ふるさと再生 日本の昔ばなし 傑作選 2014.10.04

昔むかし入り江を挟んで東に栄えた町と西に貧しい村がありました。
そして西の村に漁師の若者がおりました。
その若者は早くお金を貯めてお嫁さんをもらおうと人一倍漁に励んでいました。
ある時いつもの漁場で朝早くから網を打っても魚一匹かからないという日が続きました。
ここんとこ全然じゃ。
わしら先上がるぞ。
若者は遅くまで漁を続けましたがやはり気配すら感じないので諦めて帰ろうとしました。
ん?若者の網にかかったのは石で造られた観音像でした。
その夜のこと…。
網を打つとき私の経を唱えなさい。
ハッ!翌朝若者はいつものように漁に出ました。
すると網を打つとき習いもしないお経が口をついて出てきました。
あっ!
(読経)あっ!《こ…こんなことが…》その日から村ではかつてないほどの魚が獲れるようになり仲間の漁師とともに漁に精を出せるようになりました。
ん?もし…どうなさった?あっ…。
若者は病にかかって倒れていた娘を家へ連れて帰りました。
若者は漁に励みながら娘の看病を続けていました。
若者に信頼と安心を感じていた娘は自分が入り江の向こう岸にある商家の一人娘であることを明かしました。
そして年ごろになっても良縁に恵まれないので地元のお寺にお参りしたところ観音様が夢枕に立ったと話し始めました。
お前の婿になる男は西の国で私とともに暮らしています。
「観音様のお告げのままに当てのない旅に出るなんて」と両親には反対されましたが黙って出てきました。
西の国といっても広いからのう。
それに観音様を祀っている家も結構あるし…。
(咳き込む声)西に向かって旅立ちましたがひと月もしないうちにこのありさまです。
しかし不思議な話もあるものじゃ。
おらも観音様のお告げがあって魚がたんと獲れるようになったんじゃ。
え?この観音様私の夢枕に立った観音様によく似ていらっしゃる。
え?ではあなた様が…。
娘は早速両親へ「婿様が見つかりました」と若者のことを手紙に書いて旅人に託しました。
両親からの返事は「身分の違う若者と祝言を挙げることなど許さない。
すぐに戻れ」というものでした。
親御さんも心配じゃろう。
よくなったら船で送ってあげよう。
婿さんのことはそれからじゃ。
はい。
娘は海の凪いだ日に船で帰ると手紙を書くことにしました。
ある晴れた朝若者は娘の両親が待つ入り江の向こう岸へ小舟を漕ぎ出しました。
朝は波風ひとつなかった海が湾の中ほどまで来ると急に荒れ出しました。
すまないおらが潮を読み違えたばっかりに。
あなたのせいではありません。
観音様どうかどうかこの人を無事に家へ送り届けてくれ!今朝はあんなに穏やかだったのに…。
こんなことになるなら無理に呼び戻すんじゃなかった。
あれは…。
観音様!娘の両親は観音様のお告げが本当になったと驚き娘の無事と立派な跡取りのできたことをおおいに喜びました。
若者の観音像は村外れの寺に納められ縁結びの観音様としてたくさんの人が詣でたということです。
昔むかし山あいに小さな村がありました。
ある日の寄り合いで名主さんが「わしらの村には神社がない。
立派な神社を建てよう」と言いだしました。
せっかく建てるのですから腕のよい職人を探そうということになりました。
さてさてどうしたものかいの〜。
飛騨の匠と呼ばれる大工の名人がいると聞いたことがあります。
その匠が建てた家はどんな嵐にあっても絶対倒れないそうです。
ぜひその飛騨の匠に頼みたい!みんながそう思い飛騨の匠の元へ名主さんが代表してお願いに行くことになりました。
その頃村人たちはそんなにすごい匠のことならお弟子さんをたくさん連れてくるだろうと準備をしていました。
そして首を長くして匠が来てくれるのを待ちました。
そんなある日やっと名主さんが飛騨の匠を連れて帰ってきました。
村人たちは大喜びしたのです。
が名主さんが連れてきたのは…。
ひっくゴクゴク。
酔っ払いのおじいさん1人でした。
あのじいさんが匠だって?大工の名人には見えないよ〜。
しかし本人が飛騨の匠だと言うんじゃよ。
そうじゃ。
わしが飛騨の匠じゃ。
村人たちはこれを見て偽者ではないかと疑いました。
しかし遠いところからわざわざ来てくれたのです。
それにもしかしたら本物の匠かもしれません。
まずは旅の疲れをとってもらうことにしました。
なにぶん大きな仕事だけにお一人だけでは大変ですな。
近くの職人も呼びましょうか?な〜に心配はいらぬ。
はぁ…。
(いびき)はぁ…。
(物音)音を聞いた名主さんが匠が仕事を始めたのかと思って見に行くと…。
匠は白木を彫ってこけしのような小さな人形をたくさん作っていました。
あの老人は偽者に違いない。
明日出て行ってもらおう。
そうだねそのほうがいいね。
あれ?ずいぶん高い囲いになってるな。
ん?
(いびき)はぁ〜ん?あらまたまげた!たったひと晩で大きな柱が立っていました。
やはり本物の匠だったようです。
村人たちは疑ったことを恥じ匠に任せることにしました。
それから小屋の中からは朝から晩まで賑やかな音が聞こえるようになりました。
こうしてびっくりするほどの速さで土台は出来上がっていきました。
(いびき)
(物音)しかし村人たちは朝早くから夜中まで音が聞こえるので匠が倒れてしまわないか心配しました。
(物音)無理をしないように名主さんが匠の様子を見に行くと…。
