NHKスペシャル▽臨死体験 立花隆 思索ドキュメント 死ぬとき心はどうなるのか 2014.09.14

人類永遠の謎に迫る旅が始まりました。
立花隆さん74歳。
哲学宗教から脳科学までさまざまな分野を自ら取材してきた作家です。
この日頭にかぶったのは磁気で脳を刺激するヘルメット。
人が死ぬ時に見るという風景を擬似体験しようとしていました。
立花さんが挑んでいる謎それは人の心。
魂や意識とも呼ばれてきたものです。
私たちの心はどのようにして生まれるのか。
これまで科学者たちは心のメカニズムについて脳波から遺伝子に至るまでさまざまな手法を駆使して探ってきました。
しかし膨大な研究をもってしても脳と心の詳しい関係について解明できませんでした。
立花さんがこの謎を解く大きな鍵だと考えているのが…心停止などで脳が活動しなくなったと思われる人たちが見るという不思議な現象です。
心が体を抜け出し光り輝く美しい世界にたどりつくという体験。
心は死んでも存在し続ける特別なものだと体験をした人の多くが考えています。
しかし今この不思議な現象を脳の働きで解き明かそうという研究が急速に進んでいます。
心が体を抜け出すように感じるのは自分の体を認識する脳内の仕組みが働かなくなるためかもしれません。
実際に宙に体が浮いているのではなく脳内の記憶や夢のようなものなのです。
更に今科学は心が脳で生まれる仕組みを明らかにしつつあります。
動物や機械にも心が存在しうるという最新の研究も現れています。
将来心を持ったコンピューターが作れるでしょう。
心を作るためにもはや魔法のようなものは必要ないのです。
人間の心の問題というのはかつては脳科学では扱えない世界だと思われていた。
それがどんどんどんどんそこを研究する人たちが増えてきて心の世界というのが基本的にどういうものなのかという見方が非常に大きく展開しだした。
人の心は死ぬ時どうなるのか。
臨死体験を解き明かし人の心の謎に迫ろうとする立花さん。
その思索の記録です。

立花隆です。
人の心はどこから生まれるのでしょうか。
そして人が死ぬ時人の心はどうなるのでしょうか。
今私は74歳です。
そう遠くない時期に死を迎えるに違いありません。
私が死ぬ時自分の心に何が起きるのかそこを知りたいと思いました。
私はかつて臨死体験について長い取材をした事があります。
今回臨死体験がその手がかりとなるに違いないと思い改めてその現状を取材する事にしました
36年前に結成された国際臨死体験学会。
この日の会議に研究者や臨死体験をした人などが各地から集まりました。
今心停止から蘇生した人の5人に1人は臨死体験をしているともいわれています。
臨死体験は心停止や深刻な昏睡状態で脳が全く働いていないと思われる時にする体験です。
臨死体験者の証言によればその内容には似通った特徴があります。
まず自らの心が体を抜け出すのを感じるといいます。
体外離脱と呼ばれる現象で天井付近からその場に横たわる自分の体や医師たちの姿を見たりします。
その後トンネルのような場所を通って光り輝く美しい世界へと導かれます。
神秘体験です。
親しい家族や友人に会い人生を全うせよと言われます。
ここで全知全能の大いなる存在に出会い幸福な気持ちに満たされます。
救急医療が発展したからでしょうか。
臨死体験の事例がどんどん増えている事が分かりました。
そうした臨死体験の事例の中に脳を専門とする脳外科医でありながら「心は魂のようなものであって体が死んでも生き残る」と主張している人がいると聞きました。
どのような科学的根拠でそう思うのかそこを確かめたいと思いました
(拍手)今全米で最も注目を集めている臨死体験者がいます。
著名な脳神経外科の医師です。
6年前臨死体験をしてからは自らの体験を伝えようと講演して回るようになりました。
(拍手)アレキサンダー博士が臨死体験をしたのは脳を細菌に侵され昏睡状態に陥った時の事です。
それまでは脳が機能しなくなれば心も消えると考えてきました。
しかしその考えは病気から回復し自分の医療データを洗い直した時大きく揺らぎました。
