(望月幸平)
JR東京駅…
東京駅は首都東京の表玄関であり日本各地に延びる国内主要幹線の拠点である
1日に発着する列車の数は東海道東北上越長野新幹線が約850本
特急各種250本
在来線を合わせると約4000本に上る
広さは東京ドーム3.6個分
利用客1日約37万人の巨大ターミナル駅である
駅で働く人間も多い
24時間眠ることのない東京駅にはJR職員関連企業の社員合わせて約1000人
その業務は人目につきにくいところまで多岐にわたることになる
(村尾由希子)副駅長!副駅長!
(小原昇一)おお…。
村尾君か。
何?私今度の人事異動には納得できません。
仕方ないだろう。
それは本社の方針なんだから。
本社に入社した者も現場に出てもらうって…。
それはわかってます。
私はこの2年旅券売り場で働いてきました。
それはいいんです。
いろいろ勉強にもなりましたから。
でも何で私があそこに行かなければならないんです?わかる。
君の気持ちはよーくわかる。
次の異動の時には本社に戻れるように私が何とかするから。
それまでは何事も経験だと思って。
ねっ?じゃあ…。
昨夜教え子達が定年のお祝いをしてくれました。
その席でもらった花束を酔ってたもので電車の中に忘れてしまいました。
電車は?中央線です。
夜11時頃。
ああ…来てないですよね…。
届いてますよ。
それです。
生けておいていただいたんですか?枯らしちゃいけないと思いまして。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
それじゃあ…。
何か?あっ…あの私明日からこちらでお世話になります村尾由希子…。
(いびき)嶋田さん!
(笛)
(嶋田福男)びっくりした…。
わかったようるさいな…。
部屋の中で笛吹くなよ君。
心臓に悪いよ。
あっすいません。
何か落とし物?違います。
明日からお世話になります村尾由希子です。
ああ〜君のことは聞いてるよ。
そうか…よかったらね昼めし一緒にどう?せっかく来てくれたんだからさ。
ねっ?はあ?今日は日曜日だからねええとラーメンの日だよ。
なあ幸平。
ええ。
ええと…幸平味噌だろ?はい。
ええとね僕はしょう油だからねへへへ…。
君どっち?とんこつでお願いします。
あっとんこつね。
ええと…。
すいませーん。
あのすいません…。
イヤリング落としちゃったんですけど。
イヤリング?これかたっぽ…。
届いてないですかね?ああいえ…。
どうしよう…。
死んだ母の形見なんですよね。
形見…。
なくされたのはいつです?ついさっきです。
新幹線降りた時までは着けてたんですよ。
ええとその後駅のどっかで…。
わかりました。
案内してもらえますか?一緒に探しましょう。
ねっ?あっはい。
さあ行きましょう。
すいません。
おいおい幸平!おい…!まったく…持ち場離れちゃダメだって言ってるのにもう…。
変わった男でね。
ですよね。
君異動は希望なの?いいえ。
ああ…だよね。
まあとにかくさ仲良くやろうよ。
君出身どこ?ひょっとして九州かな?博多です。
でしょう!だからとんこつか。
ねっ。
そうか…なるほどね。
九州はいいよねぇ。
もうね別府あたりでさのんびり温泉つかりたいよ。
ああ来々軒?いやこちらね東京駅の嶋田だけどね。
うんラーメンねしょう油ととんこつお願い。
味噌じゃないよとんこつだよ。
いやだから味噌どっか行っちゃったのよ。
もしかしたら女子トイレとかも行ったんで…。
行きましょう。
(鐘)
(広坂洋介)工藤おめでとう!
(八木真奈美)おめでとう淳子!
(拍手)
(真奈美)ああ…。
(拍手)
特急富士は16時48分大分発東京行きの寝台列車である
(ノック)
(真奈美)はい。
(松尾)失礼いたします。
切符を拝見いたします。
東京までの走行距離1240キロ所要時間17時間
そして事件はその富士の車内で起きた
(刺す音)東京駅に到着後車内を点検してましたら…。
客室の鍵はかかったままでした。
(小暮高彦)この女性どこから?
(松尾)大分です。
同伴者は?いえここは個室ですから。
(渡辺清二)ガイシャの身元を示すものはありませんね。
財布も客室の鍵も切符もありません。
検札の時この女性切符はどこから出しました?そういえば…赤いハンドバッグをお持ちでした。
ハンドバッグはどこへ消えたんだ…。
駅での拾得物は2週間この保管室で管理しその後管轄の丸の内南署に届ける決まりになってる。
2週間…。
そういうこと。
といっても現実にはよほどの貴重品でない限り警察に移すことはしない。
どうしてです?警察も保管する場所に限りがあるからだよ。
書類上の手続きはするけど保管は引き続き東京駅で行うことになるんだ。
それにしてもすごい数ですね。
昨日の花束みたいに落とし主が現れるといいんだけど。
イヤリング見つけたそうですね。
ああ。
遺失物は落とし主の元に戻るのをじーっと待ってるんだ。
(大口康夫)拾得物です!ハンドバッグか。
どこにあったの?丸の内北口構内です。
ああそう。
村尾君書類だよ書類。
はい。
じゃあこれにお願いします。
はい。
君みどりの窓口にいた村尾さんだよね。
大変だね。
何かあったら何でも俺に言って。
(嶋田満江)大口君!ここで何してるの?はい助役。
あのハンドバッグを拾得したもので。
異常はないかしら?はい!あなたが村尾由希子さんね?ここはお客様へのサービス面でとても重要な部署なの。
しっかり働いてくださいね。
はい…。
嶋田さんもお願いしますよ。
職員の間じゃ嶋田さんはいつも居眠りばかりしている。
あれじゃ嶋田さんじゃなくヒマダさんだって有名ですから。
いやそんなことよりさそろそろいいだろ?俺1回だけじゃないのよ。
ダメなものはダメ!俺ねもう店屋物は飽きたんだよ。
だからさ家に帰ってね手料理かなんかさ…。
バカなこと言わないで!何で?職場でなれなれしく話しかけないでって言ったでしょ?私は上司あなたは部下。
それ以外は他人ですから。
他人!?そりゃないだろうよ。
夫婦なんだよ。
えっ?嶋田さんと助役がですか?でも嶋田さんの浮気がバレて家追い出されちゃったんだよ。
まあ異状がないのなら結構。
それじゃあ。
いやちょっと…。
嶋田さん!どうした?これ…。
えっ?血です。
(パトカーのサイレン)
(小暮)ガイシャの持ち物で間違いないな…。
じゃあこの血は…。
たぶん犯人が返り血の付いた手でバッグを探ったんでしょう。
(渡辺)小暮さん…。
(小暮)八木真奈美…。
このバッグはうちのほうで預かります。
これが置かれてた場所に案内してください。
そんな事件があったんだ…。
ハンドバッグ…。
うん?どうしたんだ?いえ…。
犯人は何でハンドバッグを盗んで東京駅まで持ち歩いたのか…。
そりゃあれだよ。
つまり…。
警察が考えることだ。
おっしゃるとおりです。
はい。
真奈美さん今日まで休みを取ってて…。
昨日は大分の高校時代の友達の結婚式に出ると言ってました。
行きは飛行機で行くけど帰りはのんびり寝台特急で帰ってくるって。
大分へは誰かと一緒に行くとは言ってませんでしたか?さあ…。
真奈美さんと特に親しかった人は?婚約した人がいると聞いたことがあります。
婚約者ですか…。
(携帯電話)あっちょっと失礼。
どうした?目撃者!?
