ダーウィンが来た!「特技はかくれんぼ!謎の鳥ヨタカ」 2014.09.14

「はじめまして。
私の名前はヨタカ。
え?どこにいるのか分からないって?ここですよここ。
私かくれんぼが得意なの」。
この不思議な鳥ヨタカがすんでいるのは…かくれんぼのワザを駆使して子育てをします。
極意は動かないこと。
雨が降っても夜になってもひたすら動かず地面になりきるんです。
怖〜い天敵が来ても大丈夫。
隠れていればほらヘビだって素通りしていきます。
今回テレビカメラが初めてヨタカの親子に密着。
謎だらけの暮らしに迫りました。
かくれんぼのワザを駆使して生き抜くヨタカの新伝説。
スクープ映像満載でお届けします!
(テーマ音楽)今日の主人公ヨタカはある童話に描かれています。
かつて国語の教科書にも載っていた「よだかの星」。
作者は宮沢賢治です。
一体どんな鳥なんでしょう。
ヨタカは日本各地に生息していますが夜行性のため詳しい生態はほとんど知られていません。
謎の鳥ヨタカを求めて5月私たちは広島県の廿日市市にやって来ました。
実は去年この場所でヨタカの子育てが初めて詳しく観察されたんです。
観察したのはこの人。
伐採された山の斜面。
飯田さんは今年もヨタカがここで子育てをすると考えています。
巣作りしそうな場所として注目したのはこの切り株の横。
斜面でも比較的平らな所です。
何しろ相手は謎だらけの鳥。
24時間態勢で撮影するため切り株のそばに無人カメラを設置します。
更に離れた所に高さ8メートルのやぐらを立てヨタカに影響を与えないよう遠くから撮影します。
ヨタカが活発に動き回るのは日が沈んでからです。
(鳴き声)けたたましい声とともに1羽の鳥が飛んできました。
(鳴き声)この飛ぶ姿タカのように見えませんか?ヨタカです。
タカの仲間ではありませんが夜タカのように飛ぶことからその名が付けられました。
東南アジアなどから初夏子育てのために渡ってきます。
あ地面に降りました。
あの切り株の横。
ねらい的中です。
大きさはハトぐらい。
喉に白い模様があるのはオスです。
大きくてつぶらな目。
この目で暗い中でも物を見ることができます。
大きな口。
確かに耳までさけていそうですね。
この独特の顔はヨタカの食生活に理由があります。
ヨタカの狩りは夜でもよく見える目でガなどの昆虫を見つけ口を開いて丸のみする方法。
大きな口も目も狩りに欠かせないものなんです。
地面に降りたオス。
しきりに鳴いています。
あ尾羽を広げました。
羽の先は真っ白。
こんなに目立つ模様があったんですね。
もう一羽来ました。
こちらは喉に白い模様がありません。
メスです。
オスは何やら懸命に羽を動かしています。
オスのこの不思議な行動は今回初めて撮影されました。
どうやら「ここで一緒に子育てしようよ」とメスを誘っているようです。
メスはくるくると回るように動き始めました。
この場所がふさわしいかチェックしているようにも見えます。
ぴったり寄り添って何だかいい雰囲気。
メスもここが気に入ったみたいです。
仲むつまじいヨタカのカップル。
この場所で謎に包まれた子育てを見せてくれそうです。
3日後のこと。
オスが斜面にいます。
夜行性のヨタカが昼間こんな所にいるのは珍しいことです。
一体どうしたんでしょう?オスから5メートルほど離れたあの切り株のそばにはメスがいました。
卵を産む時が近づいているのかもしれません。
メスはもぞもぞ。
落ち着きがなくなってきました。
日も傾きかけたころ。
胸の下に卵です!無事産卵しました。
一日中待っていたオス。
メスの近くに舞い降ります。
そしてメスに寄り添います。
あオスが卵を抱きました。
メスに付き添い産卵直後から卵を抱くオス。
