地球ドラマチック「月と衛星 宇宙の神秘〜生命は存在するのか〜」 2014.09.15

宇宙では全てのものが何かの周りを回っているように見えます。
惑星は恒星の周りを衛星は惑星の周りを回っています。
月も衛星の一つです。
衛星の中には度々噴火するもの厚い氷や海に覆われたものがあります。
(マッケイ)生命が存在する可能性も大いに考えられます。
宇宙はどのように成り立っているのか。
月をはじめとする衛星の知られざる物語に迫ります。
太陽系には私たちの地球を含む8つの惑星が存在します。
8つのうち水星と金星を除く6つの惑星には周囲を回る衛星があります。
衛星とは惑星や小惑星の周りを公転する天体です。
その数は太陽系全体で300以上ともいわれます。
衛星には一つとして同じものはなくそれぞれに特徴があります。
(マッケイ)太陽系にはさまざまな惑星がありますがそれ以上に興味深いのは惑星の周りを回る何百もの衛星です。
地球の衛星である月には大気がほとんどありません。
しかし太陽系の他の衛星には海や大気に覆われたものがあります。
知れば知るほど面白い存在です。
太陽系最大の噴火。
極端な低温の世界。
広大な海がある衛星もあります。
火山が氷の層を吹き飛ばす事もあります。
極度の低温で液体となったメタンが雨のように降り注ぐ事もあります。
(グリンスプーン)激しい火山活動で地形が変化し続ける衛星や宇宙空間に氷を噴き上げる衛星もあります。
衛星で起きている事は私たちの想像をはるかに超えています。
太陽系の探査が進むにつれて衛星は実にミステリアスでそれぞれ独特の特徴がある事が分かってきました。
土星と木星は水素やヘリウムなどで出来た巨大なガスの惑星です。
どちらにも60以上の衛星があります。
表面は白と黒まだらの模様です。
オレンジ色のタイタンは土星最大の衛星です。
氷に覆われたエンケラドゥスは宇宙空間に氷を噴き上げています。
見た目も性質もさまざまな衛星ですが一つだけ共通した特性があります。
引力によって惑星の周りを回っている事です。
衛星には惑星の公転や自転を安定させ太陽系のシステムを円滑にするという役割もあります。
衛星は自然の法則にのっとった動きをする一方で驚くほど不規則な動きもします。
天体の衝突などにより予想外の現象が起きるからです。
衛星は宇宙空間のガスの雲が密度を増す過程で生まれました。
誕生したばかりの星の周りには大量のちりやガスが散らばっています。
ちりの粒子はゆっくりと結合し岩の塊になります。
岩同士がぶつかったり引力で引き合ったりして塊は徐々に大きくなっていきます。
「降着」と呼ばれるプロセスです。
(ドゥルダ)雪の玉が坂を転がるのに似ています。
下るにつれて玉はより大きく頑丈になりスピードを速めます。
惑星や衛星は全て降着によって宇宙のちりやガスを集めながら形成されていきます。
2003年国際宇宙ステーションで降着という現象の仕組みを解明するある実験が行われました。
無重力空間でプラスチックの袋の中に塩と砂糖を入れます。
するとバラバラの粒子が結合し始めました。
これが降着です。
降着によって太陽系には8つの惑星と大小何百もの衛星が誕生しました。
しかし誕生のプロセスは同じでも衛星の姿はさまざまです。
木星の2つの衛星カリストとガニメデを例に見てみましょう。
ガニメデとカリストは木星が誕生して間もない頃に木星を取り巻くちりから生まれました。
ガニメデが誕生したのは木星に近いちりの多い空間でした。
ちりが大量にあったため1万年ほどで素早く形成されました。
温度が高いためにガニメデの表面は岩と氷の2つの層に分かれました。
(ヘンドリックス)衛星の構造や地形は誕生した時のエネルギーによって異なります。
形づくられる過程でどれだけの熱を帯びどれだけのエネルギーを失ったか。
そうした条件が衛星ごとに特有の外見や動きを生むのです。