(いびき)お〜いお前たちはどこから来たんじゃ?しかし声をかけても返事は返ってきません。
あれはなんとこけしの人形ではないか!《そういえば匠はこけしを彫っておったぞ》名主さんは匠がこけし人形を作っていたことを思い出しました。
しかしそのこけしが働くとはとうてい思えません。
名主さんはさっき見たものは夢か幻だったのだろうと思いました。
そうして立派な神社が完成し落成のお祝いをすることになりました。
この箱の中にはこの神社の魂が入っております。
末永く大切になさってください。
箱を開けると箱の中には匠の作っていたこけしの人形が納められていました。
匠は白木に宿る神の力を借りそれをこけし人形に宿してこの神社を完成させたのでした。
あれは夢ではなかったのだ。
あんな名人は他にはおらん。
こうして建った神社は強い風や地震にもよく耐え倒れることはありませんでした。
そしてこけしたちの入った箱は二度と開けられることはなく大切に奉納されたということです。
昔むかしいくつも山を越えた向こうに小さな貧しい村があってその村に古びたお寺があった。
その年の秋も深まったある日。
このお寺の住職が初めてご本山にお参りすることになった。
(鐘の音)
(読経)《赤いろうそく…初めて見た》住職はお願いして赤いろうそくを分けてもらい村人たちへのお土産にすることにした。
和尚は村の檀家衆を招き都の様子を話してお土産にと赤いろうそくを配った。
これはいってえ何じゃろうの?赤くてつるんとして硬くての。
見たこともないものじゃ。
おぅ聞いたぞ聞いたぞ。
住職の土産がわからんだと?おめえわかるのか?わしはおめえらと違ってものを知っとるからの。
どれこれか?う〜ん…。
わかるか?な〜るほど。
こりゃかまぼこじゃ!かまぼこ!?へぇ〜これがかまぼこというもんか。
これがかまぼこじゃ。
わしはなあちこち商いに出かけるからなんでも知っておる。
正月には必ず食うもんだ。
ハッハッハ!
(4人)へぇ〜。
なにしろわしはおめえたちと違うて物知りじゃからヘッヘッヘ。
せっかくの住職の土産じゃみんなでいただこう。
ほんじゃわしは。
どこへ行く?ちょいと隣村に用があってな。
ほんならひとかけら持ってけや。
そうかいわしゃ飽きるほど食うたがせっかくじゃからいただこうかヘッヘッヘ。
かまぼこかまぼこ。
そそいじゃいただこうか。
ああいただこう。
(みんな)あ〜ん。
かまぼこいうもんはこんなもんかい。
ちいともうもうないが…。
ぬるりとして味がねえの。
けど住職の土産じゃ。
いただけば寿命も延びるに違いねえぞ。
しかしひどい味じゃ。
きっと薬のようなものかもしれん。
なんまいだぶなんまいだぶ。
う〜さぶ。
今日は冷えるのう。
腹も減ってきたおっと!さっきついでにもろうてしもうたがこれはなんじゃろう?食い物には違いなかろう。
あ〜ん。
プハー!こりゃ食えんわ。
なんじゃろう?これは。
お〜い大変じゃ!住職の土産ありゃ食べもんじゃないぞ!何!?さっき町から来た薬屋が教えてくれた。
あれはろうそくっちゅうもんでな頭から火が出るってしろもんだ!何!?頭の先から火を吹くじゃと!もう先っちょ食うてしもうた!誰かの腹の中じゃ!おらか?おめえか?いや俺かも。
俺だ!おらも食っちまったんじゃが腹の中で火が出たら大変じゃぞ!どうしよう!火の用心じゃ!水を飲め水を!これで腹ん中火が出ても大丈夫じゃ。
けど体にもう火がまわってたらどうする?そういやなにやらカーッとしてきた。
お俺もカーッとしてきた。
(2人)火の用心!消えたか?う〜冷たいのう。
こうしとるしかなかろう。
火の用心じゃ。
おいお前!わっ!お前たち池ん中で何してんだい?これもみんなお前のせいだ!おめえあれ食ったか?ああ食ったがどうした?ありゃ腹ん中で火が出るぞ。
火が?どうりで胸焼けがすると思うた!体に火がまわっとるんだ。
ひえ〜っ火の用心!
(読経)ん?しもうた!ろうそくじゃ言うの忘れておった。
お経あげたら言いに行こう。
さすがのわしも火の出るかまぼことはつゆ知らず。
(2人)こいつ!まだ言うか!
(みんな)う〜っさむ!ハクション!火の用心。
アホーアホー。
2014/10/04(土) 06:20〜06:50
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし 傑作選[字]

「縁結びの観音さま」「開かずの箱」「ろうそく騒動」の3本です。お楽しみに!!

詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。  この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
出演者
【[声]】 柄本明
松金よね子

原作脚本
【監修】中田実紀雄
監督・演出
【監督】湯浅康生
音楽
『一人のキミが生まれたとさ』作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
歌:中川翔子
コーラス:INSPi(Sony Music Records)

ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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