今自ら命を絶つ20代が後を絶ちません。
番組に寄せられた死にたいと訴える600通のメール。
そこから見えてきたのは社会で働く時に壁にぶつかり逃げ場を失う20代の姿です。
就職活動で追い込まれブラック企業で過酷な労働を強いられる。
職場ではパワハラに遭い心身ともに追い詰められていく。
「もう疲れたから楽になりたい」。
就職活動中の女性から届いたメールです。
この女性は半年で70社を超える企業に応募しましたが今も仕事は決まっていません。
「シリーズ20代の自殺」。
第2回は社会の入り口でつまずき生きる希望を失う若者たちの姿を見つめます。
こんばんは。
「ハートネットTV」です。
昨日からお伝えしています「シリーズ20代の自殺」。
第2回の今日は就職難やブラック企業など今の社会構造が20代を追い詰めている現状について見ていきます。
昨日に引き続き映画監督の安藤桃子さんとお伝えします。
(2人)よろしくお願いします。
まずはこちらをご覧下さい。
これは番組に届いた600通のメールから「死にたい」という要因をまとめたものです。
多くの20代が就職活動やブラック企業引きこもりの問題など働く事の悩みから追い詰められて死にたいという気持ちに陥っている事が分かってきました。
私今32歳なんですけども自分の20代の時から考えても社会の流れのスピード感がどんどん速まってるなと。
だから追いかけても追いかけてもゴールが見えないマラソンのようなそういうふうに私には今現状見えているんですけれども。
その中で生きづらさを感じている20代が多いんではないかなという事でまずは就職活動の中で死にたい気持ちを募らせている女性を取材しました。
就職活動中の大学生から届いたメールです。
「不安ばかり募って絶望してる。
就活の事が頭から離れない。
怖い。
誰か助けて下さい。
本当に死んでしまいたい」。
メールを寄せてくれた…都内の大学に通う4年生です。
就職活動を始めて半年50社に応募したものの内定は取れていません。
エントリーシート書かなきゃいけないんですけどそうすると頭がぼ〜っとしてきてつらいっていうか痛いし…。
小学生の時からいじめを受けていたあかつきさん。
人に嫌われないよう自分を押し殺して生きてきました。
ところが就職活動では強く自己主張する事を求められます。
面接で「あなたという人間が見えない」と言われ大きなショックを受けました。
大学生の就職内定率はこの3年続けて改善しています。
しかし正社員の職に就ける人の割合はこの20年で2/3にまで減っています。
正社員にならないと暮らしていけないと焦るあかつきさん。
しかし面接官のひと言で死にたいとまで思い詰めるようになります。
番組に寄せられた600通のメール。
死にたいと思うようになった要因をまとめた図です。
就職活動の悩みだけでなくブラック企業での過酷な労働や職場での挫折から引きこもってしまったなど働く事の悩みを挙げた人がおよそ1割に上りました。
幼い頃のトラウマが社会に出る事を更に難しくしている人もいます。
「小さい時に両親が離婚し学生時代はいじめを受けてきた。
今となっては何がやりたいのか分からない。
どんな人間になりたいのか分からない」。
メールを寄せてくれたサリーさん。
高校卒業後地元の警備会社に就職しましたが上司との関係がうまくいかず3か月で退職。
その後何社受けても採用されず無職のまま7年がたちました。
あそこのセブン−イレブンだったりとか…。
(取材者)どうだった?あと向こうのGEOとか。
(取材者)あそこも受けたんだ?うん。
幼い頃から親に暴力を振るわれ学校ではいじめを受けたというサリーさん。
そのトラウマから人間関係を築く事が苦手になり友達を作る事も面接でうまく立ち振る舞う事もできません。
仕事が見つからないだけでなく家族や周囲の人たちに気持ちを受け止めてもらえない事が孤立感を深めています。
近所の人が気遣ってかけてくれる言葉もプレッシャーに感じてしまうと言います。
お店のおばちゃんは多分応援したい気持ちで発言してたんだろうなと思うんですけどものすごく私は大きな悪気はないおばちゃんの発言ですけど時代のずれというか。
これは誰のせいでもなくて。
彼女は本当に一生懸命生きている。
就職したい。
全部トライしている。
だけどおばちゃんはそこは理解しきれないっていうこれ結構象徴的な会話だったなと。
大きなずれがあるんじゃないかなと思いましたね。
その中で自分を責めてしまうという気持ちも生まれてしまうかもしれません。
スタジオには昨日に引き続き小島慶子さんと自殺対策に取り組むNPOライフリンク代表の清水康之さんにお越し頂きました。
(一同)よろしくお願いします。
まずは小島さんに今のVTRの感想を伺いたいんですが。
とってもお二人の姿を見てああ自分だけじゃないと思った人もいたと思うんですよね。
よくねこういう話をすると何かそれは若者が甘えてるからだとかねさっきも悪意なくおっしゃってましたけど高望みしてるからじゃないかとかという意見も聞かれますけどでも人ってみんな幸せになりたいじゃない?そうですね。
仕事に就きたいとかさ就くんだったら自分の希望の仕事に就きたいとかって思う事は自然であって仕事に就けなかったらつらいのも自然な事ですよね。