一方カリストは木星から遠いちりや熱の少ない空間で誕生しました。
ガニメデよりも形成されるのに時間がかかりしかも短時間で冷却されたため岩と氷が分離しませんでした。
カリストの表面はガニメデよりも均一です。
誕生した衛星が安定した軌道に乗れるかどうかは形成される場所によります。
惑星に近すぎるとその引力によって粉々に砕けてしまいます。
木星が誕生して間もない頃多くの衛星が木星の引力に引き込まれ消えていったと考えられています。
(ドゥルダ)出来たばかりの木星の周りには大きな衛星がベルトのように連なって周回していたと思われます。
多くは木星に引き寄せられて消滅しましたがぎりぎりのところでうまく軌道に乗った一部の衛星が今日まで残ったのです。
巨大な木星は今も周りの衛星を引き寄せています。
今ある衛星もいつかは木星にのみ込まれるかもしれません。
次は惑星の引力によって発熱する衛星を見てみましょう。
太陽系最大の惑星木星。
周囲には60以上の衛星があります。
中でも大きな4つの衛星は17世紀天文学者ガリレオによって発見された事から「ガリレオ衛星」と呼ばれます。
ガリレオ衛星を見ると惑星の引力が衛星の動きにどのような影響を及ぼしているかが分かります。
ガリレオ衛星の中で木星に最も近いのはイオ。
木星からおよそ42万km離れた所を周回しています。
これは地球と月の距離にほぼ匹敵します。
しかしイオの表面には月面のようなクレーターが見当たらず比較的新しい地層ばかりです。
一体なぜなのでしょうか。
イオの地質は常に激しく変化しています。
火山の噴火など極めて活発な地殻変動が続いているからです。
イオの表面に噴火する何十もの火山がある事を突き止めたのはNASAの無人宇宙探査機ボイジャー1号でした。
この映像はイオの火山が大噴火する瞬間を捉えたものです。
噴煙は320kmの高さまで噴き上がっています。
なぜイオには活発な火山があるのでしょうか。
その理由は木星と周囲の衛星が及ぼす引力にあります。
イオは巨大な木星と近くを通る衛星の双方の引力に引っ張られ常に揺さぶられています。
この「潮汐力」と呼ばれる力によってイオの内部にはゆがみと猛烈な熱が生じているのです。
太い針金を折れるほど曲げると針金が摩擦で熱を帯びますね。
それと同じでイオの激しい火山活動は内部のゆがみから生じた摩擦熱によるものなんです。
イオの内部の温度はどんどん上昇しついには溶岩を大噴火させます。
イオの噴火は太陽系における引力の相互作用がどれほど大きいかを物語っています。
イオは常に木星と他の衛星に引っ張られる結果大量の熱を発生しているのです。
流れる溶岩は古い地層の上に堆積します。
イオの表面にクレーターがなく滑らかに見えるのはそのためです。
イオの次に木星に近いガリレオ衛星エウロパ。
木星の引力はこの衛星にも大きな影響を及ぼしています。
エウロパの表面はイオとは対照的に非常に低温です。
温度は氷点下160℃以下で厚い氷の層に覆われています。
しかしイオと同じようにエウロパの内部もまた木星の引力によって熱せられています。
氷の一部は解けて水になっていると考えられています。
(ヘンドリックス)エウロパの氷の層の下には海が広がっている可能性が高いと思います。
海はエウロパ内部の熱によって温められ生命誕生のもととなるある種の栄養素を生み出していると予想されます。
エウロパは地球以外で生物がいる可能性が高い場所の一つです。
近い将来地球から送られた探査機によってエウロパの海の謎が解明されるかもしれません。
イオやエウロパの他にも木星の周りを回る衛星は60以上存在します。
木星から遠く離れた場所を周回する衛星は木星の引力が弱いため内部で発熱する量も僅かです。
しかし荒涼としたそれらの衛星にも興味深い痕跡が発見されました。
無数の衝突の跡です。
天体同士の衝突が特徴ある衛星の体系を生み出したと考えられています。