こんな様子が観察されたのも今回が初めてなんです。
2日後のこと。
あ卵が2つ!ヨタカが一度に育てる卵は普通2つです。
卵を守り抜くためお母さんはとっておきのワザを使います。
ちょっと離れてみると卵を抱くお母さんどこにいるのか分かりませんよね。
ヨタカの色や模様は周囲の地面とそっくり。
動かなければ完全に同化してしまいます。
ほらどこにいるか分かりますか?この「かくれんぼ」こそヨタカの子育て最大の武器なんです。
上空に大きな鳥。
タカの仲間がやって来ました。
するとお母さん体を縮めて更に気配を消します。
う〜んお見事!あ!後ろを何かが通り過ぎました。
なんとヘビ!でもじっとしていれば気づかれにくく安全です。
夜になるとお父さんが卵を抱きにやって来ました。
このお父さんの行動にも開けた場所で子育てするための工夫が隠されています。
ほら地面に降りる時オスの羽の白い模様はとても目立ってしまいますよね。
だからお父さんは夜だけ卵を抱くようにしているようなんです。
どこまでも目立たないヨタカ流の子育て術です。
とことん動かずいつもじっとかくれんぼをしているヨタカ。
でもそんな暮らしには大変なこともあります。
おや?口を開けて喉を震わせています。
なんだか苦しそう。
実はここものすごく暑いんです。
温度を色で表す特別なカメラで見てみるとお母さんの周りは白い色。
なんと60℃を超える高温です。
遮る物がなく日光が降り注ぐ場所なのでここまで暑くなってしまうんです。
この口を開ける行動は暑さ対策。
喉を動かして口の中に風を送り水分を蒸発させます。
こうして喉の血管を冷やし体温が上がり過ぎないようにしているんです。
更に時間を縮めてみると全く動かないように見えたお母さんがほんの少しずつ体の向きを変えていることが分かりました。
こうして常に太陽の反対側を向くことで厳しい直射日光に耐えているんですね。
いやぁさすがです。
ちょっと待った!おヒゲじいどうしましたか?いや暑い中随分頑張ってますけどなにもわざわざこんな所に卵を産まなくてもいいんじゃないですかね?他の鳥みたいに涼しい森の中に巣を作ればいいのに。
まあ確かにそう思いますよね。
でもヨタカにとってはこの場所こそ卵を守るのに最適なのではないかと観察をしていた飯田さんは考えています。
えどういうこと?この場所は暑くなるため日中ヘビなどの天敵はほとんどやって来ません。
万が一来ても暑いので長くいられないんです。
ほらさっきだって通り過ぎて行ったでしょ?あ〜はいはいはい。
熱い地面はヨタカにとっては敵から身を守ってくれるバリアみたいなものだというんです。
う〜んでも日中はいいけど夜は涼しくなるから物騒じゃない?それも大丈夫なんです。
テンやタヌキキツネなど夜に活動する天敵もいますがここにはあまり来ないんです。
えどうして?つまり「こんな場所に獲物がいるはずがない」と天敵たちも素通りするのではないかというんです。
なるほど。
敵の裏をかく作戦というわけですな。
ヨタカちゃんいい場所見つけてヨタッカね…なんて。
卵を産んでから20日。
あ!お母さんの胸の下からヒナが出てきました。
この先どんな子育てを見せてくれるんでしょう?第2章ではヨタカの親子を絶体絶命の大ピンチが襲います。
なんとヘビが大接近。
危ない!南米に暮らすアメリカトキコウ。
この鳥も暑さと闘うワザを持っています。
木の上にある巣では周囲の温度は40℃を超えます。
ヒナはとっても苦しそう。
こちらは親鳥。
川で水を飲んでいます。
ヒナが苦しんでいるのに自分だけ何をやっているの?と思ったら…。
あヒナに水をかけています。
ヒナの体を冷やすために水を運んでいたんですね。
雪を踏みしめ歩くのはホッキョクグマ。