だからそれが甘えてるかどうかなんて事を言うのに何の意味もなくて。
それより仕事に就けなくて苦しんでる人がそこにいる。
しかも死にたいぐらい苦しんでる人がいるんだったらそれはやっぱりどう考えたってそんな社会おかしい訳じゃない?だからじゃあ何でそんな事が起きてしまうのかというふうに周りが手を差し伸べるべきだと私は思うんですね。
でも彼らが置かれる状況は家に行っても近所に行ってもどこに行っても君の努力が足りないとかそんな事で落ち込むのは心が弱いからだって言われそんな中で持ちこたえられる人なんかいないですよやっぱり。
つまりかつてであれば学校出てればなんとかなるっていう時代がずっと続いていた訳ですよね。
正規の職があって必ずしも望む仕事でないにしてもでも一応安定的に収入を得られるような糧を得る事ができた。
そういう時代がずっと長く続いてきました。
あるいは社会にある種しがみついていればですね何となく自分が前に向かって生きているかのような錯覚に陥る事もできた。
これは昨日よりも今日今日よりも明日の方が社会全体が経済的な成長を遂げていたので。
でも今はそういう時代じゃない。
むしろ昨日よりも今日今日よりも明日の方がどうなるか分からないっていう社会の中でそれぞれが生きる意味だったり自分のやりがいだったりを見つけなければならない。
そういうしんどい状況の中でいわば取り残されてしまう若者たちも決して少なくないというのが現状だと思いますね。
社会がおりのような私もイメージがあってここから外れてはいけないこのとおりにいかなければいけないっていう何か見えないおりがあってちょっと強烈な言い方かもしれないですけど見えない戦争というか戦争が人を殺しちゃうという事であるならば見えないものからの圧力で死にたいと思わせてしまうこの社会。
何か寸分変わらないような気がしてしまって。
こうである人生もありだけどそうでない人生だってありだよって言われないとやってられない時ありますよね。
これだけが人生だって言われたらほとんど人生って思いどおりにならない事の連続だから怖くて前に進めないし一歩でも道をそれたらもうおしまいって思っちゃうじゃないですか。
そういった中で追い詰められて死にたいとまで思ってしまう20代を支えるには何が必要になってきますか?もちろん就労支援仕事をという受け皿を作るという事もそうですしその受け皿にちゃんと収まるというか就労するための支援というのも必要なんですけどこれはそもそも仕事をしたいとか仕事しようあるいは生きていこうって思うようになれるような心理的なサポート。
これを実務と心理的なサポート両輪でやっていく必要があるんだと思いますね。
今の社会の状況で心が傷つき死にたいと思いを抱く20代。
どう支援したらいいのか現場を取材しました。
ご覧下さい。
東京・三鷹市に社会とのつながりを失った若者を支援するNPOがあります。
イベントに向けてダンスを練習する若者たち。
何年も引きこもっていた人。
仕事に行き詰まって孤立している人。
さまざまな生きづらさを抱えたおよそ40人が集まっています。
ここでは利用者がいつでも自由に過ごせるスペースを用意しています。
同じ経験をした人たちが語り合える居場所を作るためです。
でも私本当にちゃんと決めた夢とかないんですよ。
このNPOではベーカリーも経営しています。
利用者が働く練習をするための店です。
まずは安心できる居場所を確保。
このベーカリーでの職場研修で働くための基本を学びます。
その上で地元企業の協力を得て実際の職場で実習。
細かいステップを踏んでいきます。
こうした段階を経て今企業実習に挑んでいる…実習の現場は高齢者の介護施設です。
朝8時半から12時まで。
利用者の身の回りの世話や健康管理を任されています。
藤澤さんが社会とのつながりを失ったきっかけは初めての仕事場で体験したある出来事でした。
建設現場で働き始めた15歳の時…。
現場を統括する親方に繰り返しどなられ暴力を振るわれました。
恐怖心から現場に行けなくなりそのまま退職。
以来人との関わりを避け引きこもるようになりました。
NPOと出会って6年。
階段を上るような丁寧な支援によって藤澤さんは自信を取り戻しつつあります。
介護施設での働きぶりが認められた藤澤さん。
この秋からアルバイトとして採用される事になりました。
8月中旬NPOから実習生を受け入れている企業の経営者たちが集まっていました。
取り組みを始めて2年。
参加する企業は26社にまで増えています。
(山本)親と子どもだけでどうしようかって考えたらね…。
この取り組みに当初から参加している印刷会社社長の山本尚由さん。
実習生を受け入れる事で会社にとってもいい影響があったと言います。
介護施設で実習している藤澤さん。
この日訪れたのは最初に企業実習を体験した地元の保育園です。
(インターホン)「は〜い」。
藤澤です。
「どうぞ」。
当時藤澤さんを温かく迎え入れた…毎日声をかけ家族のように接するうちに藤澤さんの気持ちが少しずつ変わっていきました。
今では困った事がある度に訪れるよりどころとなっています。
今星先生がおっしゃっていたみたいに長い目でって私本当に大事だなと思っていて。
例えば企業の側もあるいは働く人の側も周囲の人もスタートラインが肝心だって思い込み過ぎだと思うんですね。
