録画してテレビ番組を見る

千葉県房総半島のいすみ市と大多喜町を走る路線いすみ鉄道。
２６．８ｋｍの小さな鉄道ながら全国の鉄道ファンたちからも根強い人気を誇ります。
車窓から昭和のような田園風景を眺めているとさながらタイムマシンにでも乗っている気分。
そしてこの鉄道では乗客に楽しんでもらうためさまざまな企画やイベントが催されています
見たことないけどどちらから来たの？東京からです。
休暇をとって。
え〜っ！気合いが入りまくりですな。
じゃあこれ使ってよ。
いや私は演歌のほうですから。
同じファン同士遠慮しないで。
こんなイベントやってくれるなんていすみ鉄道って最高だよね。
はいいすみ鉄道ねはいはい…。
「急なカーブにさしかかり」「僕の心は横ノリ」笑って…。
はいこっち。
白線から出ないでください。
さがってください。
あの…。
あ少々お待ちください。
すぐに撮影の順番まわってきますので。
いや違います違います。
私はあなたを撮影したいんです。
訓練生の方ですね。
ええ。
記念に１枚だけでもいいですから撮らせてください。
じゃあ一緒に撮りませんか？あっやった！そこのブルーのおじさんブルーのおじさん撮ってください。
いいですね。
生写真はオタクにとって宝物。
家宝にでもしてください。
はい。
撮りますよはいキムチ。
失礼ですけど恋人さんですか？はい。
あの莉緒とつきあってます。
うわ〜アハハッ。
私一緒にいていいのかな？誘ったのは私じゃないですか。
嬉しかったんです。
清村さんから鉄道訓練生の話を聞きたいっておっしゃっていただいて。
アハハッ嬉しい。
莉緒は鉄道の話となると僕とデートしてるときより楽しそうで。
まぁ僕は鉄道の話はさっぱりなしがない工員ですから。
治ったらいつも冗談ばっかりなんですよ。
清村さん鉄道好き同士語り合いましょうね。
はい。
私もいすみ鉄道が大好きでときどき乗りに来ます。
あそれからねこの自社養成乗務員制度っていうのも興味があるんですよ。
それは平成２２年から実施されているいすみ鉄道独自のユニークな制度です。
一般の社会人が訓練費用の７００万円を支払うと国交省の動力車操縦免許の資格取得を目指す訓練が受けられます。
そして資格取得後はいすみ鉄道の正社員もしくは契約嘱託運転士として運転士になることができるのです。
この制度への申し込みがあとを絶たないのは電車の運転士になりたいという子供の頃からの夢を持っている人が意外なほど多いからなのです。
かくなるこの私清村公三郎も…
この制度を知ったとき今の仕事を辞めてこの…ホントに挑戦してみようなんて気になったんですよ。
え今の仕事って？はい公務員です。
それでね子供の頃の夢を追いかけて追いかけてなんてね本気で考えちゃったんですよ。
それで女房にその話をしたら…。
いすみ鉄道の運転手になりたい？何考えてんだ！鬼のような顔になって黙っちゃったんですよ。
気分が悪いですよ。
もうそれで諦めちゃってね。
それ賢明でしたね。
私はステキだと思いますよ。
子供の頃からの夢を持ち続けるなんて。
え〜っホントですか？今日は実に楽しかったです。
まさかこの本物の訓練生の方からお話を伺えるなんて。
ありがとうございました。
嬉しかったです。
私たちも楽しかったです。
お仕事応援しております。
頑張ってください。
清村さんの夢も背負って頑張ります。
清村さんホントに宿までお送りしなくていいんですか？いいですいいです。
あの町をね散歩しながら戻りますから。
では失礼します。
大多喜はいにしえの佇まいを残す城下町です
町のシンボルである大多喜城は徳川家康の配下だった武将本多忠勝の居城。
忠勝は勇猛で名高い徳川四天王のなかでも最強とうたわれました。
いずれの戦いにおいてもかすり傷ひとつさえ負わなかったと伝えられています。
かの本多忠勝が確かにここに存在した。
私の心もはるか昔をさかのぼっていくような不思議な錯覚を覚えました。
けれどこのときは知る由もなかったのです。
あの恐ろしい事件が音もなく忍び寄っていることを…
「今は山中」〜大丈夫ですか？しっかりしてください！大丈夫で…。
（物音）〜
（寺島）えっとあの死因は日本刀によって腹部を刺されたことによる失血死でして…。
バカ野郎が！そんなことは見ればわかるんだよ。
それより目撃情報は？あはい。
えっと…。
何やってんだよ！いつもいつもグズグズしやがって。
すみません。
あの…。
なんだアンタ。
はい警視庁鉄道警察隊巡査部長清村と申します。
実は偶然現場に遭遇しましたので私が通報いたしました。
なんだ鉄警か。
で何か見たのか？はい現場から逃げていく鬼の姿を見ました鬼を。
鬼？アンタふざけてんのか？酒でも飲んで酔っ払ってたんじゃねえのか？断じてそんなことありません。
寺島あとはお前相手しとけ。
与太話につきあってるほど暇じゃねえんだよ。
ちょっと待ってくださいお忙しいでしょうが…。
あの清村さんちょっと聞いてほしいことが。
寺島さんでしたね。
はい。
私に何か？あのガイシャの身元は坂上幸一さん５０歳。
地元の造り酒屋から飲食店などを手広くやっている木戸泉酒造の社長です。
実はその坂上さんが１年前ある祠を壊しまして…。
祠ってあの神社の祠ですか？はい。
４００年以上昔この大多喜の地に住んでいた伝説の刀匠村正の祠です。
村正は血に飢えた妖刀と呼ばれました。
そんな刀に魅入られたよう刀匠村正はひたすら刀を打ち続け亡くなったあとも鬼となって刀を打ったという恐ろしい伝承があります。
その鬼を鎮めるために作られたのが村正の祠でした。
その祠を坂上さんが壊したんです。
いったいなぜそんなことを？新しい酒蔵を造るために土地を買い占めたんです。
彼はそういった伝承に一切関心がなかったので地元民の反対を押しきって。
その坂上さんの命を奪った凶器が妖刀村正でした。
いやまさかとは思うんですが清村さんが見た鬼って蘇った村正なんてことは…。
