(テーマ音楽)ただいまママ帰りましたよ〜。
ただいま〜。
あれ?いないのかな。
草刈さん?え?旅行帰りですか?仕事で博多に行ってたんですよ。
それでお土産に大好きなめんたいこを買ってきたんです。
いないんだったら先に食べちゃおうかな〜。
何この着物。
え?私のめんたいこどこだ?なにこれ!どうしたんですか?しまった。
空港でバッグ取り違えたんだ。
ああしまった!しかしこんな時何だけどこれ大島紬だよね。
すてきだねこれ。
もう美しいものには目がないんだから。
そう。
それは大島紬。
奄美大島に古くから伝わる着物なんですよ。
ハァ〜ン。
すてきだ。
鹿児島市から南西におよそ350km。
鹿児島と沖縄本島のほぼ真ん中に位置する島です。
この島でいつどのようにして大島紬が誕生したのか。
確かなことは分かっていません。
最大の特徴は…柄に表されるのはこのハブなどさまざまな島の風物。
味わい深い柄。
その秘密は糸にあります。
まだらに染まった絹糸。
この糸を縦横に織り交ぜ柄を浮かび上がらせる仕掛け。
絣の技法を奄美大島独自で発展させたものです。
糸の点を重ねて織り上げると…。
こんなふうにこまやかで深みのある美が生み出されるのです。
大島紬をさらに魅力的なものにしてくれたのが奄美の大地。
人と自然との偶然の出会いが生み出した…このほど東京銀座に専門店もオープンしました。
土臭さの中にモダンな感覚が宿る通好みの着物。
お値段は30万円〜70万円ほどとか。
着物の宝石と呼ばれる大島紬。
今日はその魅力に迫ります。
まずは「織り」に注目です。
大島紬のこまやかな模様は筆で描くわけではありません。
先ほどご紹介したようにまだらに染めた糸を織り上げる「絣」の技でこんなに細かい模様が生み出されているのです。
その絣どんなふうに織るのか見せていただきましょう。
ピンと張って並べた縦糸に横糸を折り返しながら通していく機織りの作業。
画面の左織られる前の縦糸をよくご覧ください。
すでに模様になっているのが分かりますね。
織る前に糸1本1本を仕上がりを計算に入れた微妙に異なる柄に染めているのです。
縦糸の白い部分と横糸の白い部分が合わさり模様が完成します。
大島紬は…縦の絣の点と横の絣の点を…今日最初の「壺」は…緻密な絣の柄には島が歩んだ歴史が秘められていました。
奄美の産品は薩摩の財源となりました。
莫大な利益を生み出すサトウキビそして大島紬。
薩摩藩は大島紬を独占し幕府への献上品などに使います。
島にはこんなおふれが出ます。
品質を高めたい薩摩藩の求めに応じ大島紬は洗練されていきます。
しかし自分で織った紬に袖を通すことのかなわない人々。
大島紬の美をたたえた島唄はどこか悲しげに響きます。
(島唄)・「ソーレソレソレ大島紬のうりぎょらさ」精緻な柄を作るために考え抜かれたアイデアがあります。
機を織り上げているように見えますがそうではありません。
これは機織りの原理を応用して…奄美大島独特のやり方です。
機織りは「織る」という作業ですが…機織りに似た作業。
ではどのように柄を作っていくのでしょうか。
絹糸にこちら木綿の糸をくくりつけていきます。
木綿糸で覆って染料が染まらない部分を作っているのです。
染め残したい部分だけに機で木綿糸を締め込んでいきます。
染料にひたし染めた後木綿の糸を取り去ると覆われていた部分だけが白い点となり現れます。
逆にこちら木綿の糸で覆われていない部分が染料で染まる所です。
では機織りの原理を応用するのはなぜか。
最後に木綿の糸を外した時絹糸に同じ柄のパターンを反復させるためなんです。
こちらが木綿糸をくくりつけその上から染めたもの。
木綿の糸を外していきます。
そうすると同じ柄が反復する長い糸ができます。
この糸が着物1反の縦糸なんです。
1反の反物はこうしてできた数百本の縦糸を織ることでできています。
それを切り分け着物に仕立てるのです。