この時アレキサンダー博士の脳は炎症による膿で血管が圧迫され血液が流れなくなっていました。
更に生命の維持に欠かせない脳幹と呼ばれる奥深い部分まで損傷し脳波は観測されなくなりました。
脳の活動は止まり生還できる確率は2%と診断されたのです。
そんな状態だった7日の間に臨死体験をしたといいます。
無数のチョウが飛び交う景色を見たあと荘厳な門がそびえ立つ世界を訪れ最後に神聖な存在がいる場所に導かれました。
脳が働いていない時にこの体験をしたのだから脳と心は別の存在だというのです。
そうです。
脳は全く働いていませんでした。
そうです。
こういった体験は大人だけでなく子どもにもたくさんあります。
最近は記憶も知識もほとんどないはずの赤ちゃんですら昏睡状態の中で体外離脱しその時見た事を覚えているという事例まで出てきています。
どういう体験だったのか知りたいと思いました
ジャクソン・バワーズ君4歳。
生まれてすぐに臨死体験をしたという少年です。
生後1か月のジャクソン君です。
インフルエンザをこじらせて肺に穴が開き呼吸ができなくなりました。
集中治療室で蘇生装置につながれ薬で眠らされていました。
何度も命の危険にさらされていました。
4か月後ジャクソン君は奇跡的に回復します。
蘇生装置につながれた痕は残りましたが両親は生死の境をさまよった事は伝えませんでした。
ところが2歳になった頃突然病院での体験を話し始めたのです。
そのころのジャクソン君です。
母親がジャクソン君から聞いた臨死体験の内容です。
生後1か月。
しかも昏睡状態だったジャクソン君。
心臓カテーテルを入れるために足の手術をしていた時の事。
母親はジャクソン君のそばを離れ外に出ていかなくてはなりませんでした。
この時ジャクソン君の心は体から抜け出し医師や母親の姿を見ていたというのです。
年齢や知識国籍などにかかわらず死にひんした時多くの人がするという共通の体験。
立花さんは20年以上も前から臨死体験に関心を持ち取材を続けてきました。
これまでさまざまな分野を取材し常に事実を徹底的に明らかにしようとしてきた立花さん。
発表した著作は100冊を超えます。
代表作の一つが20年前に書いた「臨死体験」です。
立花さんはこの不思議な体験を解き明かそうと考えたのです。
世界中を回って取材しましたが当時は科学的に確かめる方法がありませんでした。
臨死体験とは何か突き止められないまま取材を終えたのです。
しかし再びこの事を知りたいと思うようになりました。
7年前立花さんは膀胱がんにかかりました。
手術でがんを取り除きましたが転移すれば完治の方法はないと宣告されました。
そして今年再発と思われる病変が見つかったのです。
初期がん非浸潤がんの部類に入るだろうという事でやはり一度膀胱腫瘍が見つかってらっしゃるのでまた再発の危険性があるという事でもし何かあれば早めに取っておく必要がございますので。
死が近づいていると感じる今。
死ぬ時自分の心がどうなるのか残された時間の中で明らかにしたいと思うようになったのです。
人間70を過ぎると70の前と後でねものすごい心境が変わるんですね。
それは何が変わるのかと言えば自分が死ぬ…どこまで生きるかというのは分からないけれども少なくともそう遠くない日に自分が死ぬだろうという事はねすごく確実な理解としてある訳です。
つまり自分という存在がここにあって自分が何かを考える時にいざ考えてる自分の頭の中を考えるとその考えてる自分はこの頭の中にどこにどういうふうにあるんだというねそこのところは実はよく分かってない訳ですよね。
私は臨死体験を今の科学でなんとか説明できるのではないかと思ってきました。
今最先端の脳科学はかつてないほど進んでいます。
脳科学によって今どこまで臨死体験が説明できるのか知りたいと思いました
死ぬ時脳はどうなるのかについて動物を使って研究している科学者を立花さんは訪ねました。
ここでは普通の方法では観測できない微妙な脳活動を特別な手法で測定しています。