私利私欲にかられ祠を壊した坂上さんに祟りがあったんじゃ。
だからあんな無残な死に方…。
寺島さんこの世に鬼など存在しないんです。
でも清村さんも…。
そういえばそうだね。
はい。
見ちゃったんだよな。
ただわからないのはこんな辺鄙な場所で何をしていたのかということです。
まぁおそらく誰かを待っていたんでしょうな。
そのガイシャが待っていた人物こそが鬼の正体の可能性があります。
なぜあんな姿で…そしてなぜ妖刀村正で犯行を行ったのか？そこが最大の謎ですな。
あぁっ！清村さん！僕とつきあってください。
清村さん！僕の捜査に協力していただきたいんです。
いやいや…そういうふうに言われてもですね私この…しがないただの鉄道警察官ですから！あの状況での冷静な観察力洞察力おみそれしました！それに比べて僕は刑事になってから失敗ばっかりで…。
このままだと交番勤務に逆戻りなんです。
私はねただこの町に観光で来ただけですから。
それに…もう帰んなくちゃいけないんですよ。
いや…。
大変なことになるんですよ！そんなこと言わずに！ここで出会えたのも何かの縁ですから。
どうかお願いします！あの…人助けだと思って！！そんなに頼まれても…。
いやお願いしますって！いやお願いします！殺人の捜査に同行するなんて…。
それに休暇の延長は副隊長の許可取んないと。
くれぐれも副隊長には内緒でね！お土産買って帰るから。
ちょっと…清村さん！ちょっと…どんだけムチャ振り？楽しそうね。
かくれんぼ？副隊長…。
まさかとは思うけどあの暴走車両親父また勝手な真似してるんじゃないでしょうね？いえいえ！清村さんも最近ではすっかりおとなしくなってあの…ほとんど草食系男子っていうんですか？もともとカバは草食系だからね。
（くしゃみ）カバは意外と獰猛とかいいますけど清村さんにかぎってね…。
凶器に使われたのは村正の模造刀でした。
やはり何者かが村正の伝説を利用して坂上さんを殺したんですな。
えぇ。
県警本部は今のところ坂上さんの仕事関係を重点的に当たっています。
ガイシャは恨まれてたんでしょうかね。
そりゃもう！昔っから強引なやり方で仕事してたみたいですから。
坂上さんは今の仕事はもう長いんでしょうか？えぇ父親の後を継いで２０年以上やってるそうです。
〜あぁ…恵子さん！お通夜の準備お任せしちゃってごめんなさいね。
観光センターのほう大丈夫？大丈夫です。
他の職員もあとで手伝いに来ますから。
ごめんください。
幸一さんに最近何か変わった様子は？誰かに恨まれてたと聞いたもので。
いえ私の知るかぎりではありません。
ただ主人は仕事に妥協しない人でしたので外でどう思われていたかはわかりません。
そのあたりのことは顧問弁護士の田中先生のほうが。
私も心当たりはありませんね。
健二さんは東京で貿易会社を経営なさってるそうですね。
お兄さんの造った日本酒をヨーロッパとかに輸出する会社を起こして…。
えぇ昔は木戸泉酒造を手伝ってました。
兄弟二人三脚で頑張ってきた。
あの…ちょっとよろしいですか？はい。
昨夜幸一さんはどうして外出されたんでしょうか？それがいつの間にか家を出ていて。
私がもう少ししっかりしていればこんなことにならなかったのかもしれないのに。
奥さんがご自分を責めることはありませんよ。
そういったことはよくおありになるんですか？いえ結婚以来あの人が黙って家を空けることはめったにありませんでした。
それが昨夜にかぎってですか。
あっ！それと幸一さんに妹さんがおられるとか…。
清村さん…。
坂上莉緒さんですね？大多喜署の寺島です。
少しお話伺えますか？えぇ…。
それにしてもいったいどうしてこんな事件が起きてしまったんでしょう？姉さん！刑事ももう帰ったことだしくだらない芝居やめにしませんか？今の言葉そのままあなたにお返しします。
清村さんがまさか警察の方だったなんて…。
いや失礼しました。
私も莉緒さんが幸一さんの妹さんだと聞いて驚きました。
先ほどご実家のほうにお伺いして…。
葬儀には顔を出すつもりです。
今日は訓練がありますので。
こんなときに訓練ですか？おかしいですか？いやでも…。
私は訓練生になる前に決めました。
何があっても訓練だけは休まずやり抜いてみせる。
今の私にとってこの夢はそれくらい大事なんです。
その…幸一さんと最近お会いになったことは？１年前に少しだけ会いました。
もう私はあの家をとっくに出ていますので。
お兄さんと誰かがもめていたようなことをご存じないですか？知りません。
じゃあそろそろ訓練が始まりますので。
あ…はい。
いや冷静な人ですね。
お兄さんが亡くなったっていうのに人間らしくないっていうか…。
昨日の彼女はねクールでも笑顔がよかったんだよ。
どうかしちゃったのかな？あっ！まさか…まさか事件に関係してるとか？そんなこと言わないで。
すみません…。
木戸泉酒造でなにかもめごとがあったとかそういう噂はありませんか？聞きませんか？あの…よろしいでしょうか？先ほどの…。
はい。
もっと早くお話しするべきだと思ってたんですが…。
何かあったんですか？あれは１か月くらい前でした。
離せ！警察に突き出されたいのか！？いや俺はさ…少しでも金用立ててほしくてさ。
アハハハ！笑わせるな。
お前に金を貸すなんてドブに捨てるようなもんだ！なんだと！？コラ！幸一さんと健二さんが？金を用立ててほしいと…。
確かに健二さんはそう言ったんですか？間違いありません。
清村さん。
健二さんから東京で話を聞く必要ありますね。
ただいま。
おかえり。
あぁ〜！いや〜いろいろあってなんか疲れちゃったよもう。
ご飯は？なんだ…大阪にでも行くのか？うんあずさと一緒にね。
おいしいもの食べたり…ＵＳＪにも行こうかと思って。
おい！母さんとね旅行するのもいいけどお前旅行くらい一緒に行くボーイフレンドいないのか？えぇ？そういう人がいたらねお家に連れていらっしゃい。
