ハートネットTV シリーズ 20代の自殺▽反響編 寄せられた7000の声から 2014.10.01

とにかく逃げたい…生きてる事から。
「死にたい」という思いを誰にも打ち明けられず追い詰められる20代。
今月「ハートネットTV」では20代の自殺について4回のシリーズで放送。
最終日には死にたい気持ちを抱える人たちをスタジオに招きその思いを語ってもらいました。
すごく自分が嫌いになって自分をいじめてしまうというか責めて責めて。
周りの視線みたいなのを気にしながら働いてて。
もうこれは消えてしまいたいっていうような感じになって。
番組に届いた感想や意見は7,000件を超えました。
「シリーズ20代の自殺反響編」。
今夜は皆さんから寄せられた声に耳を傾けます。
こんばんは。
「ハートネットTV」です。
今月番組では20代の自殺について考えるシリーズをEテレと総合テレビで4回にわたってお伝えしました。
シリーズを通じて7,000件を超える声が寄せられました。
今日はこうした声に耳を傾けながら20代の自殺について更に考えていきます。
スタジオには評論家の荻上チキさん。
そして4本のシリーズにわたってご出演頂きました小島慶子さんにお越し頂いています。
よろしくお願いします。
よろしくお願い致します。
まずこちらをご覧下さい。
これは年齢別の自殺率の推移を表したグラフです。
今回シリーズに取り組んできた背景には20代の自殺を取り巻くより深刻な現状があります。
この赤が20代です。
1998年を100とした推移です。
これ1998年から見てみますとほかの世代で自殺率が減少する一方で20代につきましては依然として厳しい状況が続いているんですね。
日本では20代の死因の1位は自殺。
その半数近くが自ら命を絶っているというのが現状なんです。
番組に届いた7,000件を超える声の中で小島さんはどんな声が印象に残りました?ツイッターで頂いたんじゃないかと思うんですけど番組をご覧になった方。
それはきっとかつての自分を思い出して腹が立っているのかそれとも今自分もそういう気持ちになったり調子がよくなったりって行ったり来たりしているいらだちなのかとっても率直なご意見だなと思って拝見しました。
チキさんどんな事を感じました?7,000件を超える感想全て目を通したんですけど思ったのは例えば反応の中では頭ごなしに否定するのは極めて少なかったんですよね。
まずは「死にたい」と言う人がいる前提の上でどうすればいいのかそれぞれ思った事をつぶやいたり書き込んだりしてくれた方が多かったなという気がします。
例えば僕がやってるラジオとかほかのところは自殺問題を取り上げたりあるいは語ったりするとそもそも頭ごなしにそう思う人の存在そのものを否定するところからそこからっていうところから議論をしなくちゃいけない人もいたりする訳ですね。
そうした反応がますますこの問題を語りづらくしてる面もあったりする中で貴重なご意見がたくさん来たなと思っています。
「ネガティブな感情を許してほしい」というようなこういった声も既に届いています。
ある事から認めていくという事ですからね。
番組を通してさまざまな受け止め方ありましたが死にたい気持ちを抱える20代は今回のシリーズどのように受け止めたのでしょうか。
番組に出演して頂いたはなさんを取材しました。
先月東京・渋谷のNHKに番組収録のためはなさんがやって来ました。
こんばんは。
お願いします。
10代の頃から死にたいという思いを抱き続けてきたはなさん。
同じ苦しみを抱える人たちと話がしたいと番組への出演を決めました。
はなさんから届いたメールです。
「いつも周りからは『人当たりがよい』『悩み事がなさそう』と言われ人間関係も困る事なく生きてきた。
けれど本当の私は違う」。
現在は親元を離れアパレル関連の会社で働いているはなさん。
子どもの頃に刻まれた自分には生きる価値がないという思いに今も苦しめられています。
この日スタジオには「死にたい」と訴えるメールをくれた男女7人が集まりました。
はなさんにとって同じ思いを抱える20代と直接向き合うのは今回が初めてです。
どんな時死にたくなるのかそれぞれが語り始めました。
実際に面接で落ちた時には社会に居場所ってないのかなっていうのがすごく感じるところですね。
10社20社って重なっていったら本当に居場所あるのかなとか必要とされていないのかなとかそういった時に死にたいなというところまでいく事もありますね。
私は精神的な病気を抱えていて3〜4年前からずっとその症状が続いていって病気が原因でいじめに遭うとか病気が原因で就職できないとかそういう事があったりするとやっぱり先が見えなくて死にたくなる。
私の場合はリストカットをずっとしていたんですけどそういう事をしないともうそれ以上進めなくなってもう限界だよっていうのを自分にも分からせたくてやっているところもあってその瞬間にもう自分の存在消してしまいたいみたいな感じになる。
一人で抱えてきた苦しみを吐き出す20代。
その言葉にはなさんはこれまでの自分を重ねていました。
はなさんもこれまで人前では口にする事ができなかった胸の内を語り始めました。
(はな)ちょっと失敗した事でも「やっぱりあんただね」っていう声が聞こえてくる。
母の声がすごい聞こえてきて。
すごく死にたくなる…なりますね。
自分を責めちゃう事って結構あります?