(小暮)八木真奈美さんを見たんですね?
(倉田昭子)この人です。
まるで誰かから逃げるように…。
急いで走って…。
(小暮)相手は?
(昭子)さあ…。
でも私足を見ました。
広島駅へ着く少し前でした。
ということは昨日の夜10時頃…。
八木真奈美は男に追われてた。
寝台特急富士…。
大分16時48分発小倉18時52分。
広島は22時37分か…。
おいおい!副駅長も言ってたろうが。
お前が事件のことを気にしても仕方ないんだよ。
でもどうして犯人はわざわざハンドバッグを持ち去って東京駅に捨てたのか…。
それは何か金目の物を抜き取って…。
いやいや財布に金は入ってた。
物盗りの仕業じゃない。
(宮内英治)あの…村尾由希子さんいらっしゃいますか?私ですが…。
宮内といいます。
お話ししたいことが…。
ちょっと表で…。
お話ならここで伺います。
はあ。
そちらへ…。
あの人さ見たことあるな。
ああそうだ!代議士だよ。
確か民政党のねええと…宮内英治だよ。
千秋が今どこにいるかご存じないかと思いまして…。
いいえ。
そうですか。
じゃあ結構です。
待ってください!千秋に何かあったんですか?何かあったんですね?話してください。
いいでしょう。
ただこれはプライベートなことなのでどうか内密にお願いします。
よろしければこちらどうぞ。
ああ…。
どうぞ。
恐れ入ります。
実は先日千秋からこんな手紙が届きました。
「お別れの言葉だけは言っておきたいと思いペンを取りました」「どうか元気でいて下さい。
里村千秋」私のことは千秋からお聞きでしょう?ああはい。
千秋が7歳の時に離婚して家を出て行ったと…。
ああ…。
千秋は妻が引き取りました。
中学へ進学する頃妻が亡くなって私は千秋を引き取ろうとしました。
だが千秋は博多に住む妻の妹の家に住むことを選んだ。
だが結局は高校を中退し家を出てそれ以来千秋の行方はわからないままです。
そこへ突然この手紙です。
お別れの言葉とはどういうことなのか…。
ひょっとして何かつらいことがあって死にたいと思ってるんではないか…。
私はどうしても千秋を捜したいんです。
いろいろと聞いてみたところ中学高校とあなたと一番仲がよかったという。
ですからあなたならご存じではないかと…。
千秋とは中学時代からの親友でした。
千秋が高校を中退した後も文通しましたし私が東京の大学に進学してからはこっちで何度か会いました。
でも二十歳の時までです。
あなたがそんな人だと思わなかった!
(里村千秋)それはこっちのセリフでしょ!つまらないことでケンカしてそれ以来連絡が取れなくなってしまって…。
ですから私もこの何年千秋には一度も会ってないんです。
でも捜してみます。
お願いします。
あっ何かわかりましたらこちらへ連絡いただけますか?わかりました。
それじゃあ…。
宮内さんって確か大分出身の代議士だよなぁ。
ええ。
千秋も博多に転校してくるまでは大分にいたんです。
それにしても代議士の先生が娘の行方を捜してるとはね…。
里村千秋…。
何だよ?いやその名に記憶が…。
千秋がここに来たことがあるというんですか?記録に残ってないか…。
そんな偶然あるわけないだろ!えっ?もう上がりにしようよ。
今日はもう人殺しに人捜しで…。
驚くことばかりで疲れたよ。
上がるぞ!里村千秋…10年くらい前に201号室に住んでた人です。
引っ越し先はわからないでしょうか?さあ…。
勤め先は確か飲食店で働いてるようなことを言ってたんですけど…。
そんなことを訊かれてもわからないですね。
やっぱり無理なのかなぁ…。
(携帯電話)はいもしもし。
「住所がわかったよ」えっ!?おお!あの…。
昨日どうしても気になってあれから書類を調べてみたんだ。
里村千秋さんは半年前雑誌を電車に置き忘れたといって東京駅お忘れ物預り所に来てる。
雑誌を?遺失物の受理には決まりがあって例えば雑誌とかビニール傘は遺棄物と見なして受け付けないことになってるんだ。
お願いします!どうしても探したいんです。
わかりました。
ではお手数ですが…。
どうしてもというので書類だけ記入してもらった。
これわざわざ調べたんですか?もちろん同姓同名の他人ってこともあるけどでもあの手紙は気になるよ。
もしホントに自殺しようと思ってるんだったら何としてでも止めなきゃ!
(ノック)留守みたいだな…。
困った女性でしてね…。
里村千秋さん?まあルーズというか男の出入りが激しくて。
私が見ただけでも5人ですよ!いや1年前には傷害事件まで起こしたんですから。
傷害事件!?何か勝手に里村さんの金を使い込んだとかでケンカになって…。
里村さん男にナイフで切りかかったんですよ。
えっ…?もう警察呼んで大変な騒ぎで。
でね部屋を出ていってほしいって言ったらケロッとした顔で私この店で働いてるの。
サービスするから来てよって言うんですから。
ええと…ここです。
いらっしゃいませ。
本日はお2人様でよろしいでしょうか?あっ…。
ご指名はございますか?そうじゃなくてこちらに里村千秋さんって方いらっしゃいますか?千秋!?由希子…。
洋介さんちょっとごめんなさいね。
何なのよ!私ね今東京駅で働いてるの。
この人は同じ職場の望月さん。
昨日ね私のところにお父さんがいらっしゃったの。
手紙のことで心配して。
そんなことわざわざ言いに来たわけ?大きなお世話。
仕事の邪魔だから帰って。
千秋!君の父親が君を捜してるんだよ!私には父はいません。
仕事の邪魔だって言うんだったら終わるまで待ってる。
千秋!私待ってるから。
いらっしゃいませ。
本日はお2人様で?