父さんね歓迎してあげるからね。
そうそう！旅先でステキなカップルに出会っちゃったんだよ。
いや〜！せ…。
なんだよお前！ブスッと…。
あずさ最近恋人に振られたのよ。
だから私が励まそうと思って旅行を計画したの。
ったくもう…やっと本人もその気になってくれたのに！まったく無神経な…。
娘にああやって嫌がられても知りませんからね！また振られたか…。
あずさいくつになったんだよ？また婚期遅れるじゃないか！はい鉄道警察隊東京駅分駐所。
あぁ遅くなってすみません。
今東京駅に到着しました。
ニラレバ定食に中華丼？こちらラーメン屋じゃありませんよ。
えっ！？ちょっと…清村さん？僕です寺島です！いやいや…ですからね坦々麺も焼きそばもありませんって言ってるでしょ！お間違えじゃないですか？炭水化物ばっか？アハハハハ！気をつけないとね太るんですよ。
キヨさん！はい。
どこ行くの？朝からちょっと熱っぽくてイライラするもんですから風邪薬でも買ってこようかなと思いまして。
ベタすぎ！あぁじゃあ私にも胃薬買ってきていただけるかしら？副隊長も調子お悪いんですか？そうなのよ！ここんとこね胃が痛くってね…。
勝手なことばっかりする部下がいるせいかしらね。
アハハハ！いってきます。
お仕事中申し訳ございません。
いやぁすごいですね東京でこんな会社やってるなんて。
で今日は何を？実は健二さんが殺されたお兄さんともめていたという証言があったんです。
お金のことが原因で。
え？こちらの健二さんの会社あまりうまくいってないようですね。
確かにうちは経営が苦しくて兄貴に借金頼んでました。
だけどそれはあくまで兄弟として信頼してたからです。
お兄さんが亡くなった日の２２時頃あなたは何をされてましたか？またそれを証明できる方はいらっしゃいますか？え？ちょっと待ってください俺疑ってるんですか？俺が兄貴を殺すなんてありえない！ですから念のためにアリバイをお教えください。
ここにいましたよ。
証明できる人は特にいませんけど。
そうですか…。
日本刀が？彼が日本刀の収集家で本物の村正に執着してるのか。
村正に…。
坂上健二さんがこちらの顧客だとお聞きしたんですが…。
坂上さん？あぁ…。
彼がこれまでに購入したものを教えてもらえませんか？そりゃできませんよ。
うちみたいな店は顧客との信頼関係で成り立ってるんだ。
どうしてもっていうんなら令状持ってきてもらわないと。
そんな…。
ああご主人いやぁ驚きました。
陸奥大掾三善長道ここにあるじゃないですか！ああおわかりになりますか。
これがあるなんて実にご主人お目が高い。
いやあなたもなかなかのものですよ。
いえいえ感心いたしました。
この陸奥はねなかなか手に入らなかったんですよ。
いやぁご主人珍しいもの見せていただきました。
光り具合といいね…。
いやぁ…この光沢しびれちゃいました。
村正の乱れ刃紋…。
本物は違う…。
健二は村正の本物にただならぬ執着をしている。
健二には動機があるしアリバイがない。
鬼の正体の可能性は十分です。
どうします？一度引っ張りますか？もう少しウラを取りましょう。
関係者からガイシャと健二との話を聞きたいですね。
だったらガイシャの妻の坂上佳恵さんが東京にいますよ。
東京に？ええ木戸泉酒造の東京の事務所があってこっちにマンション持ってるらしいですよ。
確かに健二さんはよくうちに借金を頼みに来てました。
健二さんはどういう方なんでしょう？性格とか。
ああ…。
いつも明るくて陽気な方ですが…。
ああそうですか。
あのまさか健二さんが今回の事件に関わってるんでしょうか？まだわからないんですよ。
いろいろな可能性を考えてこの捜査してますので。
はい。
いやぁトイレまで広くて…あっ！あっすみません！大丈夫ですかかっただけですからあら…。
奥さんその傷どうなさいました？誰かにつけられた痕のようですが…。
いえ…そんなことありません。
事情を聞かせてください。
でないと他の方に聞くことになりますよ。
亡くなった主人は少しでも気に入らないことがあるといつも私を殴りました。
もともと暴力が始まったきっかけは私に子供ができないことがわかってからです。
子供ができないつらさは私も一緒でした。
なのにあんな…。
誰かに相談なさらなかったんですか？そんなことしたらもっとひどい目に遭う！私はずっと怯えてきました。
幸一さんの暴力の場面なら私も見ています。
一度怒ると手がつけられない人でしたから。
そのとき奥さんはどんな様子でしたか？ただひたすら我慢していましたね。
よっぽどできた女性みたいですね。
でも幸一さんを恨んでたんですよね？ああ寺島さん！そういうことですか。
確かにＤＶは深刻な社会問題です。
殺人の動機にも十分なりうる。
ただ私は幸一さんを恨んでいた別の人物を知っていますよ。
それはいったい…。
妹の莉緒さんです。
莉緒さんは幸一さん健二さんと母親が違います。
その母親が１年前に亡くなったときに幸一さんたちの強い意向で莉緒さんのお母さんは坂上家の墓に入れてもらえなかった。
当時莉緒さんと幸一さんたちは相当もめたらしいですよ。
治…。
ここだと思ったよ。
キミはいつも何かあるとお母さんに語りかけに来るから。
お兄さんのこと大変だったね。
あれから昔のこと思い出しちゃって…。
いろいろあったから。
お母さん寂しいだろうな。
こんな場所に１人で眠って。
莉緒の母親は水商売の女だったらしいですよ。
父親の妻つまり幸一と健二の母親を亡くした直後に知り合ってすぐに再婚したらしくて…。
しかしああいう古い家だと何かと苦労がありそうな状況ですよね。
幸一健二兄弟ももう成人してましたししかも再婚して５年後に父親が死んで莉緒は母親と一緒に家を追い出されたらしいです。
彼女も相当苦労したみたいですからせめて母を父と同じ墓に葬ってやりたいって思ったんでしょうね。