太陽系の惑星で最も特殊な衛星の体系があるのは土星です。
土星の周りを回る天体は広範囲に広がりその数は厳密には10億個以上あります。
大きさはさまざまで多くは小さな岩や氷のかけらです。
それらが円を描くように集まり土星の環を構成しています。
たとえ小石ほどの大きさでも惑星を周回するかぎり本質的には衛星と変わりません。
土星の環に含まれる粒子は全て衛星のようなものですが小さなものは「衛星」とは呼んでいません。
中には直径が1km以上のものがありそれらは「小衛星」などと呼ばれる事もあります。
土星の環がどのようにして出来たのかは天文学における長年の謎でした。
1990年代土星探査機カッシーニが打ち上げられました。
(管制官)「発射準備。
1分15秒前」。
1997年に打ち上げられたカッシーニ。
土星の軌道に到達するまで7年もかかる大きな挑戦でした。
カッシーニを載せた巨大なロケットが打ち上げられる瞬間かつてない緊張に包まれました。
私たちは何年もの間この探査機のために全精力を注いできました。
その全てが一瞬で無に帰すかもしれないのです。
(アナウンス)「土星まで十数億キロの長い旅です」。
打ち上げは成功。
7年後カッシーニはついに土星の軌道に到達しました。
(ポルコ)これはカッシーニが撮影した土星です。
この時太陽はちょうど土星の向こう側にありました。
土星の見事な環が光によって浮き上がって見えます。
この壮麗な眺めの中に小さな光る点が確認されました。
それは地球です。
十数億キロかなたから捉えられたものです。
カッシーニの探査によりそれまで8つだと思われていた土星の環が30以上ある事も確認されました。
(ポルコ)カッシーニは想像以上にすばらしい成果をあげています。
何よりあらゆる角度からの詳細で鮮明な画像は衝撃的でした。
土星の環はおよそ40億年前に土星が誕生した際の氷のかけらで出来ていると考えられています。
しかしそれだけ古ければ通常は宇宙のちりに覆われているはずです。
土星の環がなぜ真新しいもののように明るく光っているのかは長い間謎でした。
謎を解明するためカッシーニは土星の環に接近し多くの画像を撮影しました。
画像には氷のかけらが衝突と崩壊を繰り返す様子が捉えられていました。
衝突によって氷が削られ光沢のあるきれいな表面が保たれていたのです。
初期の土星に環は存在せず多くの衛星が周回していたと考えられています。
ある時氷で覆われたすい星が接近し衛星の一つに衝突します。
すい星は粉々に砕け散りました。
衛星もぶつかった衝撃で土星の方へ押しやられ土星の強い引力によって崩壊します。
衛星のかけらとすい星の氷は宇宙空間で混ざり合い徐々に土星の引力につなぎ止められました。
それらが土星の環となったのです。
衛星の成り立ちには引力が不可欠です。
引力は衛星の周回を助け熱エネルギーを生み出すもととなりまたある時は衛星を崩壊させる力となります。
更に引力はすい星や小惑星を捕まえ新たな衛星を誕生させる事もあります。
太陽系の衛星の多くは惑星が誕生した時に残った破片が集まったものです。
しかし中には全く違う過程を経て誕生したものもあります。
惑星の引力に捕らわれたのです。
宇宙を漂うすい星や小惑星は本来太陽の周りを公転する天体ですが何らかの要因で軌道を外れ別の惑星の引力に捕まる事があります。
惑星の引力が弱ければ再び離れます。
引力が強すぎれば惑星に衝突します。
引力がちょうど釣り合う時すい星や小惑星は「衛星」の仲間入りを果たします。
火星の小さな衛星フォボスとダイモスはどちらも火星の引力に捕らえられた小惑星です。
ダイモスは公転しながら次第に火星から遠ざかっています。
一方のフォボスは少しずつ火星に近づいているため最終的に火星に衝突すると考えられています。
地球の「第2の月」とも呼ばれる小惑星クルースン。
地球を公転しているわけではありませんがその軌道は地球の引力の影響を大きく受けています。