(小暮)すぐ済むから。
君達こんなとこで何やってんだ?友達に会いに…。
里村千秋さんといって…。
(小暮)君らが里村千秋の知り合いとはね。
あそこにいる客広坂洋介といって富士で殺された八木真奈美の婚約者だ。
事件当日あの男も大分にいることがわかった。
婚約者を疑ってるんですか?でもどうして?広坂には新しい恋人がいる。
それが里村千秋だ。
えっ!?丸の内南署の小暮といいます。
八木真奈美さんのことで伺いたいことが…。
署までご同行いただけますか?はあ…。
あっ!ああ…!千秋大丈夫?大丈夫!俺の家連れていこう。
でも…。
さあ立って。
大丈夫!手伝って。
行くよ。
せーの!行くか…。
よっこいしょ…。
ほらしっかりして。
イテッ…。
ちょっと…大丈夫?望月さんここに住んでるんですか?おかえりー。
幸平君遅かったわね。
あら!由希子さんいらっしゃい。
助役…。
どうして?正確に言うとここは元々嶋田さんの家で俺はこの2階に間借りさせてもらってんだ。
そんなことより何?この人…。
ちょっとわけありで…。
(満江)うん?熱っぽいわね。
酔ってるだけじゃないわよ。
熱がある。
真奈美の事件のことは新聞で初めて知りました。
(小暮)大分での結婚式あんたは八木真奈美さんと出席した。
当然帰りも一緒だったはずですよね?違います。
別府へは行きも帰りも別々でした。
ふ〜ん。
それはまたどうして?最近真奈美さんともめてたからですか?真奈美さんはあんたと結婚する気でいた。
なのにあんたは里村千秋に心変わりをした。
でもめてた。
(広坂)だったらどうだって言うんですか?大分からはどうやって帰りました?夕方小倉へ出て新幹線で。
私はその日のうちに東京に戻りました。
新幹線に乗ってたことを証明してくれる人はいますか?いるわけないでしょう。
ホントのところあんたも寝台特急富士に乗ってたんじゃないの?違う!刑事さん…。
真奈美と結婚のことでもめていたのは確かです。
でもだからって殺すわけないじゃないですか。
私は事件とは関係がない!そんなことがあったの…。
どういうつもりで父親に手紙を書いたのか…。
彼女も大変だったと思うんです。
両親が離婚して母親とも死に別れて…。
たった1人で東京に出てきて…。
仮に付き合ってた人が事件にかかわってたとしたら…。
(満江)つらいわね…。
事件当日の寝台特急富士の乗車券…。
嶋田君。
東京駅で回収したものはこれですべてです。
はい。
じゃあ何?里村千秋さん俺の家にいるの?ええ。
熱があって動ける状態じゃないもので。
そう…。
こちらです。
新幹線の車内で財布を拾われたそうです。
ああ…村尾君。
おい村尾君!はい。
はいじゃない。
あっ…。
こちらの書類に記入していただけますか?さっき刑事さんが来て事件があった日の富士の乗車券を押収してったよ。
乗車券を?指紋を調べるためだよ。
容疑者が浮かび上がったのかもな。
大口無駄口たたいてないで持ち場へ戻れ。
えっ?ヒマダさんだって事件のことは気になるでしょ?おいちょっと待て。
今何て言った?ヒマダさん…。
嶋田さん!嘘つけ。
嶋田さん!失礼します。
落とし主が現れなかったらこれ俺の物になるんだよね?あの…それは…。
ああ…はい。
落とし主が現れないまま6か月と14日が経過しますと拾得者の物となります。
(電話)はいもしもし。
財布をなくされた…。
東北新幹線やまびこ…。
ああでしたら今拾われたお客さんがいらしてます。
財布の特徴をおっしゃっていただけますか?落とし主か…。
だったら謝礼もらえるよね?法的には拾得者は5パーセントから20パーセントの報労金を受け取る権利があります。
じゃあ2割だ。
さっさと宅急便で送れってそういう言い方はないんじゃないですか?まずお客さんの物に間違いないか…。
ちょっと…。
もしもしお電話かわりました。
ええ。
あの…財布の特徴を知りたいんですよ。
何色でしょうか?俺時間がないんだよ。
もらうよ。
ちょっと何するんですかお客さん!何だよ!こっちは好意で持ってきたんだよ!だったら勝手に謝礼を取るようなことはやめてください。
お前生意気なんだよ!いや申し訳ございません。
報労金はですね落とし主と合意のうえで行うもので…。
申し訳ありませんがそれでしたらお越しいただけませんか?はいお待ちしてます。
じゃあそいつが来たら俺に連絡するように言っとけ!絶対だぞ。
(ため息)村尾君ね…声を荒げてどうするんだよ。
お客様にはね懇切丁寧に対応するっていうそれがこの部署のあなた…。
私は好きでここに来たんじゃありません!何しに来たんだ?滝本。
大分からいつ…。
(滝本修)真奈美を殺したのはお前か?バカなこと言わないでくれよ!じゃあ誰なんだ?知るわけないだろう。
警察はどうなんだ?広坂お前取り調べを受けたんだよな?滝本…。
俺は真奈美を殺した奴を絶対に許さない。
真奈美を許してないのはお前のほうじゃないか。
高校の頃真奈美はお前と付き合ってた。
それが俺と付き合うようになって…。
俺を疑ってんのか?そうじゃない!俺は事件とは関係がないと言ってるんだ。
俺は本気だ。
真奈美を殺した奴を絶対に許さない。
広坂お前だったらなおさらだ。
懐かしいなぁ…。
(満江)ピピピ…ピーッ!!危険ですから白線の内側までお下がりください。
ってまたかよ…もう入っていいだろ?だってさ元々ここは俺の家なんだよ。
あなたね自分が何をしたかわかってるの?いやだからさ…俺もさ浮気なんかする気はなかったんだよ。
スナックでさそのまま酔い潰れて気がついたらママが俺の上にいたって…たったそれだけの話じゃないのよ。
あなたのね…そのふやけた精神が許せないの!あのさ別居してもう1年も経つんだからさ…。
ねっ?いい加減許してくれよ〜!とにかく今夜は入れて!ねっ。
俺だってさ里村千秋さんのことは気になるんだよ!ねっ。
頼むから!!ねっ?んもう…今日だけよ!!あっどうも。
どうして勝手に呼んだの?だって…!この手紙はどういうことだ?別に意味なんかないわ。
ちゃんと話すべきだよ。
今何をしてるんだ?働いてるわよ。
キャバクラで。
東京に来て10年…いいことなんか何ひとつなかった…。
私ね1年前傷害事件を起こしたの。
いや違う…!冷静になれよ!お金…お金返して!