坂上莉緒には十分動機がある。
もちろん彼女以外にも容疑者はいますが。
今のところ容疑者は３人います。
金のことでもめた健二。
ＤＶを受けていた佳恵。
母のことでいざこざがあった莉緒。
くしくも３人ともアリバイがない。
逆に言えば３人とも決め手がないということですよね。
ああクソッ！いったい誰が鬼の正体なんですかね？寺島さん実は誠に残念なんですが私がお手伝いできるのもそろそろ限界なんです。
へ？というのはうちの上司はもう動物の本能をむき出しにしたような勘の鋭い女でしてね…。
はぁ…。
ですからこのへんで失礼をさせていただきます。
え？あっちょっ…清村さん。
僕離れたくないんです。
いやいやちょっと…。
不安なんです！僕を１人にしないでください。
いやいや心残りではありますが…。
清村さん！いやいや離してください。
あの私女房も子供もいます。
いや離したくないです！そんなに頼りにしてくれて嬉しいですよ！来るな！やめろ！うわぁっ！ただいま戻りました。
副隊長には強力なもの買ってまいりました。
キヨさん。
はい。
黙ってたんだけど実は私ね今度隊長に昇進できるかもしれないの。
おめでとうございます。
でもさどっかの部下が勝手に殺人の捜査なんかしてるってことがわかったらどうなると思う？そんなことがバレたら部下の監督不行き届きってことで出世の話もパーになっちゃうでしょ！また余計なことをしてくれてるらしいわね。
お言葉ですが私ちょっと調べたいことが…。
それが余計なマネだっていうのよ！！ったく…。
話はゆっくり聞かせてもらうから。
はい鉄警東京駅分駐所。
遺体が？死亡推定時刻は２２時２０分。
死因は日本刀で腹部を刺されたことによる失血死です。
目撃者情報は？会社員が犯行を目撃したというんです。
ただ鬼がガイシャを殺したとか。
鬼？おい！何勝手なことやってるんだ！？申し訳ありません。
私の話をどうか聞いてください。
何！？この件は同一犯による連続殺人であります。
これ以上犠牲者を出さないためにもどうか私の話を…。
キサマ！我々に意見しようというのか？あん？鉄警の分際で身の程を知れ！行くぞ。
はい。
犯人はまたしても鬼。
凶器の刀も村正の模造刀。
現在千葉県警と警視庁が合同で連続殺人事件としてあたっています。
健二はどうして東京駅付近にいたんでしょうかね？まだ明らかになってませんが犯行の５時間前彼のケータイに公衆電話からの着信がありました。
何者かに呼び出された可能性があります。
いやしかし驚きました。
まさか東京にまで鬼が出るなんて。
そこなんですよ。
最初の犯行といい犯人はなぜあえてその姿と凶器で殺人を行ったのか。
確かにかなり目立ちますからリスクもありますよね。
つまりそれほどの意味があるということですよ。
犯人が鬼と村正に強くこだわる何かがね。
薄気味悪い話ですよね。
あっでも残された容疑者は坂上佳恵と坂上莉緒の２人になりますよね。
これでどちらかの動機さえ見つけられれば…。
フフフやるじゃないの。
これが購入した村正か。
しかし健二さんは鬼に殺されてしまった。
まさに妖刀の呪いって感じがしますよね。
借金で大変だったのにどこにそんな大金があったのかな？こんな高価なもの僕の給料の何か月分ですかね？ハッハッハ。
あれ？これなんだろう？これはからくり箱と呼ばれます。
秘密箱細工箱とも言われる伝統工芸品ですな。
からくり箱。
これはね一定の操作をしないと開かないんですよ。
これを引っ張って…よいしょっと。
開いた！すごい！あれ？なんでこんな場所にこれがあるんだ？この鍵知ってるんですか？これはね東京駅のロッカールームの鍵です。
東京駅には現在３０か所にロッカールームがあるんですよ。
ほらこのアルファベットが東京駅を意味してるんです。
知らなかったです。
アッハッハッハ。
長居は無用。
ご苦労さまです。
何？俺たちもうすぐつきあって１年だろ？その記念にその風車の魔除けなんだ。
魔除け？ごめん。
気に入らなかった？そうじゃなくてあなたの気持が嬉しくて。
莉緒。
あっ！これ坂上幸一の妻佳恵と弁護士の田中じゃないですか！はいありがとうございます。
清村さん。
知り合いの本庁の刑事に頼んでみたら教えてくれました。
どうやら坂上健二の口座にこの半年毎月５０万ずつ入金がありました。
振り込み主は坂上佳恵。
健二は盗撮した浮気写真をネタに坂上佳恵を強請ってたんでしょう。
あっ！じゃあ坂上佳恵には幸一と健二２人を殺害する動機がある。
まいりましたね。
こんなものがあったなんて。
佳恵さんが健二さんに脅迫されてたという事実はご存じでしたか？まさか。
依頼人の奥さんと関係があったなんていうこと知られたら大変なことになってしまう。
あ…誤解しないでください。
私は暴力に苦しんでいる彼女の相談を受けているうちに少しでも力になれたらと真剣に思ったんです。
もし田中さんと佳恵さんが再婚したら坂上家の財産はお二人の物ですよね？まさか私が彼女と一緒に坂上さん兄弟を殺したとでも？動機としては十分だと思いますよ。
まあまあ。
念のためにお聞きしますが昨夜の２２時頃はどちらにいらっしゃいましたか？あれ？どうしました？なぜ答えられないんですか？池袋のホテルにいました。
それは佳恵さんと一緒にということですか？そういうわけでもないんですが…。
あっ！田中ですね！ホントに事務員の子と。
次から次と近い女に手出してどういう神経してるんですかね？ここから池袋駅までおよそ５分。
そこから丸ノ内線で東京駅まで１６分。
車だともっと時間かかりますよね。
どんなに急いでも坂上健二殺害が目撃された２２時２０分には間に合わない。
じゃあアリバイ成立。
田中はシロってことですね。
お客様のようなスタイル抜群の方にはとてもお似合いになると思います。
そうかな？はいぜひあててみてください。
え〜？そうかしら？とてもお似合いですよ。
