ライブが近づくと不安に駆られる
いつものことだった
ひたすら歌い込みを繰り返すのもいつものことだ
(ファンキー加藤)頭で考えてるようじゃライブ中に失敗するんですよ何回も何回も歌って体で歌えるようにお願いします・「大丈夫まだ終わってない」・「何も終わってないよ」・「いつだって今がすべての始まりなんだ」・「君のことが好き」
歌い込みは時に4時間にも及ぶ
・「今の自分を好きになれなくても」
いつもと違うことがあるとすれば傍らに2人の仲間がいないこと
超人気グループ「FUNKYMONKEYBABYS」のリーダーだった
・「俺たちはまだちっぽけで手のひらの中には」・「この手のひらの中には何もないけど」・「雨に打たれ風に吹かれ」
前向きな歌の言葉と親しみやすいメロディーで圧倒的な支持を集めた3人組
・「あと一粒の涙でひと言の勇気で」・「願いがかなうその時が来るって」
家庭の事情でメンバーの1人が脱退することになり話し合って解散を決めた
最後のステージは東京ドーム
10年にわたる活動のまさに絶頂期だった
10年間ありがとうございましたありがとう
そして加藤は1人になってしまった
とにかく…
解散から1年
多くのヒットを飛ばしてきた「ファンモン」のリーダーが苦しんでいた
自分はどこに向かえばいいのか
生まれ育ったこの街を加藤はずっと心のよりどころにしてきた
ここホントね小学校の頃住んでたとこの近所ちょっと川向こうのほうに住んでたしさっき通ってきた高校うちのおふくろの出身校だし
今もよく足を向ける
(男子生徒)はい北高です
(男子生徒)はい
(男子生徒)握手してもらってもいいですか?えっ?ちょっと無理だな…この距離はなでも覚えとく…ありがとう
(男子生徒)ありがとうございます
「ファンモン」を結成したのもこの街だ
なじみの店に誘ってくれた
どうも
(店員)ご無沙汰してます
注文は担々麺をヒントに「ファンモン」のメンバーが考案したその名も…
もう大好きですたまやさん大好きいただきますファンモンうどん食べてくださいよちょっと…取材ほどほどにしてこれ本当にうまいすからね大体うまいって言いますね「大体うまい」ってちょっとおかしいな
潔く解散した「ファンモン」もソロに転じた加藤もここ八王子では変わらずに愛されていた
だがアーティストは走り続けなければならない
・おはようございますおはようございますおはようございますお願いします
この夏全国の音楽フェスティバルにできるかぎり参加すると決めていた
ソロとしての存在感をアピールしなければ…
・「Ah悲しみを超えて大きな声で」・「『ここにいるよ』と歌ってるんだ」
ひと夏だけで5つのフェスに出演し秋には初めてのアルバムを出す
まるで自分を追い詰めるように
ヘイ!
皮切りは福岡で開かれるフェスティバル
ソロになって発表してきた3枚のシングルはいずれも反応がいまひとつだった
よろしくお願いします
それだけに地元のメディア回りにも熱が入る
休みませんね休まないですよいやいや…忙しいほうがいいじゃないですか
(ラジオパーソナリティー)ライブなのに来ますか?来ますよそれはもちろん当たり前じゃないですか
(ラジオパーソナリティー)すごいな
ヒットを連発した「ファンモン」時代は過去のこと
失礼します
新人のようだった
また是非ともよろしくお願いします自分がいないのにそれでも世界が淡々と回っていることが怖かったですね忘れ去られちゃうみたいな恐怖心もあったしもうホント何も決まってないのに「ソロ活動します」って宣言したのは居ても立ってもいられない心境そのものですよね
得体の知れない焦燥が加藤を駆り立てている
「ファンモン」としては常連だった福岡のフェスティバル
記憶は楽屋にも染みついていた
それこそ前だったらさ大体もうケミカル寝てるわけですよここで椅子を並べて寝てるんですよそれを見て「あ〜」って「そうだなそんな緊張してもしかたねえな」とパッと見るとモン吉はめっちゃ飯食ってるんですよケータリングの「そうだなよしリラックスしよう」ってなったんですよ
落ち着いて出番を待てる気分ではなかった
ソロになって初めて挑む本格的なライブ
他のバンドで盛り上がる会場がまぶしく見えた
たった一人で歌いきれるだろうか
頑張るぞ!