(刺す音)ああー痛っ!!何逃げてんのよ!!待てー!その後好きな人ができてもう一度だけやり直そうと思った。
でもその人には婚約者がいて…。
何かもうどうでもいいと思ってふと死のうと思ったの。
その時あんたのことを思ったわ。
あんたを心配させずにはいられなかった。
だって…私がこんな人生送ってるのあんたのせいじゃない!離婚した後お母さんがどれだけつらい思いをしたか!あんたがお母さんを殺したのよ!死んじゃ嫌だ!!お母さん…。
あんたに文句言わずにはいられなかった。
この手紙はそれだけのこと。
本当に死のうなんか思ってないわよ。
お前を心配した私がバカだった。
もう二度と会うこともあるまい!今までだって会うことなんかなかったじゃない。
あんたは私が7歳の時私のこと捨てたのよ!もういい!!もう話すことはない。
あっこのことはくれぐれも口外しないでください。
口外…。
宮内さん!宮内さん!!幸平君!ほら早く!はっ?さっきの言い方あんまりじゃないですか。
千秋さんつらい思いしてきたんです。
親としてもっとね…!私には私を選んでくれた15万の選挙民がいるんだよ。
私は代議士だ。
今更あんな娘なんかに構ってる暇はない。
あっ…あんな!?後悔はないんですか?奥さんと離婚したこと…千秋さんと別れたこと。
まさか!私は政治家になることだけを考えてきた。
根回しをし地べたを這いずり回って地元代議士の秘書を振り出しに政界の道を…。
私は勝ったんだよ。
はあ…。
こんなまずい酒を飲むのは久しぶりだ。
酒も料理もうまい味を知ると後に戻れなくなる。
人生も同じですよ。
私には戻りたい過去などない。
後悔なんか微塵もない。
でも…捨てられた子供はどうなるんです?千秋のように私の足を引っ張るような人間は娘だろうと切り捨てるしかない。
あんた…それでも父親かよ!!ああっ…!あんたに父親の資格はない!!私にはもう…娘はいない。
(満江)幸平君…無茶してなければいいけど。
望月さんって変わってますよね。
何であそこまで…。
そうね。
でも私は幸平君のことを気に入ってる。
幸平君新宿駅の駅掌員をしてたんだけどお客様に親切にするあまりすぐ持ち場離れちゃって…。
で今の部署に異動になって寮を出るって言うからだったらこの家来ない?って言ったの。
ああ…。
何にでもすぐ熱くなるのよ。
まして千秋さんのことは幸平君境遇が似てるから…。
(満江)千秋さんのことを自分のことのように思ったんじゃないかしら。
でなきゃあんなにムキになったりしないわ。
あの境遇が似てるって…?ああっ…帰るの?送ってく。
いいよ。
千秋…私謝るわ。
前に千秋からお父さんのことを聞いて私仲直りすべきだって言った。
私が何度もしつこく言うから千秋は怒って…。
でもあれ間違いだった!宮内さんは親とは言えないわ。
もういいよ。
由希子と私は違うの。
これ以上私にかかわらないで。
お世話になりました。
千秋?
(小原)代議士を殴るだなんて一体どういうことなんだ望月!!大体君達の監督がなってないからこういうことになるんだ!申し訳ありません。
幸平君。
すいません。
あの…でも望月さんが暴力を振るったのは私の友達のことで…。
君は黙っていなさい!今度問題を起こしたらその時は処罰を考えることになる。
いいね!?まあ今後は気をつけるんだな。
さあ仕事仕事!
(携帯電話)あっもしもし?はいこの携帯なくされた方ですね。
千秋…!私東京駅お忘れ物預り所の望月といいます。
望月さん…。
ええ。
はい。
アドレスやメールといった中の情報を見ることはいたしません。
お預かりしてますので…。
はいお待ちしてます。
千秋さん…。
あの…。
ひと言だけお礼を言いたくて。
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
いえ…。
千秋?待ってください!1つだけ訊いていいかな?半年前君は置き忘れた雑誌を探してほしいと言った。
あれはどうして?雑誌に母の写真を挟んでたんです。
(千秋)写真を挟んだまま雑誌を置き忘れてしまって…。
そうだったのか…。
失礼します。
もしもし千秋です。
やっぱり今日行けません。
(刺す音)ううっ!!事件当日の寝台特急富士6号車の乗車券から広坂洋介の指紋が出ました!あのヤロウ嘘つきやがったな!八木真奈美と同じ列車に乗っていたんならホシとみて間違いない!逮捕状を取って家宅捜索!!
(一同)はい!!
(パトカーのサイレン)あっ…!!小暮さん。
またナイフか…。
はい。
おい。
あっはい。
「用件は1件です」
(電話の発信音)「もしもし千秋です」里村千秋…。
(小暮)妙なことがわかりましてね。
八木真奈美さんの事件当日の寝台特急富士の乗車券から広坂の指紋の付いた乗車券とある人物の指紋の付いた乗車券も出てきたんですよ。
あなた1年前に傷害事件を起こしてますね。
犯歴者との指紋照合を行ったところあなたの指紋の付いた乗車券も出てきたんですよ。
(渡辺)あなたは真奈美さんと同じ列車に乗ってた!どういうことですか?
(小暮)広坂と一緒に乗ってたんですか?いいえ…。
広坂はあなたと付き合っていながら一方で真奈美と別れることをしなかった。
あなたは広坂を恨んでた。
真奈美をも憎んでた。
あなたには真奈美と広坂2人を殺す動機がある。
バカなこと言わないでください!じゃあどうしてあの列車に乗ってたんだ?大分は私の故郷です。
あの日私は母の墓参りに行きました。
墓参りに行くことは誰にも話していません。
あの列車に真奈美さんや洋介さんが乗っていたことは知りませんでした。
私は1人で…。
それじゃあ何か?真奈美と広坂が乗っていた列車にあなたたまたま乗ってたというのか?ふざけたこと言うんじゃねぇぞ。
あっ…仕事の帰りに千秋のマンションに行ったの。
そしたら管理人さんが刑事さんが来たって…。
どうせ由希子達も私のこと疑ってるんでしょ?違う!村尾さんも俺も君のことが心配なんだ。
昨日の夜8時頃のアリバイを訊かれたの。
マンションの下の人が洋介さんの悲鳴と倒れる音を聞いたらしくて…。
その時間が8時。
それで?でもその時私は三鷹にいたの。
昨日はまだ体の具合がよくなくてお店を休んで気晴らしに新宿で映画を見て…。
7時頃新宿駅から洋介さんの家に電話をかけたの。
もしもし千秋です。
今日やっぱり行けません。
(千秋)留守電にメッセージを入れてそのまま三鷹に帰って…。
(携帯電話)もしもし?あっ洋介さん。
ごめんなさい。
(千秋)今度は洋介さんから電話があって私はやっぱり行けないって断った。
また連絡します。
だったらアリバイが!でも警察は私を疑ってるの。
新宿駅のホームから電話をかけて洋介さんの住んでいる錦糸町方面の電車に乗ったんだろって。
ホームから電話を?わかった!望月さん?あっ…。
またあんたか。
遺失物だったら資材課の管轄だよ。
あっ…留守電に吹き込まれたテープ聞かせてください。
バックに流れるホームの音でどこからかけたかわかるんです。
「もしもし千秋です」「
(発車メロディー)」「やっぱり今日行けません」「もしもし千秋です」「
(発車メロディー)」「やっぱり今日行けません」
(発車メロディー)間違いない。
この電話は総武線三鷹方面行きのホームからかけられたものです。
新宿駅ではホームごとに電車の発車メロディーが違うんです。
曲にはタイトルも付いてて例えば山手線内回り12番ホームは…。
『新たな季節』『新たな季節』中央線高尾方面10番線ホームは…。
『木々の目覚め』『木々の目覚め』総武線も千葉方面行きと三鷹方面行きは違います。
千葉方面行き11番ホームに流れる…。
『メロディー』『メロディー』三鷹方面行き14番ホームに流れる…。
『airly』『airly』これは『airly』という曲で三鷹方面行きのホームに流れる曲なんです。
(スイッチ音)『airly』あんたどういうつもりだ?