どう考えても暑さとは縁がなさそうですよね。
あれ?雪の上に寝そべってゴロゴロし始めました。
何をしているんでしょうか?実はこれ熱くなった体を冷やす行動。
マイナス50℃にも耐えられる脂肪と毛皮を持つため少し運動したり気温が零度を超えたりしたぐらいでも暑さを感じることがあるんです。
こんな白銀の世界でも暑さとの闘いがあるんですね。
今度はしゃく熱の大地アフリカのカラハリ砂漠。
この炎天下を動き回る生きものがいます。
ジリスです。
かわいい顔ですがすごいワザの持ち主なんですよ。
それがこれ。
尻尾を体の上にかざし日傘のように使うんです。
これならどこでも日陰を作れます。
暑い日中ゆっくり食べ物を探すことができるんです。
みんな工夫をしながら暑さを生き抜いているんですね。
ヨタカの親子が暮らす広島県の里山です。
ヒナは元気そうです。
おや?もう一羽。
無事にかえっていました。
フワフワのヒナ。
かわいいですねぇ。
大きさは4センチほどしかありません。
ヒナたちはお母さんのそばでリラックス。
でも外に出ているのは危険です。
お母さんはすぐにヒナを胸の下に潜り込ませます。
かくれんぼの達人ヨタカ。
ヒナがかえるとどんなワザを見せてくれるんでしょうか。
この時期は梅雨の真っただ中。
降りしきる雨の中でもお母さんはヒナを胸の下に隠して同じ場所でじっと動かずにいました。
自分はびしょぬれになりながらヒナのためにひたすら気配を消し続けます。
更に大きなハチが飛んできました。
スズメバチです。
でもこの場を動くわけにはいきません。
顔だけで必死の威嚇。
「もう!あっちへ行ってよ」。
ああよかった!一日中ヒナを抱いていたお母さん。
食事をしに飛び立ちます。
すぐさまお父さんがやって来ました。
ヒナは小さな体で精いっぱい背伸びしてお父さんのくちばしの辺りに触れています。
すると…。
お父さんが首を激しく振りました。
こうしてヒナに食べ物を与えているんです。
もう一羽のヒナも「お父さんおなかすいたよ」。
食事を終えたヒナたちはお父さんの羽の下に潜っていきました。
一見親子のほほ笑ましいやりとりにしか見えませんがこの食べ物の与え方にもかくれんぼの達人ならではのワザが隠されています。
ヒナが出てきました。
あまた食べ物を与えました。
獲物をとりにいっていないのにまだ与えられるんですね。
ヨタカの親鳥は獲物を捕まえると喉の奥にため込みます。
一度に多く運ぶことで巣への出入りを減らしできるかぎり巣の位置を天敵に知られないようにしているんです。
更にヒナのほうも天敵に見つからないためのワザを持っています。
普通鳥のヒナは食べ物をねだってこんなふうに大きな声で鳴きますよね。
(鳴き声)でもヨタカのヒナはほとんど鳴きません。
親のくちばしを引っ張って静かに食べ物をねだるんです。
親子そろってとことんかくれんぼをしているんですね。
ヒナが生まれて5日たった夕方のこと。
突然お母さんが首を大きく動かし始めました。
翼も広げています。
いつもじっとしているのにどうしたんでしょう?あっ!何か飛び出てきました。
ヘビです。
お母さんは飛び上がって威嚇。
ヒナはちりぢりに逃げていきます。
やって来たのはシマヘビ。
ヒナにとって最も恐ろしい天敵です。
ヘビに立ち向かうお母さん。
追い払おうと必死に飛び回ります。
(鳴き声)切り株の上で鳴いています。
ヘビの気を引きおとりになる作戦のようです。
ヒナはまだ体が小さく地面を歩くことさえやっとです。
逃げ回るヒナ。
ヘビは親子の周りをしつこく付きまといます。
お母さんが羽を広げてヘビをにらみつけます。
気迫に圧倒されたのかヘビが逃げていきます。
それを追いかけるお母さん。