3人の時は役割が決まっていた
「FUNKYMONKEYBABYS」だ〜!
(歓声)
1人が客席をあおり…
ツインボーカルの1人がペース配分に心を砕く
その絶妙なバランス
・「情けないほど小さな勇気と」恥ずかしいくらいの大きな希望を」
だから加藤は歌うことに集中できた
独りぼっちのステージにあのバランスはない
出番が迫ってくる
高鳴る鼓動が聞えてきそうなほどに加藤はテンションを上げていった
・「あ〜あ〜あ〜あ〜あ〜あ〜あ〜あ〜」ナンバーシヨット!飛べ!飛べ飛べカモン!
1年ぶりの光景に体中が沸騰していく
・「もうちょっとあとちょっとだけ」・「僕のそばで笑っていて」・「昨日と違う明日をそっと君に手渡すから」
3曲目が終わる頃…
あと3曲を残して加藤の動きが止まってしまった
明らかに飛ばし過ぎだった
(歓声)
最後の2曲をどう歌いきったのかそれさえ定かに思い出せないほど消耗していた
あ〜…あつかったあつかったね
1978年生まれの加藤は中学時代いじめに遭った
救いになったのがロックバンド「THEBLUEHEARTS」
歌詞がメロディーが心に染みた
自分もミュージシャンになりたいと思った
2人の仲間と巡り会い25歳の時「FUNKYMONKEYBABYS」を結成
歌詞の多くを加藤が書いた
一貫して聴く者を応援するような歌を歌い続けてきた
・じゃあまず撮っていきます・はいせ〜の平成元年…いや元年の時は俺たちはもう小学校だからこれ俺らの時と変わんねえな・「思ってたよりも弱くて」・「でも何かをしてあげたくて必死に叫んでいた」…サード行くぞライトレフト!お〜
フェスティバルの合間を縫って新曲作りにも取り組んでいた
(チャイム)おはようございますよろしくお願いします
「ファンモン」時代から音楽プロデュースを担当しているヤナギマンのスタジオ
作りますか〜作りますか今日もね曲を
秋に出すソロ初のアルバムは勝負の一枚になる
用意してきた歌詞のメモに何度も手を入れた
浮かんだ言葉から次々にイメージを膨らませていくのが加藤のやり方
骨格が出来上がると何が表現したいかを伝え意見を聞きながら磨きをかけていく
俺さっきからずっと考えててでもうまくいかないんだけど「俺人混みが苦手だ」とそういう人って多いと思うんですよ人混みが苦手と言うと田舎者と笑われるかもしれないけど自分の存在がそういう何かこう…雑踏の中で存在が小さく思えちゃうからすごく嫌なんだ…みたいなさ
自分であり続けたい忘れ去られずにいたい
う〜ん…
それはどこか加藤自身への応援歌のようだった
僕は本当の意味でいうと…ただすごく稚拙なこと言うと…もうただただ…おはようございますおはようございます
1か月後
出来上がった新曲のレコーディングに臨んだ
心の奥の深い所から引き上げてくる言葉
その強さを信じている
・「ムダなことなんてひとつもない」
たとえ孤独を歌ってもポジティブに
加藤の明るさを支えているのはDNAかもしれない
ちなみにもう亡くなっちゃったうちのおじいちゃんね90歳ぐらいの時にうちのおやじがその時60ぐらいだったかなすごく温厚なおじいちゃんだけどえらい怒ってうちのおやじが事業失敗していろいろふさぎ込んでた時に「てめぇ!」と…「お前60のはなたれ小僧が世の中知ったような口きくんじゃねえ」って言ったんです90歳が…ぐうの音も出ないじゃないですかそれで考えたら35の俺なんてもう精子ですよ・ようやく歩きだしたぐらいで…ようやく歩きだしたぐらいですよようやく歩きだしたぐらいですよホントに
この日八王子の実家へ
ただいま
音楽を始めた時も「ファンモン」を結成した時も真っ先に「頑張れ」と言ってくれたのは家族だった
ヘイ
(初江さん)お帰り〜あら…
(孝則さん)お帰りなさいませ〜来たよファンキーおじさんファンキーおじさん来たよ
加藤が帰ると兄弟一家も集まって宴会になる
わっ!びっくりしてる・あ〜泣く泣く…
(泣き声)
(一同)ハハハハ…ハハハハ…自由にやってくれって言うのふだんの俺でいいって言うんだよ
(圭介さん)あぁそっかそっか