(スイッチ音)千秋さんはこの電話をかけた後そのまんま三鷹へ行った。
つまり広坂さんを殺してはいないんだ。
でしゃばったことを言うんじゃないよ。
三鷹方面のホームから電話をかけたとしてもその後すぐに千葉方面の電車に乗ったかもしれんだろ!この後千秋さんは三鷹で錦糸町からかかってきた広坂さんの電話に出てる!通信記録調べればわかるはずです。
殺害時刻の午後8時確かに錦糸町エリアの広坂の携帯から三鷹エリアの千秋の携帯に電話がかけられてる。
だが何かからくりがあるはずだ。
大体な真奈美が殺された列車に千秋が乗っているなんてどう考えたっておかしいだろ!おかしいって…。
警察は何もしてない人を犯人にでっち上げるんですか?うっ…。
駅の遺失物係が事件に首突っ込んでどうすんだ。
すっこんでろ!!里村千秋をかばいたいんだろうがな…ホシは千秋で間違いないよ。
あんたは私を捨てたのよ!雑誌に母の写真を挟んでたんです。
犯人はなぜハンドバッグを盗んだのか…。
(電話)はい。
…はあ?大分?この教会です。
海の上のチャペルと言われているんです。
海の上のチャペルか。
大分まで来て何をするんです?真奈美さんと広坂さんはここで行われた友達の結婚式に出た。
その後真奈美さんは寝台特急に乗って事件に遭った。
真奈美さんを殺した犯人はどうして東京駅にハンドバッグを捨てたのか…。
真奈美さんのバッグを盗んだ目的は何だったのか…。
そして広坂さんはなぜ殺されなければならなかったのか。
その答えがこの大分にあるような気がしてならないんだ。
どうしてあのハンドバッグにそんなにこだわるんです?君今の仕事つまらないと思ってるだろ?俺も今の部署に異動になった時そう思ったよ。
その頃拾得物としてバラが1輪届いたことがあった。
1輪のバラの花?ああ。
たかがバラ1輪俺は保管室に放っておいた。
3日経ってバラ枯れて処分しようと思った時に1人の中年の男性が現れた。
バラの落とし主?ああ。
会社をリストラされたんだそうだ。
誰も声すらかけてくれない。
そんな中1人だけ部下の若い女性がお疲れさまでしたとそのバラをくれたんだそうだ。
落とした花なんか届いてるはずがない。
いやそれでもひょっとしてと訪ねてきて…。
それで?その男性はどうされたんです?枯れたバラを大切そうに持って帰られたよ。
その時思ったんだ。
ああこの職場も悪くないって。
またこうも思った。
どんな落とし物にも必ず意味がある。
あのハンドバッグにも必ず理由があるはずなんだ…。
(満江)ピピピ…ピーッ!!わっ。
あっ。
いや何だよ休みだしさ。
幸平と酒飲もうと思って来たのに。
何?村尾君と大分にねぇ。
ったく若い奴はさぁやることが早いよねぇ。
違うわよ!幸平君は千秋さんのことが心配なの。
それじゃあ何か調べに行ったの?そりゃまずいだろう。
だってさ事件に首突っ込んでね仕事に差し支えるようなことになったら今度こそ処分ものだよ。
どうして認めたの?だって…私だって千秋さんのことが心配だもの。
そりゃあそうだろうけどさぁ…。
しかしさぁ大分行ってどうすんだろうね?さあ?そのへん…ほら。
2人で酒飲みながら…。
ダメ!ねえ頼むよ。
これ君の好きな芋焼酎。
「芋の想い」っていうんだけど…。
2時間だけよ?時間制かよ?何だよ妙な気分だなぁ…。
九重町。
この街が広坂さんと真奈美さんの故郷。
結婚した工藤さんは九重の悠々亭にいるんだ。
(工藤正一)結婚式の時に広坂と真奈美に変わった様子はなかったかと訊かれても…。
(工藤淳子)この間も刑事さんがいらしていろいろ訊かれましたけど特に変わった様子は…。
工藤さん達は広坂さんや真奈美さんとは親しかったんですよね?ええ高校時代の友達で。
部活が同じ美術部だったもので。
あっ当時の写真がありますので。
そう言えば真奈美結婚式の前に久々に高校に寄ってきたって言ってました。
高校に?あの…こういうことを訊くのはあれなんですけど広坂さんと真奈美さん2人を誰かが恨んでいたなんてことはありませんか?ないですよ。
強いて言えば滝本でしょうけど。
滝本さん?真奈美は最初滝本と付き合ってたんです。
滝本はぞっこんだったんだけどそのうち真奈美は広坂に心変わりして…。
あっもういいですか?あっあのもう1つだけ。
あの…真奈美さん何か特別な物とか持ってませんでした?犯人は真奈美さんのバッグから何か盗んでるんです。
さあ特別な物と言われても…。
すいません…。
ごめんください。
そりゃ驚いたよ。
当たり前だよ。
立て続けに友達が2人も殺されたんだから…。
広坂さんは真奈美さんと婚約されていたんですよね?事件がなかったら2人は結婚してたんじゃないかな?奴らは特別な関係だったから。
高校の頃九重の公民館で立てこもり事件があって2人はその事件に巻き込まれた。
立てこもり事件!?うん…。
かれこれ17年前になるか…。
俺達は公民館でグループ展を企画していてその打ち合わせに広坂と真奈美が公民館に行って事件が起きた。
ああ…!その事件なら私も覚えてます。
拳銃を持った逃走犯が公民館に立てこもって…。
ああ。
あの時公民館には管理人のおばさんと広坂と真奈美の3人がいた。
広坂と真奈美は助かったんだけど管理人は犯人に銃で撃たれて死んだ。
ちょうど半年ぐらい前に東京へ行った時に広坂に里村って女を紹介されたんだけどさ驚いたよ。
その人の母親っていうのがさ当時殺された管理人のおばさんだっていうんだから。
里村って…。
里村千秋さんのことですか?うん…。
じゃあ千秋のお母さんはその事件で?