確かに田中さんとはつきあってます。
彼が私との将来のことを真剣に考えたいって言ってくれてもちろん私もそのつもりです。
田中さんもそのつもりだったんですか？もちろんです。
誠実な方ですから。
私は彼に心配かけたくなくて健二さんに脅されていたことも黙ってました。
では昨夜健二さんが亡くなった２２時２０頃どこで何をしてたか聞かせてください。
その時間でしたら１人でドライブしてました。
お一人でドライブですか？いけませんか？考え事をしたかったんです。
東京駅周辺には向かいませんでしたか？横浜に行って帰ってきただけです。
カーナビの履歴見ていただいても構いませんよ。
失礼。
もしもし。
え？でも…。
すみませんこれから少し出かけることになりましたので。
〜あの…お願いあるんです。
ちょっとストーカーみたいな人に困ってて…。
ずいぶん時間かかってますね。
清村さん！？あ〜っちょっと男子トイレはこっちですよ！こっちこっち！あれどうして？坂上佳恵はどこに？さっきのグループだ。
清村さん！どうでした？一度見つけたんですが逃げられました。
非常線は？あっすぐに敷いてもらいます。
イヤあっ…。
あ〜っ！あっ清村さん。
坂上佳恵は？捜査本部は状況的に自殺と見てるようです。
佳恵のカバンから例の鬼の面が発見されて幸一と健二を殺害したと見られています。
僕のせいです。
僕がむざむざ彼女を逃がしたりしなかったらきっと彼女は…。
全部僕のせいなんです。
寺島さん逃げてはいけません。
え？責任を感じるんなら私だって同じです。
自分を責めるのはいちばん楽な逃げ道です。
私たちが今やることはこの苦しい状況から逃げずに乗り越えて事件の真実を見つけることです。
しかしもう犯人の坂上佳恵は…。
おかしいと思いませんか？佳恵の一連の行動が。
さっきまで楽しそうに買い物をして変装までして私たちを撒こうとしました。
そんな彼女が自殺するように本当に見えましたか？あのとき坂上佳恵は誰かに電話で呼び出されていた。
その誰かに会ったあと彼女は突然命を絶った。
もしそれが自殺ではないとしたら…。
誰かに自殺に見せかけ殺された？そうです鬼の面をバッグに入れられてね。
つまり彼女も鬼に殺されたんでしょうか？以前私は鬼などこの世に存在しないと言いました。
しかしこの連続殺人はまさに鬼の仕業。
坂上家に尋常でないほどに恨みを持つものが…。
清村さん。
気になるのはなぜ幸一健二佳恵は犯人に呼び出されて会いに行ったのか。
会わなければいけない理由があったのか。
そうか佳恵も殺されたなら残された容疑者は１人になりますよね。
清村さん！本庁の木原さんが清村さんのことで抗議に来ちゃったんですよ！アンタんとこの部下が首突っ込んだせいで容疑者が自殺したんだよ！鉄警ごときが何してくれるんだ！私結構子供の頃ヤンチャでした。
それでよく父に怒られたんです。
は？でもそれを見てると母がいつも父に言ってたそうです。
「自分で怒るのはいいけど父に怒られてるの見るとなんだか腹が立ってたまらない」って。
今ならそのときの母の気持私もよ〜くわかります。
アンタさっきから何言ってんだ！何言ってんのはそっちでしょ！何ですか鉄警ごときって！え？部下を侮辱するのもいいかげんにしてください！副隊長！上に報告するからな。
問題にするぞ！副隊長。
私のせいでせっかくの出世話がパーになりますね。
申し訳ありません。
忘れてたそのこと。
まぁでもそれよりもよっぽど大事なことがあるからね。
キヨさんちゃんと事件の真実見つけてきてくださいよ。
あっついでにおいしいお土産も見つけてきてね。
亡くなった佳恵さんとはあまり仲がよくなかったそうですね。
佳恵さんはいい家のお嬢さんでしたから。
私や母のような人間とは口をききたくないといった感じでした。
１年前お母さんの遺骨をお墓に納める件でかなりもめてたそうですが。
否定はしません。
兄たちや佳恵さんに母を侮辱され私は許せなかった。
あの家では私と母は人間扱いさえされませんでしたから。
それはいつ頃からだったんですか？父が生きている頃はまだ。
でも父が死んでからすぐ兄や佳恵さんたちは私と母をいじめて…。
あの頃は毎日生きてるのも辛かった。
でもそんな私にもたった１つだけ夢があったんです。
あの電車に乗りたい。
乗ればきっと今より楽しいところに行ける。
ここではないもっと幸せな場所へ。
いつもそう自分にいい聞かせてました。
そんな私にとっていすみ鉄道の運転士は憧れそのものだったんです。
だから私は運転士を目指しました。
でも兄たちは少しも変わってなくて私を拒絶した。
でもあなたはどこかで幸一さんたちと和解して家族の絆を取り戻したいと…。
清村さんあなたは怖い人ですね。
え？だってそうでしょ。
今もそんなに優しい顔をしていながら私が兄たちを殺したんじゃないかと疑ってる。
でもね私は殺してませんよ。
平林物産ならこの辺ですよ。
ありがとうございました。
あの…それからちょっとお聞きしたいんですが坂上莉緒さんご存じですよね？えぇ。
あんまり話したことはないですが。
どういう方ですか？こういう言い方をしていいのかわかりませんが坂上さんのお家には珍しい優しい方だと思います。
そうですか。
あっ井上さんちょっと…。
お仕事中申し訳ありませんね。
清村さんあなたがこんなところまで来たのは莉緒が犯人じゃないかと疑ってるからですよね？井上さんそんな…。
冗談じゃない。
莉緒みたいな優しい人間が人を殺せるわけがない！まあまあ落ち着いてください。
私はただ真実を明らかにしたいだけなんです。
そのためにもあなたの知っている莉緒さんの話を聞かせてください。
例えばいつ頃からつきあったとか。
１年前でした…。
離してお願い！落ち着いてください。
お母さんのところに行くの私！彼女はあのときお母さんを亡くしたショックで自殺をしようとしてたんです。