ネズミの脳に直接電極を入れて実験しました。
ネズミに薬物を投与し心停止を起こします。
その時脳の奥深い部分の脳波を詳細に調べたのです。
世界で初めての試みでした。
するとこれまで分からなかった微細な脳波が見つかったのです。
これは心停止を起こしたネズミの脳波です。
これまで医学的には心停止を起こすと数秒で脳への血流が止まり脳活動は止まるとされてきました。
ところが心停止後の平らな部分を拡大すると微細な脳波が見られたのです。
それは数十秒間続いていました。
数十秒とはいえ心臓が停止した後も目に見えない脳活動が続くという事実に私は驚きました。
臨死体験をしている人の脳も一見活動していないように見えて実は活動しているのではないか。
意識も存続しているのではないか。
臨死体験は脳のどんな活動によって起きるのかより詳しく調べたいと思いました
立花さんが詳しく調べ始めたのは体外離脱現象です。
体から心が離れていくという現象です。
するとこれを脳内の現象として説明した論文が見つかりました。
国際的な脳研究の専門誌に発表された論文です。
人工的に体外離脱の感覚を作り出せるというものです。
研究はてんかんの治療のため脳に電極が埋め込まれた患者に対して行われました。
その患者の脳を電気で刺激すると体外離脱の感覚を得たというのです。
患者が描いた絵です。
刺激を続けると次第に体が浮遊し自分を上から見ている感覚を抱いたと言います。
刺激したのは脳の角回と呼ばれる部分です。
角回は体の感覚や視覚聴覚などさまざまな感覚をつかさどる部分をつないでいます。
ここを刺激する事で脳の各部分が誤った働きを起こし自分の心と体が分離したかのような感覚が生じたと指摘しています。
そのような感覚は誰にでも起こりうるのか。
立花さんが訪ねたのは…ノーベル医学賞を選考する事で知られている世界有数の医学研究所です。
立花さんはここで体の感覚に異常を起こさせる実験に参加する事にしました。
まず目隠しをして実験室に入り映像が映るゴーグルをつけます。
カメラが映しているのは人形の足。
その映像を立花さんのゴーグルに映し出します。
立花さんには人形の足がまるで自分の足のように見えるのです。
立花さんの足を棒で刺激しながら同じタイミングで人形の足を刺激する映像を見せます。
触られている感覚と見ている映像が混じり合い人形を自分の体だと感じ始めます。
立花さんは心が自分の肉体を離れ人形の体に移ったという感覚を抱くようになっていました。
お〜。
アハハハ。
アハハハ。
アハハハハハ。
アハハハハ。
面白い。
すごい面白い。
全く今まで判断してた事が間違いっていうかね狂っていたっていう事が分かるよね。
実は我々日常の感覚そのものが実は狂ってるんだよね。
多分ね。
イリュージョンをリアルと思っちゃうって事だよね。
心が体を離れてしまうという感覚は脳内の仕組みで説明できる可能性が高いと思いました。
しかしまだそれだけでは体外離脱の全てを説明できていません。
例えばあの生後1か月で体外離脱したジャクソン君はその時見ていたものの記憶が確かにありしかもその内容が現実と一致していました。
私はこの不可思議な記憶について解明のヒントをもらおうと記憶研究の世界的な権威を訪ねる事にしました
どうも。
どうもご無沙汰してます。
立花さんが訪ねたのは…日本で初めてノーベル医学・生理学賞を受賞した研究者です。
利根川さんはノーベル賞受賞後記憶の仕組みについて研究してきました。
この日紹介してくれたのはネズミの記憶に関する実験です。
現実には起きていない偽の記憶フォールスメモリーをネズミに植え付ける事ができたというのです。
実験ではまず脳のある部分を刺激すると記憶を思い出す特殊なネズミを作りました。
このネズミを安全な部屋に入れ部屋の様子を覚えさせました。
次にネズミを別の部屋に入れました。
ここで脳を刺激して前にいた安全な部屋の事を思い出させます。
その時同時に電気ショックを与えました。
すると電気ショックを安全な部屋で受けたというフォールスメモリーが出来てしまいネズミは安全な部屋を怖がるようになったのです。
