NHK高校講座 物理基礎「動いている物体の持つエネルギー〜運動エネルギー〜」 2014.09.17

これはオーストラリアにある巨大なクレーターです。
円形に連なる山々が隕石の衝撃を物語っています。
クレーターを作ったエネルギーが今日のテーマです。
隕石は衝突する時持っている巨大なエネルギーを使って仕事をします。
エネルギーの正体は運動エネルギーです。
(熊谷黒田)こんにちは。
花のKKコンビ。
黒田有彩です。
熊谷知博です。
いや〜位置エネルギーの次は運動エネルギーか。
ちょっと!その運動じゃないよ。
物理の運動。
隕石からすっごいエネルギー感じなかった?確かに感じたよ。
すごいクレーターだったね。
そのクレーターを作ったエネルギーについて今日は学習しましょう。
こちら。
動いている物体の持つエネルギーはどうやって求めるのでしょうか?そして運動エネルギーで考えるとどのような現象が分かるのでしょうか?熊谷君この箱に仕事をして下さい。
うん。
うんそうだね。
今熊谷君は手で押す事でこの箱に仕事をしたよね。
じゃあ次は私が…。
見ててね。
いきま〜す。
今この台車が箱に仕事をしたよね。
そうだね。
という事はこの台車がエネルギーを持っていてそのエネルギーがこの箱に仕事をしたって事になるよね。
うん。
このように…運動エネルギーの例で分かりやすいのが…あれは球を転がしてピンを倒してるから…ボールの質量やスピードによってピンの倒れ方違ってくるよね。
あ〜そっか。
じゃあ隕石は地球にすごいスピードで衝突してあんなに大きなクレーターを作っちゃうんだからすごい運動エネルギーなんだね。
そういう事なの。
今回運動エネルギーについてお話し頂くのは野口禎久先生です。
先生よろしくお願いします。
(野口)よろしくお願いします。
動いている物体の持つエネルギーの事を運動エネルギーといいます。
これは…台車を使って詳しく説明しましょう。
運動している物体は何かに衝突するとその物体を動かしたりあるいは変形させたりする事ができます。
動いている台車は仕事をする能力つまりエネルギーを持っているといえます。
ではその運動エネルギーを表すにはどうすればいいか考えていきましょう。
運動エネルギーの大きさにはどんなものが関係しているでしょうか?スピードですか?そうですね。
熊谷君が先ほど隕石はすごいスピードだからすごい運動エネルギーだと気付きましたね。
スピード速さです。
それでは運動エネルギーの大きさと速さの関係を調べてみましょう。
台車を使って運動エネルギーと速さの関係を調べます。
実験に使用するのはこの装置です。
アルミで出来ている軽い杭が動きその移動距離でされた仕事が分かりぶつけたものの運動エネルギーをはかる事ができます。
杭にこの台車を衝突させます。
台車の先には棒が付いていてこの棒が速度計を通過すると台車の速さがはかれます。
それでは装置に台車をぶつけてみましょう。
この時の速さは0.76m/s。
杭の移動距離は0.8cmです。
次に速さを大きくしてみます。
速さは1.54m/s。
杭の移動距離は3.1cmでした。
速さがおよそ2倍になると杭の移動距離が4倍になりました。
つまりは運動エネルギーが速さの2乗に比例している事が分かりました。
…という事が分かりました。
では熊谷君隕石の運動エネルギーはスピードが速い事ともう一つすごいエネルギーだと感じる要因がありませんか?隕石の大きさですか?そうですね。
質量です。
物体の質量と運動エネルギーの関係についても調べてみましょう。
続いては台車の質量を変えて運動エネルギーとの関係を調べます。
まずは台車1台の時。
速さは1.01m/s。
杭の移動距離は1.4cmでした。
次に台車を2台にします。
これで質量は2倍になりました。
1台の時と同じ速さで衝突させます。
速さは1台の時とほぼ同じ1.06m/s。
杭の移動距離は2.9cmでした。
同じ速さの時質量が2倍になると杭の移動距離もおよそ2倍になる事が分かります。
運動エネルギーは速さvの2乗に比例し質量mにも比例するという事が分かりました。
