「NHK俳句」第2週の選者は小澤實さんです。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
今日の兼題は「秋の水」です。
冒頭の句は小澤さんの句?そうですね。
幼い頃伊那谷に住んでいまして田んぼの中だったんですが家の前を農業用水が流れておりましてこういう景色の中で育ってきました。
深い溝をのぞき込んでいるような句です。
小澤少年が感じられた秋の水?そうですね。
はい。
思い出して作りました。
さあゲストご紹介致します。
今日のゲストは装丁家の村俊一さんにお越し頂きました。
ようこそお越し下さいました。
ありがとうございます。
村さんは手がけられた装丁は4,000冊以上という事で俳人の皆様にも随分…。
大人気の装丁家です。
そしてご自身も俳句を作られるという事で最近また句集を。
最近「拔辨天」という第二句集を出されまして幻想的な鮮やかな幻想俳句をたくさんお作りになってます。
ぜいたくな装丁で中身も活版印刷で組まれているこんな大きな活字で。
ぜいたくな一冊になってますね。
大きな字ですね。
この大きな字にやはり誇りが出てますよね。
そうですね。
好きなんですね。
小さい字よりね。
活版らしくて。
そして私たちの前には手がけられた装丁の数々並べさせて頂きましたけれども本当ごく一部ですけれども。
ご自身俳句と装丁は共通点もあるとおっしゃってますね?俳句は言葉を重ねる訳ですね。
それから装丁は文字とか写真それから絵とかそういう複数の要素を合わせるんですけどもやっぱり絞り込んでいく時にいろんなものを捨てなきゃいけないというとこが俳句なんかもそうですね。
あんまり言葉がだぶったりとかそういうふうにするとイメージがばらばらになっちゃいますのでどんどんどんどん捨てていって完結するというとこがちょっと似てるかなというふうに思います。
小澤さんの句集もね?作って頂いて。
というお二方ですが実は出会いはとても衝撃的だったそうですね?そうですね。
驚きました。
どういう感じだったんですか?教えて下さい。
さるバーで夜出会ったんですが僕はちょうどたまたま小澤さんが当時出された小さいブックレットですねそれに小澤さんの俳句と写真が載ってる。
それをちょうど買ったばっかりでかばんの中にしまって読んでたんです。
そしたら小澤さんがその店に入ってこられてそれであっと思って。
びっくりされましたでしょう?びっくりしましたね。
ちょうど読んでたとこでしたからね。
即興の句を作って。
作って頂いて。
サインさせて頂いたんですけども。
大事に取ってあります。
そういう出会いから時々句会もご一緒に?そうですね。
少人数の題詠の句会を楽しんでますね。
4〜5人でこぢんまりとやってます。
今日もご一緒によろしくお願い致します。
後ほどご自身の句をご紹介頂きます。
それでは入選句ご紹介してまいります。
まず1番です。
「秋水」は秋の水の派生季語です。
これこの句を例えば「秋の水」でやりますと上五「秋の水」下五「底の魚」というふうに同じ感じになってしまいます。
「の」が入る名詞という事で。
それで「秋水や」に変えらえて見事に決まりました。
「秋水」で「魚」を詠んだ句たくさんあったんですが「身を翻す」というその動きを詠まれたのが大変すばらしかったですね。
やっぱり「翻す」が鮮やかだと思います。
魚の動きがよく出てると思います。
透き通ってる感じも…。
出てますね。
では2番です。
取り合わせがとても感覚的で秋の水の澄んだところに少年のボーイソプラノの声を感じ取って響き合っているのを感じているというのはすばらしいですね。
何か女性のソプラノは「春の水」に合うような…というような事も連想しましたけども。
ちょっと西洋的なにおいがしますよね。
それがちょっとロマンチックでいい句だなと思いましたね。
では3番です。
「秋の水」は静かな水の状態を詠んだ句が多かったです。
その中で騎馬を渡らせて蹴散らせて水が跳ね飛ぶような動的な「秋の水」は大変珍しくて頂戴致しました。
勇壮な光景ですね。