(圭介さん)厳選して使ってくれるから?うん
(スタッフ)兄弟仲いいんですか?仲いいですようちは仲いいですね年子だからねだから意外と何かさ兄弟で俺ぐらいの年になってちょっと疎遠になってるとかたまにいるんだけど俺は考えられないっすね自分ここ帰ってくる時は俺と圭介に「今日実家帰るから集合」って…しかも直前にね直前に多分ここはファンキー加藤から一番遠いとこなんだと思うんですいわゆる歌を歌うファンキー加藤という人物像からは一番遠いとこ『太陽』歌ってる時めっちゃ格好つけてたじゃん
(一同)ハハハハハ
「ファンモン」を解散してソロになった時母親の初江さんはどう思ったのだろう
ほら!あっ食べてるね〜いいよいいよ〜
(泣き声)
(一同)ハハハハ…
(圭介さん)やめろよお前
(泣き声)
8月に入り1人になって初めてのアルバムがついに完成した
ありがとうございますお疲れさまでした
全13曲
ソロ活動を宣言してから1年余り
履き慣れた靴を脱ぎ捨ててようやくたどりついた最初の一歩
加藤にとってこれは自分の存在証明だ
ありがとうございますうれしいっすねホントにありがとうございましたお疲れっす握手してくださいおいっす!私も!頑張ってください
呪縛にも似ていた「ファンモン」の影が消え始める
何歳なの?8歳8歳か小学校3年生?3年生自分でもびっくりした
この夏自分を追い詰めるように挑んだ5つの音楽フェスティバル
(観客の手拍子)
ファンキー加藤は1人で歌い抜くステージに手応えを感じ始めていた
・「人混みの中に飲まれても」・「いつか気づいてもらえるように」振り回せ〜!
(歓声)MONSTERbaSHそんなもんかそんなもんかオイオイオイ
(観客)オイオイオイ…
フェスの会場に集まっているのは必ずしも自分のファンばかりではない
そんな人たちにも爪痕を残したいと加藤は言う
必要とされるミュージシャンになりたいのだと
だからこそライブの出来にも辛口だ
ちょっと今日課題の残るステージだったなというのが…少しね…まぁ皮膚感覚ですけどちょっとこうグルーヴしきれなかったなっていうのがあったんですよだからまだ勉強しなきゃいけないとこあるし課題は…これでもいいことですけどね前向きに捉えますけどね
偏差値アップうそのような本当の話
先生は言ってくれた学年ビリでも俺と一緒に東大目指してみないか?って
2014/09/14(日) 23:30〜00:00
MBS毎日放送
情熱大陸[字]【ファンキー加藤/ファンモン解散1年。苦しみながらソロの道を探す夏】
ミュージシャン/ファンキー加藤▽一人だけのパフォーマンスの難しさに直面しファンモンが大きな存在だったことを改めて知った加藤が、本格的にソロとして進むべき道を探す
詳細情報
番組内容
メンバーの1人が実家の寺を継ぐと宣言し、「3人でなければ」という理由でFUNKY MONKEY BABYSは昨年6月に人気絶頂の中解散。そしてリーダーのファンキー加藤はソロアーティストになった。ステージを下りる時には歩くエネルギーも残さないのが流儀。生み出す歌はストレートな言葉で綴る人生の“応援歌”。そんな彼がもがきながらソロとして進むべき方向、新しい音楽のきっかけを見つけてゆくこの夏を追った。
出演者
【プロフィール】
ファンキー加藤
ミュージシャン。1978年生まれ。
2004年地元八王子でFUNKY MONKEY BABYS結成。昨年6月夢の舞台だった「東京ドーム」で解散、その後ソロ活動に。今年「My VOICE」などシングルをリリース、今月初アルバム「ONE」を発売。9月19、20日には日本武道館で初のソロライブ。来年1月からは初の全国ツアー。絶対的な甘党でチョコレートは欠かせないという。
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【製作著作】MBS(毎日放送)
【制作協力】ルーカス
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