では運動エネルギーがmとvでどのように表されるか考えてみましょう。
位置エネルギーを考えた時みたいに仕事=力×移動距離で考えればいいんだよね。
そうだね。
それに速さvの2乗に比例して質量mに比例してるからmvが入るって事が分かるよね。
そっか。
では質量mの物体が速さvで運動している時の運動エネルギーを考えてみます。
この図は台車が箱に衝突し静止するまでを表しています。
運動エネルギーは物体が静止するまでにする仕事の大きさですね。
箱に衝突した速さv質量mの台車が動摩擦力に逆らって箱を距離だけ押して静止するまでに箱にする仕事Wを求めてみましょう。
ではまずW=Fの距離を求めるにはどうすればよいか考えてみましょう。
距離を求める時はあれの面積を求めるとよかったよね。
あっそうだ。
v−tグラフだね。
そうそうよく覚えてたね。
この場合は静止するまでのv−tグラフだからこの三角形の面積を求めればいいよね。
高さは始めの速さv。
そして底辺は止まるまでの時間だよね。
減速する加速度の大きさをaとすると速度は単位時間あたりaずつ減少します。
という事は止まるまでの時間はとなります。
そしてこの加速度も運動方程式を思い出して求めてみましょう。
運動方程式はma=Fだからa=か。
そうそうそのとおり。
これを代入すると静止するまでの時間はとなります。
これを計算するとv−tグラフの面積は…そこで最後にこのを用いて台車がした仕事を求めると…従って運動エネルギーEkは…スピードの出し過ぎは危険!これはまぁ当たり前の事ですがどうして危険なのか?これを運動エネルギーで説明する事ができるんです。
皆さんは制動距離って聞いた事ありますか?乗り物のブレーキが効き始めてから止まるまでの距離の事なんです。
先ほどの実験で…という事は乗り物は速さが速ければ速いほど止まるまでの移動距離は速さの2乗に比例してどんどん長くなります。
しかも自転車や自動車の場合人が障害物を察知してブレーキをかけるまでの時間も必要とするんだからより距離は伸びて危険が増すんです。
私は自転車でしか体験した事がないですが自分が思っているよりもスピードを出した自転車は急停止できない事が分かります。
改めてスピードの出し過ぎには注意!運動エネルギーで考えるってどういう事?運動エネルギーの大きさの変化を考えるといろいろな現象が見えてくるって事。
ここに質量1kgの静止した台車があります。
これを1Nの力で…。
0.5m引っ張った時の速度はどのように求めればいいのか分かりますか?
(ブツリン)台車は静止した状態から仕事をされた事で速度を持ったよね。
された仕事は計算すると0.5J。
じゃあ台車の速度はいくつになったのかな?実は……という大切な関係があります。
一般に質量m速さvの物体に大きさFの力が加わって力の向きにだけ移動して速さがvになった時mvから始めのmvを引いた運動エネルギーの変化が物体に働く力がした仕事W=Fに等しくなります。
つまり物体の運動エネルギーは外部から仕事をされるとその分だけ増加をします。
逆に物体が外部に仕事をすると運動エネルギーが減少します。
はい。
という事は台車の運動エネルギーも静止した状態から仕事をされた事による変化を考えればいいんだよね。
うん。
台車がされた仕事は0.5J。
速度vは0。
質量は1kgだからこれを式に代入して計算すると速度vは1m/sだね。
この式は物体の運動エネルギーの変化と物体がされた仕事の関係を表している重要な式です。
しっかり覚えておきましょう。
(2人)はい。
今日作ったのはこれ。
長さの異なるストローを用意してくっつけます。
赤い竹串を長いストローに。
緑の竹串を短いストローにセットして吹くと竹串が飛びます。
じゃあ熊谷君どっちの竹串が高くまで飛ぶと思う?それはやっぱ長い方が高くまで飛ぶだろうから赤い竹串の方じゃないかな。
どうかな?じゃあちょっとやってみて。
うん。
じゃあいくよ。
ほらやっぱり赤い方が高く飛んだね。
そうだね。
じゃあどうして赤い方が高く飛んだと思う?えっ?はい。