おっしゃったように動きもあるしちょっと従来の「秋の水」と違うイメージが面白いと思いますね。
軍記物の中の一景のような感じもします。
合戦をね…川中島の…思い出しますよね。
では4番です。
澄んだ秋の水をのぞき込みながらかつての恋の事を回想してるんでしょうね。
もう会えない人それから自分から会わない人そのさまざまな恋のありさまを想像する事ができます。
人を思う季節の味わいという事…?そうですね。
人恋しくなる感じがありますよね秋の水には。
では5番です。
須原宿は中山道木曽の宿場町の一つなんですが。
山から流れてきた水が木舟に溢れている訳ですね。
それを生活用水に使っている訳でしょう。
「秋の水」を木舟に溢れさせる事によって見事に見せています。
よく見えるのがいいですね。
それも流れている。
新鮮な水が印象的です。
本当にきれいな水なんでしょうね。
飲んでもおいしいですね。
飲めますね。
これはね。
では今度は6番です。
おいしいお菓子屋さんだと思うんですよね。
秋の水はその店の前を流れているのかそれとも湧き出している井戸水を原料にして和菓子を作っておられるのかいろんな事も想像できますけども。
「白いのれん」と「秋の水」で新鮮を感じさせておいしい菓子を想像します。
上品な味のね。
おいしそうな。
甘いものは?もう目がないんです。
お酒も?はい。
両方。
今度は7番です。
「水の秋」というのも「秋の水」の派生季語でこれは広い水の上に秋が来ているという感じがします。
湖のほとりでクレー射撃をやっているんでしょうか。
よく音が水の上に響いている感じがします。
射撃音だとかこの「クレー」…素焼きの皿が割れている音だとかそれがよく響いてきますね。
空気も非常に澄んでるのか?澄んでましょうね。
「谺」がいいですね。
谺の「こ」とクレーの「く」かきくけこのこの音がね。
K音が響いてますね。
何か内容によく合ってますよね。
今度は8番です。
これ自分が焦がしちゃった鍋なんですがご主人が磨いてくれてる訳ですね。
いいご主人ですね。
相当いいご主人ですよね。
それを当然のように「夫が磨くや」とおっしゃってるのが楽しいですね。
生活の喜びが詠まれてるんじゃないでしょうか。
生活感がよく出てていいです。
ちょっと昭和の感じもしますし。
何か懐かしいね。
小澤さんこういう事はどうなんですか?あんまりなさらない…?いや〜あの…したいですね。
こういう事。
進んでしたいところですね。
進んでね。
でもこういう生活の水としての「秋の水」こういう使い方は大丈夫ですか?ええ。
こういう使い方も僕は面白いと思いますね。
自然の水もそうだし生活の…台所の水も「秋の水」で詠んでみたいと思ってます。
少しもう冷たくなってきたような。
ええ。
触るのが気持ちよくなる水ですね。
では9番です。
今までは楽しい句ばっかりだったんですがこのちょっとつらい句ですね。
除染をしなければいけない福島県の句なんですが。
澄んだ秋の水を使って除染をしなければいけないというのがつらいですね。
特に澄んでいるからこそそんな思いがにじんできます。
まだまだ終わってない。
まだまだ続いている訳ですね。
そういうものともまっすぐ向き合って作っていらっしゃる姿勢に打たれます。
以上が入選句でした。
では続きまして特選三句をご紹介する前に「俳人のことば」をご覧下さい。
緑の草木という生命力に溢れるものと一弾によって訪れる死を対比させた一句です。
響く1発の銃声。
残響のあとの無限の静けさ。
上智大学文学部に入学した五千石は2年生の時に過度の神経症に悩まされました。
下宿が飛行機の航路にあたっていたため「その爆音が空襲の死の恐怖と結び付いていた」と後に語っています。
静養のために帰郷した時句会で出会ったのが俳人秋元夫死男です。
一時期俳句をやめていた五千石は長時間丁寧に質問に答えてくれた秋元によって心が癒やされ俳句に生涯をかける決意をしました。
(上田)秋になりますと空も澄んでまいりますが水はいよいよ澄んでまいります。
あまりにも澄み切ってしまうと水が壊れるんではないかと。