フォールスメモリーを植え付けられたネズミの映像です。
この安全な部屋でも恐怖を感じていました。
光ってくる所は普通の正しい…ジェニュインメモリーっていうんだけどあるいはリアルメモリーを同じ人が思い出してる時と同じ所が光ってくるんですよ。
それはごもっともで…これは人に偽の記憶フォールスメモリーを作り出す実験です。
まず被験者の子どもの頃の家族写真を切り抜き全く行った事もない別の写真に合成。
気球旅行に行ったという偽の家族写真を作るのです。
その偽の写真を本物の写真に交ぜ「いつ行ったのかどんな旅行だったのか」を繰り返し聞いていきます。
最初は偽の写真について記憶はないと答えますが質問を繰り返すうちに答えは変わっていきます。
質問を繰り返すうちにフォールスメモリーが作られてしまったのです。
人間はフォールスメモリーを作りやすい動物だと利根川さんは考えています。
脳が高度に発達し想像力を持っているからだといいます。
いいですか?なるほどなるほど。
人間は誤った記憶や感覚を本物だと信じてしまう生き物だ。
臨死体験者の不思議な記憶は想像力を働かせるうちに作り上げられたフォールスメモリーなのではないか。
立花さんはそう考えるようになりました。
臨死体験の真実を追い求める立花さんの旅。
見えてきたのは死の間際に特別な脳の働きが起きるという人間の不思議さでした。
人間が正常にものを考え感じるその背景の本当にその底の部分を探求していくとですね。
実は人間の脳の中にそういう一番大事な…そういう事が人間の本性としてあるんだという事が分かってきましてつまり我感覚すゆえに我ありも一つの真実ではあるが我感覚すゆえに我過つという人間というのは基本的にそういう正常にちゃんとしてる部分と狂っちゃう部分というのが本当にこう二重構造的にある。
それが人間なんだというそういう印象を受けました。
…という事が分かりました
するとこうした問いについて科学的な議論が始まっていると聞きました。
どこまで分かるのか知りたいと思いました
今心の正体に迫る新しい研究分野が急速に注目を集めています。
それは心の一部である意識の研究です。
今年20周年を迎えた国際的な意識学会の会合には脳科学や哲学心理学など分野を超えた研究者が集まっていました。
心の一部である意識はこれまで科学において究極の謎といわれてきました。
感覚感情行動記憶など脳内にはさまざまな機能があります。
しかし人の心はこれらの機能だけでは成り立ちません。
機能全てを一つに統合するものが必要なのです。
これが意識です。
意識はその人らしさを作り出すいわば自我です。
なぜ意識は究極の謎なのか。
それは長年にわたる研究にもかかわらず意識を生み出す神経細胞が脳内のどこに存在するか全く分からなかったからです。
ところが今この謎について科学者たちはようやくその糸口をつかみ始めていました。
(拍手)意識研究に革命を起こしたともいわれる科学者です。
トノーニ教授が提示したのは意識が脳内で生まれる全く新しいメカニズムです。
それがほかの研究者によっても実証されつつあるというのです。
どんな理論なのか立花さんはトノーニ教授を訪ねました。
人間の意識とは複雑に絡み合ったくもの巣のようなものだというのが教授の理論です。
トノーニ教授は意識が生まれるメカニズムをどのようにして考え出したのか。
きっかけは睡眠に関する研究でした。
深い睡眠をしている時と起きている時。
神経細胞のつながり方はどう違うのか教授は着目しました。
そこで脳内に微弱な電気を送り込みその流れを追いました。
神経細胞がつながっていればいるほど広い範囲に電気が流れる事を利用したのです。
これはその実験結果です。
左が起きている時の電気の流れ方。
右が眠っている時の電気の流れ方です。
左側起きている時だけ電気の流れを示す赤い部分が広い範囲に広がっている事が分かりました。
神経細胞は起きている時だけくもの巣のような複雑なつながりをしていたのです。
トノーニ教授はこの複雑なつながりこそが意識だと考えました。