(ドゥルダ)クルースンは1986年に発見されました。
地球の衛星ではないのに地球に従っているようにも見えます。
直径僅か5kmほどのクルースンはほんの数千年前まで太陽の周りを他の惑星と同じように公転していました。
しかし地球の引力によって徐々に軌道がそれ始めました。
クルースンの軌道は地球からある程度の距離を保ち地球の後を追うようにして太陽を公転しています。
クルースンを「地球の衛星」と呼ぶのは正しくありません。
実際には地球ではなく太陽の周りを回っているのです。
小さな惑星が更に小さな天体を捕らえる事もあります。
1993年木星探査機ガリレオが小惑星イダの近くで発見した衛星は直径が800mしかないものでした。
(ドゥルダ)ガリレオが探査を始めてすぐにこの衛星が見つかりました。
恐らく宇宙にはこのような事例があふれているのでしょう。
捕獲された衛星の中にはかなり大きなものもあります。
その代表格がトリトン。
海王星の衛星で直径が2,700kmあります。
トリトンの軌道は通常の衛星とは異なっています。
トリトンは科学者たちの頭を悩ませる衛星です。
大概の衛星は惑星の自転と同じ方向に公転します。
しかしトリトンはそうではなく海王星が自転する方向とは逆向きに公転しているのです。
この事はトリトンが海王星が誕生した時のちりから出来たものではない事を意味しています。
(グリンスプーン)トリトンは大きくて軌道も変則的。
海王星の衛星の中では異質な存在です。
よそから来て海王星の引力に捕まったと考える方が筋が通っています。
科学者たちは太陽の周りを公転していたトリトンが海王星の巨大な引力に捕らわれたと考えています。
(ヘンドリックス)トリトンは太陽系の端の方で形成され何らかのきっかけで海王星の引力に捕らえられたのでしょう。
初期のトリトンには独自の衛星があったかもしれません。
トリトンは今も少しずつ海王星に引き寄せられています。
遠い将来海王星の引力によって砕け散ると考えられています。
宇宙空間に飛び散ったトリトンのかけらは海王星の環へと姿を変えるかもしれません。
では地球の衛星月はどのようにして誕生したのでしょうか。
その答えは月の岩石から見いだされました。
月は地球の存亡に関わる劇的な出来事によって生まれたのです。
ごつごつした岩とたくさんのクレーターがある月。
長い間月は地球が誕生した際のちりから形成されたと考えられてきました。
しかし現在は根本的に異なる説が有力になっています。
月は惑星同士の巨大な衝突ジャイアント・インパクトから生まれたという説です。

(ハートマン)月が惑星の衝突から生まれたという説を私たちが発表した当初周囲の反応はおおむね否定的でした。
従来の月の形成理論を打ち崩し大規模な変動があった事を証明するには何か具体的な証拠を見つける必要がありました。
必要とされる証拠は月そのものにありました。
1969年アポロ宇宙船の飛行士が人類史上初めて月面に降り立ちます。
アポロ計画のミッションの一つは月の岩石を地球に持ち帰る事でした。
分析結果は驚くべきものでした。
月の岩石は地球の地殻とそっくりでしかもかなりの熱にさらされた痕跡がありました。
(ハートマン)誕生したての地球に何かが衝突し剥がれて飛んだ岩石が軌道に乗って衛星すなわち月になったのです。
月は地球の岩石の残骸です。
地球と惑星の衝突は46億年前に起こりました。
ジャイアント・インパクトです。
そのころ太陽系はまだ混とんとし太陽の周りには今よりもずっと多くの惑星が回っていました。
その中に「テイア」と呼ばれる火星ほどの惑星がありその軌道は地球の軌道と交わっていました。
地球とテイアは時速何千キロものスピードで衝突しました。
テイアは完全に崩壊。
地球も一部を失いました。
衝突によって宇宙に飛び散った岩石はやがて地球の引力に引き寄せられ地球を回る軌道に乗ります。