(はな)そうですね責めるのが日常なので責めない人を見るとこの人はすごいなって思ったりとか。
いい事があってもこれは運がよかったとかこれは偶然だって思ってしまって。
番組の終盤「生きていてよかったと思えた時」について話す事になりました。
やっぱり自殺未遂した時に病院に運ばれて最初の手術を終えたあとに食べたたぶん煮込みうどんか何かだったと思うんですけどうどんが体にしみわたっていくっていうかそういうような感覚がすごいあったのを覚えてますね。
うまいなあっていう。
「病気だからお前は駄目だ」とか言って否定され続けてきたんですけどでもある日ある人に「それを個性にしちゃえばいいんだ」って言われて病気である事を初めて否定しない人がいてくれてすごく救われましたね。
そしてはなさんにとっての生きていてよかったと思えた瞬間は…。
(はな)生きててよかったなって今も思っててやっぱりこう…悩みを共有する人たちがいるそういう場っていうのは私はもう26年生きてて数回しかない。
今こういうふうに悩みを分かち合える人がいて本当に生きててよかったなって思いますね。
番組の収録が終わりました。
控え室に戻ってきたメンバーにはなさんはつぶやきました。
ありがとうございました。
お疲れさまでした。
私もこの番組の中に輪の中にいたんですけれども皆さん自分自身としっかり向き合って一つ一つ言葉をつむいでいたのが印象的でした。
チキさん今の映像どうご覧になりました?ツイッターの反応とか頂いた反響でも指摘があったんですけど番組が始まる前の緊張の表情がそのあとだんだん緩んでいったりとか語る事で変わっていく事に多く感銘を受けたという人の反応もたくさんあってそういうのを見てると素朴に語る事語り合う事というのはとても大事だと思いました。
こういうふうなNHKの番組を通じて出会うっていうのはかなり偶発的でなかなか貴重な事でもあって逆に言えば実際じゃあ場所を作ろうと言っても人為的にそれができるのかと言うと非常に難しかったりする訳ですよね。
ご意見でも「相談できない」とか「誰にも言えないのがつらい」というのが多いですもんね。
語る事の重要さを認識すると同時にそれをどう作ればいいんだろうという課題を改めて思い知らされるような気がしますね。
小島さんはやはりスタジオに一緒にいらっしゃって…。
私はスタジオのあとの皆さんが控え室に集まったのは生で拝見してないのでスタジオにいらした時と全然表情が違ったのであんなふうに皆さん集まって帰ってらしたんだなというのを初めて知って。
ただはなさんもおっしゃってましたけど本当にああやって今日はよかったなって気持ちで帰っても例えばそこからまた一人で部屋に行って誰かから何か言われたりとか自分でちょっとしたきっかけでまた死にたくなる事ってあると思うんです。
だからあの一つ一つの背中の中にそうやって暗い縁を見てやっぱり戻ってきてっていう行ったり来たりがあるんだっていう事を思うとそんなに簡単にそういう場が持てたからよかったねきっとこれから楽になるよなんて言えないというのが確かなんだと思います。
すんなり解消するものでもないですからね。
はなさんも言ってましたよね。
ささいな事かもしれないけどそこで言えるっていう。
小さな幸せを…。
実は放送後にはこんな声も寄せられました。
もう一つご紹介します。
更にですね死にたいという気持ちを受け入れてくれる人や居場所の大切さについてメールを寄せてくれた女性もいます。
メールを寄せてくれた希望さんです。
10代の頃から生きる事に希望を見いだせずにいました。
そのきっかけは小学3年生の時大好きな母親が突然いなくなった事。
心の病を患う父親の暴力に耐えきれず家から逃げ出したといいます。
やっぱり一番好きだった人だから。
それが突然前の日まで一緒にお風呂も入ってて一緒にごはんも食べてたのに突然朝起きたらいないっていう状態だったんで。
何か…捜しましたよね家じゅうを。
でいないよって言って。
見捨てられたっていうんですかね。
その後死にたいという衝動に度々襲われるようになった希望さん。
そんな自分を踏みとどまらせてくれたのが祖母でした。