ところが…。
あっヒナの後ろ!一瞬の出来事でした。
お母さんが慌てて戻った時はもう手遅れ。
ヘビは決してヒナを離しませんでした。
ううう…かわいそう。
ヒゲじい私も同じ気持ちです。
うん。
でもどうしてヘビに見つかっちゃったんですかねぇ?かくれんぼの達人なんだから見つからないはずでしょ?そうですよね。
実はこの少し前にある事件が起きていたんです。
えっ事件?こちらお母さん何だか落ち着きがないように見えませんか?う〜ん確かにそわそわしておりますな。
親子のいた場所をよ〜く見て下さい。
小さなものがたくさん動いているのが分かりますか?うん?どれどれ。
おアリですか?そうなんです。
小さな虫ですが幼いヒナがかまれると弱ってしまう恐れもあります。
お母さんはアリを嫌がって歩いてしまったんです。
う〜ん…ああ歩き回っとりますね。
ヨタカがこんなに動き回ることはめったにありません。
こうしてアリを警戒する状態は2日ほど続きました。
この時たまたま通りかかったヘビに見つかってしまったのかもしれません。
あ〜そうだったんですか。
更に観察していた飯田さんによれば今年は雨や曇りの日が多かったそうなんです。
そのため地面の温度があまり上がらずヘビが近くに現れることが多かったようです。
なるほどねぇ。
かくれんぼのワザがあっても2羽のヒナを無事に育てるのは難しいことなんです。
う〜んそうか。
もう一羽のヒナには何とか生き延びてほしいですなぁ。
頑張れヨタカの親子〜!ヒナが襲われる悲しい出来事から6日後。
巣から離れた所で…お母さんの姿を見つけました。
あヒナもいます。
無事だったんですね。
ヒナの羽の色はお母さんそっくりになってきました。
大きくなってもう胸の下には隠れられません。
独りで歩きだしました。
首を伸ばして周りの様子をうかがいながら以前よりもしっかりとした足取りで歩いています。
ヒナの次のステップは空を飛ぶこと。
夕方お父さんが斜面を低く飛び回っていました。
ヒナが飛ぶのを促しているかのようです。
ヒナは翼を広げてお父さんを地上から追いかけます。
おなかをすかせたヒナはしきりに食べ物をねだります。
でもお父さんは与えません。
するとヒナは羽ばたいてジャンプ。
大空へ旅立つ日はもう間もなくです。
謎に包まれていた鳥ヨタカ。
あえて敵から丸見えの場所を選び夫婦で力を合わせ子どもを育て上げていました。
かくれんぼのワザを頼りに里山でひっそりと命をつないでいくことでしょう。
天正15年国替えを命じられた宇都宮鎮房が2014/09/14(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「特技はかくれんぼ!謎の鳥ヨタカ」[字]

里山で子育てする鳥、ヨタカ。特技は、“かくれんぼ”。とことん動かず、周囲の地面に紛れることで天敵のヘビやタカをやり過ごす。驚きのワザをスクープ映像満載で初公開!

詳細情報
番組内容
初夏、日本の里山で子育てをする渡り鳥、ヨタカ。これまで詳しく観察されたことがなく、その暮らしは謎だらけだった。今回、テレビカメラが初めてヨタカに完全密着。卵やヒナを守る驚きのワザが見えてきた。それは、“かくれんぼ”。開けた場所の地面で子育てをするヨタカ。とことん動かず、周囲の地面に紛れることで、天敵のヘビやタカをまんまとやり過ごすのだ。謎の鳥ヨタカのスゴワザをスクープ映像満載で初公開!歌:平原綾香
出演者
【出演】鳥類学者…飯田知彦,【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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