月という地球の衛星が生まれたのです。
これが月誕生の有力な説です。
月誕生の理論は最新のテクノロジーによって立証され始めました。
NASAの研究施設で46億年前の衝突のシミュレーションが行われています。
この巨大な発射装置は物体を時速2万9,000kmの速さで飛ばす事ができます。
発射されるのはテイア。
赤いボールが地球です。
どのくらいの角度で衝突すれば月が生まれるのでしょうか。
1回目。
テイアは地球の上部をかすめました。
衝突によって地球がどうなるかスローモーションで見てみましょう。
地球の一部が飛び散っています。
ぶつかった場所には巨大なクレーターが生じます。
これが実際の地球だとすればクレーターの大きさは恐らく直径が何千kmにも及ぶでしょう。
しかし衝突によって飛び散ったかけらは月を形成する量には達しませんでした。
角度を変えて再び実験します。
2回目は正面衝突です。
(シュルツ)地球が吹き飛んでしまいました。
一巻の終わりです。
残骸の一部は太陽系の外へ放り出されたり再び小さな惑星となったりするでしょう。
地球がなくなれば月が生まれる可能性もありません。
次は1回目と2回目の中間になるように角度を修正します。
地球が何とか持ちこたえうる激しい衝突です。
(シュルツ)これを見て!46億年前の地球です。
地球の一部が飛び散り崩壊こそ免れましたが衝撃は地球全体に及んでいます。
あ〜…ものすごい勢いで飛び散っています。
この衝突こそが月の起源です。
衝突する角度が少しでも異なっていたら月は誕生せず地球が消滅していた可能性もありました。
ジャイアント・インパクトは地球の運命を左右する出来事でした。
現在月は地球からおよそ38万km離れた所を回っています。
しかし誕生したばかりの月と地球の距離はおよそ2万kmしかありませんでした。
月の誕生から5億年後に空を見上げたとしたら空の大半を占める巨大な月が見えた事でしょう。
それほど近かったんです。
かつて地球の自転は今よりもずっと速く一日は6時間しかありませんでした。
月の引力は地球の自転にブレーキをかける役割を果たしました。
現在一日が24時間あるのは地球の自転速度が徐々に遅くなった結果です。
更に月の引力は潮の干満をもたらしミネラルや栄養分の豊富な海をつくり出しました。
地球上に生命が誕生したのは月という衛星が偶然生まれたおかげなのです。
さまざまな成り立ちの衛星はまるで宇宙における壮大な実験場のようです。
太陽系の衛星の中には生命が存在するものもあるのでしょうか。
宇宙探査が進むにつれて衛星にはそれぞれ特徴がある事が分かってきました。
巨大な火山や氷の下に海が広がる衛星もあります。
いくつかの衛星には生命の源である有機化合物が豊富に存在する事も分かってきました。
生命誕生の可能性が高いのは太陽系の巨大惑星木星や土星の衛星です。
もし地球以外で生物が発見されれば宇宙における生命の成り立ちを理解する第一歩となるでしょう。
多くの衛星は一見生命が育つのに適した環境ではありません。
土星の衛星エンケラドゥスは直径およそ500km表面が厚い氷に覆われ宇宙空間で常にきらきらと輝いています。
太陽系の中で最も明るい天体です。
表面の氷が光をほぼ100%反射させるからです。
2005年土星探査機カッシーニがエンケラドゥスの表面から噴き出す氷を撮影しました。
木星の衛星エウロパと同様内部で発熱し氷の下に暖かな海があるようです。
ここはイエローストン国立公園。
後ろに見えるのは間欠泉で水蒸気と水が45mの高さまで噴き上げられています。
エンケラドゥスの表面にもよく似た間欠泉があります。
ただしはるかに大規模でこの何千倍も高く氷の粒や水蒸気を噴き出しています。
氷が噴き出すのは土星の引力によるものです。
土星の引力によって衛星内部が発熱し氷の下の水が膨張して外へ出ようとします。
水は冷えて氷の結晶となり宇宙空間へ噴き出されます。