「駄目よそんな事考えたら」とかそういう否定的な事ではなくて「分かるよ」っていうふうに一緒にうなずいてくれた事が何かすごく安心して。
去年から産婦人科病院で調理師として働き始めた希望さん。
小さな命に励まされながら毎日を生きています。
子どもに恥じないように頑張っていこうかなと思います。
どんな事を感じました?おばあちゃんは黙って「うんうん」って言ってそばにいてくれて「頑張んなさい」とか「気にしちゃ駄目よ」とか言わなかったけどだからこそきっと苦しい自分と希望さんは一緒に生きる事ができてそれできっと希望って…たまたまお名前「希望」って書きますけど自分で見つけるものだと思うんですよね。
誰かが励ましの言葉として与えるものじゃなくて苦しい自分が認められたあと何かの中から自分で「あっ」ってここに希望があったって発見するものじゃないかと思うのでやっぱり周りの人ってつい励ましたりいい事言ってあげようとか思うけど。
解決しようみたいな感じになる人いますもんね。
でも傷が痛いって言ってる人にはそうか痛いのかってそばに言ってくれる人がまずは必要なんだなと思う。
私が自殺願望を持ってた時もそういう人がいてくれたから夫とかカウンセラーとかっていう経験があったのですごく考え深かったですね。
死にたいという気持ちを受け止めてくれる人や居場所が必要だというような共感する声がある一方で実はこんな声もたくさん寄せられました。
そしてもう一つ。
実はですねスタジオに出演したはなさんからも放送の5日後にこんな感想が届きました。
はなさんは収録を終えたあとに改めて番組の放送を見て友達などと語り合う中でこういう感想を抱いたという事です。
チキさんどんな事を感じました?居場所はもちろん大事だと思うしそれはあった方が絶対にいいし作るべきだとは思いますが作れと言われても作れるものじゃないし例えばない人に作れってアドバイスしても作れる訳じゃないですよね。
そうした時にこういった例えば20代の自殺などの問題を個人の心の問題に還元してしまうとなぜ作ろうと思えないのかみたいな説教に簡単にいってしまうのでそれはまずは注意すべき点だと思います。
心の問題ではなくてどうしたら例えば話しやすい環境にそもそも社会を変えていく事ができるのかとか話し合える環境とそうでない環境はどう違うのか話しにくい環境をどういうふうに話しやすい環境にできるのかという議論を重ねていく必要があるんですね。
自殺に関する研究では例えば自殺を踏みとどまったりとかあるいは自殺っていうものに対してしないっていうような選択肢を取れる社会ってどういった社会なのかという事を比べた時に困った事とか何か困難があった時にそれを聞いてくれる人がいるあるいは聞いてもいい言ってもいいという雰囲気がある環境というのは自殺に対して踏みとどまる人が高くなりがちだというそういった調査もあったりする訳です。
つまり人はスタンダードに普通に死にたいと考える人は一定数いるんだけれどもある環境ではそれに対して踏みとどまったりとかそれに対して寄り添う事もできる環境があって一方でそうじゃない環境もいる。
そうした中でやっぱり言いやすいように言ってごらんって言うんじゃなくて周り自体が聞きやすい環境に変えていく。
聞いた時に最初にぶつける言葉がそんな事思わなくていいじゃんじゃなくてもうちょっと…そうなんだねそういった気持ち分かるよとかそういう人いるよねという事から出発するモードに変えていく事はとても大事なんだなと今のVTRというかメールを見て改めて思いましたね。
そうしたら本当にもっと死にたいとか消えたいという声を出す人が増えてくるかもしれない。
個人の心は受け止める環境の側あるいは周りの人も実は死にたいという気持ちと折り合いをつけながらだましだましやってる人が実はたくさんいるんだという事実を認めた上で進めていくっていう事が大事だと思いますけどね。
ほとんど言えない環境ですよね。
大発見だったのが自分がカウンセリングを受けた時に「苦しいです死んじゃいたいと思います」って言った時に「苦しんでいいです」とカウンセラーの先生は言ってくれてあれ?今まで「苦しんでいいよあなたが苦しい事は後ろめたい事じゃないんだよ」と言ってくれた人は初めてだったと思ってものすごく楽になったんですね。