(銃声)
(里村千代子)ああっ!千秋のお母さんが事件に巻き込まれて殺されたなんて…。
そのことを千秋さんから…。
聞いてないわ。
私は病死だとばかり…。
お母さんは千秋さんを育てるために公民館で管理人として働いていた…。
あんたがお母さんを殺したのよ!立てこもり事件で千秋さんのお母さんは亡くなり広坂さんと真奈美さんは助かった。
その広坂さんと17年経った今千秋さんが付き合っていた…。
はあ…どういうこと!?
(千秋)最初に知り合ったのは真奈美さんのほうなんです。
私が通っていたジムに真奈美さんも来てて故郷が同じ大分の九重町だとわかって親しくなりました。
話をするうちに真奈美さんが17年前の事件の被害者だとわかって驚きました。
それから洋介さんとも初めて会ったんです。
私は事件が起きた時の母の様子を知りたくて…。
あなたのお母さんは犯人に子供達だけは手を出さないでって僕達を守ってくれたんです。
そうですか…。
僕と真奈美はあなたのお母さんに命を与えられたんです。
(千秋)しばらくして洋介さんと何度か2人だけで会ううちに…。
それで付き合い始めた…。
そうです。
私は洋介さんを愛していました。
その私がどうして洋介さんを殺さなければならないんです?じゃああなたが真奈美さんを殺したんですか?はいその方でしたら6両目から5両目に向かうのを目撃されておりました。
はあ。
真奈美さんが目撃されたのが広島駅の手前…。
ここ6号車から5号車へ向かっていた。
たぶん広坂さんが乗ってたのが6号車だからここから真奈美さんは自分の客室のある2号車に向かったんだ。
そして殺された…。
でもどうして犯人は殺した後に真奈美さんのハンドバッグを奪ったんだ…?中にあった何かを盗んだのならわざわざハンドバッグを持ち歩くことはない。
つまり奪えなかったんだ!どういうこと?中にあるべきものがなかったからハンドバッグを奪ってその後も執拗に調べたんだよ!あるべきものがバッグにはなかった。
でも車内で何かが見つかったとは聞かないわ。
身の危険を感じてた真奈美さんは逃げる途中に列車の外にそれを捨てたのかも。
無理よ!特急列車の窓は開かないもの!そっか…。
そうだったな…。
結局さ大分はどうだったの?いや特には…。
特にはって…もう何だよ。
何しに行ったんだよじゃあ。
17年前の事件…今度の事件とは関係ないわよね?ああ。
千秋さんが憎むべき相手は立てこもりの犯人だ。
お母さんと同じ人質だった広坂さんや真奈美さんじゃあ…ない。
ねえ千秋1つだけ教えてほしいの。
17年前の事件に広坂さんも真奈美さんもかかわってた…。
そのこと千秋は知ってたんでしょう?そんなことどうだっていいでしょう。
私のこともう構わないでって言ったじゃない!取り戻したいのよ!千秋は私にとって大事な友達なの。
友達…?由希子と私は全然違うの。
住む世界も人生も。
きちんとした仕事も守ってくれる人もちゃんといてちっぽけなことでくよくよ悩んでるのが精一杯なあなたに何がわかるって言うの!?千秋?私のことわかったような顔しないで。
あの男滝本だよなぁ?どうして滝本が…?広坂が死んでからさ俺もいろいろ調べたんだよ。
私のこと疑ってるんですか?えっ?洋介さんが殺された時私にはアリバイがあります。
そのことは警察にも話しました。
私ではありません。
ちょっと待って。
おもしろいことがわかってさぁ。
そのことを聞いてもらおうと思ってわざわざ来たんだよ。
(パトカーのサイレン)
(渡辺)大分県警から連絡があって滝本の死体が上がったそうです!大分県警は自殺と見てるようです。
(小暮)じゃあ何か?真奈美と広坂を殺したのは滝本だっていうのか?2人殺したことを悔やんで自殺?そんなバカな!しかし殺しだとしても里村千秋ではありません。
この数日千秋には張り付いてました。
千秋は大分には行ってません。
真奈美広坂そして滝本…3人を殺害した人物は他にいるってことか?これ…。
えっ滝本さんが大分で…?この人ね。
17年前の事件のこと話してくれたの。
もう驚いちゃって。
テレビでもやってるんじゃないかなぁ?「本日大分県別府市に九州では最大規模の青少年のための教育総合センターがオープンしました」「図書館と美術館遊戯場を併設した…」宮内さんじゃない?「市民の憩いの場所となっており若者から…」何が教育だよ。
幸平君千秋さんのことが心配なのはわかるけどもうこれ以上事件に首を突っ込むことは…。
すいません…。
でももう大丈夫です。
よくわからないけどとにかくこれで千秋さんの無実は証明されたはずだ。
だってそうだろ?滝本さんの事件と広坂さん達の事件が関係ないはずがない。
千秋さんは無実だよ。
そうよね…そうですよね!あっ千秋に電話してみます!
(アナウンス)「ただいまおかけになった電話は…」あれ?どうしたの?ああ…この間から何度も電話してるんだけどつながらなくて。
(電話)
(小暮)里村さんから滝本のことで何か聞いてませんかね?聞いてません!そういうことは千秋本人から聞けばいいじゃないですか。
マンションにも帰ってないし連絡もつかないんだよ。
とにかく私は何も知りません。
わかりました。
失礼。
滝本さんが千秋さんと会ってた…?おばあちゃん何か落とし物ですか?
(栗原民代)私…何落としたんでしょう?はっ?幸平…胸胸。
またこのおばあちゃんかぁ。
今回が初めてじゃないのよ。
ねっおばあちゃん。
(武本礼子)お母さん!どうしてまた施設から抜け出すのよ!もうやめてよぉ!落とし物…。
礼子…礼子を捜してください。
年は5歳…。
赤い靴履いてます。
5歳?礼子さんてあなたですよね?