人間の精神なんかもそんなもんであんまり澄み切ってますと張り詰めてますと傷つくんじゃないかなと。
澄み切った水に自分の心を重ね合わせて詠んだ一句です。
それでは特選句です。
まず第三席はどちらでしょう?駒野目信之さんの句です。
二席の句です。
森正美さんの句です。
一席はどちらでしょう?北澤延久さんの句です。
この句の音も魅力的でした。
「秋水」と「須原宿」というS音がよく上五下五響き合って秋の水の勢いが澄み切った流れが見えてきます。
以上が今週の特選でした。
ご紹介しました入選句とそのほかの佳作の作品はこちらのNHK俳句テキストに掲載されます。
俳句作りのためになる情報も参考になさって下さい。
続きまして「入選の秘訣」です。
ここを変えれば入選していたというあと一歩をクリアーするポイントを教えて頂きます。
今日は「重複」という事を考えてみたいと思います。
俳句というのは五七五非常に短い詩なのでそこには重複を避けたいところですね。
この句を挙げてみましょう。
非常によく見てますね。
川の面に鯉がいてそして餌を求めて顎を水の外に出しているというところなんですが。
この「顎」まで詠まれたのがよかったと。
しっかりご覧になってよかったと思います。
ただこの句は「秋水」という部分と「川」という部分がちょっと重なってるような気がしまして。
ここは「川」を消してしまった方が「鯉の顎」がしっかりと見えてくるのではないでしょうか。
それで「川」をこの際取ってしまいましょう。
そうしまして…。
よりすっきりしますね。
そして「鯉の顎」により集中する事ができると思います。
今日は重複を避けるという事をお話しました。
ありがとうございました。
それでは投稿のご案内です。
小澤さんこの「神の旅」これは?旧暦10月に日本中の神様は出雲に集まる訳ですが。
全国的には神無月ですが出雲に集まる?ええ。
出雲は神在月になる訳ですよね。
その神様が旅をしていく途中の様子を思い浮かべて作って頂けるといいですよね。
どんな神様なんだろうどんなふうにして旅をしていくんだろうそして自分はその神様をどう送っていくんだろうと。
神様の事を詠んでもいいですしさまざまなものと取り合わせても面白いでしょうね。
どうぞ参考になさって下さい。
それでは小澤さんの年間のテーマ「季語について考えておきたいこと」という事でお話を伺います。
今日は「歳時記」についてお話したいと思います。
俳句を作っていくためには季語が載っている本「歳時記」というものはどうしても持って…。
欠かせないですよね?欠かせないものですね。
是非活用して頂きたいというお話をしてみたいと思います。
「NHK俳句」では兼題を出してそれを作って頂いています。
今日は例えば「秋の水」。
「秋の水」ですね。
その題を知ったらまずその「秋の水」のページを開いて頂きたいと思います。
そしてまず解説を読んで頂きたいですね。
その解説は秋の水の事が書いてある訳ですが俳句を作る時にその解説の言葉から発想はしないでほしいと思うんですよ。
一物仕立の俳句を作る時というのはついついその解説から解説の内容で句にまとめてしまう事が多くてご投句にも割と多いんですけれども。
それは「秋の水」という季語を説明している事にすぎなくなってしまうんですよね。
「秋の水」の中には解説の内容も入っている?その一語の中に含まれているという事ですよね。
それを理解するという事がとても大事だと思います。
まさに先ほど「重複」…。
重複という事ですね。
それを考えて頂きたい。
それからそのあとに例句が出てまいります。
例句がいくつも並んでいますがそれも大事に味わってその季語の特徴を考えて頂きたいんですが。
こちらです。
この句を見ると魚の眼がするどくなった秋の水であると。
魚の眼がするどくなったという事は見えてますよね。
よく見えてる。
ですからこれは昼間の句である。
時間は昼間である。
それから川べりの句であるという事が分かりますし水はよく澄んでいるという性格も分かります。
例句によって季語の特質を学ぶという事も大事な事だと思います。