同じ柄のパターンが反復する長い糸を使うことで着物の上にまったく同じ模様を反復させることができるのです。
長く培われてきた絣の技術を明治の頃に集大成し生まれた技です。
エキゾチックな騎馬の人物や鳳凰を表した模様。
同じ精緻な柄が繰り返され着物の上にうねるような独自の世界を生み出しています。
白く染め残った所に色を入れることでまた違った表情の着物が出来上がります。
細かな柄の反復が生み出すリズム。
自らが着ることのできない着物を黙々と織ってきた人々の魂が宿っているかのようです。
(島唄)・「ソーレソレソレ大島紬のうりぎょらさ」いいんですか?…すみませんわざわざ。
それじゃあお待ちしております。
はい。
…はいよろしく。
ああよかった連絡がついた。
この着物奄美から上京する二十歳の息子さんが親御さんから持たされた物らしいんですよ。
その息子さんが今から取りにきてくれるんですけどね。
しかしふるさとの宝を息子に持たせるなんてすてきな話ですよねぇ。
うわぁ…。
草刈さん勝手に掛けちゃっていいんですか?ちょっとだけ。
ね。
「いやぁいい人で良かった。
」え?え?「こっちこっち。
私ですよ。
大島紬。
」着物がしゃべってる!「せっかくのご縁です。
私のこともっとよく知ってください。
」ええ!?続いては色に注目。
大島紬ならではの色があります。
それは独特の…手間をかけ特殊な染め方で生み出されてきました。
少し茶色がかった淡い黒です。
化学染料で染めた黒い着物と比べてみると…。
大島紬の方が茶色がかっていて温かみのある複雑な色合いであることが分かります。
この色を出すために必要なものがあります。
まず奄美大島に生えている…この木の幹から作った液体にあるものを加えると独特の黒になるといいます。
それは工房の裏にあるというのですが…。
やって来たのは…いったいどういうことでしょう。
なんと田んぼの泥で着物を染めるというのです。
今日二つ目の「壺」は…こちらはテイチ木の幹を発酵させた染料。
まずこの液体で染めていきます。
「染めては洗い」を繰り返すこと20回。
赤みがかった色合いに染まりました。
ここからが泥の出番です。
田んぼの底に沈んだ泥をよくかき混ぜ…。
テイチ木で染め上がった糸をそのまま泥の中へ。
まるで泥で洗うように十分に浸します。
するとどうでしょう…。
糸が黒くなっています。
実はこれテイチ木のタンニン酸と奄美大島の泥に多く含まれる鉄分が化学反応を起こし黒くなっているのです。
これでまだ濃いめのグレー。
最初の段階の色みですね。
およそひと月かけてテイチ木と泥での染めを何度も繰り返します。
天候や泥の状態によって微妙に異なる黒に仕上がっていくといいます。
こちらは金属を思わせる光沢を帯びた黒。
こちらは少し青みがかったような黒。
藍のようにも見える黒。
島では人の手ではコントロールしきれない偶然の美しさを大切にしてきました。
この奄美ならではの泥染めは江戸時代偶然の出来事によって始まったと言い伝えられています。
薩摩の支配により島の人たちが大島紬を着ることが禁じられていた時代…島の自然と人々の営みの結びつきによって生まれそして育まれた黒。
(島唄)大島紬の黒はこれからも無限のニュアンスを生み出していくことでしょう。
奄美大島の大自然を感じるなぁ。
「よかったらちょっと着てみませんか。
」いやダメですよ。
「遠慮なさらずに。
」「着てもらえればもっと私の良さが分かりますから。
」そうですか?それじゃあ…遠慮なく。
あ〜。
これ軽くて動きやすい。
着心地いいなぁ。
あ。
島唄が聞こえそうな気がする。
すばらしい。
奄美の自然と一体になった感じがしますよ。
最後は柄のデザインに注目。
大島紬の柄の多くは古くから伝わる伝統の柄。
ほとんどが島の…代表的な…1人の職人にまつわるある伝説が伝えられています。
現れたのはソテツの葉の上を這う金色のハブ。
職人はこの情景をデザインに取り入れました。