統合情報理論と呼ばれています。
それは分かりやすく表現すれば次のような事です。
脳の中には熱い寒いなどの感覚に関する情報や楽しい悲しいなどの感情過去の出来事の記憶など膨大な情報があります。
教授はそれらの情報が複雑につながりくもの巣のように一つにまとまったものが意識だと考えました。
つまり意識は脳内の特定の細胞にあるのではなく膨大な神経細胞が複雑なつながり方をして一つに統合された時に生まれるというのです。
更にトノーニ教授は意識の大きさを世界で初めて数式で表しました。
極めて複雑な数式ですが脳内の神経細胞の数が多くつながりが複雑であればあるほど意識の量が大きくなる事を表しています。
例えば神経細胞のつながりが全くない時には意識はゼロになります。
実際植物状態と思われていた患者の神経細胞のデータをこの数式に当てはめたところ意識がある事が明らかになった例もありました。
意識研究の最前線とされているトノーニ教授の理論。
これが完全に実証されれば脳が死ぬと神経細胞のつながりはなくなり心は消える事になります。
更にこの理論は新しい世界観を示しています。
鳥や動物昆虫でも脳内には複雑なつながりがあるので脳の大きさに応じた意識がある事になります。
そして機械でも複雑な情報のつながりを持つよう設計すれば意識が生まれる事になります。
トノーニ教授の理論は長年人間が追い求めてきた「死ぬとき心はどうなるのか」という問いに対して「心は消える」という答えを提示しています
私はこの心の世界の不思議さを更に知りたいと思いました
取材の合間立花さんは手術を受けました。
7年前に切除した膀胱がんの再発が疑われたのです。
手術後立花さんは奇妙な夢を見ました。
この時私は首が一切動かせない不自然な体勢で半日以上を過ごしました。
その間に私は夢ともうつつともつかない奇妙な長い夢を見ていました。
それはフォールスメモリーや脳が作り出した幻覚だったといわれても決して自分の中から消す事ができない確かな実感を伴っていました。
これは私が取材してきた臨死体験者の見たものに似ていると思いました。
臨死体験者の多くは最後に神秘的な体験をしたと語っていました。
では…
立花さんが強い関心を抱いた神秘体験。
それは臨死体験者の多くが記憶する強烈な体験です。
光り輝く世界で全知全能の大いなる存在に出会います。
人生観を変えるほどの幸福に包まれこれは現実だと確信するといいます。
立花さんは神秘体験の脳内メカニズムについて調べてきた科学者を訪ねました。
立花さんは人間が神秘を感じる時脳がどう働いているのか問いました。
死の間際にどのようにして神秘体験が起きるのか。
ネルソン教授が関わりが深いと指摘したのは脳の奥深くにある辺縁系です。
は虫類にもあるという脳の最も古い部分です。
辺縁系は長年の研究によって睡眠や夢という現象の中心的な役割を担っている事が分かっていました。
ネルソン教授は神秘体験と夢が似通った現象である事を明らかにし次のような仮説を立てました。
死の間際辺縁系は不思議な働きをします。
眠りのスイッチを入れるとともに覚醒を促すスイッチも入れます。
それによって極めて浅い眠りの状態となり目覚めながら夢を見るいわば白昼夢のような状態になります。
更に辺縁系は神経物質を大量に放出し人を幸福な気持ちで満たします。
こうして人は死の間際幸福感に満たされそれを現実だと信じるような強烈な体験をするというのです。
ネルソン教授は神秘体験は人が長い進化の過程で獲得した本能に近い現象ではないかと考えています。
ホスピスの一室でネルソン教授は妻のアンさんと過ごしていました。
アンさんには脳全体に悪性の腫瘍があり余命数か月という診断を受けていました。
信仰深いアンさんは天国の存在を支えに生きていました。
どういう哲学をもってしてもあるいはニューロサイエンスをもってしても本当のところはよく分からない部分というのが人間にとっては永遠に残る。
世界にそういうような在り方で人間は生き続けてきたしこれからも生き続けるんじゃないかなというねそういう気がしてそれはそれで面白い事かと思うんですよ。