僕も早くに両親を亡くしてるからひとりで生きる辛さはわかるつもりです。
そんな彼女が今は運転士を目指して前向きに生きています。
これ以上莉緒を傷つけないでください。
それに莉緒には佳恵さんを殺すことなんかできません。
あっいました！このカメラはどこに設置されてるんですか？ああ駅前です。
いすみ鉄道で東京に行くには大多喜を２０時３分が最終電車でしたね？はい。
大原でＪＲ外房線千葉行きに乗り換え上総一ノ宮駅から総武快速線を使います。
これだと東京駅に２２時２５分に着きます。
佳恵の死亡推定時刻は２３時２５分でしたから間に合いますな。
しかし坂上莉緒は最終電車に乗っていませんでした。
彼女も井上も車の免許も持っていない。
バスやタクシーだとすぐ足がつく。
つまり坂上莉緒に犯行は不可能ということになります。
クソッこれで容疑者が全部消えた。
捜査は白紙に戻ったってことか。
戸締まり全部確認してな。
はい。
倉庫も頼むよ。
はいお疲れさまでした。
お疲れさまでした。
（足音）
（足音）やめろ！清村さん危ない！やめてください〜！すげえ！正体暴かしてもらうからな！いつまでも黙ってないでいいかげん何か話したらどうですか？失礼します。
（ノック）部外者の分際ですみません。
ちょっと清村さん。
例の池袋のラブホテルの件ですが実はホテルの防犯カメラが壊れていてアリバイの確認ができないそうです。
えっいやそれでも…。
でもこうなったら他の２件のアリバイも確認します。
連続殺人との関わりを。
ちょ…ちょっと待ってください。
確かに莉緒さんを殺そうとしたことは認めます。
でもそれだけです。
私は連続殺人とは関係ない！ではなぜ莉緒さんを殺そうとしたんですか？私は女絡みで闇金に手を出してしまいこのままじゃ身の破滅なんだ。
相続人がいなくなれば財産管理人として坂上家のカネを操作できると思った。
流連荒亡！まさに女に溺れて身を滅ぼしたわけですか。
佳恵さんに近づいたのもカネ目当てだったわけですね？そうですか。
ただまだ納得いかないことがありますね。
世間も捜査本部も連続殺人犯は坂上佳恵だったと思っていたんです。
それなのになぜ先生はわざわざ鬼の格好までして犯行に及んだんですか？考えられるのはひとつ。
先生あなたひょっとして鬼の正体を知ってるんじゃありませんか？だからこそその人物に罪をなすりつけようとした。
違いますか？私はただ半年ほど前から坂上家のことを調べている怪しい人物がいたことを知っていただけです。
怪しい人物って誰ですか？観光センターの今泉恵子です。
彼女は坂上家の何を調べてたんですか？２５年前の火災のことです。
２５年前の火災か…。
いやぁ大したもんですな。
私はこのパソコンというのはどうも苦手で。
やっとお役に立てることがあって嬉しいです。
よしこれか。
それは２５年前に木戸泉酒造で起きた大規模な火災事故。
酒蔵を３つも燃やし死傷者まで出た悲惨なものでした
２５年前にこんな事故があったんですね。
出火の原因てわかりますかね？あはい。
今泉…。
ひょっとして観光センターの今泉恵子の関係者ですかね？木戸泉酒造の従業員。
業務上失火業務上過失致死で５年の実刑を受けてますね。
寺島さん。
はい。
２５年前の木戸泉酒造のことがわかる誰かと話できませんかね？はい２５年前のあの日の火事は今も目に焼きついてます。
今泉さんてどういう方だったんでしょう？木戸泉酒造の杜氏でした。
真面目に働いてきたんになんであんなことを…。
家族思いの優しい人でしたよ。
今はどちらに？亡くなりました３か月前に。
３か月前にですか…。
あの…。
ちょっとよろしいですか？実は２５年前の木戸泉酒造の従業員の方から話を聞いたんですが。
当時店は借金がかさんで倒産寸前だった。
それなのに奇跡的に盛り返した。
なんでも火災でおりた保険金を元手に。
その先頭に立ってたのが幸一さん健二さん佳恵さんだったと。
しかし死傷者まで出したために当然失火した人物は懲役を受けた。
それがあなたのお父さんの今泉光男さんです。
そのお父さんが３か月前に亡くなった。
あなたはそれからすぐ２５年前の火災について調べ始めてますよね？なぜですか？ひょっとしてあなたは２５年前の火災に関係した何かを知ったんじゃありませんか？それでひとりで調べてる。
ならどうしてもっと早く警察に知らせてくれなかったんですか？警察に？僕たちにできることがあったかもしれないのに。
誰がアンタたちみたいな無能な連中に。
えっ？私はすべてを知ったのよ。
死ぬのが怖ぇ。
弱気にならないで。
きっと元気になるから。
うっ…。
お父さん落ち着いて！
（恵子）そこには父のこの２５年の思いが綴られていました。
あの火災の真実が…。
（恵子）木戸泉酒造の火事はね幸一と健二が保険金目的に計画したものだったのよ。
従業員の死者まで出してアイツらはカネ目的で酒蔵に火をつけた。
そして失火した犯人として自首させたのが父だった。
当時療養中だった母の入院費と手術費をまかなうという交換条件を突きつけてね。
やがて出所した父にあの兄弟は何かをしゃべることを恐れこの地に暮らすよう脅し続けた。
それは父にとって生き地獄だった。
死人まで出てる事件の罪をカネ目的で被った。
その事実に苦しめられてね。
アイツらの言いなりになってあんなことしちまった…。
アイツら？あぁ…俺は俺はきっと地獄に落ちるんだ
（恵子）父は優しい人だった。
平凡で家族の幸せだけを祈るそんな父を自分たちの私利私欲のために傷つけた連中を私は許せない！アイツらは死んで当然だったのよ！今の言葉はあなたが連続殺人を行ったという自供と見なしていいんですね？それは違う。
えっ？私に彼らは殺せない。
あっもしもし？清村さん？今泉恵子の言ったとおりでした。
坂上幸一と佳恵を殺害した犯行時刻彼女は飲み屋で働いてたんです。
間違いないんですか？えぇ観光センターの仕事のあとはいつもそこで働いてるらしいんです。