幾何学的な模様はハブの背中の模様。
その横には…自然の形を見事なまでに着物の柄にした斬新なデザインです。
こちらの柄もソテツとハブ。
島の自然を大胆に図案にしています。
奄美大島に広がる青い海。
こちらはその波を表現したものです。
というわけで島ならではの自然や暮らしの情景を柄に取り込むしゃれた感覚も大島紬の魅力なんです。
今日最後の「壺」は…大島紬の図案作りを専門とする…昔からといっても…意外と離れている。
本土と…都会と離れてる島ですので身近なものからデザインを取ったのが多いと思われますね。
池水さんは島ならではの自然や風物を図柄にしてきた伝統を受け継ぎ新たな柄を作りだそうとしています。
これは森の自然の中にある花で…白い真っ白な小さい花がついてるツタ状の花があるんですが有名な奄美の自然の中にあるコンロンカという花をデザインしてるとこです。
こちらも池水さんが考案したデザイン。
丸いちょっと不思議な模様。
何だか分かりますか?絵をよくご覧ください。
模様の正体は2匹の…奄美の蝶をデザインしたものです。
リアルな色と形を用いて柄を表現するのが池水さんの作風。
南国の熱気が伝わってくるかのようです。
奄美の自然から新たな図案を生み出したい。
庭にはそのヒントとするための草木が所狭しと集められています。
そういうのが大島紬にとっても大事じゃないかと。
大島紬は奄美の人々の誇りです。
奄美の民謡島唄の歌い手の松山美枝子さん。
ステージでは必ず大島紬を着て歌います。
こちらは孫の…着ているのはやはり大島紬。
奄美の花をモチーフにしたものです。
2人は同じ大島紬の着物を共用しています。
6歳の頃から大島紬を着て歌っていたまりなさん。
おしゃれに敏感な年頃になった今もおばあちゃんの着物を何の違和感もなく着ています。
先人たちが自然の情景暮らしの情景に目をこらして見つけ心のままに図案にしてきた柄。
それはけっして古くささを感じさせることがありません。
(松山さん)島の人たちにとっては宝だと思います。
長い歴史の中島の自然と向き合い磨かれてきたデザイン。
しゃれた図柄が奏でる大自然の歌に耳を傾けてみてはいかがですか?息子さんもうすぐ着くと思いますよ。
今日は私もいい気持ちにさせていただいてありがとうございました。
大島紬私も欲しくなっちゃったな。
・
(ピンポーン…)は〜い!迎えが来たようです。
これも何かの縁です。
またお会いしましょうね。
「こちらこそ。
お名残惜しいです草刈さん。
」・
(ピンポンピンポン!)は〜い!今開けま〜す!「いつか奄美にも遊びに来てください草刈さん。
」2014/09/14(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「奄美大島 大島紬(つむぎ)」[字]
身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく。「奄美大島 大島紬」。土臭さとモダンな感覚が共存する通好みの着物。島唄と共にどうぞ! 案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
鹿児島県の奄美大島で古くから作られてきた着物「大島紬(つむぎ)」。ソテツやハブなど南国の自然をデザインした図柄、精緻きわまりない織りで知られる。土臭さとモダンな感覚が共存する通好みの着物として人気が高い。ほかにはない織りやしゃれたデザインは島の風土と複雑な歴史に培われたものだった。田んぼの泥を巧みに使った「大島の黒」、うねるような柄を生み出す驚きの技…。情感あふれる島唄とともに、大島紬の美に迫る。
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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