(嗚咽)私が5歳の時父の転勤で家族3人東京に出てきたんです。
(礼子)その時私東京駅で迷子になってしまって。
私は駅の方に保護されました。
母は泣いてる私を抱きしめてごめんねごめんねって…。
ありがとうございました。
娘さん泣いてましたね。
好きで自分の母親と別れて暮らしてるわけじゃないさ。
家族を捨てる人間なんていないよ。
(警笛)家族を捨てる人間はいない…。
私にはもう…娘はいない。
それじゃあ。
すいません。
これあの…拾ったんですけど。
あっどうもわざわざありがとうございます。
場所はどちらで?京浜東北の電車で。
車両は前のほうでした。
お手数ですけれどもこちらのほうにご記入お願いできますか?あっはい。
(携帯電話)もしもし。
あっはい。
今拾得物として届いてます。
私東京駅お忘れ物預り所の…。
《前にもこんなことがあった》はい。
アドレスやメールといった中の情報を見ることはいたしません。
《あれは広坂さんの事件が起きる前…》ああ…あっはい。
お待ちしてます。
じゃあいいですね?望月さんどうしたんです?これ…頼む。
ちょっと出てくる!幸平どこ行くんだ?おい幸平!確かにその日携帯の落とし物があって私が落とし主からの電話に出ましたね。
(犬の鳴き声)この間真奈美さんはお2人の結婚式に出る前に高校に寄ってきたそう言ってたと言われましたね?ええ。
その高校というのは?ええ。
八木真奈美のことなら覚えちょるよ。
美術部やった子やねぇ。
あの日グラウンドで見かけて声をかけたけんね。
グラウンドで…真奈美さんは何をしに?タイムカプセルです。
高校3年の時に埋めたタイムカプセルの中に入れた物を取りに来たって言うて…。
タイムカプセル…。
《特急列車の中で1か所だけ窓の開くところがある》車掌室。
真奈美さんはここからあるものを捨てた。
それが広島に着く少し前。
そして殺された…。
バカヤロウ。
昨日から連絡もしないでお前どこ行ってんだよ。
えっ?広島?望月はどこだ?昨日から職場を離れてるそうだな。
望月どこにいるんだ?あの…広島にいるっていうんですがね。
広島!?ええ…。
えっ!?いや…。
おい!何で広島にいるんだよ。
説明しろよ。
えっ?何!?それ本当かい?…よしわかった。
幸平君何してるの?あの遺失物を探してるっていうんですよね。
ほら例の赤いバッグから捨てられた物…。
遺失物を探しに広島?ええ。
バカじゃないのか!このことは駅長に報告する!処分は追って出す!副駅長…。
望月さんまたどうして事件のことを?まさか千秋のこと疑って…。
信じられない!望月さん普通じゃないです。
どうしてです?どうしてそこまで遺失物にこだわるんです!?それは幸平自身が落とし物だったからだ。
えっ?幸平はねぇ早くに父親を亡くし母親と2人で暮らしていたんだよ。
が6歳の時幸平は母親に捨てられたんだ。
幸平ここで待ってるの。
いいわね?ちゃんと待ってるのよ。
母親は幸平を駅に残したまま帰ってくることはしなかった。
(警笛)でも幸平はずーっと待っていた。
(警笛)そんな…。
だから父親に捨てられた千秋さんのことを放っておけなかったのよ。
望月さん自身が落とし物…。
遺失物は落とし主の元に戻るのをじーっと待ってるんだ。
(ため息)そういう奴なんだ。
おっああっ…!
(携帯電話)もしもし。
(千秋)「由希子…」千秋!どうしたの!?どこにいるの?いろいろ心配かけてホントごめんね。
私由希子と会えてホントはすごくうれしかった。
もう会えないかもしれないけどホントありがとね。
千秋今どこにいるの!?千秋…!
(電話の切れる音)もしもしもしもし…!死ぬ気なのかもしれないな。
どういうこと?えっ…あっ大分かぁ。
あっ君もすぐにね大分へ行きたまえよ。
えっ?幸平と宮内代議士には俺から連絡しとく。
早く行きなさい。
ダメよ!このうえ由希子さんまで職場を離れたらあなたに処分が…。
構わん!俺が責任を取る!何言ってるの!?ダメよ私が許しません!ここはなぁ俺の職場だよお前は黙ってろ!行くんだ!はい…!やっぱりここに来たんだ。
近くにいる…。
捜そう!やめろ!千秋!来ないで!お父さんは君のために罪を犯した。
そのことは君もわかってたはずだ。
そんなお父さんを残して君は逝けるのか?死ぬな!千秋!頼むから…死なないでくれ。
動機は17年前の事件にあった…。
これは17年前高校3年の真奈美さんが埋めた…タイムカプセルに入れてたものです。
広島駅の近くで見つけました。
「将来の私へ」「この手紙を読んでいる私はもう結婚しているのでしょうか」「相手は広坂君でしょうか」「それとも」…。
(真奈美の声)「独身でバリバリ仕事をしてるのかなぁ」「それともう1つ」「今私の心の中にある罪の意識は消えてるのでしょうか」「公民館で立てこもり事件に巻き込まれた時犯人はおとなしくしていれば何もしないと言った」お願いです!子供達だけは手を出さないでください!お願い…ああ…。
(金井謙一)おとなしくしてりゃ何もしない!いいか!逃げようなんて考えたらこいつを殺す!わかったかー!?
(刑事)「犯人に告ぐ」「再度犯人に告ぐ」うるせぇって言ってんだろー!!ちくしょー!!逃げよう…。
俺達が逃げてもあのおばさんが殺されるだけだ!
(刑事)「犯人に告ぐ。
再度犯人に告ぐ」うるせぇって言ってんだろー!!今だ!ああっ…。
逃げるなー!!やめて!どいつもこいつもバカにしやがってー!!
(銃声)
(真奈美の声)「私達がおばさんを殺した」動機はこれだった。
少なくとも広坂さんを殺したのが君だということはわかってる。
広坂さんの殺害時刻君が三鷹にいたというアリバイ。
昨日…三鷹駅の遺失物係へ行ってきた。
つまりこういうことだ。
夜7時頃君は総武線三鷹方面行きホームから広坂さんの家に電話をかける。
もしもし千秋です。
そして君は携帯を電車内に置く。
君はその足で千葉方面のホームへ行き広坂さんの住む錦糸町へ向かう。
そして…。
(刺す音)ううっ!!それが8時。
君にとっては賭けだったに違いない。
君は広坂さんの携帯から自分の携帯に電話を入れた。
(携帯電話)これ落とし物です。
(携帯電話)もしもし。
私その携帯を総武線の電車の中に忘れた者ですけど…。
届いていますよ。
私三鷹駅お忘れ物預り所の…。
三鷹?ありがとうございます。
後で取りに伺います。
こうすれば通信記録上は錦糸町にいる広坂さんから三鷹にいる君へ電話がかかってきたことになる。
もういいです。
おっしゃるとおりです。
どうして?洋介さんと知り合って私は彼のやさしさに惹かれていきました。
洋介さんも17年前の事件の被害者だと知って…。
私ね洋介さんはお母さんが引き合わせてくれた気がしたの。
東京に来て初めて心から人を愛せたと思った。
なのに…。
嘘でしょう!?あなたのお母さんは広坂君のせいで死んだのよ。
あなたは…お母さんを殺した男と付き合ってるの。
違う!それは真奈美の作り話だ!俺と別れたくないばっかりに嘘をついてるんだよ!