常連客の証言もとれましたし完全なアリバイですね。
坂上健二殺害の時刻はどうですか？あっそれはまだ確認とれてませんがただ少なくとも彼女は連続殺人犯じゃありません。
「今は山中今は浜」か…。
よいしょっと。
２５年前の火災と今回の連続殺人関係ないんですかね？あっこれどっちにします？決めつけるのは早いですよ。
まだ何か見落としがあるかもしれません。
でもこんだけ探してるんですけどね…。
あっ僕パワフルキムチラーメンもらっていいですか？待てよ。
たしかこの火災で死者が出たんですよね？ええ１人。
その人のこと教えてもらえませんか？はい。
よいしょ。
うっ！あっあった。
たしか従業員だったはずなんですけど…。
えっと…あっありました！黒田春子。
２５年前あなたも木戸泉酒造にお勤めだったんですか？はい。
新入社員でしたから黒田春子さんはいろいろ指導してくれました。
彼女には身内の方は？ご主人は亡くなったって聞いたけど息子さんが１人いていろいろ苦労なさっているようでしたよ。
そうですか。
今その息子さんはどちらに？たしか春子さんがあの火事で亡くなったあと親戚に預けられたって聞いたけど。
息子さんのことで他に覚えていらっしゃることは？そうそう。
息子さんの小学校入学式の日２人でこのお店に来たときにこの風車をお祝いとしてあげたわ。
入学おめでとう。
幸ちゃんありがとう
（村上）それなのに春子さんあくる日に火事で死ぬなんて…。
入学式のあくる日に火事でね…。
実はこれ魔除けなんです。
魔除けですか。
それにここにこうアザがあって…。
あれ？そういえばこの間この風車を買いに来た人もアザがあったな。
アザですか。
清村さん。
うん…。
井上はおそらく黒田春子の息子でしょうね。
でもどうして名字が違うんですかね？よその家に預けられたから変わったんじゃないですか？それにしても２５年前の事件をもう一度調べる必要がありますね。
あれ？ちょっと待ってください。
やっぱり井上には坂上佳恵は殺せませんよ。
だって彼も坂上莉緒と一緒に最終電車に乗っていない。
はいもしもし寺島です。
えっ？坂上莉緒が自首を？私が３人を殺しました。
だがアンタにはアリバイがあったって聞いてるが？人を雇ったんです。
ネットで知り合った。
莉緒さん！たしか鉄警だったな。
寺島なんでコイツと一緒にいるんだよ？あぁ…いやちょっと。
莉緒さんあなたはお兄さんたちを殺していないと私に言いましたよね？それなのになぜですか？ひょっとしてあなたは誰かをかばってるんじゃありませんか？私が３人を殺しました。
莉緒さん。
そこをどけ！これからこの女のウラを取ったり忙しいんだよ。
清村さん。
彼女は嘘をついてる。
どうしてそんなことを？誰かをかばってその罪を被ろうとしています。
あっおはよう。
あらもうお昼近いわよ。
うん昨日遅かったからね。
あっおい。
あずさ悪かったね。
恋人がどうのこうのって父さん無神経なこと言っちゃってさ。
でもね父さんホントにお前に幸せになってもらいたいからつい感情が高まっちゃってねそう言ったんだ。
けれども誤解しないでね。
おい聞いてるのかお前！ホントにしようがないヤツだな！は〜あ…おいこの梅田と淀屋橋駅は繋がってないからね。
えっ？だってほらこれ。
これはねマップ上そう見えるだけ。
そうしてあるだけ。
１回地上に出ないと乗り換えできないからね。
何よそれ！注意しないとダメよ。
だって繋がってるようで繋がってないなんてこれ紛らわしいじゃん。
紛らわしいか。
紛らわしいっていえば…そうか。
出張行ってくるから。
えっ！？今朝帰ってきたのに？もうお父さん相変わらずだね。
アンタ聞いてたの？寺島さん寺島さん！はい。
あのねこの事件でずっと気になってたのはなぜ犯人がわざと鬼の面を被って村正で犯行を行ったのか。
はじめはよっぽど何か理由があるのかなと思ったんですが別の訳があったんですね。
別の訳？考えてもみてください。
情報は公表されていないのにあのような特殊な殺し方があったら当然連続殺人だと思いますよね？ええ。
しかしそれが犯人にとっては本当の狙いだったんです。
実はこれらの事件がつながっているように見えて本当はつながっていない不連続殺人だとしたら…。
不連続殺人…どういうことですか？ここです。
これは…。
坂上佳恵の東京での死亡推定時刻は２３時２５分。
それなのに井上は２０時５分に大多喜にいたことが証明されている。
彼が犯行時刻に東京に着くには大多喜を２０時３分発の最終電車に乗らねば間に合わないのに…。
いったいどうして？
清村さんありました！清村さんのにらんだとおりです。
えぇ〜！？ありがとうございます。
あとはアリバイです。
この最後のピースがわかれば事件は解決します。
誰か見かけませんでしたか？このへんで。
２０日の２０時ですか。
はい。
見かけませんでしたですね。
２０日の２０時頃このあたりで誰か見かけませんでしたか？どんな人でしょうか？女性とかは…。
辞める！？どうしてそんなまた急に？遠くに行くことになりました。
長い間お世話になりました。
寺島さん寺島ちゃん。
見つけた最後のピースだ。
魔除け…。
今から僕と一緒に来てください。
えっ？どうしてここへ？もう少しお待ちください。
治！どうして？莉緒さん。
やはりあなたは彼を逃がすために自首したんですね。
なぜなら坂上兄弟そして佳恵さんを殺害したのは井上さんだからですね。
違います私が殺したって言ってるじゃないですか。
それに治に３人は殺せないでしょ？確かに彼１人では不可能です。
しかしここにいる今泉恵子さんと協力すれば可能なんです。
（寺島）井上さんと恵子さんが小学生のときに同級生だったことはわかりました。
３か月前今泉恵子さんのお父さんが亡くなったあと…。
私は許せない
（寺島）お二人が連絡を取り始めたこともケータイの通話記録で確認しています。
