必死で裁ちバサミを突きつけたのよ!あなたに立派なカメラマンになって欲しかったから!生まれ変わって欲しかったから!最期まであなたを…!愛してたから…。

(大林の嗚咽)
(ゆき枝の声)来ないで…。
近づかないで!ゆき枝…。
《あの日美千代さんもゆき枝さんも幸せに微笑んでいた…》
(鏡の割れる音)事件の夜鏡に微笑んだのはなぜですか?
(美千代)佐伯が不倫をしてると知ってからは地獄の苦しみでした。
佐伯を恨みゆき枝さんを恨みました。
でもあの夜は佐伯がきっぱり別れ話をしに行ってくれて…。
そう思ったら私愛人がどんな女なのか一目見てやりたいって思ったんです。
(美千代)鏡に映る自分を見ていたら思わず幸せがこみ上げてきて…。
ゆき枝さんに勝った…そう思いました。
勝った…ですか。
私ずーっと思ってました。
佐伯は私がいないとダメな人なんだって。
でもゆき枝さんが苦しい息の下から「愛してたの」って私にすがり付いてきた時…。
「負けたんだ私」ってそう思いました。
佐伯の罪を被れば勝てるかもしれない…。
そうすれば永遠にあの人は私のものになる。
この仕事はあなたが頑張って取ってきたものだって佐伯さんおっしゃってました。
決まった時は嬉しかった…。
ご主人…あなたが逮捕されたっていうのに仕事に夢中で冷たい人だなって…。
でも違ったんですね。
25年前です。
京都にはまだたくさんの伝統家屋が残っていていつかそれを改修して2人で京都の伝統を守っていこうねって佐伯が言ってくれたんです。
それもしかしてプロポーズ?フフ…。
私たち仕事もお金もなんにもなくてあるのはただ夢だけだったけどそれでも楽しかった。
やっと設計事務所を持ってどんどん大きくなって…。
毎日仕事仕事でゆとりがなくなって。
それでも私は佐伯のお尻を叩き続けました。
もっと頑張らなくちゃもっとって…。
佐伯が息苦しくなって逃げ出したのも無理はないんです。
(佐伯)美千代。
俺が犯人だとしてもお前を身代わりにすると思うか。
苦労をかけてすまない。
奇麗になったよ。
お前が会社にいないとみんな困ってるよ。
章ちゃん…何してんだろ。
え〜ちょっと色っぽく…。
はい。
(シャッター音)豆…豆ダイエット?毎日豆ばっか。
うわ…。
オーケー。
これでよしと…。
エステで奇麗になったんだもん絶対大丈夫。
まったくご苦労なこったね。
見た目には全然変化なし。
何か言った?いえなんでもありませんよ。
そうそう頑張ってね〜。
最後にこのきな粉をここかけるのね。
ね豆はローカロリーだしそれからファイバーでしょそれにねミネラル…。
(メールの着信音)ヤダ〜章ちゃんったらもう来た〜。
フフフ…。
何?ちょっと…。
え?何?何?ひどすぎる…。
(りん)「やつれたようで心配です。
骨休めした方がいいよ」お父さん優し…。
やつれたんじゃなくてダイエットだもん!もう!こんなに苦労してるのに…!章ちゃんなんでわかってくれないのよ!もういい!焼肉食べに行く!行くわよりん!やった〜!ほら行きましょ行きましょ。
豆なんかいいから。
豆なんか。
ね行きましょ。
今日はあなたのおごりなんだから!豆ダイエット…マメにやらないとねえ…。
いいからほらおごって!なんで俺がよう…。
2014/09/17(水) 15:05〜16:00
ABCテレビ1
京都地検の女6[再][字]

「鏡に微笑む殺人犯!!熟年夫婦が堕ちた罠」

詳細情報
◇番組内容
名取裕子主演▽“主婦の勘”を武器に難事件に立ち向かう女性検事・鶴丸あやの活躍を描く検察ミステリー第6弾!心に響く深い人間ドラマを京都情緒たっぷりにお届けします!
◇出演者
名取裕子、寺島進、益岡徹、渡辺いっけい、蟹江敬三 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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