(千秋)私は洋介さんの言葉を信じました。
でも…。
(洋介)今さら何言ってるんだ!第一逃げようって言い出したの真奈美だろう!おばさんなんか死んでもいいって言ったの広坂君じゃない!それを証明することはできないだろ?もうみんな死んでる。
おばさんも犯人も。
俺が嘘だと言えばそれまでだろ。
私広坂君を一生離さない。
どんなことをしても…。
俺はお前のそういう自分本位なところがもううんざりなんだよ!!ふん。
あの女に本気で惚れてんの?絶対許さない。
証明ならできるわよ。
(千秋)その時私の中で壊れるものがありました。
母は私を育てるために1人で一生懸命働いて…。
東京へ来てつらいことがあるといつも母のことを思った。
その母がこんなことで殺されたなんて!お母さん!お母さん…。
起きてよ!お母さん!帰ろうよ!死んじゃ嫌だ!!お母さん…。
(千秋)母を殺しておいて私を利用しようとした真奈美さんを許せなかった。
信じてたのに裏切った洋介さんを許せなかった。
あの日私は結婚式に出席する真奈美さんのあとをつけました。
これを見せれば千秋さんだって信じるわ。
千秋さん…それこそあなたを殺すんじゃないかしら。
ふふっ…。
広坂君は私から一生逃げられないの。
(千秋)私も列車に乗り込んで機会を待ちました。
真奈美!離してってば!あっ!
(刺す音)
(千秋)私は手紙を探しました。
あれがあったのでは私が疑われる。
結局あの手紙がどこへ消えたのかわかりませんでした。
洋介さんを殺しアリバイを作った方法は望月さんがおっしゃったとおりです。
でも私あの時ホントは躊躇しました。
心のどこかで洋介さんを許したいって。
お願い!あなたの口から本当のこと話して!お母さんに謝って!君のお母さんは今頃天国で喜んでるよ。
君のお母さんのお陰で俺達は殺されなかったんだ。
俺達を救えて本望だろうよ。
(千秋)許せませんでした。
(刺す音)ううっ!!
(携帯電話の操作音)
(千秋)その後滝本さんがお店へ来て…。
17年前のことを俺知ってんだよ。
何でだと思う?簡単だよ。
当時みんなでタイムカプセルを埋めた後俺こっそり掘り起こして真奈美のを見たんだ。
真奈美に続いて広坂も殺された。
俺もう一度タイムカプセルを見に行ったんだ。
そしたら真奈美のだけがなくなってた。
17年前の話を警察が知ったら放っておかないだろうなぁ。
あんたがさぁ2人を殺したことは俺しか知らないんだよ。
やめてください!どうして無視しなかったんです?あなたがお父さんに出した手紙…。
あなたは復讐を果たしたら死のうと思っていた。
本当に死のうと思っていたのなら脅しなど無視していい。
無視できなかったのは滝本がお父さんをも脅すと言ったからじゃありませんか?あなたはお父さんを救いたかった。
違う!!この人とは関係ない。
そのとおりです。
滝本は私を脅してきた。
娘さんのことを話したらあんたは破滅だ。
金で済む話なんだな?そんなことは…言ってませんよ。
(宮内)私は滝本と大分で会う約束をした。
私は金を払う。
君は口をつぐむ。
契約成立だな。
さすがに国会議員は偉大ですね。
(殴る音)うわっ…おお!イテッ!何する…んだ…。
おい何…。
わあー!!
(海に落ちた音)あなたにしても滝本の脅しに屈することはなかったんだ。
あなたは娘はいない切って捨てると言った。
世間に知れたところで別れた娘が何をしようとあなたまで罰せられることはない。
でもあなたには…取り戻したい人生の落とし物があった。
それが千秋さんだった。
守ってやりたかった。
離婚した後私は政治家への道をまい進した。
別れた妻や娘のことを心配していたなどときれいごとを言うつもりはない。
私はそれでいいと思っていた。
だが政治家になった後どこかで私は心の中に埋めようのない穴が空いているのを感じていた。
それが千秋のことだった。
そしてあの手紙だ。
私は初めて後悔しました。
今の私にできるのは…。
どんなことをしてでも私は千秋を守ってやりたかった。
千秋。
すまなかった。
お母さんにも本当にすまないことをしたと思っている。
お父さん…。
由希子…本当にごめんね。
うん。
苦しかった…。
私由希子には全部本当のこと話したかった。
どんな時も由希子だけは友達だと思ってたから。
千秋…。
望月さんには感謝してます。
やさしくしていただいて…。
私何度も涙が出そうになりました。
私ずーっと千秋に面会に行く。
千秋との友情が私の忘れ物だったから。
私にとっての1輪のバラの花かなぁ。
どんな落とし物にも必ず意味がある。
ありがとうございました!やめろよ〜。
急に何だよ。
早く!警察から感謝状が届いたことだし今回だけは特別大目に見ることにするが二度と職場を放棄するようなことあったら困るよ。
すいません!村尾君もさぁこれは気をつけてくれないと!ねえ?本社に戻るどころの話じゃなくなるよ…。
お客様どうかなさいましたか?お財布を拾って。
ああそうですか。
あっそれでは申し訳ありませんがこちらにご記入いただけますか?すみません。
娘がリュックのポッケの中に入れていたぬいぐるみを落としてしまって。
そう。
よし!じゃあ一緒に探そう!案内してもらえますか?行きましょう!おいおい幸平!望月さん?望月!2014/10/04(土) 12:00〜13:55
ABCテレビ1
東京駅お忘れ物預り所[再][字]
大分発寝台特急富士連続殺人・夜行列車から殺人告発の手紙が!?死んだ女の謎の落し物!!
詳細情報
◇出演者
高嶋政伸、櫻井淳子、北村総一朗、高橋ひとみ、井上晴美、勝部演之、岩本千春、鷲生功、木下ほうか、佐戸井けん太
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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