だからある意味で…何て言うの?やっぱり生きるって面白いですよね。
分からないから面白いっていう事がある訳で。
やっぱりこう人間という存在はもっと豊かでそう簡単にこうだって言えないからねだからそこに面白さがあるんだというそういう気がしましたね。
人間の心の謎に迫ろうとしてきた立花さんの旅。
科学の最前線で思索を重ねて見えてきた事がありました。
立花さんは臨死体験とは人間誰もが死の間際に見る可能性がある奇跡的な夢なのだと感じています。
私は旅を終えるにあたってある友人に会いたくなりました。
臨死体験は夢の一種かもしれないし確かに死とともに自分の心は消えるかもしれない。
しかし自分が死ぬ時どんな思いで死に臨んだらいいのでしょうか。
それは科学でも宗教でも答えの出ない問題だと思いました。
それを友人と共に語り合ってみたくなったのです
友人とは私が臨死体験の世界を知るきっかけとなったレイモンド・ムーディ博士です。
臨死体験を世界で初めて報告した人です。
博士は23年前私が取材で会った時は死後の世界が存在する証拠はないと語っていました。
しかしその後精神を病み自殺を図って臨死体験をしたと聞きました。
それ以来死後の世界を信じるようになったといいます。
今自分はどう人生を全うすべきなのか改めて彼と語り合いたいと思ったのです
死後の世界を信じるようになったムーディ博士。
死んだら心は消えると考える立花さん。
2人は語り合いました。
ええ。
Thankyouverymuch.Thankyou.
人間は死ぬ時何を体験するんでしょうか。
死の向こう側には一体何があるんでしょうか。
もしかしたら何にもないかもしれないけれども何らかの死後の世界があるのかもしれません。
そういう人類の永遠の謎を追いかけて数か月間世界を旅してきました。
非常に急速にこういう人類永遠の謎について多くの事が分かりつつあるそういう時代に入っているという気がします
ケビン・ネルソンさんは結局人間の死という事は死と神秘と夢とその3つが隣り合わせになったようなそういうボーダーランドに入っていく事だと言いました。
この取材を終えてですね私が強く感じている事は実は20年前に作った…「臨死体験」という番組を作った時も感じたんですが死ぬっていう事が人間が…しかも前よりも強くそう思います。
強くというのはどういう事かと言うとギリシャの哲学者でエピクロスという人がいるんですがその人が…それを得るのが最大の目的だと言った訳です。
それで考えてみると…しかし今はですねその心の平安をもって自分の死を考えられる。
そういう気持ちになれたという…。
そういう気持ちになったという事です。
2014/09/14(日) 21:00〜22:15
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル▽臨死体験 立花隆 思索ドキュメント 死ぬとき心はどうなるのか[字]

74歳を迎えた作家の立花隆さんは、死の間際に見る「臨死体験」の謎を突き止めようと脳科学の最前線を取材する旅に出た。「死んだら心はどうなるのか」人類永遠の謎に迫る

詳細情報
番組内容
死ぬとき『私』は何を体験するのか、私の“心”は肉体が滅びた後どうなるのか…。23年前、死の間際に多くの人が見る「臨死体験」を徹底取材した作家・立花隆さん(74)は、がんを患い、死を間近に感じる中で、再び臨死体験の謎を追い求める旅に出た。脳科学の最前線を追い、人類永遠の謎に迫ろうとする立花さん。心とは、命とは、私とは何か。番組は立花さんの思索の旅を見つめ、誰もが避けられない「死」の意味について考える
出演者
【出演】立花隆,【語り】上田早苗,【声】坂口芳貞,石田圭祐,清水明彦,村治学,山本郁子,名越志保

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント

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