太陽系における最も壮大な噴火の一つです。
カッシーニの探査によってエンケラドゥスの噴出物から塩と有機化合物が検出されました。
つまり氷の下の海には生命の源となる栄養素が含まれている事になります。
(ポルコ)そこには地球の海と似たような環境が存在するかもしれません。
まさに世紀の大発見です。
エンケラドゥスの他にも生命が存在する可能性の高い衛星があります。
土星最大の衛星タイタンです。
2005年カッシーニから送り出された小型探査機ホイヘンスが初めてタイタンの表面の撮影に成功しました。
バッテリーが切れるまで僅か3時間半の撮影でしたが生命と関わりが深い「あるもの」が映し出されていました。
タイタンの表面には雨が降っていました。
雨粒は地球の2倍の大きさでその成分は水でなくメタンでした。
地球ではメタンは気体ですがタイタンは気温が低いためメタンが液体で存在しています。
雨が降れば川や湖が出来ます。
そしてそこにはごく小さな生き物がいるかもしれないのです。
メタンの湖に生物が存在する事は地球上の常識では考えられません。
しかし科学者たちはタイタンなどいくつかの衛星がソリンという有機化合物で覆われている事に注目しています。
ソリンには生命を誕生させる化学成分が含まれ微細な生物が育まれる可能性があるのです。
地球にはソリンは存在しませんがタイタンの表面にあるのと同じ気体を使って人工的にソリンを作り出す事ができます。
これが研究室で作ったソリンです。
「非生物有機物質」とでも言いましょうか。
メタンや窒素にエネルギーを加えた結果出来上がりました。
赤茶色の物質ソリンはタイタンをはじめ土星や木星など巨大惑星の衛星の表面に豊富に存在します。
これらはいずれ生命を誕生させるもとになると考えられています。
太陽系のどこかの衛星で生命は既に誕生しているのかもしれません。
それがどのようなものかは誰にも分かりません。
生命が地球上のものと同じ姿をしているとは限りません。
違う方が面白いと思います。
惑星探査機から送られてくる新たな発見の数々。
いつか私たちの宇宙や生命に対する見方が大きく変わる日が来るかもしれません。
(ポルコ)太陽系の中で生命が1度ならず2度も誕生していたとしたら生命が地球独自のものだという考えは吹き飛ぶでしょう。
生命は宇宙の普遍的な存在なのかもしれません。
衛星は多種多様で変化に富んでいます。
そして宇宙の成り立ちと大きく関わり惑星の軌道を安定させる重要な役割を果たしています。
衛星がなければ太陽系は全く別の姿になっていたでしょう。
月がなければ地球上に生命は存在しなかったかもしれません。
いつか宇宙のどこかで新たな生命が発見されるとしたらそれは衛星なのかもしれません。
2014/09/15(月) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「月と衛星 宇宙の神秘〜生命は存在するのか〜」[二][字][再]

夜空に浮かぶ月はどのようにして生まれたのか?太陽系には月を始め、多くの衛星がある。火山や氷など様々な姿を見せる衛星。生命体は存在するのか?衛星の秘密に迫る。

詳細情報
番組内容
私たちにとって最も身近な衛星は「月」だ。太陽系には300以上の衛星があると言われる。月は46億年前、地球に惑星が衝突したことで誕生した。衝突で飛び散った岩のかけらが集まってできたのだ。実験で衝突の衝撃を再現する。また木星や土星の周りを周っている衛星の誕生の経緯を紹介。なぜ衛星にはさまざまな特徴があるのか。衛星に生命体が存在する可能性に迫る。(2010年アメリカ)
出演者
【語り】渡辺徹

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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