なかなか作れなかったりしてもとにかく「歳時記」を見ると?ええ。
スランプの時には特に「歳時記」を開いてもらいたいですね。
さあそれではここで「秋の水」という事で村さんにも1句ご自身の句を紹介して頂けますでしょうか?これはどういう句ですか?「龍雨」というのが増田龍雨という俳人ですね。
明治の生まれのちょっと古い人なんですけども。
渋い俳人出してきましたね。
江戸俳諧の流れを引く人でちょっと古風な句風だったんですけども。
吉原の妓楼で働いてた事がありまして。
会計をやってた訳ですね。
ちょっとそういうエピソードがあるものですからそれを思い浮かべてちょっと吉原のお店の前の打ち水かなと思ったんですが打ち水だとちょっと夏っぽくなりますけど。
でも「吉原」と「水」というのが何かちょっと合うんじゃないかなと思って作らせて頂きました。
それにしても「秋の水」という事で兼題で詠むという事についてはいかがですか?句会ですけどね。
兼題で作らないともうどうしても季語が自分の好みで偏ったりしますので句会で兼題によって俳句を作るという方がやっぱり句の作り方が広がってきていいんじゃないかなと思います。
仲間が同じ題を考えてきてそれで出すという事も楽しい事ですよね。
批評をし合うという事があるのでやっぱり何かつながりが深くなっていって面白いですね。
それぞれが深く考えてきてその結果句を出してそれをまた合評し合うという事で。
話が深まっていきますね。
そうですね。
そして座が生まれるというところがありますよね。
やっぱり座の文芸というふうに芭蕉以来ずっとそういう俳句の…。
これはすごくいい面じゃないかと思いますね。
じゃあもし句会がなければどうですか?だからずっと1人で僕なんか作ってきましたからやっぱり苦しくなる時があるし。
やっぱりだんだん作らなくなるんじゃないかなというそんな感じしますね。
句作というのは苦しいものですよね?苦しい句作になってしまう?ええ。
1人でやってると。
1人でやってるととっても苦しいのでご覧になってる方もお一人で作って出されているというのはとっても大変な事。
今この番組をご覧になってる方。
そうなんです。
それいつも心配してるんですけれどもなんとか句友を見つけて。
集まってという事がね。
集まってやる楽しみを知って頂きたいなとも思うんですけれども。
終わったら必ずお酒でまた交友を深めるというそういう楽しみもありますから。
その時もまた俳句を話題にして。
肴にしてね。
本当に俳句をする楽しみはその辺にありますよね。
本当そうですね。
本当やっぱり句会の効用といいますか座ってやっぱり大切なもの…大きいという事なんですね。
私も座で学んできたような気がします。
句会で全ての事は教わってきたような気がします。
1人じゃないというね。
みんな一緒。
俳句のいいところだと思います。
仲間がいる。
ありがとうございました。
それではここで皆さんにお知らせです。
今日は装丁家の村俊一さんと共にお伝え致しました。
今日はどうもありがとうございました。
それでは今日はこの辺で失礼致します。
ごめんください。
2014/09/17(水) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK俳句 題「秋の水」[字]
選者は小澤實さん。ゲストは装丁家の間村俊一さん。これまで4000冊以上の本を装丁したという間村さん。自身も第二句集を出版したばかり。俳句も装丁も引き算だという。
詳細情報
番組内容
選者は小澤實さん。ゲストは装丁家の間村俊一さん。これまで4000冊以上の本を装丁したという間村さん。自身も第二句集を出版したばかり。俳句も装丁も引き算だという。桜井洋子アナウンサー
出演者
【出演】間村俊一,小澤實,【司会】桜井洋子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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