「苦しむ事も駄目。
楽しくうれしく前向きに生きようね」って言われ続けたらしんどいですよね。
苦しんだり死んじゃいたいって思ったりする自分もいて。
私居場所ってチキさんがおっしゃったような環境もそうだと思うけどもう一つ自分もそうなんですけど死にたい自分と同居するという事も居場所が出来るって事のような気がするんです。
私自殺したかった時死にたがる自分を殺したかった。
死にたがる駄目な自分死にたがる弱い自分を殺したかったんですけど死にたがる自分はいていいんだなっていうかもうしょうがないやと思えた時にほんのちょっとですけど楽になったんですね。
視聴者の皆さんからも声が届いていましてこれまで寄せられた反響の中でまさしく…つらいって言えないのはしんどいですよね。
そのつらさが具体的な経済とかほかの要因に関しては個人だけで解決できない問題もあるからそれはもう環境とかあるいは政治とかいろんな要因が出てきたりもする訳ですよ。
一方で育んでしまった自己否定の感情って他人に否定されてもなくなる訳じゃないじゃないですか。
「君はいいよね」って言われてもね。
ですよね。
こういったツイッターも来ていまして。
多くの人たちは希死念慮とか自己否定は抱えつつも仕事とかほかの部分で自己の肯定感とか有用感っていうものを調達する事に成功してるから実は死にたいって感情はある程度多くの人が抱えているという事を認めてない現状をまずはなんとかしようと。
「自分を好きになりましょう」ってよくいろんな所で言われるじゃない?でもねそんな簡単に好きになれない…。
別に自分を嫌いでもほかの人は好きになってくれる事もあったりとか自分の事を本当に駄目なやつと思っても意外とほかの人はそうでもないと言ってくれる場合もあるので無理やり好きになって自分で自分を100%肯定しなくても生きてっていいんだよってメッセージにもっと出会えるといいなと思うんですよね。
自己肯定感が低くても例えば自己有力感とか自己効力感といって自分はつまらない人間かもしれないけどこの役に立っているとか誰かに必要とされてるという感情があったりするとまたバランスが変わったりする事もある訳ですよね。
そうしたような形でだましだましやっていく。
僕も10年以上毎日死にたいって言葉吐かない日はないぐらいネガティブな人間だったりするんですけどだけどこの仕事はやらなきゃとかこの人の前ではそういった事を忘れられるとかそういったものを重ねていく事は実はみんなやっている事なんだ。
言葉がたまっていく事も必要だと思うんですよね。
ちっちゃい事でいいんですね。
ほかにもですね…時間がありますでしょうか…。
例えば「死にたいを生きたいとダイレクトに結び付ける事が必ずしも正しいとは限らない」。
先ほどご紹介したやつですね。
勇気がないとなかなかしゃべりにくいところありますから周りがどう変わっていくかも大事ではないでしょうか。
今日はどうもありがとうございました。
2014/10/01(水) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ 20代の自殺▽反響編 寄せられた7000の声から[字][再]

9月に放送した「20代の自殺キャンペーン」。NHKに寄せられた視聴者の反響を元に「死にたい」気持ちを「生きたい」に変えるためにどうしたらいいか考えていく。

詳細情報
番組内容
20代の死因の半数を自殺が占め、世界でも類を見ない異常事態が続く日本。なぜ「死にたい」若者が増えているのか?ハートネットTVでは、番組に寄せられた600通もの「死にたい」と訴える若者たちの声を徹底分析。9月初めに3回に渡って放送。さらには、総合テレビの特集番組でも伝えた。その番組に、たくさん寄せられた反響を元に「死にたい」気持ちを「生きたい」に変えるためにどうしたらいいのか議論を深めていく。
出演者
【出演】久保純子,荻上チキ,小島慶子,【司会】山田賢治

ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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