つまりスタートラインでよりいいポジションを得た人生とそうでなかった人生だったら絶対いいポジションを得た人生の方が安泰なんだ。
だからどんな苦労をしてでもいいポジションにつけって。
でも今言い切れないですよね。
だって正社員でも正社員でなくなってしまう事もあるし誰だって病気になるかもしれないし家族の介護をしなくちゃいけないかもしれないので実はそのスタートラインで全部は決まらない。
スタートラインじゃ予測のつかない事が誰の人生にも起こるという前提でやっぱり考えないといけないと思うんですよね。
山本さんでしたっけね。
あの社長さんが職場に優しさが生まれたっておっしゃってますけど本当は若者に限らず誰だって失敗したり挫折したりいろんな事がある中で働きながら優しさとかね受け入れられてる実感承認とかを得て働いていたいですよね。
大人だって。
私だってそうだもん。
だから若者だけに限った話じゃないんですよね。
これって。
若者に優しい社会は自分にも優しい社会ですよね。
ちょっとずつちょっとずつその人の心に寄り添いながら支援をしているというこれも大きいと…。
いきなりアクロバチックな事をやるのではなくて段階を踏んでしかもその踏み出した段階がちょっとまだなかなかしんどいなと思ったら戻れるというこの卒業しっ放しではなくてまた戻ってくる事ができるってそういう安心感がやはり重要なんだと思いますね。
この頑張りたいという気持ちはある意味この世に生を受けた限り必要とされたい誰かに必要としてもらいたいという思いがあると思うんですね。
人であれば。
だからそういう若者たちの気持ちがちゃんと生かされる場所っていうか。
あと海外なんか行くとワークエクスペリエンスみたいに中学生高校生から職業体験みたいな事をさせてもらったりすると思うんですけどそれにすごく近い環境を研修ができたり話し合える場が設けられたりと。
こういう支援をしてくれる場所って日本にどのぐらいあるんですかね?今それほどまだ多くないと思いますね。
若者の就労支援をやる若者サポートステーションって全国に150か所ぐらいありますけれどもでもそれはあくまでも就労支援がメインの目的であって就労支援に伴って必要となる心理的なサポートだったりあるいはここまで丁寧に段階踏んでというサポートやってる所というのはそう多くないですね。
寂しくなったり孤独になったり死にたくなった時に差し伸べられる手というのがやっぱり少ないと思う。
誰に対しても。
だからもっと人ってそういうふうな気持ちになる事があるよねっていう前提で社会のいろんなステージでそういうサポートに出会いたいですよね。
実はそういういざとなったら駆け込めるようなそういう支援を受けられるような居場所だったりそういう相談機関を用意しておくというのは一見コストに見えるんだけれどもでもそういう所を通して回復する人が増えていけばこれは結果的には社会としても負担は減る訳だし。
さっき小島さんが言ってたとおりこれは若者だけの問題じゃないですよね。
誰がいつ…今若者たちが置かれているような死にたい消えたいとかあるいは仕事が見つからないとかという苦境に立たされるか分からない訳なので。
誰が立たされてもその人がしかるべき支援にちゃんとつながっていけるような受け皿をどう社会で作っていくかって。
それは若者支援を通して少しでも生き応えのあるあるいは生き心地のいい社会を作っていくかという事にもなるしそれは我々の子どもの世代孫の世代だってこの社会で生きてかなきゃならない訳ですから。
何が生きづらさ息苦しさの正体なのか。
どうすればその生きたいという気持ちを成就させる事ができるのか。
やっぱり若者の声にしっかり耳傾けてそこから学んだ事を社会に還元していくという事が重要になってくると思いますよね。
「シリーズ20代の自殺」。
3回目の明日はリストカットなど自らを傷つける自傷行為を繰り返す若者たちの心に寄り添います。
今日はどうもありがとうございました。
2014/09/17(水) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ20代の自殺(2)追い打ちをかける“社会の壁”[字][再]
20代の自殺を考える3回シリーズ。第2回は就職や雇用の問題など、最近の社会状況がどのように『死にたい』気持ちに追い込んでいるかを見つめ、抜け出す道筋を探る。
詳細情報
番組内容
NHKに寄せられた600通にのぼる若者からの『死にたい』というメールから、20代の自殺を考える3回シリーズ。第2回は、就職や雇用の問題など、最近の社会状況がどのように「死にたい」気持ちに追い込んでいるかを考える。さらに、どうしたら“生きる希望”を取り戻し、人生をリスタートできるか?単なる就労支援ではなく、心のケアも組み合わせた取り組みで注目されているNPOの試みを紹介しながら、そのヒントを探る。
出演者
【出演】ラジオパーソナリティ…小島慶子,映画監督…安藤桃子,NPO法人ライフリンク代表…清水康之,【司会】山田賢治
ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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