これも運動エネルギーで考えてみましょう。
この場合同じ力で吹いていますが短い方はこれだけの距離しか仕事をされていませんが長い方は倍近くの距離仕事をされています。
そのため長いストローの棒の方がほぼ2倍の運動エネルギーで飛び出すのでより高く飛ぶという事になる訳ですね。
じゃあ最後に物体が止まるまでの事を運動エネルギーで考えてみよう。
熊谷君このおもちゃの車を走らせて止まるまでの距離を考えてみよう。
さっき「有彩の手ほどき」で出てきた制動距離だね。
そのとおり。
このおもちゃの車にはこのようにスキーのような板がついていてレールの上を滑らせると一定の動摩擦力によって止まります。
速度は距離0の位置に速度計を置いてはかれるようにしてあります。
ではまずこちらの問題をご覧下さい。
おもちゃの自動車が止まるのはどこでしょう。
自動車の質量は…動摩擦力の大きさをばねはかりではかると…。
およそ…では実験開始です。
自動車を滑らせます。
ストップ!速度計の数値はいくつだったかな?1.95m/s。
という事はこの自動車どこで止まるのか?熊谷君分かるかな?分かるかな?熊谷君。
さっき習った……っていう考え方を当てはめればいいんだよ。
そっか。
この場合のされた仕事は動摩擦力による仕事ですよね。
そうですね。
しかしここで注意する事があります。
移動の向きと逆向きに力が働くと減速します。
今回の自動車も動摩擦力によって止まります。
従って運動エネルギーは減少しているのでその変化も負となります。
ですから熊谷君動摩擦力によってされた仕事も負で計算しましょう。
はい分かりました。
最後は止まっているから…それで最初の仕事mvは0.346kgと1.95m/sを代入するから…そうそう。
計算するとおよそ0.658J。
これを公式に代入して…。
この場合の動摩擦力はマイナスで考えるから…距離はだから…そうだね。
式が完成したらあとはの答えを導けばOK!大体1.2。
よし。
は大体1.2mになりました。
はいご苦労さまでした。
それでは正解を見てみましょう。
(ブツリン)では正解です。
自動車を滑らせて止まりました。
移動距離は1.15m。
およそ1.2m。
熊谷君正解!速度や加速度の場合は向きがありましたが…これまでの実験で見たように物体が正の仕事をされると物体の運動エネルギーが増加し負の仕事をされると運動エネルギーが減少するという事になるのです。
正か負かって聞かれるとついつい向きを考えちゃうけどね。
目に見えないエネルギーの感覚をしっかりつかんでおこうね。
うん。
それでは皆さんさようなら。
さよなら。
運動エネルギーの大きさはmvで求める事ができます。
物体の速さがvからvに変化する時運動エネルギーの変化は物体がされた仕事に等しいという関係が成り立ちます。
すなわち運動エネルギーはされた仕事の分だけ変化します。
2014/09/17(水) 14:20〜14:40
NHKEテレ1大阪
NHK高校講座 物理基礎「動いている物体の持つエネルギー〜運動エネルギー〜」[字]

動いている物体が持っている仕事をする能力を運動エネルギーという。(1)動いている物体の持つエネルギー(2)運動エネルギーを式で表す(3)運動エネルギーで考える

詳細情報
番組内容
落下してきた隕石は、地表に大きなクレーターをつくる。このように動く物体の持つエネルギーのことを運動エネルギーという。運動エネルギーの大きさは,その物体の速さの2乗と物体の質量に比例している。Ek=(1/2)mv2〔J〕で表される。番組では、台車の実験を通して学習していく。【講師】野口禎久(東京都立立川高校教諭)【司会】黒田有彩、熊谷知博
出演者
【講師】東京都立立川高等学校教諭…野口禎久,【司会】黒田有彩,熊谷知博

ジャンル :
趣味/教育 – 中学生・高校生
趣味/教育 – 大学生・受験
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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