そしてあの恐ろしい事件が幕を開けたんです。
まず井上さんが坂上幸一を殺害しそして今泉恵子さんが坂上健二を殺害し…。
再び井上さんが坂上佳恵を殺害したら不連続殺人の完成です。
井上さん今泉さん。
あなたたちは３人の被害者に２５年前の事件の真相を明らかにすると言って脅して呼び出したんです。
いい加減にして！治に佳恵さんは殺せない。
今あるものをお見せします。
それは井上さんが坂上佳恵を殺すことを可能としたものです。
これは線路に不具合がないかどうか点検用に用いられる軌道バイクというものです。
最後のピース見つけた井上さんあなたはあの日このバイクに乗りましたね。
あなたは大多喜駅で２０時３分発の最終電車を意図的に乗り過ごしたあとこの軌道バイクを使用した。
あなたの靴跡が発見されました。
やがて大原駅に１時間ほどで到着。
そこからＪＲ外房線千葉行きに２１時１７分に乗った。
蘇我駅に２２時１５分着。
２２時１６分に発車した総武線快速で２３時１分に東京駅に到着した。
そして２３時２５分に佳恵を殺した。
ああ〜！
（莉緒）そんなのすべて推測じゃないですか。
どこに証拠があるんですか？証拠なら寺島さんが見つけてくれました。
町中の鍵屋さんを駆けずり回りました。
井上さんあなたが軌道バイクの合鍵を作ったことはこの鍵のシリアルナンバーから確認できましたよ。
ところで井上さん。
元の鍵はどこから持ってきたんですか？どうしました？それはね莉緒さんが持っていた鍵をあなたは盗んだんじゃありませんか？そのことに気づいた莉緒さんはあなたの犯行と確信して罪を被って自首したんですよ。
違います！
（寺島）えっ！？私は毎日鍵をちゃんと保管してます。
盗まれたことなんてありません。
じゃあ彼が合鍵を作ったのは？私が頼んだんです。
万が一なくすようなことがあってはいけないから２つ保管しておくために。
そんなバカな。
莉緒さんいい加減に目を覚ましなさい！いいですか。
彼は恐らくもう罪を認めるつもりです。
だからあなたが望んだように逃亡しなかったんです。
えっ…。
〜ここには小さい頃母とよく一緒に来ました。
ここで海を見てると悲しいことも苦しいこともすべて気持が晴れました。
母は僕を育てるために必死に酒蔵で働いてた。
そして焼け死んだ。
莉緒とここで出会ったときまさかこんなことになるなんて夢にも思わなかった。
僕は…知ってしまった。
恵子さんが３か月前に持ってきてくれた日記に書かれた２５年前の真実を。
あとは言われたとおり自首しろ。
放火じゃ保険はおりないから失火だっていうことを強調するんだ。
わかりました。
（物音）
（健二）おい！ちょっ…おい！ああ…。
黒田さん…。
な…何も…聞いてません…。
見てません…。
あ〜っ！！おいちょっと！おい兄貴！これどうするよ！？おい兄貴…。
（幸一）うわ〜っ！！キャーッ！〜問題ない。
火災のなかの事故として処理される
（井上）今泉さんは２つの事実に苦しめられていたんだ。
火災の罪をかぶったこと。
それと僕の母が殺されたことを黙っていたことに。
だから恵子さんに復讐を持ちかけたんだね？アイツらは人間じゃない。
鬼そのものだ。
だったら鬼が殺してやろうと思ったんです。
やめて治！もうこれ以上しゃべらないで！莉緒…。
キミが自首したって知ったときわかったんだ。
自分の大事な夢を捨ててまで僕をかばってくれたその気持が。
それなのに僕は…。
違う。
治はやってない。
私がやったの。
早く私を逮捕して！どうしてですか？どうしてそこまで？あのとき…。
治は私を救ってくれた。
ここで死のうと思った私を。
嬉しかった。
まだ私のことを思ってくれている人がいる。
訓練生だって治が応援してくれなければ挑戦しようなんて思わなかった。
治が私に夢をくれた。
ううん…治とずっと一緒にいられることが私の本当の夢だった。
優しい人なんです本当に。
人なんて殺せるはずないほどに。
莉緒さん。
あなたは井上さんに救われたと言いましたね。
しかし救われたのはあなただけじゃないんです。
井上さんだってあなたに救われたんですよ。
えっ？だからこそ井上さんは…。
真実を明らかにした。
ね？復讐の鬼となった彼に人の心を取り戻させたのはあなたと過ごした時間だったんです。
キミは何かあるといつもお母さんに語りかけにくるから〜私は思います。
あなたたち２人がもっと違う形で出会っていればと。
違う…彼じゃない！私が殺したんです。
違いますよ。
フフッ…。
なんでそこまで井上さんを？私は…。
どうしても治を守らなければいけないんです。
莉緒。
ありがとう。
治…。
〜ねぇあれどう思う？よくわかんないですけどでも何か怖いですよね。
あっ…まさかボケちゃったとか？私イヤよ！あんな部下の介護なんかするの。
（萌）私だってイヤですよ！
（莉緒）「清村さん。
私はまた毎日運転士の訓練頑張っています。
もう一度夢に向かって。
一人前の運転士になれたらぜひいすみ鉄道に乗りにきてくださいね。
また会える日を楽しみにしています」。
あずさお前なにニヤニヤしてんだよ？彼と一緒に撮った写真がいい感じでさ。
ほら見て見て。
いつの間にお前…。
あっ彼がね今度家に遊びにきたいって。
え〜っ？あらいいじゃない。
ちょっと見せて。
あら！いい男じゃない。
ね〜っ？何が好きなのかな？食べ物。
家にね来るのはいいけどさいろいろ聞くぞ根掘り葉掘り。
イヤだお父さん。
取り調べみたい。
そりゃそうだよお前。
大事な一人娘持っていかれるんだから。
なあ？アハハ！あんなにお父さんが彼氏作れって言ってたんじゃん。
あのときは…あのとき。
今日は今日の気分だよ。
人はきっと愛があるから生きていける。
だから今日も大切な人たちを思って過ごしていこう
2014/10/01(水) 21:00〜22:48
テレビ大阪１
水曜ミステリー９　特選！秋の旅情サスペンス「鉄道警察官　清村公三郎